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『動物心理学研究』優秀論文賞

【論文賞】『動物心理学研究』優秀論文賞のご案内
2023年10月8日に開催された編集委員会にて、第3回目の優秀論文賞の選考がおこなわれました。今回、選考の対象となったのは、第70巻1号から第72巻2号までに『動物心理学研究』に投稿された「研究」「総説」「資料」論文です。選考の結果、下記の論文、1篇が選出されました。

橘 亮輔「鳴禽の発声学習機構:雑音回避実験からの知見」(71巻1号、総説)
以下、選考理由になります。

鳴禽の歌学習における音のフィードバックの重要性とその学習にかんする神経機序について解説した総説。雑音回避実験というパラダイムの導入および神経科学の発展によって明らかになった歌学習の複雑な運動を支える神経機序について最近の動向を解説し、条件づけによる解釈を試みるなど刺激的な論考がされている。さらに、本論文の中心的なテーマである聴覚フィードバック機構の解明に重要な功績を残した小西正一博士(2020年に逝去)の功績の回想録としての重要性も有している。以上の点から、本論文は優秀論文賞にふさわしいものと言える

過去の優秀論文賞受賞論文
【平成30年度】

受賞論文:
第69巻2号
狩野文浩先生
「空飛ぶ鳥は何を見ているのか? 最先端センサー技術を用いた鳥の視線研究への挑戦」

第69巻2号
堀田崇先生
「魚類を対象とした比較認知科学研究の可能性」

選考理由:
狩野 文浩「空飛ぶ鳥は何を見ているのか? 最先端センサー技術を用いた鳥の視線研究への挑戦」(69巻2号、総説) ハトを用いた小型センサによる飛行中のハトの視線利用計測を紹介した総説。画期的な機器を自作し、そのデータを統計数理処理しており、今後の動物心理学、動物行動学の進む道をより良く示している。内容も俯瞰的な記載に加え、データの取得や難しい点も記載されており、非常にバランスよくまとまっている。今後、他の動物でも同じような計測がされれば、比較認知としても価値の高い研究となろう。

堀田 崇「魚類を対象とした比較認知科学研究の可能性」(69巻2号、総説) 多様な生態、行動を示す魚類を対象に、比較認知科学的視点からこれまでの研究を紹介した総説。遺伝学や神経科学、分子操作、観察などが適応可能な魚類の行動を総説としてまとめることの価値は高い。「個体認知」や 「推論」の実験的検証の方法と結果など、これまでの魚類の社会認知能力の紹介は読んでいて知的好奇心がくすぐられる。これまでの知見を取りまとめた優秀な論文と言える。

【平成29年度】

受賞論文:
第65巻1号p. 45-58
中尾央先生、後藤和宏先生
「メタ認知研究の方法論的課題」

選考理由:
「 メタ認知研究の方法論的課題」 論文は動物のメタ認知研究の方法論を近年の手法まで含めて、非常に適切に論じ纏めている。メタ認知研究は、現在の認知研究や神経科学研究でも高い注目を集めている分野であり、その先にある「意識」研究にもつながる心的機能であることから、動物心理学研究としても、重要な課題である。この分野における比較認知の在り方、方法論から理解の仕方、実験手法は結果解釈問題点、さらにはその解決策に関して、現時点で纏めたことの業績は大きい。これらの理由により、本論文を動物心理学研究の優秀論文賞として決定した。


優秀論文賞規程
【『動物心理学研究』優秀論文賞規程】
第1条 目的と名称
動物心理学研究領域における優秀な論文を奨励することを目的として、機関誌「動物心理学研究」における優秀な論文に対し、「動物心理学研究」優秀論文賞(以下「優秀論文賞」)を授与し表彰する。

第2条 対象論文
優秀論文賞の対象は動物心理学研究に掲載された研究、総説、資料とし、意見および講演は対象としない。

第3条 選考手続き
優秀論文賞は動物心理学研究の編集委員会にて、3年に一度、掲載された論文の中から1つの候補論文を選出する。
2、編集委員長は、選考結果を理事会に報告する。

第4条 受賞論文の発表と表彰
編集委員長は、受賞論文を定めた後に開かれる年次大会期間中に、受賞論文の著者に優秀論文賞および副賞を授与する。
2、理事会は、同様の内容を、ホームページと動物心理学研究に掲載する。

第5条 細則の設置
選考に必要な事項は「日本動物心理学研究優秀論文賞選考細則」に定める。

第6条 規程の改正
本規程の改正は、理事会の議を経て行われる。

平成29年10月15日制定



【『動物心理学研究』優秀論文賞選考細則】
第1条
本細則は「日本動物心理学研究優秀論文賞規定」にもとづいて、編集委員会が行う選考の手続き等を定めるものである。

第2条 受賞論文の選考は、編集委員長から対象となる論文について以下の評価項目ならびにその評点の説明を受け、編集委員会の審議によって決定する。
(1) 成果の学界への貢献度
(2) 論文展開の論理、研究手法の妥当性など
(3) 記述などの論文形式、俯瞰的な考察の完成度
(4) 論文査読者からの評価
   
第3条 編集委員長は、選考結果を理事会に報告するとともに、受賞論文の著者に通知する。

第4条 本細則の改廃は、理事会で決定する。

平成29年10月15日制定


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