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2011RIJIKAITSUSHIN

理事会通信 平成23年12月

 平成23年12月発行号のダウンロード

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  • 今年度の理事会通信は、A4版カラー4枚で編集しました。

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 平成23年度 各理事からのメッセージ


東海公衆衛生学会理事長 名古屋大学大学院医学系研究科予防医学 教授 浜島 信之

地域での医療と予防

本年3月11日に発生致した東日本大震災の援助復興に貢献されました東海公衆衛生学会会員の皆様に心からお礼を申し上げます。また、現在もなお災害時の健康保持の体制作りに努力されておられる会員の皆さんにも感謝致します。
時間がたつにつれて情報が整理され、問題点が明らかになってくると、被災地が持つ多くの問題は、被災だけから生じるものではないことに気が付きます。医療過疎、介護、疾病予防、地域連携などに関する問題は、被災地だけのものではなく、われわれの周りにも存在しています。
東海各県には医師が都会に異動し後任者が見つからない医療施設がいくつかできてきました。後任者を補充することができる組織は、大学医局を含めてなくなってしまったのです。そのため、自治体や地域の病院が、大学に地域医療を支援する寄附講座を作り、医師を確保する方法も試みられています。うまく機能すると新たな枠組みができるようにも思えます。
東日本大震災の際には、自分が現場の役に立てなかったことから、地域医療の一端を担うことを本年6月から始めました。臨床医として働きながら、地域で疾病予防を手伝うことにより医療の量を減らすことができないかと考えたからです。週1回の内科外来ですが、健康を守るためにどんなことが必要なのかを考える時間ができました。公衆衛生の原点に戻った気分です。
来年は平穏な年となり祈念すると共に、会員の皆様方のご多幸をお祈り致します。


事務局より


2005年度より年一回理事会通信を発行し、各地区各分野から選ばれた公衆衛生のエキスパートである理事の先生方から会員の皆様へのメッセージをお届けしています。
現理事の先生方には、2009年4月から3年間お世話になり、本当にありがとうございました。
今年度は役員改選の年となり、来年4月からは新たな理事会が発足いたします。皆様必ず役員選挙にご参加下さい。1月に入り、順次会員名簿と役員投票用紙をお送りいたします。1月中旬過ぎてもお手元まで届かなかった方は、お手数ですが事務局までお知らせ下さい。


名古屋市中保健所 所長 明石 都美

中学校でのエイズ教育

名古屋市のエイズ患者・感染者の平成22年の届け出数は108名と過去最高となった。日本では、エイズは慢性疾患といわれるようになり、国内の患者・感染者は人口10万対では13を超える(平成21年)数となっている。保健所では、無料匿名で検査と相談を実施しているが、中保健所は交通の便のよいこともあり、平日昼間、夜間、土曜日昼間と検査を実施している。検査に従事している中で、検査に訪れる理由として、「ずっと付き合いたい彼女(彼)ができたので」とか「子どもが欲しくなったので」という方もみえ、嬉しさを感じてもいたのだが、先日、管内の中学校でのエイズ教育で、その話をしたところ、子どもたちの感想文でずいぶん励まされてしまった。その中学校での講話は私自身は3年目となるが、せっかくの機会であるので「性感染症の広がり方」「感染症の予防と共に偏見や差別をもたないように」の観点から保健師さんたちと、「水交換の実験」を取り入れたりと工夫して取り組んでいる。
中学生の感想であるが・・「あの人はエイズだから近づくな、なんていう人にだけには、なりたくないと思いました」「保健所で相談も受けられると分かったので、分からないことがあったら保健所に相談に行き予防してゆきたいです」「もし、自分に最愛の人ができたらその人と保健所に行って検査をしたいと思います」水交換の実験では「最初(感染者が)4人だったのが、最後には多くの人が感染したので、びっくりしたし怖いと思いました」「自分みたいに1回で感染したことにびっくりしました」等々です。
健康課題の解決には「相手に伝わるように伝えること」が大事で難しいことであるが、子どもたちの受け止める力の強さに改めて驚くと共に、タイムリーな教育ということの大事さについても考えさせられている。
平成23年は、大きな災害と原子力発電所の事故があり、ことばの力、大切さを改めて教えられたが、放射能の問題など、立ち往生している現実である。

愛知県健康福祉部健康担当局 局長 五十里 明


今年は、大きな社会不安に見舞われた一年でありました。3年前のリーマンショック後の回復がなされないうちに、ユーロ不安が拡大しつつあり、経済の先行きが見通せない状況です。また、我国では東日本大震災が発生し、数々の”想定外”が飛び交いました。津波の高さ、防潮堤の崩壊、電源喪失による原発事故等々。特に、福島第一原発事故は、人々の価値観を大きく変える事件となり、将来に亘る様々な健康被害の発生や解決までに世代を超えた期間が必要との予測もなされております。さらに、国においては、社会保障と税の一体改革、年金改革等が提案されていますが、現政権の目指す社会保障の全体像が見えない中での議論は、国民の一層の社会不安を引き起こしかねません。
新年を迎えて、前年までの課題の解決に向けた取組を継続しつつ、会員の皆様と共に、明るく希望に満ちた話題を探していきたいものです。

岡崎市保健所 所長 犬塚 君雄

麻しん対策

平成22年12月から2か月あまりにわたって、岡崎市では小学生を中心に麻しんの流行が見られた。発端となった患者はフィリピンから帰国したばかりの小学5年生で、その後小学1年の弟をはじめ13例の患者が届出された。麻しんの既往が無くワクチン接種歴が未接種もしくは不明の者を中心に感染の拡大が見られたが、麻しんワクチン1回接種済の児童にも感染が確認された。医療機関、患者及び愛知県衛生研究所の協力により、1例を除いて実施できた遺伝子検査で全ての症例から主に東南アジアで流行株しているD9型が検出され、疫学的リンクも確認された。保健所は医師会、学校等と協力して麻しんワクチン接種を、任意接種であることの理解を得つつ最終的には全額公費負担で行い、幸いにも終息を迎えることができた。概略は本学会で報告したが、麻しん排除に向けて、その感染力の強さから1例目からの迅速できめ細かな対応の必要性、ワクチン接種の有効性、診断における遺伝子検査の有用性を再確認した次第である。

愛知県半田保健所 所長 澁谷 いづみ

公衆衛生の原点に返る出来事

東日本大震災は想像を絶する未曾有の複合災害となり、被災地から離れたこの東海地方の日常生活や産業活動にも様々に影を落としている。保健師以外にも保健所の様々な職種が初めて被災地に派遣され、その実態が明らかになるにつれ、「当たり前の日常」を獲得することの難しさ、公衆衛生活動の重要性が改めて見直された。「人々の健康、生命と生活を衛る」ため、防災の視点で保健所の日常業務を見直しておきたい。
先日、管内の南知多町で津波の避難訓練があった。保健所管内を見渡す場所に立つことはあまりない。知事や町長、住民と30メートルの丘に登ったが、のどかな漁村の暮らしがそこに広がっていた。かけがえのない光景に思われた。

静岡県中部健康福祉センター 医監 兼 中部保健所 所長 竹内 浩視

理事会通信の発行に寄せて

東海公衆衛生学会会員の皆様こんにちは。理事の竹内浩視です。昨年の4月に理事長から理事に選出いただきましたが、昨年度は県庁勤務(行政医師2名)、また、現在も保健福祉の統合事務所で医師が1人配置ということもあり、学会では十分な働きができず、大変心苦しく思っております。
さて、今年は、東日本大震災の影響による計画停電(富士川以東)や浜岡原子力発電所の停止、8月には駿河湾を震源とする地震(M6.1)、農産物からの放射性物質の検出など、本県も激動の一年であったと思います。
東日本大震災においては、本県は岩手県遠野市に設置した支援拠点から、山田町を中心に支援活動を展開し、現在も県及び市町の職員を長期派遣しています。私も、本県の公衆衛生チームの一員として、4月中旬に宮古保健所に宿泊しながら山田町への支援に従事し、貴重な体験を得ることができました。
本県では、近い将来発生が予測される東海地震に対して様々な対策を講じてきたところですが、地域医療は現在でも大変厳しい状況にあり、大規模災害時の医療提供体制とその後の長期的な保健医療体制の再構築、さらには緊急被ばく医療の体制整備など、日頃から関係者が意思疎通を図り、連携する重要性を強く感じています。
今後も、微力ではありますが、少しでも公衆衛生行政の推進に寄与できるように努める所存です。
最後になりましたが、会員の皆様が良いお年をお迎えできますよう心から願いましてこの稿を終えたいと思います。

藤田保健衛生大学医学部衛生学講座 教授 橋本修二


統計の二次的利用の体制が整備されつつあります。平成21年度の統計法改正によって、公的統計は行政利用だけでなく、社会全体で利用される情報基盤として位置づけられました。利用の促進に向けた対策により、たとえば、統計の集計結果表は政府統計の総合窓口(http://www.e-stat.go.jp/)からファイル形式で入手できます。いわゆる、目的外使用による個票データは審査が簡素化され、承認までの期間が大幅に短縮されました。また、新たに、オーダーメード集計と匿名データの提供がスタートしました。オーダーメード集計とは、利用者が具体的な集計方法を提示し、その方法に従って国の機関が個票情報を集計し、その集計結果表を受け取ることです。匿名データの提供とは、匿名化が施された個票情報を国の機関から提供を受けて、利用者が集計することをいいます。これらの制度と利用の進展は、公衆衛生の研究や活動に大いに寄与するものと思います。

岐阜県健康福祉部 次長 日置敦巳

ピアノの音色

皆さんは、ピアノの音について、「華やか」「心地よい」「元気が出る」「うるさい」「疲れる」などといった感触が、時によって異なると感じられることはないでしょうか。機種による違い、演奏者による違い、同じ演奏者でも演奏の時期による違いは言うまでもありませんが、同じ録音を聴いても、そのときの自分の疲労度等によって異なる気がしないでしょうか。例えば、「元気なときに聴くと感動するのに、余裕のないときに聴くと疲れる演奏」、一方で、「いつ聴いても、それなりにゆったりできる演奏」など。主観的な表現ではありますが、客観的な評価も可能と考えられ、音楽療法や疲労度の指標に活用できるのではないかと思います。個人的な感想ではありますが、後者の例として、少し前に発表されたJarrett K & Haden Cによる”Jasmine”をご紹介したいと思います。
理事の任期を終えるに際し、東海公衆衛生学会のますますのご発展をお祈り申し上げます。

 事務局通信

事務局スタッフ 渡邉優子


今年3月の東日本大震災では、多くの人々が被災し、日本中の人が生と死について考えました。沢山の苦しみや悲しみを前に心が痛くなる事もありましたが、と同時に、助け合い、支えあう人々の優しさや絆に心が熱くなる事もありました。
災害や病気は予測がつかず、恐ろしいもの、でもだからこそ、一日、一日を悔いのないよう精一杯生きていかなければならない・・・・そんな事を強く感じた一年でした。
来年は笑顔が溢れる年になりますように!

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