(じつぞんしゅぎ existentialism)
`You know what the scariest thing is? To not know your place in this world; to not know why you're here. That's just an awful feeling.'
---Elijah Price, in Unbreakable
ここに幾人かの人が鎖につながれているのを想像しよう。 みな死刑を宣告されている。 そのなかの何人かが毎日他の人たちの目の前で殺されていく。 残った者は、自分たちの運命もその仲間たちと同じであることを悟り、 悲しみと絶望とのうちに互いに顔を見合わせながら、 自分の番がくるのを待っている。 これが人間の状態を描いた図なのである。
---パスカル
私の一生の短い期間が、 その前と後との永遠のなかに〈一日で過ぎて行く客の思い出〉のように呑み込まれ、 私の占めているところばかりか、私の見るかぎりのところでも小さなこの空間が、 私の知らない、 そして私の知らない無限に広い空間のなかに沈められているのを考えめぐらすと、 私があそこでなくてここにいることに恐れと驚きを感じる。 なぜなら、あそこでなくてここ、あの時でなくて現在の時に、 なぜいなくてはならないのかという理由は全くないからである。 だれが私をこの点に置いたのだろう。 だれの命令とだれの処置とによって、 この所とこの時とが私にあてがわれたのだろう。
---パスカル
しかし、何故こんな事になったのだろう。分らぬ。全く何事も我々には判(わ か)らぬ。理由も分らずに押付けられたものを大人しく受取って、理由も分ら ずに生きて行くのが、我々生きもののさだめだ。
---中島敦『山月記』
"Choice is the essence of ethics: without choice there would be no ethics."
---Margret Thatcher
You must choose, brothers, you must choose.
It takes five seconds, five seconds of decision.---The MC5, 'Ramblin' Rose'
第一次世界大戦後から第二次世界大戦後にかけて、 ヨーロッパを中心に世界中で流行した思想。 合理的、体系的、調和的な世界観を否定し、 この世の中に「放り込まれた」人間の存在の不条理さ、 理不尽さを強調する。 代表的な実存主義者は、ハイデガー、サルトル、 バルト、ティリッヒ、ブルトマンなど。 それ以前のパスカルやキルケゴールや ニーチェも実存主義的な哲学者と 見なされる場合がある。
彼らによれば、たとえば、 確実な知識を得られないこととか、 神の存在を理性によっては知ることができないこととか、 自由であることとか、 死すべき存在であることなど、 人間はとんでもなく不条理な状況のもとで生きている。
こうした状況において人間がどう行為すべきかについては、 各人ごとに言うことが異なっているので、 それについてはまた今度。
(17/July/2000)
上の引用は以下の著作から。