研究について

光音響画像は従来の画像診断技術ではカバーできない、新しい非侵襲的画像診断技術として世界的に着目されている。従来の光画像技術や超音波技術の長所をそのまま活かしつつ、非侵襲的に高いコントラストで高精細に血管網が画像化できる利点や特徴があることから医療ニーズが高いが医療機器としては未だない。本研究では、世界に先駆けて日本発の光音響画像診断装置を実現し,前立腺癌への応用を目的として実施した。
前立腺特異抗原(PSA)を用いたスクリーニングの普及により2030年には前立腺がん患者人口が世界で約2,220万人と予測されている。陽性例には確定診断のために経直腸的超音波断層法(TRUS)ガイド下での侵襲的な前立腺生検を要するが,画像解像度の低さによるサンプリングエラーのため診断がつかず,がんが見逃されている例や再生検を繰り返される例が多く,がん患者の苦痛となっている。がん組織周囲の血管ネットワークが正常組織と異なることに着目し,光音響画像で血管描出をランドマークとした前立腺がん診断を実現し,「生検の苦痛を軽減し患者に優しい医療技術」の確立を目指す。

具体的には臨床現場へ運搬可能で臨床研究可能な撮像装置プロト機と,経直腸光音響プローブを実現し,医師主体の臨床研究では光音響画像による腫瘍内および腫瘍周囲の血管構築異常をランドマークとして前立腺がん診断及び狙撃生検の精度を向上させる。加えて,現状で前立腺がんの質的診断、および局在診断に対する精度が最も高いMRIでがんが疑われている部位と光音響画像を比較して整合性を確認し,即時性に優れた光音響画像診断技術の有用性を検証した。