(せいぎのにげんり the two principles of justice)
First Principle -- Each person is to have an equal right to the most extensive total system of equal basic liberties compatible with a similar system of liberty for all.
Second Principle -- Social and economic inequalities are to be arranged so that they are both:
(a) to the greatest benefit of the least advantaged, and
(b) attached to offices and positions open to all under conditions of fair equality of opportunity.First Priority Rule (The Priority of Liberty) -- The principles of justice are to be ranked in lexical order and therefore liberty can be restricted only for the sake of liberty. [...]
Second Priority Rule (The Priority of Justice over Efficiency and Welfare) -- The second principle of justice is lexically prior to the principle of efficiency and to that of maximizing the sum of advantages; and fair opportunity is prior to the difference principle. [...]John Rawls, A Theory of Justice revised edition, Belknap Harvard, 1999, p. 266
ロールズの用語。 原初状態におかれた人々、 すなわち公平無私な見地から望ましい社会のあり方について考えた人々が 選ぶとされる原理。 第一原理は、原則的に各人は平等な自由が与えられるべきだと述べ、 第二原理は、社会的、経済的な不平等が許されるべき場合を述べる。
第一原理は自由原理(The Liberty Principle)と呼ばれ、 「各人は、他人の同様な自由と両立するかぎりで、 最大限の平等な基本的自由(basic liberties)を亨受する権利を持つ」 という内容。基本的自由とは、参政権、言論の自由、人身の自由、 私的所有権などである。
第二原理は二つに分かれ(それゆえ、「正義の三原理」と茶化す人もいる)、 社会的、経済的不平等が許されるのは、 (a)もっとも恵まれていない人に最大限の恩恵が与えられる場合と、 (b)経済的に恵まれた役職や社会的立場に対して、 各人に公平な機会が平等に与えられている場合に限られる。 (a)を格差原理(the Difference Principle)、 (b)を公平な機会平等原理 (the Fair Equality of Opportunity Principle)と呼ぶ。 格差原理によって、金持ちにより多く税金を課す累進課税制度が正当化されうる。 しかし、社会の底辺にいる人の生活水準を底上げする形でしか 不平等は許されないので、 功利主義の最大の欠点とされる少数者の犠牲の問題が克服されるとする。 また、公平な機会平等原理によって、 大統領がより多くの給料を受けとることが正当化されうる。
これらの原理のあいだには、優先順位があり、 自由原理>公平な機会平等原理>格差原理という順でつねに優先される (lexical priority)。 自由原理が一番優先されるというのは、 自由はつねに経済的考慮に優先するということである。 たとえば、かりに社会のもっとも貧しい人々は、 自由であるよりも奴隷にした方がより豊かな暮らしができるとしても、 彼らから自由を奪うことは許されない。 (これにより、功利主義の欠点とされる基本的権利の侵害が回避される)
(02/Feb/2001; 11/Apr/2001追記)