臨床医のための疫学入門

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・衛生学分野のホームページ[1]岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・衛生学分野. Accessed March 12, 2021. http://www.unit-gp.jp/eisei/wp/?page_id=298に、「臨床医のための疫学シリーズ」という連載記事への紹介がありました。残念なことにJ-STAGEの仕様変更によるためか、全てリンク先が無効となっていました。

余談ですが、最近、ひろゆき(西村博之)さん[2]ひろゆき, Hiroyuki Nishimuraさん (@hirox246) / Twitter. Twitter. Accessed March 12, 2021. https://twitter.com/hirox246が、武井壮さん[3]武井壮さん (@sosotakei) / Twitter. Twitter. Accessed March 12, 2021. https://twitter.com/sosotakeiのインタビュー動画「街録ch」を紹介しながら、「無料でみれて、下手な自己啓発本より役に立つけど、みんなが情報に辿り着けていないのがもったいない」と話していました[4]ひろゆき, hiroyuki. 【ひろゆき】サルは同じ身の丈どうしで遊ぶ2。WALBERGEMを呑みながら。2021/02/21 D22.; 2021. (27:30から) Accessed March 12, 2021. … Continue reading

この疫学シリーズも、埋もれてしまっては勿体ないと感じたので、こちらにリンクを張り直しています。それぞれのdoiリンクから本文をご参照ください。

臨床医のための疫学シリーズ

第1回 臨床研究における疫学と統計学(疫学総論)

裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第1回 臨床研究における疫学と統計学(疫学総論). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(5):288-293. doi:10.3893/jjaam.20.288

わが国においても臨床研究の重要性の認識は確実に高まってきているが,未だ地域中核病院を中心として行われる臨床研究は量的に少なく,質的にも英文での論文化に耐えうるものはほとんど見受けられない。これは臨床医の多くが統計学的な知識を重視するあまり,疫学的視点が不十分であるために起きている現象である。検定やp値を重視する傾向,バイアスについて十分な考察ができていないこと,治療や曝露の影響を定量的に推定しないことなどは,その好例である。臨床研究を行う上で,母集団と標本,サンプルサイズの計算,基本属性の比較,交絡要因の多変量解析による調整などに用いられる統計学の知識はあるに越したことはないが,臨床研究を実施するにあたっては疫学の知識がかなりの程度必要であることが多くの臨床医に理解されていない。とくに研究仮説の明確化,コントロール群の設定,解析モデルの構築,研究結果とバイアスの考察において,疫学的視点がなければ質の高い臨床研究は行うことができないのである。

第1回 臨床研究における疫学と統計学(疫学総論)[5]裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第1回 臨床研究における疫学と統計学(疫学総論). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(5):288-293. doi:10.3893/jjaam.20.288

第2回 疫学用語の確認と論文の読み方(疫学各論1)

裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第2回 疫学用語の確認と論文の読み方(疫学各論1). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(6):338-344. doi:10.3893/jjaam.20.338

論文の読み方(批判的吟味critical appraisal)は研究を行う上で基本的な技術であり,最近ではEBMの実践にあたり臨床医にも求められる能力になっている。論文を読むことを苦手とする臨床医は非常に多いが,筆者らは疫学の基本的知識と論文の書き方について勉強することが,論文を読む技術を習得する一番の近道ではないかと考えている。疫学の基本的知識としては,曝露(治療)のアウトカムへの影響を定量的に推定するために必要な疫学指標と効果指標についての理解,バイアスを考えるのに必要な研究デザインについての理解が非常に重要である。一方,論文の読み方に関しては,論文の段落構造を理解し,段落ごとに読んでいく「パラグラフリーディング」が行えるようになれば,論文を読む効率は飛躍的に向上する。そして,論文の書き方に関する各種ガイドラインを参考にしながら,論文を読んでいくことは一番のトレーニングである。

第2回 疫学用語の確認と論文の読み方(疫学各論1)[6]裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第2回 疫学用語の確認と論文の読み方(疫学各論1). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(6):338-344. doi:10.3893/jjaam.20.338

第3回 研究仮説の立て方とDirected Acyclic Graph(疫学各論2)

裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第3回 研究仮説の立て方とDirected Acyclic Graph(疫学各論2). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(7):397-403. doi:10.3893/jjaam.20.397

「研究仮説」の善し悪しが臨床研究の質を決めると言っても過言ではない。しかし,研究仮説の立て方,洗練の仕方について記載した文献は少なく,多くの臨床医は不十分な研究仮説をもとに臨床研究を行っている。研究仮説を立てるにあたっては,対象者・曝露(介入)・コントロール・結果をきちんと定義し,反事実モデルをもとに十分に検討と議論を重ねていくことが何よりも重要である。その上で,近年疫学分野で用いられるようになっているDirected Acyclic Graph(DAG)をもとに,研究計画や解析計画を立てること,調整が必要な交絡要因について検討することが重要である。DAGは簡単な規則をいくつか理解してしまえば非常に有用なツールであり,臨床研究を行う際にも,論文を読む際にも役に立つものである。

第3回 研究仮説の立て方とDirected Acyclic Graph(疫学各論2)[7]裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第3回 研究仮説の立て方とDirected Acyclic Graph(疫学各論2). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(7):397-403. doi:10.3893/jjaam.20.397

第4回 バイアスの考え方,結果の解釈の仕方(疫学各論3)

裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第4回 バイアスの考え方,結果の解釈の仕方(疫学各論3). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(9):794-800. doi:10.3893/jjaam.20.794

関連と因果関係は異なる(Association is not causation)。これは有名な言葉であるが,「関連と因果関係が異なるときバイアスが生じている」と定義されている。そして,連載第3回で紹介した反事実モデルとdirected acyclic graph(DAG)はバイアスを理解し,整理する上で非常に役立つツールである。交絡バイアスはDAGの共通原因によって生じるもの,選択バイアスはDAGの共通結果を調整することによって生じるものとして整理し,情報バイアスは「系統的でない誤分類(non-differential misclassification)」を理解することが有用である。一方,結果の解釈にあたっては,バイアスが「真の値」から「推定値」を「どの方向」に「どの程度」ずらすようなバイアスか,つまり過大評価(away the null)するバイアスか,過小評価(toward the null)するバイアスかを2×2表を用いて検討をすることが重要である。

第4回 バイアスの考え方,結果の解釈の仕方(疫学各論3)[8]裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第4回 バイアスの考え方,結果の解釈の仕方(疫学各論3). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(9):794-800. doi:10.3893/jjaam.20.794

第5回 臨床研究における統計学の役割(疫学各論4)

裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第5回 臨床研究における統計学の役割(疫学各論4). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(10):851-859. doi:10.3893/jjaam.20.851

臨床研究に必要な統計的知識としては,基本属性の比較を行うにあたって「どの場合にどの検定を用いればよいか」がまず整理できることと,「交絡要因の調整」に用いられる多変量解析としてロジスティック回帰分析を理解することが基本となる。そして,臨床研究では生存期間をアウトカムとして用いる研究が多いことから,生存解析についての知識を習得することも必要である。基本属性の比較にあたっては,各種変数が「連続量変数」か「カテゴリー変数」か理解し,「2グループ」で比較するのか「3グループ以上」で比較するかによって用いる検定を決定する。ロジスティック回帰分析はアウトカムが二値の場合に用いられることが多く,曝露の影響をオッズ比として推定することができる。一方,生存解析で用いるCox比例ハザードモデルでは曝露の影響をハザード比として推定することができる。忙しい臨床のなかで臨床研究の知識を身につけるには,「疫学をしっかりと勉強してから,必要な統計的知識を増やしていくこと」が効率的であろう。

第5回 臨床研究における統計学の役割(疫学各論4)[9]裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第5回 臨床研究における統計学の役割(疫学各論4). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(10):851-859. doi:10.3893/jjaam.20.851

医学における因果推論(総説論文)

医学における因果推論 第一部

越治鈴木, 裕和小松, 貴志頼藤, 英二山本, 弘幸土居, 敏秀津田. 医学における因果推論 第一部. 日本衛生学雑誌. 2009;64(4):786-795. doi:10.1265/jjh.64.786

衛生学や疫学,あるいは医学にとどまらず,原因と結果に関する一般法則すなわち因果律(causation)を見出し,それを理論化しようとすることは,自然科学における中心課題である(1)。自然科学は,物理学・化学・生物学などを基礎とし,医学は自然科学の応用分野のひとつである。従って医学は,人間をその観察対象として因果関係を扱う学問といえるだろう。事実,臨床医学においても,EBM(Evidence Based Medicine)は,治療(原因)と治療効果(結果)の間にみられる因果関係を前提とした「根拠」をもとにして成立しており,そもそも因果関係が存在しないとすればEBMの存在すら否定されることになりかねない。同様に,いかにして因果の影響を推測するかは,衛生・公衆衛生においても中心的な問題となっており(2),政策決定がなされる際にも因果理論に関する科学的知識を有することは必要なことであろう(3)。このように,医学の様々な分野において因果推論は重要な課題となっているが,この際に必要となるのが疫学理論である。疫学は,人のデータを収集・解析し,病因学ないしは疾病予防における因果推論を行う際の具体的方法論と論理を提供する学問である(4)。事実,疫学研究の主たる目的は因果律ないしは因果関係の解明そのものであり,サーベイランスを目的とする古典的な疫学研究を除いてすべての疫学研究は因果推論を目的としているのである(2-4)。しかし,多くの疫学研究において因果推論上の問題点が指摘されている。本稿ではそれらの問題点のうち,因果理論の観点から研究仮説が明確に定義されていないことを取り上げ(5),反事実(counter-factual)モデルを用いてこの点を考察する。このモデルを活用することにより,衛生・公衆衛生の現場,研究での議論が明瞭なものとなることが期待される。なおここに論じることは反事実モデルをはじめ,アウトカムをイベントとする自然科学一般の因果関係の問題であり,医学,疫学にとどまらない議論である。

医学における因果推論 第一部. 日本衛生学雑誌.[10]越治鈴木, 裕和小松, 貴志頼藤, 英二山本, 弘幸土居, 敏秀津田. 医学における因果推論 第一部. 日本衛生学雑誌. 2009;64(4):786-795. doi:10.1265/jjh.64.786

医学における因果推論 第二部

越治鈴木, 裕和小松, 貴志頼藤, 英二山本, 弘幸土居, 敏秀津田. 医学における因果推論 第二部. 日本衛生学雑誌. 2009;64(4):796-805. doi:10.1265/jjh.64.796

衛生学のみならず医学全般において,疾病などの健康アウトカムに関する因果関係(causality)を同定し,妥当な仕方で調査し推論することは中心的な課題となっている(1)。妥当な因果推論(causal inference)を行うためには,研究仮説を明確な因果理論(causal theory)に基づいて定義することが必要である(2)。この際に,因果推論における反事実(counterfactual)モデルを正しく理解し,研究目的に沿った仕方で研究仮説を定義することは重要な点であろう(2)。このように明確に定義された研究仮説を検証する際には,適切な研究デザインを用いて,系統誤差や偶然誤差を最小限にすることが求められる。ほとんどの場合,ある特定の疾患リスクファクターに曝露することは,複数の疾患リスクファクターに曝露することと関連していることが知られている。そのため,特定のリスクファクターが特定の疾患に及ぼす因果の影響を推論する際には,交絡バイアスの可能性を考察する必要がある。多くの場合,疾患リスクファクターへの曝露をランダムに割り付けることは不可能であるため,いかにして交絡バイアスを最小限にとどめるかという点が主な関心事として議論されてきた。しかし,考慮する状況が複雑になればなるほど,交絡因子や共変量を含めた研究仮説を明確にまたわかりやすい方法で提示することは困難となる。また,モデルを構築するにあたって,調整するべき共変量を適切に選択することも難しくなるであろう。調整する共変数が少なすぎる場合でも,また多すぎる場合であっても,妥当な因果の影響を捉えることができないため,この点は因果推論において重要な問題となっている(3)。このような問題は,因果推論を基盤とした思考で研究仮説が明確に定義されていないことや,研究仮説を明確に提示することがなされていないことに起因する。研究仮説を明確にわかりやすい仕方で提示する上で,反事実モデルとは別のモデル,すなわちグラフィカルモデルを用いることは有用である。本稿では,グラフィカルモデルのうちdirected acyclic graph(DAG:非巡回有向グラフと訳される。通常は「ダグ」と呼ばれる)に焦点を当てて,因果推論においてグラフィカルモデルがどのように日常的に用いられるのかを提示する(4-9)。DAGは,因果推論のモデルの中でも,とりわけ研究者間の議論を容易にする簡便なツールとして認識されており,今世紀に入った頃から,国際学会,研究会でも頻繁に用いられるようになっている。また,ハーバード大学やノースカロライナ大学をはじめとする公衆衛生大学院でも,疫学理論の中でDAGの講義が行われるようになっている。加えて,2008年に出版されたModern Epidemiology第三版の中でも,DAGは総論として1章を割いて扱われている(4)(脚注1)。DAGを用いることにより,研究プロトコールの修正にも柔軟に対応することが可能となり,研究結果を容易に理解する助けとなる。しかし,本邦においてDAGは十分に活用されているとは言い難く,医学分野においてDAGを紹介する総説論文も皆無である。本稿では,DAGを構築するために必要とされる基本的な知識を概観し,因果推論において,交絡要因の選択と整理および仮説の具体化にDAGが有用かつ簡便であることを提示する。また,共変量を十分に考察することなく交絡要因候補(potential confounder)としてモデルに投入することの問題点を提起する(10)。

医学における因果推論 第二部. 日本衛生学雑誌[11]越治鈴木, 裕和小松, 貴志頼藤, 英二山本, 弘幸土居, 敏秀津田. 医学における因果推論 第二部. 日本衛生学雑誌. 2009;64(4):796-805. doi:10.1265/jjh.64.796

武井壮さん動画 (街録ch)

第一部

街録ch-あなたの人生、教えてください-. 武井壮39歳 無名の新人時代/SMAP中居正広の前で一世一代の大勝負/.; 2020. Accessed March 12, 2021. https://www.youtube.com/watch?v=sWR92b6Qd2U

第二部

街録ch-あなたの人生、教えてください-. 武井壮・西麻布のバーに潜伏し…/石橋貴明、極楽とんぼ山本、M- 1王者アンタ柴田と/.; 2020. Accessed March 12, 2021. https://www.youtube.com/watch?v=JqkhCxka-Vg

第三部

街録ch-あなたの人生、教えてください-. 武井壮・坂上忍との因縁/末期癌で若くして他界した兄の想いを背負い芸能界へのリベンジ.; 2020. Accessed March 12, 2021. https://www.youtube.com/watch?v=PcfMClWeLf4

References

References
1 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 疫学・衛生学分野. Accessed March 12, 2021. http://www.unit-gp.jp/eisei/wp/?page_id=298
2 ひろゆき, Hiroyuki Nishimuraさん (@hirox246) / Twitter. Twitter. Accessed March 12, 2021. https://twitter.com/hirox246
3 武井壮さん (@sosotakei) / Twitter. Twitter. Accessed March 12, 2021. https://twitter.com/sosotakei
4 ひろゆき, hiroyuki. 【ひろゆき】サルは同じ身の丈どうしで遊ぶ2。WALBERGEMを呑みながら。2021/02/21 D22.; 2021. (27:30から) Accessed March 12, 2021. https://youtu.be/qW7EN1F5SW8?t=1650
5 裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第1回 臨床研究における疫学と統計学(疫学総論). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(5):288-293. doi:10.3893/jjaam.20.288
6 裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第2回 疫学用語の確認と論文の読み方(疫学各論1). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(6):338-344. doi:10.3893/jjaam.20.338
7 裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第3回 研究仮説の立て方とDirected Acyclic Graph(疫学各論2). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(7):397-403. doi:10.3893/jjaam.20.397
8 裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第4回 バイアスの考え方,結果の解釈の仕方(疫学各論3). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(9):794-800. doi:10.3893/jjaam.20.794
9 裕和小松, 越治鈴木, 弘幸土居. 第5回 臨床研究における統計学の役割(疫学各論4). 日本救急医学会雑誌. 2009;20(10):851-859. doi:10.3893/jjaam.20.851
10 越治鈴木, 裕和小松, 貴志頼藤, 英二山本, 弘幸土居, 敏秀津田. 医学における因果推論 第一部. 日本衛生学雑誌. 2009;64(4):786-795. doi:10.1265/jjh.64.786
11 越治鈴木, 裕和小松, 貴志頼藤, 英二山本, 弘幸土居, 敏秀津田. 医学における因果推論 第二部. 日本衛生学雑誌. 2009;64(4):796-805. doi:10.1265/jjh.64.796

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