日本マイコプラズマ学会 理事長ご挨拶
理事長を拝命いたしました法政大学 生命科学部の大島研郎です。理事長就任にあたって本学会の歴史や活動についてご紹介させていただきます。
日本マイコプラズマ学会は、マイコプラズマやその近縁微生物を対象として学際的な活動を行う国内唯一の学会です。マイコプラズマはヒトおよび家畜に感染症を引き起こす病原細菌であり、近年では2012年に世界中でマイコプラズマ肺炎が大流行して問題となったことでも広く知られています。本学会は、こうしたマイコプラズマ感染症に焦点をあてたマイコプラズマ研究会として1974年に設立されたのが始まりであり、1982年に日本マイコプラズマ学会と改名されました。約50年の歴史を持ち、学術集会を年1回開催するほか、若手研究者の支援や学会雑誌・書籍の刊行など、さまざまな活動を行っています。
日本マイコプラズマ学会の特徴の一つは、医学・臨床分野との深い関りです。本学会はマイコプラズマ肺炎やウレアプラズマ等による性感染症の診断・治療に加えて、生物製剤や再生医療製品の安全性試験など、医学・臨床分野に関わる医師や研究者が会員となっています。2016年には「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」を世界に先駆けて発表し、マイコプラズマ肺炎の診断や治療に貢献してまいりました。また、本学会は対象となる研究分野が医学・臨床分野のみならず、獣医学、農学、基礎生物学など、極めて多岐にわたる点がもう一つの特徴です。宿主への感染機構やユニークな運動性の分子メカニズム、マイコプラズマを利用した合成生物学、家畜に感染するマイコプラズマや植物に感染するファイトプラズマなど、多岐にわたる学術分野の研究者が会員となっています。
このように一言でマイコプラズマと言ってもさまざまな切り口がある微生物であり、異なる複数の分野の研究者が多様なアプローチでマイコプラズマの謎に迫る本学会は、まさに異分野交流や学際的を体現したような学会であると常日頃から感じております。会員の皆様によるご努力により、この50年でマイコプラズマに関する理解は飛躍的に進みました。これからも医学・臨床分野の本流とともに多様な分野を大切にして、この魅力的な学会が盛り上がように微力ながら尽力してまいります。
会員の皆様におかれましては、今後も益々の活発なご活動を続けて頂き、本学会へのご支援、ご協力をお願い申し上げます。
2024年6月1日
日本マイコプラズマ学会
理事長 大島 研郎