https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M18-2101
論文概要:新三種混合ワクチン(MMR)と自閉症の関連性に関するデンマークの全国的コホート研究
この文書は、デンマークで行われた大規模な研究に関する学術論文です。新三種混合(MMR)ワクチンと自閉症との間に関連性があるか否かを調査したものです。
研究の背景 MMRワクチンが自閉症の原因になるのではないかという仮説は、長年にわたり人々の懸念を引き起こし、ワクチン接種率にも影響を与えてきました。この研究は、その仮説を検証するために行われました。
研究方法
- 対象: 1999年から2010年にデンマークで生まれた657,461人のお子さんを対象としました。
- デザイン: 全国規模のコホート研究。デンマークの国民登録制度を利用し、MMRワクチンの接種歴、自閉症の診断、その他の小児ワクチンの状況、兄弟の自閉症歴、その他の自閉症リスク要因などの情報を追跡調査しました。
- 分析: ワクチンを接種した子供と接種していない子供とで、その後の自閉症発症リスクを比較しました。統計学的な手法(Cox比例ハザード回帰)を用いて、年齢、性別、出生年、その他のリスク要因を調整した「ハザード比」を算出しました。
研究結果
- 調査期間中(合計5,025,754人年)に6,517人の子供が自閉症と診断されました。
- MMRワクチンを接種した子供と接種していない子供を比較した結果、自閉症の発症に関する調整後のハザード比は0.93(95%信頼区間: 0.85~1.02)でした。
ハザード比について: ハザード比が1.0の場合、両グループのリスクは同じです。1.0より小さい場合はリスクが低いことを意味します。この研究結果の0.93は、MMRワクチンを接種した子供の自閉症リスクが、接種しなかった子供と比較して増加しないことを示しています。
結論 この大規模な研究は、以下の点を強く裏付けるものです。
- MMRワクチンは自閉症のリスクを増加させない。
- 自閉症になりやすい素因を持つと考えられる子供のグループにおいても、ワクチンが自閉症の引き金になることはない。
- ワクチン接種後に自閉症の症例が集中して発生する(クラスタリング)ということもない。
この論文は、MMRワクチンと自閉症との関連性を否定する、非常に強力な科学的根拠となるものです。
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