気仙がんの在宅療養研修会 2016 岩手
【グループワーク発表】
<テーマ1> 在宅での療養を始める 意思決定とコミュニケーション
まとめ |
・ | 不安を抱える患者さんやご家族に向き合い、話し合いながら、在宅療養を支えるチームの体制をつくっていく |
・ | はじめの情報収集や話し合いが大切、チーム内で顔の見える、話し合える関係づくりを | |
・ | 退院前カンファレンスで問題点や課題を共有する | |
・ | 連絡できる、相談できる環境が、患者さんとご家族にとって安心 | |
・ | 在宅療養について、地域の情報や相談窓口などを掲載したパンフレットを作成し活用 |
グループワークの様子1
患者さんとご家族の不安を軽減するチームづくり
在宅に移行するに当たり、患者さんがどのような生活をしたいのかが重要だということになりました。ご家族は介護の協力者がいるかどうかについて、一人で不安を抱えることもあります。さまざまな不安を抱える患者さん、ご家族を在宅療養につなげるには、医療スタッフが話し合いながら、在宅療養を支えるチームの体制をつくっていくのがよいだろうということになりました。
チームに参加する医療と福祉のスタッフが顔合わせをして、互いに関係機関と連絡をしながら十分にコミュニケーションを図っていくことが提案されました。スタッフ同士の顔合わせも重要ですし、それぞれの職種がどのような形で関わっていくのか、互いの思いを共有することが大事ではないかという意見が出ました。例えば食事会やお茶会のようなかたちなど、率直な意見交換ができればいいと思います。
チームづくりにはご家族との顔合わせ、関係づくりも大切です。またご家族や自宅の状況などについて、最初の情報収集を大事にすることも提案されました。在宅療養を支えるために何が必要かは、ご家族や自宅の状況によって変わってくると思います。最初の段階で、そうした情報を把握できるように心がけたいです。
患者さんとご家族の不安を軽減する
退院前カンファレンスはケアマネジャーも入って、参加するスタッフが何でも言える関係づくり、チームとして支える体制をつくることが大事だと思います。患者さんやご家族には、「ご自宅に戻られたら、こういうスタッフが支えます。何でも相談してください」と伝えるようにします。患者さん、ご家族の不安を少しでも軽減し、在宅療養を前向きに考えていただくために大事にしたいことです。
退院前カンファレンスにご家族や在宅医療に関わるスタッフが参加できない場合は、スタッフの初回訪問時にケアマネジャーに同行してもらうことで患者さん、ご家族に安心していただけるのではないかと思います。患者さんもご家族も全面的に安心して退院することはできないでしょう。退院前カンファレンスだけでなく、在宅療養に関するパンフレットなどいろいろなツールを使って、できるだけ安心していただくことが大事だと思います。
グループワークの様子2
退院前カンファレンスで工夫していること
訪問看護師として関わっているケースでは、大船渡病院の地域連携室が中心になって計画を立て、ケアマネジャーと一緒に退院前カンファレンスを行います。ご家族とお話しした後、必ず患者さんの病室に行き、なるべく目線を一緒にしながらお話しするように心がけています。いきなり在宅療養全般について説明をすると患者さんは不安になるので、「おうちに帰ったら、すぐに伺います」などとお話しします。最初にご自宅を訪問した時は「肩の力を抜いてください。がんばらなくていいんですよ」「24時間、いつでもお電話くださいね」とお伝えします。患者さん、ご家族が不安を抱えながらも、何かあれば電話できる、支えてくれる体制があることを支えとして在宅療養に移行できることが、私たちのやりがいにつながっていると思います。
パンフレット「在宅医療とは?」の紹介
在宅療養につなぐために
介護の経験や知識のない患者さんやご家族の場合、自宅に戻るには患者さんを「看取る覚悟」が必要だと構えてしまって決心がつかずに、家に帰りたくても帰れない方もいます。ご自宅に帰った後で気持ちが変わってもいいし、病院に戻ることもできることを伝えて「まずはうちに帰ってみませんか」と投げかけることも必要ではないか、という意見が出ました。また、どのようなサービスがあり、どういう生活ができるかについての情報を提供する必要もあります。ケアマネジャーや病院がそのような情報を提供していくとよいのではないかと思います。
医師として考えさせられたこと
医師は「何かあれば戻ってくればいいんだから」という気持ちで、患者さんやご家族に「家に帰ってみようよ」と言いがちです。在宅療養についてイメージがわかない患者さんやご家族は、それを軽い気持ちで受けとめることができなくて、「覚悟を決めないといけない」と感じていることを、みなさんとの討論で教えていただきました。この点は、改めて考えていかなければいけないと思います。