進行性核上性麻痺



72歳 男性

主訴:構音障害、よく転ぶ

既往歴・家族歴:特記すべきものなし

現病歴:70歳頃より、呂律が回らなくなった。同時期より、姿勢が不安定になり、注意力が低下し、よく転ぶようになった。

身体所見:不明瞭発語・嚥下障害あり。見当識障害や記銘力障害は軽度。把握反射、本態性把握反応、模倣行動、使用行為などを認める。無動・無言の傾向も認められた。病状に対する深刻感は乏しく、多幸的。眼球運動では、頭位変換時の眼球反射は保たれるが、随意性の注視麻痺とくに下方視の障害が強い。四肢よりも頚部や体幹に強い固縮を認める。

経過:食物の誤飲が多くなり,肺炎を繰り返すようになり、肺炎から呼吸不全となり死亡.
MRI画像所見:脳幹とくに中脳被蓋の萎縮、前頭葉の萎縮をみとめた.正中矢状断では、hummingbird sign (or penguin sign)が存在。第3脳室は拡大。

病理所見

マクロ:

 黒質や青斑核の脱色素。中脳や橋、淡蒼球の萎縮

ミクロ

 中脳黒質、中脳中心灰白質、赤核、四丘体青斑核、迷走神経、舌下神経核、視床下核、淡蒼球、海馬の神経細胞脱落・グリオーシス。同部を中心に房状アストロサイト。残存神経細胞内に球状神経原線維変化やタウ蓄積。乏突起膠細胞にコイル小体。これらの部位以外に、大脳皮質や尾状核、被殻、海馬傍回、橋核や下オリーブ核に病変は広がる症例がある。小脳歯状核にはグルモース変性を認める。

臨床的にも病理組織学的にも大脳皮質基底核変性症との鑑別が重要である。

 進行性核上性麻痺では、房状アストロサイトが認められる。

 大脳皮質基底核変性症では、アストロサイト斑が認められる。