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ニュースレター(第4号)

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 東海公衆衛生学会理事長就任ご挨拶

東海公衆衛生学会 理事長 徳留信寛(名古屋市立大学 大学院医学研究科 健康増進・予防医学分野)

この度、東海公衆衛生学会理事長をお引き受けすることなりました。ここにご挨拶を申し上げます。

公衆衛生の目的は健康増進、疾病予防、健康寿命延長であり、公衆衛生従事者は保健・医療・福祉・介護・リハビリテーションなどの活動・貢献・サービスに取り組まねばなりません。

国が「健康日本21」を策定し、健康増進法を施行して、今日、地方公共団体の現場では住民の健康増進、疾病の一次予防・二次予防が推進されています。なかでも大事なものは健康増進、生活習慣病の一次予防です。主なライフスタイルは栄養、嗜好(タバコ、アルコールなど)、労働、身体活動、休養、睡眠、ストレスです。ポストゲノム・ポストシークエンスの世紀には、宿主要因と生活習慣との相互作用に基づく疾病予知が可能となりますが、健康増進、疾病予防の実践には、リスク要因を回避し予防要因を取り入れるのが最も重要です。

公衆衛生活動はそのような対人保健・地域保健に限らず、健康危機管理、学校保健、産業保健、生活環境保全、地球・生態系保全など多岐にわたります。

本会は日本公衆衛生学会の東海支部ではありません。その財政基盤は東海4県1市からの賛助金、7大学医学部・医科大学・衛生学部の衛生学・公衆衛生学教室(16教室)、岐阜薬科大学からの分担金の合計約110万円でした。近年、地方自治体の財政状況が逼迫して賛助金がカットされ、2001年から本会は個人会費制に移行しました。2003年12月現在、正会員約430名、名誉会員約20名で構成されています。年会費は理事・評議員\3,000、一般会員\2,000ですが、130名を超える約3分1の方が未納という厳しい状況です。それが理由の一つですが、第49回東海公衆衛生学会(2003年7月静岡県浜松市で開催)では存続の是非が問われるほど、本会は危機に直面しています。

公衆衛生は学(サイエンス)と術(アート)だといわれます。サイエンスに基づかないアートは普遍性に欠けます。アートをともなわないサイエンスは机上の空論です。また、国際保健・環境問題では“think globally, act locally”といわれますが、まさに公衆衛生の原点は「グローカル」な活動だと思います。まず、地域に根ざし、地元住民のニーズに応えるものでなければなりません。人びとの生活の質の向上、幸福の追求、自己実現、人生の完成をサポートするという初心に立ち返り、今、再び、本会を意義あるものにしようではありませんか。

初代理事長の豊嶋英明先生(名古屋大学大学院医学系研究科 教授)の「エビデンスに基づく公衆衛生を」というお考えを引き継ぎ、大変微力ですが、東海公衆衛生学会をいっそうの発展・充実のために努力したいと存じます。皆様のご支援とご協力をお願いいたします。
(平成16年2月29日 記)

 蘇生から回復・隆盛へ

東海公衆衛生学会 前理事長 豊嶋英明(名古屋大学大学院医学系研究科 公衆衛生学)

東海公衆衛生学会は昭和30年に第1回が開かれ、その後毎年1回開催され、平成15年7月には49回目を迎えました。本学会は平成10年に行った学会員へのアンケート結果に基づき、平成13年より個人会員制度に移行しました。小生が理事長を仰せつかり、同13年には愛知県、翌14年には三重県に学会の主催をお引き受け頂きました。長年行われなかった行政の方々による学会開催を行うことができ、シンポジウムでは現代社会の心の問題と幼児虐待が取り上げられました。これは平成10年のアンケートに「教育プログラムの充実」とともに謳われた、「実用性・実践性を重視する」という意見を反映させるという目的にかなったものであったと思います。

発表演題数は第46回(H12年)は32、第47回(H13年)は45、第48回(H14年)は54を数え、着実に増えました。第49回は青木伸雄教授をはじめとする静岡勢のご努力で「教育プログラムの充実」が図られました。一方会員数も、平成12年には252名、翌年学会開催時には358名、平成14年の学会開催時には429名にまで増えました。平成15年の学会開催時にはほぼ同数ですが、会費納入者は205名でした。

このような状況で推移しましたが、平成15年3月で小生の理事長の任期が終了したため、次期理事長、事務局を決めることと、財政などの運営状況を検討するため4月11日、平成15年度第1回理事会が開かれました。その席上で、会費未払いなどから財政が実質上破綻していること、少人数による学会事務局の運営の困難さ、類似の研究会が多数活動している中での本学会の存在意義の疑問等を紹介し、本学会の存続が厳しいことを訴えました。評議員へのアンケート結果に基づき、学会開催時の評議員会でも廃止の採決を取る寸前まで参りました。しかし、公衆衛生学会こそ地方会が必要であるとの強固な意思表明があり、それが周囲の賛同を呼び、本学会は存続することになりました。

その後、大学関係の理事で話し合いをした結果、名古屋市立大学の徳留信寛教授に理事長をお引き受けして頂くことをご快諾頂きました。上記のような緊急事態を乗り越え、いわば蘇生を果たした学会ですので、暫くは手厚い保護が必要かと思います。そこで、今までの様に事務局の作業を一カ所に集中させず、その負担を分散させるために、複数の大学及び行政組織が事務作業の一部を分担することが提案され、理事会で認められました。命を吹き返した学会が、今後隆盛になるか否かは、独自性と魅力のある活動が展開できるかが決定要因であり、とりもなおさず学会員一人ひとりの認識と努力にかかっていると思います。地方分権の風を受け、徳留信寛新理事長の下での発展を心から祈念致します。

 第49回東海公衆衛生学会学術大会

第49回学術大会事務局 中村美詠子(浜松医科大学衛生学)

第49回東海公衆衛生学会学術大会は、「東海公衆衛生の今を知る−地域からの発信」をメインテーマ、静岡県理事兼健康福祉部技監土居弘幸氏を大会長(大会事務局:「運営担当」静岡県健康福祉部、「学術担当」浜松医科大学衛生学)として、平成15年7月19日(土)にアクトシティ浜松・研修交流センターにて開催されました。平成14年開催の三重県と同様、東海地域の中では遠方である静岡県での開催ということで、参加状況が心配されておりましたが、静岡県より80人、愛知県34人、名古屋市18人、岐阜県15人、三重県11人、その他を含めて合計163人の参加者をむかえることができました。職種の内訳としては、保健師・助産師・看護師49人、医師43人、栄養士15人、歯科医師8人、その他教職、事務職、薬剤師、検査技師、学生等でした。

本大会では特別講演として、「静岡県における自立調整健康余命の評価」「インターネットによる生活習慣改善支援プログラム(i−exer:アイエクサ)」「災害医療:重症患者広域搬送の現状と問題点」「地域保健と産業保健の連携について」の4題が、また教育講演として、「内分泌撹乱物質、細胞毒性物質(廃棄物)に関する最新知見」「これからの公衆栄養―エビデンスに基づいた実践活動の展開」「伝統的健康法の再評価と公衆衛生」「これからの公衆歯科衛生―21世紀の歯科保健に果たすフッ化物の役割」の4セッションが行われました。それぞれお一人の演者の発表時間は10分から30分という限られたものでしたが、非常に広範囲に及ぶ公衆衛生の各分野の中からタイムリーな話題や最新知見のエッセンスを、専門の先生方にわかりやすくご講演いただき、公衆衛生従事者にとって非常に有用な「研修の場」になったことと思っております。演者の先生方には「ボランティアでお願いします」ということで依頼させて頂きましたが、皆様のご快諾を頂き、このような有意義な時間を提供して頂きましたことに、この場をお借りしてあらためて厚く御礼申し上げます。

一方、会員の皆様方からも積極的なご参加をいただき、一般講演として「精神保健・ケア」6題、「感染症・環境」5題、「学校・成人保健」6題、「健康づくり」4題、「母子・小児保健」6題、その他4題の合計31題が発表されました。このうち、ほとんどの演題はPCプロジェクターを用いて発表され、各会場での議論も活発に行われていたようです。また、本大会での新しい企画として、ご承諾を頂くことができた演者の発表用スライド、および抄録をCDに収め、希望者に配布いたしました。用意したCDはほとんど残りませんでしたので、皆様のお手元でご活用いただけているのではと想像しております。

以上のように、学術大会自体は成功裏に終わることができましたが、評議員会、総会では、本学会の存廃について様々な議論が行われ、今後の課題を残したまま終了となりました。本学会を取り巻く様々な状況は非常に厳しいというのが現実です。学会の存廃を含めた、今後の学会のあり方について、会員各自が明確な意思をもって対処していくことが問われている時期といえるでしょう。

 新事務局あいさつ

このたび当教室が学会事務局を引き継ぐこととなりました。平成13年の個人会員化以降、ゼロから立ち上げ事務局を務めてこられた名古屋大学公衆衛生学教室の皆様には、これまでの多大なるご貢献に深く感謝いたします。至らぬ新事務局ではありますが、会員の皆様のお役に立つよう精一杯努めてまいりますのでどうぞよろしくお願いいたします。3月下旬には第50回学術大会演題募集のご案内と共に、平成16年度会費納入のお願いを送らせていただきます。また本年度より郵便自動振替もご利用いただけますので、どうぞお早めにお手続きください。詳細は演題募集に同封の案内をご覧ください。

(平成16年3月18日HPへUP)

Logoに使った写真の使用については東海4県の観光連盟などの許可をいただいています