社会的選択理論
(しゃかいてきせんたくりろん social choice theory)
社会集団の成員が示す選好(個人の選択)と、
その集団による決定(社会の選択)との関係についての研究。
この分野で最も知られている不可能性定理を定式化した
アロー(この人もノーベル経済学賞受賞者)が
その代表者として知られる(『社会的選択と個人的評価』
Social Choice and Individual Values, 1951)。
以下は、J・エルスターによる
社会的選択理論の特徴づけである。
- (誰を含めるかという問題が生じないように)行為者の数は所与とする
- (議題操作agenda manipulationの問題が生じないように)選べる選択肢も所与とする
- 行為者の選好も所与であり、政治的過程において変更しないものとする(また選択肢とは因果的に独立)
- 選好は序数的であり、各人の選好の強さは比較できないものとする
- 個人の選好の順序は完全に決まっており、かつ推移性をもっているものとする
このような前提に基づき、社会的選択理論は選択肢の社会的選好順序を決定する。
この順序づけは次の基準を満たす必要がある。
- 個人的選好と同様、完全で推移的である
- パレート最適であること(全員が選好しているものをそうでないものよりも優先すること)
- 二つの選択肢に関する社会的選択は、それ以外の選択肢に関する個人の選好の変化とは無関係に行なわれること
- 社会的選好順序はパレート最適を尊重するだけでなく、なによりも個々人の選好を尊重し反映すること(匿名性--各人の選好は平等、非独裁性、リベラリズム--私的領域の保障、戦略プルーフ--偽の選好を示すことは得にならない)
このような条件を満たす社会的選択は無理であるというのがアローの不可能性定理
である。詳しくはそちらの項を見よ。
08/Jul/2003
参考文献
- Jon Elster, `The Market and The Forum: Three Varieties of Political Theory', in Debates in contemporary political philosophy: an anthology (ed. by Derek Matravers and Jonathan Pike, Routledge, 2003), 325-341.
326-7のあたりを参照した。
KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Tue Jan 15 02:02:09 2002