(あんすこむ Anscombe, Elizabeth)
アンスコムは、倫理的見地から、 ヒロシマとナガサキに係わったトルーマン大統領に オクスフォード大学が名誉博士号を授与するのに反対した。 彼女はまた避妊と人工妊娠中絶にも頑固に反対していた。 しかし、この保守性とは対照的に、 彼女は相当とっぴな女性でもあった。 まだ女性がズボンを履くのはめずらしい時代に彼女はズボンを履いており、 あるとき「ズボンを履いている女性はレストランに入れません」と言われ、 彼女はあっさりズボンを脱いでしまった。 彼女はまた口汚ないことでも有名で、パイプを吸っていた。
`Elizabeth Anscombe dies', in The Philosophers' Magazine,
vol. 14 (Spring 2001), p. 8.彼女(マリー・ミジリー)は1938年にsenior scholarとして サマーヴィル・コレッジに進学した。 同学年にはアイリス・マードックがおり、 二人はすぐに親友になった。 彼女の一学年上には、 のちにウィトゲンシュタインの一番弟子になるエリザベス・アンスコムがいた (ちなみに彼女は先週亡くなった)。 一学年下には道徳哲学者のフィリッパ・フットがいた。 今日フットは、「彼女(マリー)は本当に目立ってました」 と述べている。 ミジリーの考えでは、 戦時中は、オックスフォードで哲学を学ぶ女性にとって、 特別にすばらしい時期であった。 「若い男たちがえんえんやかましく騒いで女性の気を散らすことがなかったのが よかったのだと思います -- 本当に哲学をやりたいと思って勉強している人しかいなかったですし。 それに、将来がなさそうだったから、 就職のことを考えている人もいませんでした」
from `Mary, Mary, quite contrary' by Andrew Brown
in The Guardian Saturday Review (13/Jan/2001)「無実の人間への刑罰を招くような行為を考察の対象から完全に排除すべきか否か という問いが、開かれた問いであるとあらかじめ実際に考える者が誰かいるのであれば--私はその人と議論したいとは思わない。 その者はただ退廃した精神を露わにしているに過ぎないのだ」
---アンスコム「現代道徳哲学」
「哲学は、最初の最初から始めなければならない。」と、 戦後にエリザベスはアイリス(マードック)に言った、 「そして、最初の最初に辿りつくには、とても長い時間がかかるものです」
英国の哲学者(1919-2001)。 ウィトゲンシュタインの弟子の一人で、 哲学者ピーター・ギーチの妻でもある。
ウィトゲンシュタインの遺稿の編集に貢献したほか、 行為論における古典的著作である『意図』(Intention, 1957)を書いた。 また、`Modern Moral Philosophy'という有名な論文では、 近現代の義務や権利に基づいた道徳の議論は宗教(神の法)抜きでは 理解不能だからやめるべきで、 かわりにアリストテレスの ような徳倫理に戻るべきだと論じている。
13/Jun/2001; 14/Feb/2022追記
上の引用は以下の著作から。