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アレルギー性鼻炎について

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アレルギー性鼻炎について

アレルギー性鼻炎とは?

“発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉を主な症状とする鼻粘膜のアレルギー性疾患”です。

有病率はどれくらいなの?

・アレルギー性鼻炎の全国的な有病率に関しては様々な報告がありますが、1998年、2008年、2019年に行われた全国調査の結果では、スギ花粉症の有病率は、全国平均で16.2 %、26.5%、38.8%と約10%ずつ増加していました。特に山梨県では2008年の調査で44.5%、2019年の調査では65.0%と、いずれも全国で最も高いスギ花粉症有病率を示しています。

アレルギー性鼻炎は増えているの?

アレルギー性鼻炎は、慢性副鼻腔炎の減少に反して、1965年ごろより増加、1970年より急増しました。最近では、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎患者数は、都市部では横ばいですが、スギ花粉症患者は急増し低年齢化もみられ、その一方、自然に改善することは少なく社会問題となっています。

アレルギー性鼻炎増加の原因は?

次のような原因1)~3)が考えられています。

1) 抗原量の増加
1. 住宅建設の増加、気密性の高い建築様式の増加→ダニの増加
2. 屋内居住時間の多いライフスタイル→ダニへの暴露を促進
3. 屋内居住時間の多いライフスタイル→ダニへの暴露を促進
4. 戦後、建材、治水の目的でスギを植林→1960年ごろから花粉生産力の高い樹齢30年以上のスギの増加

2) 副鼻腔炎・幼少時の感染の減少
→体の免疫の対応が、感染防御からアレルギーへとバランスが変化

3) 大気汚染(排ガス、PM2.5)、栄養の変化、ストレスの増加などの環境因子

◎以下の内容は、診察を受ける際の参考資料としてください。
 個々の患者さんで、その診療内容や治療方法は異なります。また、医療機関により行う検査は異なることがあります。

アレルギー性鼻炎の検査・診断法


・アレルギー性かどうかの検査
1. 問診
(職業、症状の種類と程度、発症年齢、好発期、合併症、アレルギー既往歴、家族歴、過去および現在の治療歴と経過など)
2. 視診(鼻鏡検査):鼻の中の観察を行います。
3. 鼻汁好酸球検査:鼻汁を採取し顕微鏡で好酸球が増えていないか調べます。
4. 血液中好酸球検査、血清総IgE抗体定量:花粉症単独の患者さんでは、正常値から軽度上昇していることが多いですが、重症なアレルギー性鼻炎や、アトピー性皮膚炎・喘息などほかのアレルギー疾患の合併がある場合には高値となることがあります。

・原因となる抗原(アレルゲン)に対して感作を起こしているか調べる検査
1. 血清特異的IgE抗体定量:採血により血液中のダニやスギなどに対するIgE抗体の量を調べます。
2. 皮内テスト:皮膚に抗原エキスを注射して、その後の皮膚反応を観察します。
3. プリックテスト:細い針で皮膚を刺し、抗原エキスを垂らし、その後の皮膚反応を観察します。
(2と3の検査を行う場合、検査の1週間ほど前から、アレルギーの薬を制限する必要があります。)

・その他の検査
1. 鼻腔通気度検査:鼻づまりの程度を調べます。

・問診とアレルギー性鼻炎の特徴的な症状(くしゃみ、水性鼻漏、鼻閉)により臨床的にアレルギー性鼻炎と判断できることが多いですが、治療への反応が悪い場合、舌下免疫療法を行う場合、原因抗原を特定する場合にはさらに検査を行います。原因抗原の確定、鼻汁好酸球検査、皮膚テスト、血清特異的IgE抗体検査などが陽性であれば、アレルギー性鼻炎の確定診断となります。
(医療機関により行う検査は異なることがあります。)

治療法

1. 患者さんと医師の間のコミュニケーションが、まず大切です!
  患者さんと医師が協同で治療プログラムを作り、治療経過も協同で検討しましょう。
2. 抗原の除去と回避は、患者さんのみができることでセルフケアとして大切です。

ダニ→
室内の掃除には排気循環式の掃除機を用い、こまめに掃除をする。
織物のソファ、カーペット、畳はできるだけやめる。
ベッドのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかける。寝具の洗濯を行う。
部屋の湿度を50%程度と高めに、室温を20~25℃に保つように努力する。

スギ花粉→
花粉情報に注意する。
飛散の多い時の外出を控える。
飛散の多い時は窓、戸を閉めておく。
飛散の多い時は外出時にマスク、メガネを使う。
表面がけばけばした毛織物などのコートの使用は避ける。
帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
部屋の掃除を励行する。

治療
1)薬物治療:
・重症度、病型、ライフスタイルなどを考慮して薬物を選択することになります。
・複数の薬を併用することもあります。
・例年、強い花粉症症状を示す患者さんに対しては、花粉飛散開始とともにあるいは症状が少しでも現れた時点で薬物治療を開始する初期療法が勧められます。

2)アレルゲン免疫療法(減感作療法):
  アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)のエキスを注射や舌の下に投与し、アレルギーが起きにくくするように体を慣らしていく治療法です。根本的な改善が期待できる治療です。

3)手術療法:
  鼻粘膜の変調を目的とした手術(電気凝固法、レーザー手術など)
  鼻腔通気度の改善を目的とした鼻腔整復術(下鼻甲介手術、鼻中隔矯正術など)、鼻漏の改善を目的とした手術(後鼻神経切断術)などがあります。

治療の評価

1. 鼻アレルギー日記から、鼻症状をスコア化し、重症度を判定する。
2. 日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票により、quality of life(生活の質)の向上を治療効果判定に用いる。

治療の目標

  アレルギー性鼻炎の治療目標は、次のような状態になることです。
1. 症状はない、あってもごく軽度で、日常生活に支障がなく薬もあまり必要ではない状態になること。
2. 症状は持続的に安定していて、急性増悪があっても頻度は低く、遷延しない状態になること。

参考文献

鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版(改訂第9版)
(鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会作成)