ショーペンハウアー

(しょーぺんはうあー Schopenhauer, Arthur)


ドイツの哲学者(1788-1860)。 プラトンカントの哲学、 およびインド哲学や仏教などの東洋思想を取り入れ、 ヘーゲルの楽観的な哲学思想に対抗して 悲観的な哲学思想を構築したとされる人。 主著『意志と表象としての世界』(Die Welt als Wille und Vorstellung, 1818, 1844)。

ショーペンハウアーはカントの現象の世界Phenomenonと物自体の世界Noumenon (ショーペンハウアー語では表象の世界と意志の世界)の区別を引き継ぎ、 現象の世界では充足理由律 (現象界ではすべての物体は他のすべての物体との関係によって決定される) が成立しているとする。

他方、物自体の世界は、意志でできている。 このことは、自分自身の意志を直接的に経験することを通じて知られる。 ショーペンハウアーによれば、木の成長も、人間の行為も、 すべて意志の現われであり、万物の本質は意志だとされる。 また、物自体の世界には複数という概念が適用されないので、 この意志は単一である。 イデアと個物の関係と同様、 一つの意志が現象界におけるあらゆる事物を生み出す。

この盲目的な意志は人間においてはたえず欲求を生みだし、 人間をつねに不満足の状態におく。 しかも人間の知性がませばますほど、苦の量は快の量にまさる。 それゆえ、人間は他人との衝突を回避するために利己主義を否定し、 さらには生きる欲求それ自体をも否定しなければならない。 このようにショーペンハウアーは意志の否定を説き、 禁欲的な倫理を主張する。

もっとも、個人的にはおもしろおかしい人生を送っていたようで、 ヘーゲルの授業の時間に自分の授業をぶつけてみたり、 裁縫婦を階段から投げ落として長い間慰謝料を払ったりしていたようである。

(17/May/2000)

参考文献


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Wed May 17 01:02:12 2000