大脳皮質基底核変性症
65歳 男性
主訴:小声、発語の低下
既往歴・家族歴:特記すべきものなし
現病歴:56歳頃より、小声になり、会話量が減少。58歳より、しゃべりが遅くなり、右手の使いづらさが出現。60歳より、発話は著明に減少。
身体所見:不明瞭発語・嚥下障害あり。見当識障害や記銘力障害は軽度。右上肢優位の固縮を認め、構音障害、嚥下障害あり。上方注視障害、運動失語、失行(肢節運動失行、構成失行、観念運動失行)を認めた。二点識別覚、皮膚書字覚、立体覚の障害あり。
経過:食物の誤飲が多くなり,肺炎を繰り返すようになり、肺炎から呼吸不全となり死亡.
MRI画像所見:左優位の頭頂葉および前頭葉後部の大脳皮質萎縮。
病理所見
マクロ:
左優位の頭頂葉および前頭葉後部の大脳皮質萎縮。特に、上前頭回や中心前回に強い変化。左内包前脚の萎縮。黒質および青斑核は脱色素を認めるも萎縮は軽度。
ミクロ
左優位の頭頂葉および前頭葉後部の大脳皮質神経細胞脱落とグリオーシス。風船様神経細胞(Ballooned neurons)を大脳皮質(第III, V, VI層)および淡蒼球や線条体、視床下核、視床、赤核など脳幹諸核に認める。小脳歯状核にはグルモース変性を認める。大脳皮質にはアストロサイト斑を認める。中脳黒質の神経細胞脱落・グリオーシス。残存神経細胞内に球状神経原線維変化やタウ蓄積。乏突起膠細胞にコイル小体。
臨床的にも病理組織学的にも大脳皮質基底核変性症との鑑別が重要である。
進行性核上性麻痺では、房状アストロサイトが認められる。
大脳皮質基底核変性症では、アストロサイト斑が認められる。