日本マイコプラズマ学会

 

日本マイコプラズマ学会 理事長ご挨拶

理事長を拝命いたしました長崎大学の泉川公一です。
2020年は人類の感染症の歴史において、忘れられない年となりました。中国武漢から始まったとされる新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、瞬く間に世界中に拡がり、多くの感染者と未曾有の死者がでております。世界中の研究者が様々なアプローチを行い、感染収束にむけた努力が行われています。このような年に、感染症を専門としている立場で、臨床現場に身を置き、目の前で患者さんを診ておりますと様々な学びがあります。さらに、自分の感染症診療、対策の専門領域の知識をフルに活用することで様々な貢献ができることも実感しております。

この新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、ほかの流行する感染症にも大きな影響を与えているようです。マイコプラズマ感染症についても、2020年は我が国において、その報告数が激減しているのはご承知の通りです。このことは、今後、マイコプラズマ感染症の臨床、疫学や薬剤耐性などの問題にどのような影響を与えてくるのでしょうか、このまま、流行することは無くなるのでしょうか、自然界においては、いつも我々の予想を超えた出来事が起こります。こういう局面をライブで経験することを非常に大事な機会だと捉えております。

マイコプラズマが1898年にウシの胸膜肺炎の病原体として発見されて120年あまりが経過いたしました。マイコプラズマおよび近縁微生物が、ヒトを含む動物、昆虫、植物に感染症を来すそのメカニズム、診断、治療などに関する研究は、日本マイコプラズマ学会の医学、獣医学、農学など幅広いご専門の会員の先生方によるご努力で、飛躍的に進み、新しい知見が得られてきております。しかしながら、まだ、解決すべき課題は多く残されております。「one health, one world」と言われて久しいですが、簡単に言いますと、人の健康を考えた時に、動物や環境の問題も併せて考えて取り組むべきである、という考え方です。マイコプラズマおよび近縁微生物の研究は、まさに、この「one health, one world」を実践しているものと思います。様々な分野の研究者で構成される本学会における活動は、研究者間に刺激を与え、研究が活性化され、新しい発見へとつながっていくものと思います。
会員の皆様におかれましては、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、情報交換もままならない状況ではありますが、今後も益々の活発なご活動を続けて頂き、本学会へのご支援、ご協力をお願い申し上げます。

2021年4月1日
日本マイコプラズマ学会
理事長  泉川 公一