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日本先天異常学会について
   
   
理事長あいさつ
先天異常学会について  理事長あいさつ
日本先天異常学会The Japanese Teratology Society (JTS)

日本先天異常学会理事長
慶應義塾大学医学部臨床遺伝学センター 教授
 小崎健次郎(こさきけんじろう)


日本先天異常学会の理事長を拝命しております、小崎健次郎と申します。

本学会は1961年に設立され、ちょうど60年になります。学会設立当時は、ヒトの先天異常の原因は不明な点が多く、特に医薬品その他の環境要因がヒトで発生異常の原因となりうることがごく一部の研究者を除いては認識されていませんでした。 サリドマイド事件では世界中で1万人もの患者が発生したことから妊娠中に母胎が内服した薬剤が胎児に先天的な形態異常を発症するリスクを世に広く知らしめ先天異常学分野の学術研究の必要性が認識されました。サリドマイド事件以降、新薬に際して実験動物を用いた器官形成期投与試験の実施が求められるようになり、薬害の発生を未然に防いでいます。

環境要因と並立して、胎児の遺伝的要因によって多くの先天異常症が発症します。ゲノム解析技術の飛躍的な進歩により、多くの遺伝子の変異と先天異常の因果関係が見いだされるようになりました。各種の臓器の発生が、分子信号伝達で理解されるようになると、薬剤による先天異常の発症機転と、ゲノム異常による発症機転は実は、共通のシグナル伝達機構の異常が関与することも明らかにされつつあります。また胎児期の病態は、エピゲノムの異常などを介して、数十年を経て成人後に様々な疾患の発症のリスクとなりうることも示されています。母体の環境要因としては薬剤とともに感染症も重要で、近年では、ジカウィルス感染症が記憶に新しいかと思います。

臨床的な観点からは、胎児の解剖学的構造を超音波検査等で可視化する技術が進歩し、母体血を使った非侵襲的な胎児の遺伝子解析が発展するなど、出生前診断技術が向上しました。このことは胎児期の治療の可能性を開くとともに、さまざまな倫理的な課題を惹起しています。

このように先天異常学は臨床発生生物学とも呼ぶべき大変に奥が深く幅の広い分野であり、解決すべき課題は非常に多岐にわたっております。この分野が固有にもつ極めて学際的な性質を反映し、本学会は小児科学・産婦人科学・外科学・整形外科学・眼科学・臨床遺伝学などの臨床医、解剖学・病理学・薬理学・衛生学・人類遺伝学・モデル生物学者・生殖発生毒性研究者などの基礎研究者、薬剤師・看護師・栄養士・遺伝カウンセラー・言語療法士など多様な背景をもつプロフェッショナルによって構成されています。

これまで多分野の学会員が「先天異常」という切り口で、緩やかな連携で結ばれていましたが、イメージング技術・バイオインフォマティクスを含む情報処理技術の進展により、基礎と臨床の垣根を越えた共同研究が急速に進展しているところです。 発生学や先天異常に関わる研究や診療を進めておられる方には、是非に仲間に加わっていただき、出生時の3%に発生する「先天異常」という根源的な課題に取り組んでいただきたいと思います。
   

 


 
 
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