radiation-induced gangliocytoma
長嶋和郎の病理教室
発症
右頭頂葉症状である,左半側空間失認で発症した60代の患者さんです。グレード3あるいは4のhigh-grade gliomaを考えさせる画像です。
初回手術病理所見
- 初回手術では,subpial accumulationが著明なためanaplastic astrocytomaと診断された症例です
- 腫瘍の主体はdiffuse astrocytomaでsubpial accmulationが目立ちます
- oligodendrocytomaの要素も混在しています
- 軽度のatypical cellと軽度のvascular proliferationが見られます
- MIB-1 5%
- ganglion cellの増殖は見られません
2009年,初回手術検体の病理:左:軽度異型を示すglial cellのdiffuseな増殖が見られ、diffuse astroytomaに相当する所見 (HE x400) 右:perinuclear haloが目立つ場所も見られました (HE x400)
左:組織の周辺部に細胞が集積する傾向が見られ、subpial glial aggregationの所見です。細胞密度がやや高くanaplastic astrocytomaを思わせます。しかし、その直下の組織ではbland fibrous glial cellsがみられます (HE x200) 右: 腫瘍の一部にvascular proliferationが見られる部位があり、その周囲に軽度異型細胞が見られます (HE x200)
術後の経過
- 腫瘍摘出後に,放射線治療 54Gy/27frとテモゾロマイド化学療法 75mg/m2を受けました
- 非常に良好な経過でわずかな視野欠損以外の神経脱落症状なく日常生活を送っていました
放射線化学療法6年後の再発
手術後6年目に頭重感と視野欠損を来しMRIで急激な再発腫瘍増大を認めました
境界は明瞭な腫瘍で浸潤性格がなく,手術では全摘出が可能でした
再発腫瘍の病理像
- 一部にdiffuse astrocytomaにvascular endothelial proliferationと少数ながらanaplastic cellが見られ、anaplastic astrocytomaの再発としても矛盾しません
- しかし、腫瘍の大部分はganglion cell-like large and/or giant cellで、大きなganglion-like cellが多数密集してみられます
- このlarge cellはNeu-N, Neurofilament, に陽性、GFAP陰性でgangliocytomaの所見です
- MIB-1 indexを見ると前回の腫瘍では5%, 今回のgliomaの部分では8%ありますがgangliocytomaの部位では2%と低値です
左:多いな核と幅広い細胞質を有するganglion cell類似の細胞から成る腫瘍です (HE x200) 右:腫瘍細胞および腫瘍間質はNeurofilament 陽性細胞および陽性nerve fibersで構成されています (NF x200)
左:大きなganglion-like cellはNeu-N陽性でganglion cell cellであることを示している (Neu-N x200) 右:Ganglion cellの周囲にはGFAP陽性glial filamentが見られるが、NF陽性線維に比べるとその密度は低い (GFAP x200)
MIB-1は低値で2%程度。陽性細胞は血管周囲細胞や介在するglial cellで、ganglion cellに陽性核は見られません (MIB-1 x200)
考案
- 放射線による腫瘍組織の変化の可能性が強く示唆されます
- 再発腫瘍では稀なganglion cellの増殖がみられます
- radiation-induced gangliocytomaといえます
- 多少なりともanaplastyを伴うastrocytic tumor(あるいはoligoastrocytic tumor)から,ganglion cellが目立つgangliocytomaへの分化と捉えられます
differentiation と de-differentiation
- gliomaは再発を繰り返すと,腫瘍組織の構造特性を失い細胞形態が分化度のより低い未分化悪性腫瘍となっていくのが通常です
- グレードが上昇してde-differentiationと言えます
- この例では,grade 3 anaplastic gliomaから,grade 1 gangliocytoma(あるいはgrade 3 anapestic ganglioglioma?) へとdifferentiationしています