第56回東海公衆衛生学会学術大会の報告
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学術大会の概要
第56回東海公衆衛生学会学術大会、大会長 平山宏史(岐阜県健康福祉部次長)は、「公衆衛生とリスクマネジメント」をメインテーマとし、平成22年7月24日(土)に岐阜大学医学部で開催した。
午前は、一般演題(口演25、示説9)の発表があった。その内容は、地域保健、健康づくり、母子保健、成人保健、結核、感染症などであった。その後、「食品安全行政のリスクアセスメント―食品安全委員会の役割―」のテーマで特別講演(演者は食品安全委員会委員長の小泉直子氏)を行った。午後は、総会とシンポジウム「公衆衛生におけるリスクマネジメント活動」を行い、大会終了後に、「いきいき東海サテライト集会」が開催された。
大会参加者は120名であり、内訳は、学会員89名、非学会員14名、学部学生等5名。地域別では愛知県40名、名古屋市13名、静岡県7名、岐阜県39名、三重県6名であった。主だった職種は保健師34名、医師30名、教員20名、栄養士6名であった。
各発表とも多数の質問あるいはコメントがあり、参加者の公衆衛生への熱意が強く感じられた大会であった。
また日本公衆衛生学会から助成金・後援をいただき、当日は、岐阜県および岐阜大学関係者・東海公衆衛生学会事務局の方々のご尽力で大会を終えた。
特別講演及びシンポジウムについて
本大会では、メインテーマを「公衆衛生とリスクマネジメント」とし、特別講演として食品安全委員会委員長の小泉直子先生に「食品安全行政のリスクアセスメント―食品安全委員会の役割―」とのご演題でご講演を頂いた。国の食品安全行政の枠組み、食品安全委員会の役割、リスク評価の方法を学び、リスクコミュニケーションの問題点が浮き彫りにされた。メチル水銀やBSE問題など例が挙げられ、参加者にとって非常に興味深いものであった。
シンポジウムについて(報告者:座長 日置敦巳)
総会に続いて、「公衆衛生におけるリスクマネジメント活動」をテーマとしたシンポジウムが開催され、感染症、公衆栄養、食品安全、地震と、多分野からの取り組みが紹介された。共通点として、普段からの関係者の連携が基盤となること、住民・対象者への周知・参加拡大が課題であることがあげられた。見てもらうための工夫を凝らしたメールの活用も期待されていた。会場を交えた意見交換の時間が作れなかったのは残念であった。
- S−1「感染症対策とリスクマネージメント−新型インフルエンザ2009の対応を振り返って−」
当初の対策マニュアルでの想定と実際の流行状況との相違を踏まえ、柔軟に対応できることが重要であることが確認できた。医師等スタッフや学生への情報提供はうまくできた。地域保健との連携も行っていきたい。
- S−2「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策の検証とリスクコミュニケーション−発生状況及び名古屋市の取り組み−」
相談窓口を設置して市民等への情報提供に努めた。既存会議(院長等)およびメーリングリスト(実務者)の活用により、医療関係者の協力体制が確保できた。他死因と思われる死亡者も含めて積極的にPCR検査を行った。
- S−3「公衆栄養活動とリスクマネージメント」
東海地震防災対策強化地域の市町に対し、保健所は災害時要援護者支援体制整備の支援を行っている。管内栄養士会を組織し、横の連携が強化されつつある中、市町村栄養・食生活支援マニュアル作成の働きかけを行う。
- S−4「食品安全とリスクコミュニケーション−岐阜県の取組み−」
事業への積極的な参加者の拡大が課題である。消費者への情報提供拡大に積極的な事業者を大切にしてリスコミを充実させていきたい。心理学的な要素を押さえた情報提供に努め、消費者の意識・行動の高揚を図りたい。
- S−5「東海地震に対する取り組み」
静岡県内4か所の危機管理局には保健師等専門職が配属され、健康危機事案で統括・調整を行う。ゲーム形式の教材も活用して啓発しているが、今回の地震発生時の検証では、県民への徹底はまだ不十分と考えられた。
一般演題(口演)『地域保健』
報告者:座長 尾島俊之(浜松医科大学健康社会医学講座)
- A−1「特定健診受診率と健診結果の関連」
特定健診データを活用して市町村毎の有病率の比較や県民全体の有病者数の推計が行われている。特定健診受診率は静岡県内国保平均で28.3%と高くはない。そこで、市町村別の受診率と年齢調整した標準化該当比の関連を見ることによる受診率を考慮した分析について報告が行われた。質疑の中で静岡県では法定報告以外の項目についても、年齢調整した分析が行われていることが紹介された。
- A−2「豊明市における国民健康保険の健康増進事業について −ポピュレーションアプローチと特定健診との関連について−」
豊明市では健康に関する活動を自主的に行っている団体に対し保健師等による支援を行っている。そのような活動に参加している人としていない人について、特定健診受診率や各種異常割合についての比較を行った結果が報告された。質疑の中で、今回の分析を行った団体は、市主催の体操教室や男の料理教室の修了者、ミニデーサービスなどを実施している団体であることが説明された。
- A−3「災害ボランティアに期待される役割と保健関係者との連携」
近年の災害時にはボランティアが活躍し、また社会福祉協議会(社協)が中心となって災害ボランティアセンターが立ち上がる形が一般的となってきた。全国の市区町村社協から無作為抽出して行われた調査結果として、現時点で安全衛生への取り組みや保健衛生部局との連携が不十分であるものの、保健医療専門職の助言・指導の必要があると多くの社協が考えていることが報告された。連携を広げるための方策等に関して質疑が行われた。
- A−4「田原市における人工透析者の現状把握について 〜レセプトから情報を知る」
透析者は高額な医療費が必要となる。そこで、国保及び後期高齢者医療対象者についての分析結果として、高血圧有病者が多く、最近の透析開始者では糖尿病者が多いこと、若年の透析開始者が比較的多いこと、該当者が地区別に偏りがあること、男性に多いことなどが報告された。質疑の中で、今後のさらなる分析方法についてのコメントが寄せられた。
一般演題(口演)『健康づくり』
報告者:座長 中島正夫(椙山女学園大学教育学部子ども発達学科)
- A−5「東海市の健康づくり・生きがいづくりの全庁的な取り組み〜健診情報を活用した仕組みづくりについて〜」
国保・企業が実施した健診受診者及び市職員を対象に実施したアンケート調査の結果、運動不足や体重増加など健康について関心がある者は68.5%、運動や食事について改善したいとした者はそれぞれ58.9%、42.9%であること、一方、健康サービス事業者について29店中10店が「健康応援店」や「ヘルシーメニューの開発」に関心があると回答したことが報告された。運動プログラムや食事プログラムの開発など今後の事業展開が期待される。
- A−6「住民の健康づくりに向けた地域総合健康サービス事業の取り組み〜食事プログラムの取り組みと報告〜」
A−5と同じ対象者に実施したアンケート調査の結果、昼食の外食利用は約半数が週1回以上、男性の4人に1人は週5回以上であること、また地域における健康を支援する食環境の整備に向け、今回開発されたヘルシーメニューの試食を行いフォーカスグループインタビューを実施した結果、今後は対象者に合わせたメニュー開発などの取り組みが必要と考えられたことが報告された。バランスのとれたメニューの提示という健康教育的な側面も含め、今後の事業展開が期待される。
- A−7「椙山女学園食育推進センターの活動について(実践報告)」
平成19年度に設置された椙山女学園食育推進センターのこれまでの活動について報告された。幼稚園から大学・大学院までを擁する総合学園で総合的かつ計画的に食育を推進するため、まず、学園関係者により子どもたちに育てたい「食に関する力」を明らかにした「基本指針」を策定、その後児童生徒・学生等を対象に実施した実態調査の結果を踏まえ、各学校種で食育に取り組まれている。今後、大学での取り組みを含め、活動の充実が期待される。
- A−8「ソーシャルマーケッティングの視点を踏まえた保健プログラムの開発(第1報)〜対象者理解とアプローチ法における一考察〜」
あいち健康の森に来館された方を対象に健康や生活に関する考えをフォーカスグループインタビューにより調査、得られた結果からソーシャルマーケッティングの視点を踏まえた保健プログラムについて検討、相手に選択される保健行動を提案するため、相手の価値観などに合わせて4P(Product,Price,Place,Promotion)の視点から検討することが有効と考えられたことが報告された。今後実施される予定の量的調査の結果を踏まえ開発される保健プログラムが期待される。策の推進を期待する。
一般演題(口演)『母子保健』
報告者:座長 山崎嘉久(あいち小児保健医療総合センター)
- B−1「地域保健法施行後の全国規模による乳幼児健診実態調査 同法施行前(平成7年)との比較」
演題取り下げ
- B−2「乳幼児健診の実施状況について」
全国の市町村ならびに特別区1,784か所に対する調査から、個別健診は、3歳児健診、1歳6か月児健診のほとんどが集団健診であるのに比較して、3〜4か月児健診では30.8%の自治体が、個別健診(集団健診の併用を含む)を取り入れていたこと、これら以外の乳幼児健診の実施時期は、乳児期後半や2歳児前後が多く、いわゆる5歳児健診の実施頻度は少なかったことが報告された。
- B−3「児童の永久歯う蝕・歯肉炎有病の相関と保健指導上の課題」
わが国の歯科保健対策において、歯肉炎など幼児、学童期の歯周疾患への対応や研究に遅れがあるとの認識に立ち、愛知県内の一小学校で実施された永久歯う蝕および歯肉炎有病と生活習慣との関連に関する研究成果が報告された。学童においても永久歯う蝕と歯肉炎の有病には相関があること、また生活習慣は、う蝕のみならず歯周疾患の発生とも関連することなど示唆に富む報告であった。
- B−4「特別支援を必要とする児童・生徒の学校安全について」
盲学校と聾学校の校長、学校保健担当教員、教育委員会指導主事、視覚障害リハビリテーションワーカー、眼科医など地域の関係者による委員会で作成した「特期支援を必要とする児童生徒の学校安全に関わるマニュアル」について報告された。認定就学者制度により特別支援を必要とする児童生徒が一般校に入学が可能となっているものの、これまで対象児の特性に配慮した学校安全の具体的な手引書がなかった。今後このマニュアルが学校現場で積極的に利用され、特別支援を必要とする児童生徒の安全面での充実が図られることが望まれる。
- B−5「母親の食に対するしつけと幼児の野菜・果物・大豆摂取」
愛知県の幼稚園児459名を対象とした子どもの食に対する母親のしつけと子どもの野菜・果物・大豆摂取量との関連から母親のしつけが子ども食行動に及ぼす影響について報告された。その結果、母親の食に対するしつけが強いほど、野菜、大豆摂取量が多くなることが示唆された。討論では、母親のしつけが思春期の食行動に負の影響をおよぼすとの文献情報について、本研究との関連についての興味深い討論が取り交わされた。
一般演題(口演)『成人保健・その他』
報告者:座長 井奈波良一(岐阜大学大学院医学系研究科産業衛生学分野)
- B−6「健常成人集団での血清carotenoid値と metabolic syndrome (MetS)診断項目集積数との関連」
MetS診断項目集積数は血清中のcarotenoid(β-carotene、 lycopene)の減少に関与していることが示され、MetSの罹患により酸化ストレスが増加する可能性が示唆されたとの発表であった。今後、食事調査をしていきたいとのことであった。
- B−7「非喫煙成人女性での尿中コチニン値と受動喫煙との関連」
採尿前日からの受動喫煙があった群となかった群の間だけでなく、採尿前日からの受動喫煙を除いた集団で、過去1年間および10年前の受動喫煙の有無で2分した場合も群間で尿中コチニン値に有意差がみられた。受動喫煙歴には長時間の持続性があること、カットオフ値を2.6ng/mg cre前後に設定することで、前日からの受動喫煙の有無をスクリーニングできる可能性が示唆されたとの発表であった。このカットオフ値が男性にあてはまるかは不明であること、受動喫煙の程度については調査していないとのことであった。
- B−8「UGT1A1遺伝子多型と尿ビリルビンおよびウロビリノーゲン」
講演集記載時よりデータを追加され、発表された。その結果、ArgArg型でもビリルビン及びウロビリノーゲンの尿検出率が有意に低くはなかったということであった。ただ、ウロビリノーゲンの尿検出率については、男性だけで解析するとArgArg型では有意に低くなるとのことであった。今後さらに例数を増やして検討されることが期待される。
- B−9「発達障害者の社会参加」
名古屋市では、現在、発達障害者への支援体制が整備されつつあるが、教育や就職のステージではまだ不十分である。少ない専門医の問題は深刻で、医療と教育・養育の役割分担が必要である。また、園・学校、保護者や地域の人など、日常生活を送る場での理解と支援がポイントになるとの発表であった。今後、発達障害者の社会参加がどの程度進んでいるかについて検討されることが期待される。
一般演題(口演)『結核』
報告者:座長 犬塚君雄(岡崎市保健所)
- C−1「岐阜県における結核の集積性の検討」
2006年から2008年の3年間に岐阜県の保健所に登録された新登録患者を対象に市町村毎に結核の集積性が検討され、罹患率等の指標が人口規模の影響で集積性を明らかにできないこと、Tango’s testが都市部における、Kulldorff’s circular scanが過疎部における集積性を検討するための有効な方法であることが示唆された。
- C−2「外国人留学生を初発患者とする結核集団感染事例の報告」
健診で「要精検」となるも放置し、咳出現から診断までに4か月かかった外国人留学生を初発患者として行われた80人に及ぶ接触者健診で肺結核7人、潜在性結核感染症8人が発見された結核集団感染事例の報告で、通学先のほか複数のアルバイト先まで広範囲な接触者健診の実施や言語の壁、習慣の違いによる援助の困難さが示された。
- C−3「愛知県における小児結核の現状」
愛知県(名古屋市を除く)の保健所に平成17年〜21年の5年間に登録された14歳以下の小児結核患者について報告がされた。総数は14人で、半数は外国籍、病名では肺結核が8人と最多であったが、結核性髄膜炎症例が3人あった。症例数が減少する中で、東海地区における症例検討会の必要性が提案された。
- C−4「高齢者施設における結核集団感染事例の報告」
平成18年からの3年間で、初発患者を除いて結核発病4名、潜在性結核感染症3名が確認された高齢者施設における集団感染事例の報告で、発病者が連続して確認された集団においては、年齢に関わらず積極的にQFT検査を導入し、潜在性結核感染症の治療を行うことが感染拡大の防止につながることが示唆された。
一般演題(口演)『感染症・その他』
報告者:座長 出口一樹(岐阜県西濃保健所)
- C−5「「手洗いソング」を用いた正しい手洗いの普及啓発について」
内容、時間配分共に問題は有りません。
「手洗いソング」を用いた場合と従来の方法では手の清浄度に差があるか、という質問が有り、調査をしていないとの事でした。
座長としては、有効性の調査は必須であり、「多数の手の細菌を培養することは困難であるので、食品衛生監視に用いるATP検査は迅速・安価に検査が出来る」ことをコメントしました。
- C−6「携帯機器等における細菌汚染の実態調査」
内容、時間配分共に問題は有りませんでした。
コメントとして、
1.キーボードは複数の人が使うかどうかによってかなり汚染度は違うことがある。
2.ペットボトルは自身の菌が増殖するので重大な影響は生じないだろう。
がありました。
座長としてのコメントとしては、
1.結論にある院内感染は患者・来客者によって蔓延することは少ない。ほとんどは、医療従事
者の手と物品によって生じる事が多いので、むしろ医療従事者の意識改革が重要である。
2.機器の汚染度はATP検査が有用である。
- C−7「学校犬の衛生状態」
内容、時間配分共に問題は有りません。
座長としてのコメントとしては、
野良猫に餌付けすることにより、鳴き声・屎尿による物品の汚染の苦情が多く寄せられている。犬は狂犬病予防法で対処できるが、猫に関しては法律が無いの対応ができない。人への感染症の原因となる可能性があるので、大学内の野良猫は里親等を探し、早急に処分した方が良い。
- C−8「誤食中毒における原因物質究明マニュアルに関する研究」
内容、時間配分共に問題は有りません。
座長としてのコメントとしては、より簡便な検査が出来ることを期待している、としました。
一般演題(示説)『成人保健・その他』
報告者:座長 高塚直能(岐阜大学大学院医学系研究科医療経済学分野)
- D−1「高齢者の健康寿命の延長に関する影響要因について(1)」
某自治体の65歳以上の全高齢者を対象とし、98年と01年の二時点における日常生活動作能力(ADL)、主観的健康度および疾病の有無の経年変化について検討したものである。結果、ADLの維持向上群とADL低下群とを比較し、後者において主観的健康度の低下と有病の増加傾向が示された。今後は各項目間の因果関係の究明が望まれる。
- D−2「高齢者の健康寿命の延長に関する影響要因について(2)」
D-1の報告に続き、ADL変化とともに体力測定項目の変化について焦点を当てた第二報である。特にADL低下群では持久性および敏捷性の著しい低下が示された。この研究においてもより精緻に因果関係を明らかにすることで、実際の保健活動への応用が望まれる。
- D−3「高齢施設入所者に対する音楽療法の有効性(その3)」
介護老人施設に入所する認知症患者に対する音楽療法の効果を検討した介入研究である。音楽療法介入群において夜間のナースコール回数の減少、日常生活自立度の改善、認知症評価尺度(NMスケール、HDS-R)の改善が報告された。ナースコール回数の変化には認知症重症度も関係していたため、これを調整したうえでも音楽療法の効果が認められるのか、検討が必要である。
- D−4「地域高齢者における血清HDLコレステロールとInstrumental Activities of Daily Living低下に関する検討:The NISSIN Project」
血清HDLコレステロール値と高齢者ADLの関係を明らかにするため、高齢者コホートを解析したものである。結果、男性においてHDLコレステロール中位のものは低位、高位よりIADLが低下したものの割合は少なかったことが示された。しかし、女性ではこの傾向は明確ではなかった。今後は性差の原因を検討するとともに、他の血清脂質についても検討が望まれる。
一般演題(示説)『地域保健・その他』
報告者:座長 田中耕(岐阜県保健環境研究所)
- D−5「県民健康基礎調査の結果を活用した保健所圏域別健康関連指標の地域差の検討」
静岡県内の疾患別死亡状況に地域差がみられ、県民の身体状況、生活状況、食品摂取状況との関連性について報告された。圏域間では高血圧症有病者、喫煙習慣有、運動習慣有、毎日朝食を食べる者、主菜、副菜の摂取量などに有意の差がみられ、肥満と飲酒習慣、朝食喫食率と脂肪エネルギー比、高血圧症と歩行数などで相関がみられ、地域の健康課題解決のヒントを得る貴重なデータとなっています。県内の疾病状況を把握し県民の健康増進に貢献されている興味深い報告でした。
- D−6「岐阜県における悪性新生物、心疾患、脳血管疾患による年齢階級別死亡率の長期的推移」
かつて岐阜県女性の平均寿命を低下させている要因が脳血管疾患死亡にあるとされており、その後の動向追跡を試みた報告である。最近では女性の脳血管疾患死亡が改善されているものの新たに心疾患による死亡が多くなり、平均寿命の改善が進んでいないこと、男性についても新たに心疾患死亡が増加し、心疾患対策が必要になっていることが指摘された。県民の健康課題の動向を継続的に把握し、県民の平均寿命の向上に結びつけようとする意義深い報告でした。
- D−7「高校硬式野球部員の栄養管理に関する実態調査」
野球部員を対象としたアンケートの分析によって、栄養管理上の課題を把握し、部員の指導、栄養サポートに役立てようとする内容であった。部員の多くが良好な体調であるとしているものの、腹痛や疲れ、肩の痛みを抱えている部員もあり、体調管理の徹底が望まれることを指摘している。また、水分補給についても、運動中に随時補給しているものの渇きを感じてからの水分補給に頼っている現状が浮かび上がり、意義ある内容となっている。今後の運動部員への指導やサポートに期待したい。
- D−8「小児病院と訪問看護ステーションとの連携を通して訪問看護指示書への一考察」
小児病院から訪問看護ステーションへのフォロー連携に際しての訪問看護指示書様式について、成人の場合と同一様式を使用していることは相応しくないとする保健医療現場からの指摘であった。成人ではなく小児病院に特有の指示事項もあり柔軟に対応できる様式の早期作成が望まれている。保健医療の現場における矛盾を指摘した発表であり、今後の改善に是非つなげて戴きたいところである。
- D−9「幼児の栄養摂取量の調査」
幼児に焦点を当てた3日間食事記録法による栄養素摂取量が報告された。栄養素の種類は国民健康・栄養調査の内容と同様であるが、調査対象の年齢を絞り、かつ多数の対象者の集計であることから、精度が高く、意義ある貴重なデータとなっている。今後の疫学研究分野における小児肥満対策などへの基礎資料として、活用が期待されるところである。具体的な調査方法などについての質問もあり、興味深い報告でした。
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