基本財

(きほんざい primary goods)


ロールズの用語。 権利、自由、(雇用や教育の)機会、収入や富など、 どんな生き方をするにしてもかならず必要になる事物を指す。 ロールズによれば、 政府は、各人の人生設計に関しては口出しをせず、 これらの基本財を市民に平等に配分せねばならない。 ただし、 ある程度の不平等を認めることにより社会の底辺が底上げされる場合にかぎり、 不平等な配分は許される。 たとえば、ビル・ゲイツが金持ちになることにより、 米国社会がより豊かになり、 彼のおかげで社会の底辺のいる人々の暮らしむきがよくなるならば、 ビル・ゲイルが他の人よりも金持ちになることは社会的に認められる。 さらに詳しくは正義の二原理の項を参照のこと。

上に挙げた基本財が社会的基本財 (social primary goods)と呼ばれるのに対し、 健康や活力や知性や想像力といった要素は自然的基本財 (natural primary goods)と呼ばれる。 これらは要するに生まれつきの才能とか能力といったものである。 これらの基本財は、 社会のあり方によって間接的に影響を受けるものの (たとえば教育機関や病院などの設備)、 社会的基本財の場合のように直接的に配分できるものではない。 しかし、これらの基本財も、社会的基本財と同様に、 社会の底辺を底上げする場合にかぎり、不平等な配分が許される。

ロールズは社会的基本財の平等な配分に重点を置き、 自然的基本財の配分、 とくに障害者の問題を十分に考察していないという批判があるが、 これについてはまた。

機会均等論の項も参照せよ。

参考文献

12/Apr/2001


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Mon Mar 24 03:47:37 JST 2003