島根大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座

当科の特色

診察内容

当科では耳科手術、めまい、平衡、神経耳科、顔面神経麻痺、味覚、嗅覚、鼻副鼻腔疾患、アレルギー性鼻炎、口腔咽頭疾患、喉頭・気管·食道疾患、甲状腺·副甲状腺外科、小児耳鼻姻喉科、顔面外傷、頭頸部悪性腫瘍の集学的治療など耳鼻咽喉科・頭頸部外科全般を幅広く扱っています。さらに、難治性の疾患としてめまいに対する診断、治療、また、アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法や近年難病に指定された好酸球性副鼻腔炎に対する治療・研究を行っています。

診療体制

外来診療としてめまい、難聴、アレルギー性鼻炎、好酸球性副鼻腔炎、副鼻腔炎、滲出性中耳炎、睡眠時無呼吸症候群、頭頸部腫瘍など専門外来を設置しています。病棟診療は主に手術患者さんを幅広く受け入れており耳科手術、鼻科手術、頭頸部腫瘍(悪性腫瘍)の手術を中心に耳鼻姻喉科領域のすべての手術に対応できるようになっています。

特色

耳疾患(中耳・外耳)

小児の急性中耳炎や滲出性中耳炎に対して、薬物療法で効果の得られない症例や隣接臓器に合併した疾患(アデノイド増殖症、扁桃肥大、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など)がある場合には、合併症の治療も同時に行い、必要に応じ鼓室ドレ一ンチューブ留置術や鼓膜切開術といった外科的治療を行い、聴力の改善や後遺症の防止に努めています。慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎に対しては、顕微鏡下での鼓室形成術を行っておりますが、隠れた部位での病変の確実な除去を目的として、耳用の硬性内視鏡での観察を併用し良好な成績を得ています。

内耳・顔面神経・平衡機能障害

感音難聴に対し精密検査を行い治療方針を決定し、突発性難聴などの急性感音難聴に対し、入院の上ステロイド療法や循環改善剤の点滴による治療を行い、症状の改善に努めています。
顔面神経麻痺については、血液検査、顔面神経機能検査、電気生理学的検査、また画像検査を駆使して原因や障害の程度、障害部位診断を行い、治療法を決定しています。保存的治療にて改善しない症例に対しては、顔面神経減荷術を行い予後の向上を目指しています。
平衡機能障害に対しては、電気眼振計や赤外線CCDカメラによる詳細な平衡機能検査を行い、メニエール病や前庭神経炎などの末梢性めまいの診断と治療を行っております。また中枢性疾患についても神経内科と協力して機能評価を行っています。

難聴の精密診断と治療

新生児聴覚スクリーニングに対し、聴性脳幹反応(ABR)や耳音響放射検査(OAE)などの精密検査を行い、言語獲得のための療育についても県下の関連施設と連携して行っています。難聴について補聴器が必要と判断した場合には、補聴器外来にて補聴器のフィッティングを行います。さらに原因不明の特発性難聴や自己免疫性難聴、騒音性難聴、音響外傷による感音難聴の精密検査を行います。

人工内耳埋め込み手術

補聴器を装用してもことばが聞き取れない高度の難聴の方に対して、人工内耳埋め込み術を行っています。手術で内耳にある蝸牛に細い電極を埋め込み、聴神経を電気的に刺激して、聴覚として認識できるようにします。手術は全身麻酔で行いますが、安全な手術、確実な電極の埋め込みを実現するため、全例に顔面神経モニターを使用しています。また、残存する内耳機能を温存すべく、細く柔らかい電極を使用するなど侵襲の少ない手術を行っています。術後の体外装置の調整(マッピング)についても対応可能です。

鼻・副鼻腔疾患

スギ・ヒノキ科花粉飛散期には県内各地でスギ・ヒノキ科花粉飛散数を毎日測定し、新聞、テレビ、インターネットにて情報を提供しています。花粉症に対する治療として、花粉の飛散開始前から薬を服用する初期療法の有効性が我々の独自の検討から証明され、あらかじめ患者さんにお知らせし、快適にシーズンを乗り切れるように治療を行っています。スギ花粉症の新しい治療として舌下免疫療法も行っています。慢性副鼻腔炎や鼻茸に対しては、保存的治療や手術侵襲の少ない鼻内内視鏡手術を行い良好な成績が得られています。ナビゲーションシステムを導入し鼻内内視鏡手術に併用することにより、更に安全な手術を行っています。

口腔・咽頭疾患

慢性扁桃炎や扁桃肥大などの疾患に対して全身麻酔下に安全な手術を行っています。

喉頭疾患

声帯ポリープや良性腫瘍、また前がん病変といわれている白斑症などに対しては顕微鏡下にて喉頭微細手術を行い、レ一ザー手術も併用しています。脳性麻痺や頭部外傷による後遺症などで誤唖性肺炎を反復する患者さんに対しては、誤堪性肺炎の回避と経口摂取を可能にする目的で気管食道分離術や喉頭全摘出術を行っています。

頭頸部腫瘍

頭頸部領域の悪性腫瘍に対しては、頭頸部がん取り扱い規約に基づいて、病期分類や組織学的分類に応じた集学的治療(手術療法、化学療法、放射線療法、免疫療法などを総合的に組み合わせた治療)を行っています。進行がん症例、高齢者や合併症を有するハイリスクの患者さんにおいても、詳細な検討を行い、拡大根治手術を行い、組織欠損部に対しては有茎筋皮弁あるいは遊離筋皮弁を用いて再建外科手術を行い、術後の形態や機能保持の観点や累積生存率などにおいても、良好な治療成績を得ています。

救急疾患

耳鼻咽喉科領域では種々の緊急疾患があり、適切かつ敏速な対応が要求されます。当科では常に緊急手術に対応できる準備を整えています。代表的な例として反回神経麻痺や高齢者や糖尿病などを有する患者さんでは重症化し治療が遅れると致命的になる疾患です。抗生物質の投与はもちろんのこと、排膿を目的とした迅速な手術治療を行なっています。