悪魔の代弁者

(あくまのだいべんしゃ devil's advocate [Advocatus Diaboli])

すべての教会の中でもっとも不寛容なローマ・カソリック教会でさえ、 聖人の聖列加入の際にすら、「悪魔の代弁者」を招き入れ、 その声にしんぼう強く耳をかたむけるのである。 人々の中でもっとも聖なる人々でさえ、 悪魔が述べうる彼にとって不利なことがすべて知られ、 そしてはかられるまでは、 死後の栄誉を認められぬものらしい。

---J・S・ミル


カトリック教では或る故人を聖列に加える際に、 誰かが「悪魔の代弁者」として指名されて、 その人が故人を可能な限り非難する。 それでもやはり偉大な人物であることが示されれば、 晴れて聖人になれるそうだ。「列聖調査審問検事」とも訳される。 転じて、論争などであえて反論を唱える人もこう呼ばれることがある。

ミルは、 不寛容で知られるカトリックでさえも、 ある人が偉大な人物であったかどうかを確かめるためには、 非難を一切封じるのではなく、 かえってあらゆる非難を論駁することが最善の手段と考えているという例を挙げ、 言論の自由の重要性を説いている。

対話ソクラテス、 『自由論』の項も参照せよ。

ちなみに、わたしもなるべくこの役割を担おうと日々努めているが、 あまりむやみやたらとやると嫌われるので注意。

05/Feb/2002


上の引用は以下の著作から。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sun Sep 26 19:07:00 JST 2004