2023年1月24日、Nature誌は、論文執筆にAIのChatGPTを使用することに関して規制を設けると発表しました ((Tools such as ChatGPT threaten transparent science; here are our ground rules for their use. (2023). Nature, 613(7945), 612–612. https://www.nature.com/articles/d41586-023-00191-1 ))。この発表を皮切りに、AI と 論文執筆の適切な関係性について様々な意見が飛び交っています ((Thorp, H. H. (2023). ChatGPT is fun, but not an author. Science, 379(6630), 313-313. https://www.science.org/doi/10.1126/science.adg7879 ))((Flanagin, A., Bibbins-Domingo, K., Berkwits, M., & Christiansen, S. L. (2023). Nonhuman “Authors” and implications for the integrity of scientific publication and medical knowledge. JAMA. https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2801170 ))。
その中で、南デンマーク大学の Mushtaq Bilal 先生が、倫理的に ChatGPT を使用して初稿を執筆するコツについて twitter で紹介していたので、本人の承諾を得て、簡単に日本語に訳して掲載致します。
ChatGPTを倫理的に使用して、完璧な初稿(ジャーナル論文や論文の章など)を書く方法。
最初の原稿を書き始める前に、私が “Active and Slow Reading “と呼んでいることをする必要があるでしょう。
あなたのプロジェクトに関連する学術的なテキストを手に取り、ゆっくりと忍耐強く読み始めるのです。
読みながら、ノートにメモを取る。
ノートの右ページのみを使用する。
本文の中で、面白いと思ったこと、役に立ったことを、ページ番号と一緒にメモしてください。
左側のページは空白にしてください。
読みながらメモを取ると、たくさんのアイデアや疑問が浮かんでくるでしょう。
これらのアイデア・疑問を左のページに書き込んでください。
右側が書くページ
左側は考えるためのページ
このActive and Slow Readingの練習は、あなたの役に立つことでしょう。
1. テキストを “消化 “する
2. 文章を通じて議論がどのように構築されるかを理解する。
3. 自分の考えを整理する
4. 自分なりの解釈をする
このエクササイズをいくつかのテキストで2週間ほど行ってください。
そして、読むのをやめてください。
一日のうちで最も生産性の高い時間帯を選びましょう。早朝でも、午後遅くでも、真夜中でもかまいません。
自分に合った時間を選びましょう。
気が散るものを取り除く。電話もしない。インターネットもしない。
家族がいる場合は、その人たちに仕事が必要であることを伝えてください。
あなたは2週間ほど前から積極的に読んでいますね。これはつまり、書くべきことがあるということです。
MS WordまたはGoogle Docsで白紙の文書を開きます。
タイマーを25分にセットします。
タイマーが鳴った瞬間に書き始める。
でも、何を書けばいいのかって?
頭に浮かんだことを何でも書く。
一人称で書く(私は考えている、私は議論したい、などなど)。
スペルや文法、句読点は気にしない。
一語も消してはいけない。
25分間ノンストップでタイプする。
タイマーが止まったら止める。
自分を褒めて、ご褒美をあげる。
「自分は新しい知識を創造している素晴らしい人間なんだ」と自分に言い聞かせる。
時間があれば、もう1回25分ほどやってみましょう。
できるだけ多くの単語を書き留めるようにしましょう。
このエクササイズを1週間続けてください。
一週間の終わりには、何千もの単語からなる文書ができあがります。
これがあなたの「ゼロドラフト」です。
あなたのゼロドラフトにはあまり構造がありませんが、それは全く問題ありません。
ChatGPTに構造化してもらいましょう。
ゼロドラフトからテキストブロックを取り出し、ChatGPTで実行します。
以下のプロンプトを使用してください。
“次の文章から冗長な単語を削除し、首尾一貫したまとまりのある文章にしてください。” (“Please remove redundant words from the following passage and make it coherent and cohesive.”)
ChatGPTが必要な処理を行い、文法的に正しい文章で首尾一貫したパラグラフを作成します。
すべてのゼロドラフトをChatGPTで段落ごとに実行します。
きれいな段落をコピーして、新しい文書に貼り付けます。[プロジェクト名] ドラフト1 [日付]。(”[Project Title] Draft 1 [Date]”)
これで、下書きはこのようになります。
この原稿を同僚や上司に見せ、フィードバックをもらうことができます。
これが、あなたの 完璧な 初稿です。
初稿の 存在そのものが、完璧な初稿なのです。
時間を決めてひたすら書き続ける手法は「ライティング・マラソン」と呼ばれています。
Microsoft は 自社で導入した Bing AI のことを「副操縦士(copilot)」だと説明しました((Reinventing search with a new AI-powered Microsoft Bing and Edge, your copilot for the web. (2023, February 7). The Official Microsoft Blog. https://blogs.microsoft.com/blog/2023/02/07/reinventing-search-with-a-new-ai-powered-microsoft-bing-and-edge-your-copilot-for-the-web/ ))。
自ら浮かんだアイデアを構造化するときに、 AI を副操縦士として活用する方法は、適切な使い方の一つだと思いました。
今後も科学の分野における人間と AI との適切な関係について考えていければと思います。