山形大学医学部 耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座

教室の歩み

山形大学(山形大学医学部 耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座)

沿革

山形大学医学部は昭和48年(1973年)、旧厚生省(現厚生労働省)の地域医療の質の向上を目的とした一県一医科大学構想のもと、医科大学のなかった県(山形県、愛媛県)および北海道旭川にできた最初の3医科大学の一つである。山形大学医学部は、昭和48年9月に開設され、昭和49年11月に学生受け入れ開始となった。

山形大学医学部耳鼻咽喉科学講座(現耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座)は、昭和51年4月に、新潟大学医学部耳鼻咽喉科学講座助教授であった小池吉郎が初代教授として着任し開講した。当時のスタッフは新潟大学より招聘され、加藤功助教授、青柳優講師の3人でのスタートであった。
その後昭和51年10月の医学部附属病院のオープンに合わせ新潟大学より木村 洋助手が、翌52年4月には同じく新潟大学より鈴木八郎助手が着任し、総勢5人のスタッフで診療、研究、教育に従事した。昭和54年に山形大学1期生が卒業し、耳鼻咽喉科学講座に7名の新人が入局し、以降現在まで100余名が当講座に入局し、大学をはじめとして県内・県内において活躍されている。昭和61年に加藤功助教授が聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学講座へ赴任され(平成7年同主任教授)、小池吉郎教授は昭和63年5月医学部付属病院長、平成2年11月に医学部長に就任し、平成6年3月定年退官となった。
平成6年12月に青柳優助教授が2代目教授に就任した。青柳教授は、平成19年山形大学医学部図書館長に就任し、平成23年4月定年退官されその後山形県立保健医療大学学長に就任された。青柳教授就任中には、平成17年より附属病院の再整備が開始され、平成20年度に新南病棟が完成し、平成22年度に病棟の改修が完了した。平成23年7月16日付けで弘前大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座准教授の欠畑誠治が3代目教授として着任し現在にいたっている。

歴代教授

小池吉郎(昭和51年4月~平成6年3月)

昭和51年4月に、新潟大学医学部耳鼻咽喉科学から山形大学耳鼻咽喉科学の初代教授として着任され、学生教育に尽力するとともに、60名の教室員を育て山形県の耳鼻咽喉科診療の充実に寄与された。この間、山形大学医学部付属病院長および山形大学医学部長として附属病院、および医学部の発展に貢献された。学術的にはめまい平衡医学、および顔面神経麻痺の研究に力を入れ、日本平衡神経科学会(現、日本めまい平衡医学会)の創設にご尽力され、昭和58~60年には運営委員長を務められ、学会の発展に寄与された。また、日本顔面神経研究会の創設に尽力され、平成元年~4年に運営委員長としてその発展に尽くされた。在任中に昭和57年に第41回日本平衡神経科科学会(現めまい平衡医学会)、昭和62年に第10回日本顔面神経研究会、平成2年に第16回国際バラニー学会仙台サテライトシンポジウムを開催された。昭和51年~平成6年の18年間日本耳鼻咽喉科学会山形県地方部会長を務められ、山形県地方部会の発展に寄与されたとともに、山形県立日本海病院および公立置賜総合病院の創設に寄与された。山形大学を定年退官後は、平成9年から5年間山形県立保健医療短期大学の初代学長を務められ、さらには4年制大学化を実現し、平成22年にはこれらの功績に対して瑞宝中綬章を受章された。

青柳 優(平成6年12月~平成23年3月)

昭和51年4月に小池吉郎教授と共に新潟大学医学部耳鼻咽喉科学から山形大学耳鼻咽喉科学へ移られ、開学から35年間にわたり講座の発展に寄与された。昭和51年より講師、昭和61年より助教授を経て平成6年に小池吉郎教授の後任として二代目教授に着任し、17年間、教室運営を指揮された。小池吉郎教授のもと、平衡医学、顔面神経学の研究に力を注がれるとともに、昭和56年~昭和57年のスイス、バーゼル大学留学後は聴性誘発反応の研究を立ち上げ、小児における他覚的聴力検査としての聴性定常反応ASSRの有用性について数多くの報告をされた。ASSRの研究では多くの医局員を指導し、学位を取得させた。臨床では聴覚および耳科手術を専門とし、日本聴覚医学会および日本耳科学会の理事として学会の発展に寄与されるとともに在職中には平成13年に第21回日本顔面神経研究会、平成18年に第51回日本聴覚医学会を主催している。平成18年に山形大学医学部副学部長、平成19年に山形大学図書館医学部分館長を兼任され、平成23年にて定年退官。退官後は山形県立保健医療大学学長を務められた。

欠畑誠治(平成23年7月~現在)

平成23年3月に定年退官した青柳優の後任として、同年7月に弘前大学准教授から第3代山形大学耳鼻咽喉科学講座教授に着任した。昭和62年に東北大学医学部を卒業後、東北大学耳鼻咽喉科学講座に入局し、平成5年から2年半にわたり米国エール大学で内耳外有毛細胞に関する研究に従事した。平成14年に弘前大学耳鼻咽喉科学講座講師に着任し、内耳研究および耳科手術を専門として多くの耳鼻咽喉科医そして研究者を育成した。山形大学に教授として着任後は、低侵襲な機能的手術として経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)の安全性・有効性に関する臨床研究に教室を挙げて取り組み、国内のみならずアジア・世界をリードする業績をあげている。さらに、鼻科や頭頸部腫瘍を含めた総合的な耳鼻咽喉科疾患の診療体制を整えるとともに、内視鏡による低侵襲な手術の応用・発展に取り組んでいる。また、内耳・中耳・顔面神経研究を教室の基本テーマとして基礎研究にも精力的に取り組み、大学院生を指導している。現在、附属病院副病院長(国際化担当)、先端内視鏡手術センター・センター長および卒後臨床研修センター・センター長を務め、附属病院の運営や学生研修医教育にも従事している。

人事(平成5年以降)

助教授・准教授

  • 青柳 優(昭61.8~平6.11)
  • 中村 正(平7.2~平14.4)
  • 横田雅司(手術部 平9.6~平12.9)
  • 稲村博雄(平14.5~平19.3)
  • 小池修治(平19.4~平26.6)
  • 太田伸男(平26.7~平27.3)
  • 伊藤 吏(平29.5~)

講師

  • 中村 正(昭62.7~平7.1)
  • 横田雅司(平6.5~平9.6)
  • 深瀬 滋(平7.2~平10.3)
  • 布施健生(平11.4~平14.4)
  • 小池修治(平14.5~平19.3)
  • 太田伸男(平14.5~平26.6)
  • 那須 隆(平19.4~平24.3,平25.4~平29.6 )
  • 渡邊知緒(平24.4~平28.6)
  • 伊藤 吏(平27.4~平29.4)
  • 野田大介(平29.4~)
  • 阿部靖弘(平29.4~)

臨床・研究(平成5年以降)

小池吉郎教授の主たる研究テーマは平衡医学と顔面神経学であったが、平成6年以降、顔面神経学は青柳優、稲村博雄が中心となってBell麻痺、ハント症候群に対するステロイド大量療法(Stennert法)の治療効果に関する臨床研究、末梢性顔面神経麻痺患者における経頭蓋的磁気刺激(TMS)を用いた頭蓋内顔面神経刺激の有用性やENoGにおけるF波に関する研究などの電気性理学的研究を行ってきた。平衡学は中村正が中心となり独自の眼球運動解析システムを構築し、前庭動眼反射と視運動性眼振の相互作用に関する臨床的研究やサーチコイルを使用した水平性、垂直性および斜向性サッケードの定量的解析などを行った。聴覚医学の分野では青柳優、横田雅司を中心に聴性定常反応(ASSR)に関する研究を進め、成猫を用いたASSRの起源に関する研究や複合振幅変調音を用いた変調周波数追随反応による他覚的聴力検査の有用性の研究、ASSRによる補充現象の他覚的診断に関する研究などを行った。免疫アレルギーの分野では深瀬滋、太田伸男を中心として好中球の遊走能、接着因子、アポトーシスに関わる基礎研究および木村病に関する臨床研究や嚢胞性疾患に対するOK-432治療に関する臨床研究を行ってきた。現在はこれらの研究に加えて、欠畑誠治教授指導のもと伊藤吏を中心に経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)の安全性や有効性に関する臨床研究およびモルモットやマウスを用いた内耳障害、顔面神経障害とその治療に関する基礎的研究を行っている。

学会・研究会担当(平成5年以降)

  • 4th World Congress on Endoscopic Ear Surgery (R3.4.6~12予定)
  • 第67回日本聴覚医学会(R4.11.9~11予定)
  • 第25回日本耳鼻咽喉科学会医事問題セミナー(平12.6)
  • 第17回耳鼻咽喉科情報処理研究会(平13.36)
  • 第24回日本顔面神経研究会(平13.6)
  • 平成13年度日本めまい平衡医学会医師講習会(平13.8)
  • 第35回日本聴覚医学会ERA研究会(平17.7)
  • 第51回日本聴覚医学会(平18.9)
  • 第2回日本聴覚医学会ERA・OAE研究会(平19.7)
  • 第8回日本聴覚医学会 耳鳴りと難聴の研究会(平20.7)
  • 第36回全国身体障害者福祉医療講習会、並びに第15回補聴器キーパーソン全国会議(平22.6)
  • 第34回聴覚生理研究会(平27.10)
  • 第3回耳鳴・難聴研究会(平27.7)
  • 第41回日本顔面神経学会(平30.6)
  • 第29回日本耳科学会(平31.10)

教室刊行物(平成5年以降)

同門会誌である「百鳴会誌」は平成8年に第1号を発行、地方部会誌である「耳鼻咽喉科山形」は平成9年に第1号を発行し、現在に至るまで年1回、同門会員および地方部会員に配布されている。平成31年(2019年)には「百鳴会誌24号」、「耳鼻咽喉科山形23号」を発刊した。

同門会

当教室の創立は昭和51年4月であるが、同門会は平成6年12月に小池吉郎名誉教授を会長として発足し、平成8年に同門会誌第1号が発刊された。当初、同門会には名称がなかったが、平成12年に医局員から名称の候補を募り、中国の故事にある「百家争鳴」から由来する「百鳴会」と命名された。一県一医科大学構想のもと開学した山形大学耳鼻咽喉科学教室の草創期が「伝統の足らない部分を自由な発想で補うというまさに百家争鳴の精神の発露」で医局員より提案されたものであった。平成13年より青柳優教授が同門会会長を引き継ぎ、平成23年より欠畑誠治教授が同門会会長に就任して、現在に至る。平成29年には同門会会員は100名を越え、毎年同門会総会と翌日のOBと医局員の親睦をはかるためのゴルフコンペが行われている。