マイクロアレイ染色体検査について

■ マイクロアレイ染色体検査(D006-26 染色体構造変異解析)に関するQ&A

マイクロアレイ染色体検査普及のための産学連携コンソーシアムより

原理、技術

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結果を出すにあたり、どの様な検査(解析)をしているのでしょうか?網羅的に解析をしているのか、疾患特異的な遺伝子のみを見ているのか?遺伝子異常の場所を特定して検出しているのですか?
染色体全体を網羅的に解析をしています。特定の疾患のみを検出するようにはデザインされていませんが、検査対象としては特定疾患群に関与する遺伝子が含まれる領域のゲノムのコピー数変化(CNV)を報告します。領域によっては複数の遺伝子が含まれることもありますが、特定の領域に限定してCNVを検出するわけではありません。
とある遺伝子異常で、染色体をまたいで重複があるが、それも検出可能ですか?
質問内容が、遺伝子の一部が増幅され、その増幅が別の染色体領域に挿入転座しているという事であれば、検出可能です。
プローブの位置情報は公開されていますか?
IVDの本製品に関して位置情報など一切公開はされていません。
検査結果以外に追加情報データとかはもらえますか?
正式な報告書は紙媒体でのご提供となります。
それ以上については各検査センターにお問い合わせください。
本検査の生のスキャンデータを取得並びに所有している研究用機器のスキャナーで解析する事は可能ですか?
アレイには、他患者検体データも載っている可能性もあり倫理的にも提供は不可能です。
また本品でのスキャンデータは専用医療機器登録されたスキャナーの専用ソフトウェアでのみ解析可能であり、研究用機器付属のソフトでの解析はできません。
Bed fileの中身の情報はなんでしょうか?
CNVが見つかった染色体の領域情報(最小始点と最小終点の位置)を示しております。
このアレイは、一つのアレイでCGHとSNPの両方を検出しているのでしょうか?
一つのアレイで両方のプローブを配置し、検出しています。
保険はアレイCGHとなっているが、SNPアレイも保険適応になるのか?別の検査ではないのか?
一つのアレイで両方のプローブを配置し、検出するキットがIVDとして承認をうけています。こちらのキットを用いて検査をすることが保険算定の前提となりますので、CGHおよびSNPアレイの結果を保険の検査としてご提供しています。
メチル化が原因の疾患は検出できますか?
出来ません。あくまでもCNV,cnLOHの変化を検出しています。
過去に抽出したDNAから検査をすることは可能ですか? 添付文書上はEDTAと記載ありますが、過去の血液は不可とする記述はありませんでした。
原則として臨床検査として保険適用とするには、患者の末梢全血から採取したゲノムDNAである必要があります。
検査受託するかどうかは各センターにお問い合わせください。
なお添付文章上DNAは、血液由来であり、EDTA採血管で採血された血液由来でQIAamp DNA Blood Mini Kitで精製されている必要があります。
血液検体の採血管が抗凝固剤がEDTAでなくてはいけない理由を教えてください。
本品の開発、臨床試験での検証、並びに薬事申請データにおいて、EDTA採血管で採血された血液由来DNAを使ってデータ取得をしており、他の抗凝固剤での検証は行っていない為、ご不便をおかけしますがEDTA採血管をご使用お願いいたします。
また一般論となりますが、DNA精製目的の場合に採血管はEDTA採血管を使用する事が一般的でございます。
ゲインは20kb、ロスは10kbと乖離しているのはなぜでしょうか。
ソフトウェアの閾値の設定によってそのようになっております。しかしながら詳細は開示されておりません。

保険、対象疾患

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患者両親の検査は保険算定できますか?
算定できません。
アレイCGH法は臨床所見から何らかの染色体の構造異常が疑われる患者にたいして保険適用可能です。
ご家族の検査が必要と考えられる場合、ご施設の臨床専門医も含めたグループで検査方針をご相談ください。
両親が保険算定不可の際、保険診療外で検査を受託してもらえますか?
検査受託は可能です。
過去に他検査で診断できていない患者も多く、マイクロアレイ染色体検査をすべきか悩んでいます。想定される問題はありますか?
主治医の判断でアレイCGH法の検査を行う事は可能です。しかしアレイCGH法で検出できない変異(SNVや、検出限界以下のCNV, cnLOHなど)が原因となる疾患も存在する事を理解していただく必要があります。
Gバンド法は使用されなくなるのでしょうか? 先天性疾患を疑う際に、マイクロアレイ染色体検査のみの実施で良いのですか? マイクロアレイが第一選択となるのですか?
転座や逆位などの構造異常は、マイクロアレイ染色体検査では検出できません。
診療において実施するマイクロアレイ染色体検査のガイダンスによれば、「臨床的に特定の染色体異常症が強く疑われる場合(ダウン症候群や18トリソミー症候群など)は、染色体G分染法の実施が推奨される。」との記載がされています。
臨床所見に従って、マイクロアレイとGバンドを使い分けることを想定しています。
対象疾患が絞られた背景と、対象疾患以外の場合はどうなるでしょうか?
保険収載するにあたり、対象疾患のリスト化が必要となります。類縁疾患含めた対象疾患が疑われるという記載がレセプト上、必要となります。レセプトでの記載が困難な疾患名称が多く存在する場合には、診療報酬改定時に学会などから疾患追加などの要望を上げる事で対応可能な模様です。
遺伝カウンセリング加算を取っていないが、遺伝カウンセリング加算をとっている施設と連携している場合は、保険適用されますか?
保険適用に関しては遺伝カウンセリング加算を持っている施設が検査依頼できる施設要件となります。
遺伝カウンセリングの加算は取れますか?
加算できます。詳細は令和2年度診療報酬改定の内容で以下のようになります。
区分番号D006-4に掲げる遺伝学的検査又は遺伝性腫瘍に関する検査(区分番号D006-19に掲げるがんゲノムプロファイリング検査を除く。)を実施し、その結果について患者又はその家族等に対し遺伝カウンセリングを行った場合には、遺伝カウンセリング加算として、患者1人につき月1回に限り、1,000点を所定点数に加算する。
保険適用の通知書に記載のある「腎嚢胞-糖尿病症候群」という疾患は、DECIPHERのCNV症候群のどれに該当しますか?
DECIPHERのCNV症候群のRCAD (renal cysts and diabetes)です。
既存のFISH検査との使い分けについて。
疾患の特定が困難な場合にマイクロアレイ染色体検査を最初に使用する事が推奨されます。
一方で、特定の症候群が臨床所見より疑われ該当疾患に対してFISH検査が利用可能であれば、該当疾患のFISH検査を利用する事も推奨されます。
保険で59疾患およびその類縁疾患を対象となっているが、対象となる59疾患以外が検出されることはありますか?
あります。染色体全体を網羅的に解析をしています。特定の疾患を検出するようなデザインにはなっていません。

結果、解釈

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網羅的に検査していると仮定して、対象疾患以外の異常が見つかった際、報告対象となるのか?
保険適用の留意事項として、本検査は対象の59 疾患および類縁疾患のいずれかを疑う患者に対して実施することとなっています。ただし、これらは現時点でのDEVIPHERに掲載されている疾患を抽出しただけなので、それ以外の希少なCNV/cnLOH関連疾患も検出することは想定されます。病名として報告する事はありません。
対象疾患に関係しない情報でも、検出されれば報告されるか?
59疾患以外に関連するCNVおよび良性CNVも報告されます。
この検査はあくまでも染色体の構造異常を検出し、影響を受けた領域とその領域に存在する遺伝子群をリスト化し報告する検査です。その為、検査結果で何らかの変化の報告された場合でも対象疾患が見つからない場合はあり得ます。これは医師の判断となります。
プラダ―ウィリ症候群の片親性ダイソミーの場合、どのようなレポートとなるのか、サンプルがあれば見せて欲しい
個々の対象疾患に関するレポート事例は提供していません。
検査センター毎でレポート内容は違いますか?
学会・試薬メーカー・検査センターで統一する活動を行っています。
検査結果のデータは同等です。それ以外の報告書内容については各センターにお尋ねください。
患者が男性(XY)と思って、コントロールXYで検査を行って、実際はXXXだった場合にはY染色体がないケースで、報告はどのようになりますか?
XYのコントロールでとったらXXXのY染色体は大きくロスになります(LRはー1よりもっと小さくなることが予想されます)。ロスも報告されます。
患者検体とコントロールが一致してる限り、性染色体についても変化も報告される事となります。
性腺異常が疑われる場合は、事前にG-bandを実施した方がいいか? 患者が女性(XX)と思って、コントロールXXで検査を行って、実際はXYだった場合に報告はどのようになりますか?
Y染色体の情報についてはレポートから出力されません。
今回の場合は、X染色体のロス(1コピー)のみ報告されます。
このようなケースがあるため、先にG-band法で染色体構成を確認すると確実にコントロールを選択することが可能です。
生データを送付していただき、自分が持っているアジレントの研究用機器のソフトウェアで解析する事は出来ますか?
オリジナルの生データの医療機関への送付は行っておりません。また医療機器から出力されたデータは、研究用のソフトウェアでは解析できません。
結果の解釈を行うために、臨床側が利用可能なツールやデータベースはどのようなものがありますか?
またDECIPHERプロジェクトが定義している66疾患(CNV syndromes)の欠失領域とサンプルの欠失範囲のオーバーラップを検出するツールとして、慶應大学臨床遺伝学センターが公開されているツール(マイクロアレイ染色体検査の結果解釈の補助ソフトウェアツール CAS, https://cmg.med.keio.ac.jp/arraryclassified/)が利用可能です。

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