
(趣旨)
医療に係わるさまざまな科学技術の進歩に伴い、産学連携による臨床研究は世界的な潮流である。公的な存在である大学や研究機関、学術団体に所属する個人が、特定の企業の活動に参加することは稀ではない状況となっている。その結果、研究 機関、学術団体が本来担っている公正な教育・研究・臨床の責務が、産学連携活動に伴い生じる個人および団体の得る利益と衝突・相反する状態「利益相反(conflict of interest: COI)」と呼ばれる事態が生じ得ることが認識されてきた。この潜在的な利益相反状態を日本行動医学会が適切に管理(マネージメント)して、初めて学会員が国民に信頼される教育・研究・診療活動を行うことが可能になる。
日本行動医学会としては、内科系関連 14学会の連携による「医学研究の利益相反(COI)に関する共通指針(以下「共通指針」という)」を指針とし、本学会における細則を定めることとした。
(潜在的COI状態の自己申告)
- 第1条
- 自らの潜在的COI状態の自己申告による開示に関しては、共通指針で掲げる「対象者」、「対象となる活動」、「申告すべき事項」に準じる。
(役員や委員等のCOI自己申告書の提出)
- 第2条
- 前条に掲げる対象者のうち、役員および理事会が特にマネージメントが必要とされる「対象者」として定めた委員会の委員長および委員(以下「委員等」という)は、潜在的COI状態の有無について「COI自己申告書」(別紙様式1)に記載の上、理事長に申告しなければならない。
- 2
- 前条に定めるCOI自己申告書には、役員や委員等に就任する際に、過去1年間の潜在的COI状態を記載して理事長に提出する。
- 3
- 役員や委員等に就任した後、潜在的COI状態に変更が生じたときは、8週以内にCOI自己申告書(別紙)を理事長に提出する。
(学会誌等への 投稿時の届出事項)
- 第3条
- 学会誌 「行動医学研究」に投稿の際に著者全員は、発表内容に関係する企業・組織や団体との投稿時から遡って1年間の潜在的COI状態の有無を、本文末尾(別紙様式2)に記載し、理事長に提出する。
(学会等発表時の開示方法)
- 第4条
- 学術講演会で演題発表の際は、演題登録画面等で抄録提出前1年間の筆頭演者の潜在的COI状態について(申告すべきCOIは)「ない」もしくは「ある」のチェックを入れ、「ある」の場合には、抄録本文及び筆頭演者の「COI申告書(別紙様式3)」を演題発表までに、理事長および学術講演会事務局に送信する。
筆頭発表者は、発表内容に関係する企業・組織や団体との過去1年間のCOI状態の有無を発表の際に、発表スライドの最初(様式4-A,4-B)に、またポスターの末尾(様式4-C)に記載する方法で開示する。発表スライドは保存しない。
(自己申告書の取り扱い)
- 第5条
- 第2条の規定によって申告された内容は、理事長からCOI委員会に報告されるが、原則として非公開とし、個人情報として学会事務局で厳重に管理される。
- 2
- 第3条、4条に規定によって申告された内容は理事長からCOI委員会および、論文については編集委員会、発表については学術講演会事務局に報告され、学会事務局で管理される。
- 3
- 第2条、第3条、第4条の規定により提出されたCOI自己申告書は、COI委員会で必要に応じて審議する。
- 4
- COI委員会は、審議の結果について理事長に報告する。なお重大なCOI状態にある自己申告については、その対応についてCOI委員会で意見を付して報告する。
(違反者に対する措置)
- 第6条
- COI状態における自己申告の内容が当指針に違反する場合には、COI委員会は十分な調査とヒアリングを行い、適切な処分案を作成し理事会に報告する。
(不服申立て)
- 第7条
- 不服申立ての審査請求を受けた場合には、理事長は不服申立て審査委員会(理事長の指名する本学会会員若干名と外部委員1名以上により構成される。委員長は委員の互選で、COI委員はその委員を兼務できない)を設置する。委員会は審査請求を受けてから30日以内に委員会を開催し、審査し、その答申書を1月以内に理事長に提出する。
(COI自己申告が必要な基準)
- 第8条
- 臨床研究に関連する企業・法人組織の営利を目的とした団体(以下「企業・組織や団体」という)の役員、顧問職については、一つの企業・組織や団体からの報酬額が年間100万円以上とする。
- ②
- 株式の保有については、一つの企業についての1年間の株式による利益(配当、売却益の総額)が100万円以上の場合、あるいは当該全株式の5パーセント以上を保有する場合とする。
- ③
- 企業・組織や団体から特許権使用料については、一つの権利使用料が年間100万円以上とする。
- ④
- 企業・組織や団体から、会議の出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)については、一つの企業・団体からの年間の講演料が合計50万円以上とする。
- ⑤
- 企業・組織や団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料については、一つの企業・組織や団体からの年間の原稿料が合計50万円以上とする。
- ⑥
- 企業・組織や団体が提供する研究費については、一つの企業・団体から臨床研究(受託研究費、共同研究費など)に対して支払われた総額が年間200万円以上とする。
- ⑦
- 企業・組織や団体が提供する奨学(奨励)寄付金については、一つの企業・組織や団体から、申告者個人または申告者が所属する部門(講座・分野)あるいは研究室の代表者に支払われた総額が年間200万円以上の場合とする。
- ⑧
- 企業・組織や団体が提供する寄付講座に申告者らが所属している場合とする。
- ⑨
- その他、研究とは直接無関係な旅行、贈答品などの提供については一つの企業・組織や団体から受けた総額が年間5万円以上とする。
ただし、⑥、⑦については、筆頭発表者個人か、筆頭発表者が所属する部門(講座、分野)あるいは研究室などへの研究成果の発表に関連し、開示すべき潜在的COI関係にある企業や団体などから研究経費、奨学寄付金などの提供があった場合に申告する必要がある。
(COI委員会と各種委員会等との連携)
- 第9条
- この指針による運用に当たって、COI委員会は編集委員会等各種委員会、学術講演会事務局と緊密に連携する。
(細則の変更)
- 第10条
- この運用指針は、定期的に見直しを行い、必要に応じて改正するものとする。本指針の改正は、運営委員会の議を経て、理事会・評議員会で承認する。
(付則)
- 1.
- 本指針は平成26年11月23日より施行する。
- 2.
- 本指針は平成26年11月23日から2年間を試行期間とし、その後に完全実施する。なお指針違反者に対する措置も2年間は会員への周知期間とし、運営委員会で議決後、当該会員に注意・勧告を行う。
- 3.
- 現に在職している役員および委員等が、第2条の規定に基づき提出しなければならない COI自己申告書は、本指針施行後速やかに提出する。
- 4.
- 本細則は、日本内科学会他内科系団体による「医学研究の利益相反(COI)に関する共通指針」をもとにし、日本医学会「医学研究のCOIマネージメントに関するガイドライン」を参考にして、本学会の利益相反委員会、編集委員会、倫理委員会において検討・作成し、理事会・評議員会の承認を得て公表する。日本内科学会には、同学会他内科系団体による指針をもとにしたことについて了承を得た。
- 様式1:役員などのCOI自己申告書

- 様式2:日本行動医学会誌 自己申告によるCOI報告書

- 様式3:筆頭発表者のCOI申告書

- 様式4:口頭発表・ポスター発表におけるCOI状態の開示

提出先:日本行動医学会事務局