気仙がんの在宅療養研修会 2016 岩手
【グループワーク発表】
<テーマ3>人生の最期をともに生きる 家族と支える、チームでの療養支援
まとめ |
・ | 患者さん、家族それぞれの気持ちを受けとめながら、チームとして支える |
・ | チームのメンバーが集まる場で情報共有したり課題を話し合えたりする機会があるとよい。研修会など、学び合うきっかけづくりも大切 | |
・ | 情報ツールを活用し、情報共有と連携をスムーズに。職種間での顔の見える関係でお互いのことを知る | |
・ | 事例検討や意見交換を通して、医療と介護の職種の垣根を越えて、在宅療養に関わる人をつないでいく |
グループワークの様子1
患者さんの本音は?
最期をどこで迎えたいのか、さまざまなアンケートでは70%の人が「自宅」と回答していますが、実際には病院や施設で亡くなる方が多いわけです。そのズレはどこにあるのかと考えると、「家族を自分のために縛り付けるのではないか」などの思いから、患者さんがご家族に遠慮して本音を言えないケースがあるようです。患者さん本人の意思を聞くことはとても大切ですが、患者さんがどこまで本音を話してくれるのかが、ケアマネジャーのジレンマとしてあるそうです。
チームのメンバーが集まる場をつくる
そうしたことを踏まえ、まず在宅療養に関わる各職種が集まって情報を共有する場をつくることが大切ではないか、という意見がありました。それぞれに忙しい業務を抱えているスタッフが平日に集まるのは難しいということがあります。行政が地域包括ケアに関わる研修会のようなかたちで集まる場を設けて働きかけをしてくれると、それぞれの職場の理解も得られるし、集まりやすくなるという意見が多くありました。
最期をともに生きるのは家族
「人生の最期をともに生きる」のはやはりご家族であって、それを支えていくのが在宅療養に関わる私たちの仕事ではないかと思います。患者さん自身の希望する場所で、限られた時間を、ご家族や知人と過ごせるように関わっていけばいいのではないか、というのが議論の行き着いたところです。
在宅療養を始めてみて、足りないものは後から追加する
在宅療養を始めてから、さまざまな面で足りない部分が出てくることもあると思います。病院へのフィードバックも含めて、はじめからすべてを準備するのではなく、まず始めてみて、後から足りない部分を補っていくことも在宅療養支援の一つの手だてとして挙げられました。新しくこのサービスを使えばいい、この薬を使えばいいというように決定して対応できることが、議論の中でわかりました。
在宅支援チームの連携と情報共有
患者さんの病状によって医療の関与が大きい場合もあれば、医療よりも介護に重点が置かれるケースがあり、それぞれにチームの連携のあり方は違うと思います。関わっている職種の間でも、医療サイドの医師と看護師の連携、介護を担うケアマネジャーとヘルパーの連携はできていても、患者さんに関わるすべての職種が同じ情報を共有しているのかといえば、必ずしもうまくいっていないのではないか、という指摘もありました。今後の課題だと思います。
在宅療養に関わるスタッフが円滑に連携するためには、どのようなツールがあるのかを考えました。東日本大震災の直後にはさまざまな面で携帯電話やスマートフォンなどの情報機器を利用しました。そうした機器が登場する以前は、各家庭に備えられたノートに、訪問した記録や、気づいたこと、行った処置などを書き入れて情報を共有していました。情報を一元化するのは難しいかもしれませんが、こうした手段も利用して共有したらよいのではないかと話し合いました。
グループワークの様子2
多職種の連携を深めるために
各職種が共有する情報を、例えばケアマネジャーにすべて集約するのは無理があるのではないかという意見がありました。特に、医療系の情報がなかなか集まらないといったケースもみられます。そうであれば、医療が深く関わる患者さんの場合は担当の医師が中心になり、介護ケアが中心の患者さんではケアマネジャーが中心になって情報をうまく集めることはできないだろうかと考えました。この点については今後、検討していかなければならないだろうと思います。
在宅療養に関わるさまざまな職種が連携すると言葉で言うのは簡単ですが、実際はそうではありません。それぞれにどのような仕事をしているのか、どこまでできるのかをお互いに知らなければいけないと思います。お互いの職種について知った上で、患者さんやご家族のさまざまな問題点や思いを共有してサポートする。気仙地域でも在宅療養に関わる多職種のスタッフの間で、ようやく顔が見え始めたところだと思います。これからもっと深く互いを知って連携していく上で、今日の研修会のような場はよい機会だと感じました。
患者さんを支える場としてのサロン
気仙地域ではサロンに参加される患者さんが少ないのではないか、どうしたら増やせるのかについて考えました。集まっていただくためには、患者さんにとってのメリット、参加してみて「ためになることがある」と思っていただかなければなりません。また入院されている患者さんに声をかけたり、参加しやすい状況をつくって患者さんに提案することもできるのではないかという意見がありました。
大船渡病院では2年前から患者さんのサロンを行っています。これは「がんを学ぶ市民講座」で実施したアンケートで、患者さんの6割が「サロンがあれば参加したい」と回答された結果を受けてのことです。毎回5名から10名の参加者がありましたが、今年の春にインフルエンザが流行して、化学療法をされている患者さんの面会制限もあり、3カ月ほどお休みしました。再開した4月からの参加者は数名で、一端途切れたことの影響が大きかったと思います。このことから、常にサロンについて情報を発信していく必要を感じています。ここにお集まりのみなさんにも、このサロンについての情報を広めていただければと思います。
全国のがん診療連携拠点病院では、いずれも患者サロンを設ける方向性にはなっていますが、いったん始めたものの参加メンバーが固定してしまうといったことで、どこでも苦労しているようです。どういう場面で集まるのか、話題や趣向を変えたりスタッフを変えたりすることなどによって、さまざまな人が関われるようにするのもよいのではないかと思います。