日本プライマリ・ケア連合学会栃木支部

 

ご挨拶

支部長のご挨拶

日本プライマリ・ケア連合学会栃木支部長
村井クリニック 院長
宇都宮市医師会 在宅医療・社会支援部担当理事
村井邦彦
 

 寺門道之先生に代わり新たに日本プライマリ・ケア連合学会栃木支部長を拝命いたしました村井邦彦です。どうぞよろしくお願い申し上げます。 

 私は、宇都宮市で整形外科、リハビリテーション、ペインクリニック、内科、訪問診療などを行うクリニックを運営しています。2010年にクリニックを継承した頃より、「これから地域で必要とされる開業医像は何だろう?」という思いで活動の方向性を考えて参りました。

 父が開業したのは1978年でしたが、当時は整形外科の開業医はまだ宇都宮市内でも少なかったと聞いています。それから32年の時代の変化で急性期医療は充実し、一般的な診療であれば日本中どこでも自由にアクセスすることができるようになりました。一方、社会背景としては少子高齢化が進み、慢性疾患を抱える高齢者を「治す」医療から「治し、支える医療」への転換が提唱され、在宅医療の推進、地域包括ケアシステムの構築が求められてきました。

 私はもともと麻酔科とペインクリニックの専門医ですのでむしろ整形外科単科にこだわる必要がなかったのかもしれませんが、今後に地域で必要な医療機能を「かかりつけ医」と「予防」、「地域活動」に据えてここ十余年の間、クリニックを運営してきました。その間、時代はさらに進み、フレイル予防、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)、「人生の最終段階」の概念化、地域共生社会の構築などが必要とされてきました。また、経済格差が健康格差を生み、世代を超えて格差が連鎖する社会構造、孤独・孤立に悩む人の健康問題が浮き彫りになり、SDH(健康の社会的決定要因)の概念がリアリティを持って感じられるようになりました。

 今後も増え続ける高齢者とSDHを抱える人の医療需要増加に同じ医療のスキームで対応し続ければ、医療費はさらに増大し、医療費抑制政策はより厳しくなり、結果的に医療の現場はより手数が多く、リスクが大きく、慌ただしい医療を、より安い診療報酬で提供し続けなければならないでしょう。今のままでは、医療現場の人材不足や労働環境の改善、医師の働き方改革などの課題解決の糸口をつかむことは難しいと考えています。

 今後、日本の医療制度は大幅な転換を余儀なくされています。私たちは、病気のより上流にアプローチし、地域全体の予防や教育活動を充実させなければなりません。また、SDHを理解し「社会的処方」を行うような新たな仕組みが、地域住民の健康アウトカムの向上とwell-beingの改善をもたらす可能性があります。結果的に、医療費抑制、医療現場の負担軽減、医療人材不足の改善に繋がる方策を、地域の仲間とともに考えてゆきたいと思います。

 新たな医療の方向性をともに考え、実践してゆける仲間として、地域医療、特にプライマリ・ケアに関わる皆さまに期待をしています。ぜひ、栃木県ではプライマリ・ケアに関わる皆様と、私のような他科出身の医療職がこれからの地域医療を一緒に考え、行動し、日本プライマリ・ケア連合学会の活動に反映させて参りましょう。会員の皆さまの支部活動へのご参加と、日本の医療の将来像を見据えた活発なご議論をお願い申し上げて、就任のご挨拶とさせていただきます。

  

 日本プライマリ・ケア連合学会栃木支部長

 村井クリニック 院長

 宇都宮市医師会 在宅医療・社会支援部担当理事

 村井邦彦

(2022年6月29日更新)