呉市音戸町に初めて行ったときのこと

一日目


ご意見のある方は、kodama@socio.kyoto-u.ac.jpまたはメイルを送るまで。


 3月14日から16日まで、友人のグレッグに会いに、広島県の呉市の倉橋島に行っていた。以下は、その旅行の間、自分の手帳に書いたメモである。素人の紀行文ぐらいたちの悪いものはないと思うが、ひまな人はビールでも飲みながら読んで下さい。

 (追記)呉についてさらによく知りたい方は、KURE Area's Homepageをご覧下さい。


03/14/97

10:45

 家を出る。ほんとは朝8時に家を出るはずだったんだけど、寝坊したので、この時間になった。ウォークマンで音楽を聞きながら、歩いて駅に。途中で時計を忘れたことに気付く。

11:15

 JR摂津富田駅に到着。みどりの窓口で切符を買うのに15分かかる。窓口の人は、新しいコンピュータの操作の仕方をきちんと理解していないようだった。しっかり練習しとけってば。


 「京大哲学科」と記された学割をにぎりしめて、

「あ、あの、呉になるべく安く行きたいんですけど」

「はい。それで?どうやって(新幹線で、在来線で、〜経由で、など)行くんですか」

「あ、あの、それは、電車で」

などと受け答えしてしまうぼくは、「常識知らずの京大哲学生」というイメージを、また世に伝道してしまったに違いない。

 富田から呉まで、往復で9060円なり。(ただしこれは学割料金)

 普通に乗って、とりあえず大阪駅へ。(呉への行き方も、電車の時間も、全然知らない――)


 さて、以前にも書いたが、グレッグが今住んでいる、倉橋島の音戸というところは、外人が珍しい、というほど純日本的な、古風なところらしい。そんなところに、髪を伸ばして、ズボンに穴を開けた哲学的好青年が訪れるわけである。果たして彼らは、ぼくに物を売ってくれるのだろうか。


11:51

 大阪着。新快速に乗り換えて姫路へ向かう。


 須磨。海が見える。あいにく空はくもっているが。

 少し憂うつになる。(バイトもやめたしお金がないことを考えて)

 神戸大橋(明石大橋?)というのだろうか。ものすごく大きい橋が見える。くもりだが。

 そう言えば、昔一年間ほど、ここら(垂水区)に住んでいたとき、同級生でそれはそれはかわいい女の子がいたが、その子はその後どうしているんだろうか、などと考える。

 しばらくすると、ますます憂うつになってくる。天気のせいに違いない。やはり気候は人間の気分に大きな影響を与えるのである。

 うう。少し頭痛がする。


13:03

 姫路着。

13:05

 各駅停車三原行きに乗る。(乗り換え時に階段を走らされた)


 四両編成の列車。トイレまで付いている豪華車両である。

 そろそろお腹が減ってきたが、あいにくガムしかない。

 電車の壁に貼ってある路線案内図を見ると、どうやらこのまま三原まで行って、そこから呉線の電車に乗ればいいらしい。やれやれ。


 相生(あいおい)――こういうところにも家があって、車が走ってて、人が住んでるんだなあ、と妙な感心をする。(歴史上の人物について(ヒトラーなんかのビデオをテレビで見たりしたときに)、「ほんとに生きてたんだなあ」と実感するのに少し似ている)


 乗車券の確認(JRも大変なのだ――)。

 少し晴れてくる。わーい。

 乗務員室に車掌やら運転手やらが四人もいる。なぜそんなに多いんだ?

 風景がどんどん「日本昔話」的世界へと突入していく。

 よほど風のない日と見えて、先ほどからどの川を見ても、あたりの景色が鏡のように映っている。

 また、先ほどから白銀の屋根の日本式家屋をときどき見かけるが、あれはソーラーなんとかなのだろうか。それともただの悪趣味?


 そうだ。今日はホワイトデーとかいう日なのだ。やはり聖徒(セイント)ホワイトとかいう人がいらないことをした日なのであろうか?


14:30

 岡山通過。よく栄えた街。

15:05

 大分寝る。よく寝てきたんだけど…

 そろそろ福山。天気はやはりくもり。本当に、「せーんろは続くーよ、どーこまーでも」という感じで、鉄道ってすごいなあ、と感動してしまう。よくもまあがんばってこんなにも線路を敷いたもんです。

15:25

 福山。周りをおばあさんたちに囲まれる。な、なんでだっ。

15:45

 尾道。海が見え出す。霧が出ているようだ。

15:55

 三原の一つ手前の糸崎というところで呉線の電車に乗り換える。(間違えていないか)ちょっと不安。構内の自動販売機でプリッツとカフェオレを買う。

16:03

 三原。栄えている。


 げっ。ついに雨が降り出した様子。肌寒い。

 呉線は無人駅が多いようだ。海のすぐそばを走ったりするのでおもしろい。台風のときなんかは運転中止になったりするんだろうか?


 少し降っているらしい。小学生が傘をさして下校している。あっ、あっ、今なんか情緒が出てきましたっ。

 海もとても静か。まるで時が止まったかのよう。ただ静かに雨が降っている。


 (独り言)「神はいる」と信じるのが馬鹿らしいとすれば、「神はいない」と信じるのも同様に馬鹿らしい。


 広(ひろ)。なかなか呉に着かないっ。


17:32

 呉到着。駅でグレッグに電話。

17:40

 バスに乗る。呉も栄えている街である。

九月二十日はバスの日
Happy Bus Day

と書かれた広告がしゃれている。


 「教育隊前」とか「総監部」というバス停があるのに驚く。海上自衛隊の基地があるのだ。なんだかすごい。「潜水隊」というバス停もある。製鉄や造船の工場も多い。後で知ったが、「大和」という船もここで作られたそうである。

 かなり雨が降ってきた。すっかり暗くなる。これから大きな橋を渡って倉橋島へ。


18:45

 坪井着。グレッグが待っていてくれる。

18:50

 グレッグ家に到着。2LDKのすごいアパート。しかもただで住んでいるらしい!これは彼が音戸町の教育委員会に雇われている英語教師(AET)であるため。うらやましい限りである。

 近くのうどん屋で夕食を取る。グレッグにおごってもらう。(これ以降の食事は、全部グレッグにおごってもらう。ありがたや)

 その後、グレッグの撮ったビデオを見たり、哲学的な話をしたり、ポプラというコンビニで買い物をしたりする。

 24時間営業のコンビニがあるので、少し驚く。もっともっと田舎を想像していたからだ。しかし、呉からバスで30分ほどで来れるし、本州とつながる大きな橋には車の往来が絶えないしで、少し隔離されているとはいえ、思った以上に便利の良い場所である。

 倉橋島は呉から目と鼻の先にある島で、淡路島よりはよほど小さいし、小豆島よりもまだ少し小さい。すぐとなりには江田島という島があり、この島とも橋でつながっているようである。グレッグの話では、倉橋島には中学校が五つ、高校が二つあるらしい。彼は現在はそのうちの三つの中学で英語を教えている。

 中学生にとっては、いまだに外人は珍しいらしく、浣腸をしてくる生徒などがいるとか。後で聞いたが、ルーズソックスは禁止らしい。茶髪の生徒はほとんどいないし、ピアスをしている生徒もほとんどいないそうである。


24:00

 就寝。


二日目

Satoshi Kodama
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Last modified on 03/17/97
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