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厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)
医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究

第2回班会議 会議録


日時:平成20年10月9日(木)10:00−12:00
場所:国際会議場(国際研究交流会館3階 国立がんセンター築地キャンパス内)
出席:土屋(進行)、有賀、江口、岡井、葛西、川越、阪井、外山、山田、渡辺
    池田康夫先生(日本専門医制評価・認定機構理事長)
    飯沼雅朗先生(日本医師会常任理事)

発言者 発言内容 進行・要旨
○土屋
開催挨拶
それでは時間になりましたので、第2回の班会議を開催いたします。
事務的なことを先にお話したいと思います。最初にお断りしておきますが、前回同様NHKのカメラが回っておりますが、もし不都合なことがあればおっしゃっていただければと思います。班会議ですのでこの発言が責任を生むということはありませんので、よろしければ録画をさせていただけたらと思います。
また、この間、事務局の特に渡邊君が中心になってホームページの立ち上げをやってくれました。まだご覧になってない方もいらっしゃるかと思いますが、この資料の中にも入っておりますのでぜひご覧いただければと思います。そこにも逐語で、議事の内容をお知らせしてあります。従って、次回もなるべく早く、関係の機関あるいは関係者からご意見を聴きたいと思いますので、全員がそろわない状況でも班会議を開いて、その模様が皆さんに逐一伝わるように、このホームページを利用して広報していきたいと思っております。
では最初に事務局の渡邊先生から、資料の確認をしておきます。

開催挨拶
○渡邊(清)(事務局)
資料確認
事務局の渡邊でございます。お手元の資料をご確認いただければと思います。
まず一番表に班会議議事次第から始まる、43ページの資料がございます。傍聴の皆さま方にはそのうち冒頭の8ページをお示ししております。資料3以降は配付資料の一覧のみの配付という形になっております。こちらに関してもご了承いただければ、ホームページなどでアップしていきたいと考えております。
続きまして、カラーの2枚のパワーポイントのスライドが日本医師会常任理事飯沼先生からご提供いただきました12ページの資料、生涯教育カリキュラム−総合診療医養成に向けて−(案)というグリーンの冊子と、日本専門医認定制機構の池田先生からご提供いただきました日本専門医概報平成19年(2007年)度版および専門医制機構整備指針(第2版)、もう一点、日本専門医制評価・認定機構ニュース、以上を配付させていただいております。
傍聴席の方によっては一部資料が不足している場合もあるかと思いますが、配付した資料としては以上でございます。

資料確認
○土屋
議事進行
はいどうもありがとうございます。資料の過不足はないですか。報道の方、これらは皆公表されている資料ですのでホームページなどを参考にしていただければと思います。

では早速ですが、本日は日本専門医制評価・認定機構理事長の池田康夫先生と、日本医師会常任理事の飯沼雅朗先生にお越しいただいて、機構あるいは医師会でお考えの専門医、あるいは家庭医・総合診療医についてご説明を受けて、また皆さまからご質問あるいはご討議をいただきたいと思います。一応班会議ですので班員の方を優先しますが、時間に余裕があれば、傍聴の方からもご意見を承ればと思います。12時までという予定でやっておりますのでよろしくご協力願います。

それでは最初に池田先生からご説明をいただきたいと思います。

議事進行
○池田
専門医のあり方と専門医制評価・認定機構
機構の沿革、使命
機構の構成
専門医のあり方についての考え
専門医制度のあり方
専門医に求められる資質
認定と更新の考え方
学会の領域
専門医の適正数
日米の専門制度
整備指針とヒアリング




慶應大学の池田でございます。現在日本専門医制評価・認定機構の理事長ということで、本日は、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
ご存じのように、今医療の役割分担ということで、実際に各方面から、専門医のあり方というものについて多くの議論が巻き起こされていますし、専門医を名乗れる医師というのはどういう医師なのか、ということを明確にしていかなければならないという状況になっています。そしてこのわれわれの専門医制評価・認定機構というのは、各学会がそれぞれ認定している専門医制度というものを評価して、患者さんに分かりやすい制度として提示をするようにお手伝いをするという、そういう形の機構でございます。
この機構がどういうことをやっているのか、どういう経緯でこの機構が成り立ってきたのかについてお話しすると同時に、我が国の専門医制度の問題点、例えば専門医の適正な数というのはどれくらいなのか、あるいは診療報酬というものについて専門医にどういうふうにインセンティブを与えていくのかというようなこと、そして一番大事なのは、専門医と名乗るからには、どういうトレーニングの過程を経て、どのような知識あるいはスキルを持って患者さんの診療にあたっているのかということ、そして患者さんから見てそれぞれの専門医制度というものが分かりやすいような形になっているのかということについて、示していく必要があるだろうと思います。この専門医制評価・認定機構に関しては、今日お手元にあります概報とそして整備指針、それである程度のことはお分かりいただけると思いますので、ぜひそれをお読みになっていただきたいと思います。そして私は今年の6月に、この機構が社団法人化したのを受けて理事長に推薦されたということがありまして、そのニュースを先生方のお手元にお届けしましたので、それをご覧いただいて、少なくとも私がどういうスタンスでこの機構を今後運営していくかということについて、ご理解いただければと思っております。

専門医のあり方と専門医制評価・認定機構
最初に、ここの経緯、機構そのものの理解をいただくということで少し準備をしてきたんですけれども、英語のスライドで申し訳ないんですけれども、日本で専門医制度というのは、1962年に麻酔科学会が麻酔のインストラクターというボードで最初に作られました。それ以来1981年にカウンシル・オブ・メディカルスペシャリティー、これは22学会が、内科学会や外科学会や小児科学会、日本のいろいろな学会が集まってカウンシルを作ったということです。そしてその後1986年には学会だけではなく日本医師会、日本医学会と一緒になって専門医制度を考えようという方向になってきたわけですけれども、その流れが、その後少し中断しました。そして2002年に、厚生労働省から専門医の広告を、いわゆる規制緩和の一環として解禁しましょうということで、ある外形基準のもとに専門医を広告してもよろしいということになったわけでございます。その外形基準というものに関しては、概報の後ろの方に9つの基準が書いてありまして、こういう基準を満たせば学会の認定する専門医を広告してよろしいと。ですから一般の患者さんにはこういう専門医がありますよ、と分かるわけですけれども、しかしその内容、どういうトレーニングを受けてそれが認定されたかという課程、あるいは医師の資質ということに関してはあまりよく分からないという問題がございます。そして学会それぞれが専門医制度を作って名乗れるわけですので、仮に似たような学会が2つ3つあったときにそれぞれが専門医の制度を作って名乗ったときには、かなり混乱を招くということがあるのではないかと思っています。
そして2003年に現在の、中間法人で最初スタートしたんですけれどもJapanese Board of Medical Specialties というものができました。当初は52学会が参加をしていました。現在は社団法人化しまして69学会が加盟しているということでございまして、そういうことでこの機構が成り立っております。明らかにこの機構のミッションというのは、ここにありますように、医師の持っているサーティフィケーションのスタンダード(認証の基準)を高い水準に保つということだと思います。そしてそれぞれの学会と協力をしながら、あるいは学会以外の組織とも協力しながら、そういうものを打ち立てていく、というミッションがあるということでございます。それはとりもなおさず、この専門医によって提供される日本の医療の安全性、質というものが担保される、それが最終的にあるわけで、専門医制度というのは学会が勝手に作って運営するというものではなくて、これは明らかに患者さんのためにある一つの制度であると認識することが必要だと思います。
それから医師のトレーニング、医師の知識・技術を常に一定の基準に保つ、あるいはそれ以上に保つ、そのためにお手伝いをする、そういうことでございます。

機構の沿革、使命
2月の段階で66と書いてありますけれども現在69学会が参加しているということであります。機構には、総会、理事会等があります。そしてこの機構には、4つの委員会がございます。エグゼクティブコミッティー、評価認定の委員会、広報委員会、あるいは財務委員会等がございます。その他にアドバイザリーコミッティーというもので、外部の方たちにも意見を聞くというような形でこの機構が運営されているわけであります。

機構の構成
ここで少し、認定をする、あるいは医師の資格を更新する、そういうものの原則というものをある程度示していかないと日本の専門医というものは国民に理解されないであろうということがございます。
(スライド5枚目)3番目に書いてありますように、それぞれの専門医というのは一つ一つの医療の領域で、何人くらい必要なのかという議論を真剣にしていかなければいけないであろう。非常に簡単な卑近な話をしますと、例えばある病気で、患者さんが年間5,000人くらいいて、手術が5,000件あるというときに、専門医が7,000人、8,000人いてどうなるだろうかと。やはり専門医と称するためにはその患者さんのそのケアに非常に熟達していなければいけない、ということですから、ある数の患者さんを診ていなければいけないし、当然のことながらそういう手術もやっていかなきゃいけない、ということであれば、当然のことながら数というものに関して考えていかないといけないだろう、ということがあります。それから最後にはそういうふうに努力をして医師が専門医の資格を取って、そして患者さんのために安心と本当に高い水準の医療を提供する、そのための努力に対してですね、やはり何らかのインセンティブを与えるようなことを考えるべきではないか、というようなことをきちんとした方向性として示すべきであろう、ということが議論されているわけでございます。

専門医のあり方についての考え
全体的に専門医というものを、もう少し一般の方たちに知ってもらうということが必要だろうと思います。これまでは各学会が、学会によっては非常に熱心に、一般の方たち、患者さんを対象に専門医制度というものを訴えて、そして専門医制度によって認定された医師はどんなトレーニングの過程を経て、どんな技能を持っているか、何人くらいの患者さんを実際に診た経験があるか、というようなことを言っている学会もありますけれども、かなり、正直に言って学会によってばらつきがあります。69学会もありますと、その学会の方針によってかなり凸凹があるということです。これはオフレコにしていただいた方がいいかもしれないのですけれども、専門医をたくさん作ると、まず専門医を更新しなきゃいけないので、更新のためには学会に出席しなきゃいけないし、更新料もたくさん入るということで、たくさん専門医を作れば学会の収支が非常に安定するというような、一部に、そういう考えで専門医を作っている学会もあると聞きますけれども、今この時代に、それが許されるということではないだろうと思いますし、やはりその学会の作った専門医制度というものの標準化、患者さんから見て分かりやすいアクセプタブルな(認められる)、そういう仕組みを作るというような格好で、この機構が努力するということだと思います。そのことによって何回もお話ししますけれども、ドクターのスキル、そしてそれが結果として患者さんのより良いマネジメントにつながるように貢献しなければいけないということだと思います。
それから3番目にあるのは、認定する仕組み、それから認定された医師たちが、やはり一般の方たち、患者さんたちに公開されているということが必要だと思いますし、その仕組み作りというものにこのボードというものが重要な役割を果たしているだろうと思います。しかしそうは言っても、やはり専門医を育成するという任務そのものは、それぞれの学会が負うべき責任だろうと思います。それぞれの学会はいわゆるプロフェッショナルな集団でございますので、その方たちが一番その領域の専門医はどうあるべきか、ということをよくご存じなわけですから、各学会がやはりプロフェッショナルとしての誇りを持って、専門医制度を運営していただきたいと思います。しかしそれがうまく機能しているかどうか、検証あるいはそれを全体として評価することが必要です。場合によっては、専門医を育成している認定施設は、学会によっていくつも認定されているわけですね。学会によっては500、600、1,000くらいの認定施設を認定しているところもあるわけですけども、それぞれの認定施設が本当に専門医を育てるだけの教育プログラムを持っているのかどうか、もし1つの病院がそういうプログラムを持っていないとすれば、いくつかの病院がネットワークを作りながら一人の専門医を作っていくというような仕組みでも良いと思いますし、そういう認定施設に対してやはりオーディット(監査)あるいはサイトビジット(訪問評価)等をしていくと。そしてより良い学会の専門医制度の確立のためにお手伝いをする、というような機構として、中立的な第三者的な立場をもう少しはっきり明確にしていく必要があるだろうと思います。今までは学会が集まって機構を作っていたということがございます、今もそうなんですけれども、それであるとやはりどうしても学会の意向に引きずられる、学会によって立場がそれぞれ違う、しかしそれでは日本の医療の中での専門医制度というものはどういう位置づけであるか、ということがなかなか分かりづらいということがございますので、中立的な第三者的な立場で各学会が作っている専門医制度を評価そして認定していくというような形で進みたいと思います。

専門医制度のあり方
ここで簡単に、いわゆる専門医というものには何が要求されるかということですけれども、これは皆さんよく考えれば分かることだと思いますけれども、非常に基礎的なそして先進的な医学の知識を持っている、それからテクニカルスキルが非常に高水準であると、そしてそれと同時に十分な患者さんとのコミュニケーションスキルを持っているということ、そしてこれも非常に大事ですけれども、エシカル(倫理的)にそしてセーフティーマネジメント(安全管理)という、今この班で非常に大事にしてテーマとしてやっている、安全と信頼の医療と、そういうメディカルエシックス(医療倫理)とセーフティーマネジメント、こういうものに対して十分な考えを持っている方というのが専門医として要求されるわけですから、これを基本にして、それぞれの学会で認定された専門医がそのようなものになっているかどうか、ということの検証をしていくということだと思います。

専門医に求められる資質
これは、実際にサーティフィケーション、認定あるいは更新の考え方を示したものでございます。
ここにも書いてありますように、「パブリックリクエスト」ということがございます。2番目の段落に、Principles are set focusing on the public request for safe and high quality patient management and for transparent certification processと書いてありますけれども、ここでも患者さんたちにとって非常に分かりやすいサーティフィケーション(認定)のプロセスが必要であるし、安全でそして高水準の患者マネジメントというものを当然専門医に要求しているわけですから、それを満たすような格好にしていってほしいということです。で、一番われわれ心配しているのは、今、日本の医学会に属している学会でも今105あると思います。そして臨床系で78だと思いますけれども、それがほとんど専門医制度を持っています。日本医学会はあまりオーバーラッピングするような学会は日本医学会に加入させないということで、非常に厳しい医学会の加入条件を設けているんですけれども、学会を作るというのはそれぞれ任意に作れるわけですので、ある意味で似通った学会ができるということも、ままあるわけでございますけれども、そういう学会がそれぞれの専門医を作るということになりますと、それぞれの専門医の異同というものが患者さんにとって分かりづらい。それならば、いくつかの学会が一緒になって、ひとつの専門医、患者さんにとって分かりやすい一つの専門医を作っていくような方向に指導していくというような格好で進めるべきだろう、ということを考えております。

認定と更新の考え方
例えばこれは、ここに加盟している学会が、どういう区分であるかということを示したものですが、基本領域と称する18の学会があります。それ以外にサブスペシャリティー(専門領域)の学会、あるいはこれらと異なる学会、総合的な学会等がございます。一応ここにカテゴリーとして分けたんですけれども、カテゴリーというのはある意味で重要でごさいます。患者さんに分かりやすいということで見ると、基本的な領域と、それから派生してその上にあってさらに再分化した領域の専門医という形で整理されると、患者さんにとっては分かりやすいということですので、カテゴリーの整理というものが必要かと思います。ちなみにアメリカでも確か24だと思いますけれどもジェネラルサーティフィケートボードというのがございまして、その他は全部サブスペシャリティーということでサブスペシャリティーは100以上あると聞いています。
そんな形ですので、我が国の専門医制度もそういう目で少し整理をしていくということが必要かと思います。

学会の領域
先ほどからお話をしておりますけれども、それぞれの専門医というのはどれくらいの人数が適切かということで、ここにざっとそれぞれの学会の専門医の数を挙げてみましたけども、この辺はそれぞれの学会の考え方もあるかと思いますけれども、それについての議論、国民的な議論もある程度しながら、なぜこの数が必要なのか、適正な数はどのような数値に基づいて考えていったらいいのか、ということも考えていく必要があるということで、社団法人化して中立的、第三者的立場の機構としてスタートする機会に、各学会に問いかけてみようと思っております。

専門医の適正数
これはアメリカの状況を示したものです。この班の中では外山先生が一番お詳しいんではないかと思いますので、また後でお話が出るかと思いますが、アメリカの場合はレジデンシープログラム(研修プログラム)というのが、数が決まっている、それからレジデンシープログラムに入れるドクターの数が決まっているということで、必然的に教育プログラムの内容と場所によって専門医の数が決まってきてしまう、というところがあります。専門医制度の考え方がそういう意味で少し違う。日本では、学会の会員であってある年限が過ぎれば受験資格があるという格好で、受験してある一定のハードルを越えれば専門医であるということで、人数が増えていくということだと思うんですね。ですからプログラムオリエンテッドの専門医制度をどう構築していくかということも、学会と一緒に考えてある程度の方向性を出していくことが必要だと思います。アメリカでは専門医の試験というのは、90パーセント100パーセント通るんですね。プログラムを受けた人が当然専門医として教育されるわけですから通れるわけですね。しかし日本は学会によっては非常に簡単に専門医になりやすい、ということで批判がありますけれども、同じパーセンテージでも意味が違うということをご理解いただきたいと思います。

日米の専門制度
もう時間が過ぎましたので、そろそろやめますけれども、これは整備指針を見ていただければ分かると思うんですけれども、こういう専門医を認定するために、どういうような考え方でいかなければいけないかということを示したガイドラインが作られ、それに従って実際に18の基本領域の学会はこの専門医制評価・認定機構でヒアリングが終了いたしまして、この整備指針に従って専門医制度が整備されているということが分かりました。場合によってはここを少し直してほしい、それから例えばエシックスのところをもう少し強調してほしいとかいう注文を付けて直していただいて、基本18学会に関して日本専門医制認定・評価機構でアプルーブ(承認)したという形になっています。現在サブスペシャリティーの学会のヒアリングをさせていただいて、その評価をして直していただくところは直していただくことを今やっているところでございます。時間の関係で一応私はここで話を止めさせていただいて、議論に参加させていただきたいと思います。少しオーバーして申し訳ございません。

整備指針とヒアリング
○土屋
機構の目指す方向性の確認
はい、どうもありがとうございます。通称専認協に期待するところは大変大きいわけですけれども、いろいろご質問があるかと思いますが、私から班長として確認をいくつか先にさせていただきます。
1つは最後の方で先生の述べられた日本の専門医は学会中心だけど、アメリカ式なのはプログラムオリエンテッドだと、そこを機構としては目指すという合意と考えてよろしいですか。

機構の目指す方向性の確認
○池田
プログラムオリエンテッドの専門医の育成制度
これは学会の方に投げかけたいと思うんですけども、まだずっと長い間日本の専門医制度は学会が作ってきて、当然学会がこれからも作っていかなければいけないと思います。学会の方に「専門医というのは何人くらいその領域では必要とお考えでしょうか」というような問いかけ、それからやはりもう少しプログラムオリエンテッドの専門医の育成制度というものに対して、専門医制の指針を整備していただく必要があるのではないかということで、その辺の意向を各学会にまずはっきりお聞きしたいと思っています。

プログラムオリエンテッドの専門医の育成制度
○土屋 理事長としては方向性はプログラムオリエンテッドの方向。だけど、まだ機構参加の各学会の全部の同意は得られていない、という段階でしょうか。

 
○池田 そうですね。各学会が作っている専門医制度というのは非常に長い歴史がありますので、一朝一夕に変えられない学会もあると思いますけれど、おそらくこれは、今後専門医にインセンティブを付けよう、といったときには当然患者さん側からそういう要求が出てくるんではないかと思っています。

 
○土屋
適正な専門医数
2つ目は、先ほどの適正な専門医数、これは一番皆さんの関心事だと思うんですけれども、これをどこが決めるか、今は各学会がやっているわけですけれども、これを最終的には機構の本部というかコミッティーか何かで決める方向性なのか、やはり各学会が決めたものを調整する、あるいは容認するというという方向なのか、その辺はどうですか。

適正な専門医数
○池田 この適正な数を出す、というのは非常に大事ですけれども、難しい問題だと思います。何が適正かということはなかなか言いづらい、ということがございますので、各学会には、どういう試算の下に適正な数を考えていらっしゃるのか、ということについてまず問い合わせた結果として、そういう議論を巻き起こす。そのときには、おそらく日本の医療の中で専門医の果たす役割というものを考えたときに、今抱えている日本の医療の、診療科の偏在あるいは地域医療の問題等も、解決するひとつの策になっていくのかな、と。例えばプログラムについては、各都道府県に非常に優秀なプログラムを置く、ということになれば、当然そこで専門医が育っていく素地が出てきますので、地域格差の解消にも一石を投じるような格好になっていくのではないかなと思っています。

 
○土屋
学会の会員歴
あと私から3つ目は、先ほど各学会の総会で云々というのがありましたけれども、機構のこの第2版の専門医制度整備指針では、3ページ目に「基本的には会員歴を問わない」、と明記してあるのですが、結局各参加団体が守ってない、という解釈でよろしいですか。

学会の会員歴
○池田 それは、会員歴は問わない、ととるべきだと思いますけど、実際にはほとんどの学会では会員歴何年ということを決めているというのが現状だと思いますけど、その会員歴をある程度決めることが悪い、ということではなくて、問わない、というのはむしろ無くてもトレーニングの過程で、そういう領域できちっとした技術等があるという認定ができれば、良いのだろうという、そういう考え方でございます。

 
○土屋
「第三者機関」の性格
最後はちょっと抽象的なことになってしまって申し訳ないのですが、先生のご挨拶にも、この整備指針の最初の挨拶にも「第三者機関」という言葉がよく出てきます。いろんな場面でよく出てくるのですが、第三者というのは法律用語では、取引や契約の当事者でない主体、この「当事者でない」という定義がかなりあいまいだということが一般的だと思うのですが、それはともかくとして、第三者機関の性格として一般的に2つに分けられるだろう、と。1つ目は、予断無く専門知識や能力を活用して施策や事業をより良くしていこう、という目的を持ったタイプ、この定義は社会システム研究本部の見解ですが、このタイプのものは、道路関係四公団民営化推進委員会などが該当して、施策や事業の内容まで検討する、かなり強力なものであると思います。2つ目は内容ではなくて、立案や評価の手続きやプロセスが適正かどうかをチェックするということで、入札管理委員会などが該当するとあります。今までの経過のお話では、後者ですよね。内容まで踏み込んで指示を出すということは今のところは現実には思っていないし、近い将来にはそこまではないと、そう解釈してよろしいのですか。

「第三者機関」の性格
○池田
機構の専門医審議会
そうですね。やはり各学会の、プロフェッショナルの集まりとしての学会の考え方を基本にしながら、しかし学会が集まって作っている機構だけで物事が決まっていく、ということになりますと、患者さんの視点等、あるいはもうちょっと違った形の意見というのが反映されづらいというのがありますので、今は専門医審議会というものを作りまして、実はメディアの方たち、あるいは日本医師会の先生方、日本医学会の先生方等を含めた審議会で、今の方向が良いのかどうか、ということの議論をいただいている、というのが現状です。

機構の専門医審議会
○土屋 今先生がおっしゃった審議会というのは、今朝ホームページでもう一回プリントアウトしたのですが、「現況」のところで、「平成18年8月に日本医学会、日本医師会、当機構及び学識経験者からなる「日本専門医制審議会」が発足し」、という、このことですか。

 
○池田 はい。

 
○土屋 これは審議内容はどこかで公表されているのですか。

 
○池田 まだ公表されていません。

 
○土屋 私から確認したいことは以上ですが、班員の先生方からご質問を。
はい、阪井先生。

 
○阪井
機構のミッション
成育医療センターの阪井です。ありがとうございました。よく分かりましたが一点だけ確認したいことがあります。機構のミッションとして、先生は専門医のトレーニングの質を向上、維持させるということ、2番目には、その前に患者さんのためだとおっしゃったと思うのですが、私はそこがポイントかな、と思って聞いておったのですが、そのような理解でよろしいでしょうか。

機構のミッション
○池田 はい。

 
○阪井
外部の人材の参画
もしそうだとすると、先生は機構にアドバイザリーコミッティーですか、外部の人の意見を聞くシステムがあるとおっしゃっておられましたけど、もし私の理解が正しいのであれば、先生のボードの中に、理事のメンバーの中に外部の人、「外部」という意味は私の理解では医療を受ける方、患者さん、つまり医療の対象とされる方を入れるのがよろしいのではないか、と感じるのですが、その辺はいかがでしょうか。

外部の人材の参画
○池田 非常に大事なご指摘だと思います。やはり機構が、あるいは各学会もそうだと思うのですが、各学会の運営あるいはこの機構の運営が、専門医を作るにあたってどういう仕組みで動いているのか、ということのtransparency(透明性)が求められますので、そうしないとなかなか理解されませんので、それに向けてどういう方たちが機構の運営にあたるかということについては、先生のご指摘は非常に傾聴に値すると思います。
今は入っていません。今は各学会の定款が決まっていまして、定款によって各学会から理事が選ばれて運営されているという格好になっていますけれども、その定款を変えないとなかなかそういう形にいきませんので、そのためにも外部の方たちの意見を吸い上げるというような仕組みは別にどうしても作らなくてはならないと。定款を変えてそういう格好にするかどうかというのは、今後議論をする価値はあると思います。

 
○土屋 他に、外山先生。

 
○外山
具体化と実効性
大変興味深く拝聴したんですけれども、いくつか確認を先生に、と思っているのですが。
1つは、今の認定制機構の機構というものが、日本の専門医を作っていく上で、一番上のジェネラル(総論的)なことを含めてやる委員会、理事会である、というふうに解釈をしてよろしいですね。

具体化と実効性
○池田 はい。

 
○外山 そうしますとその次に、ジェネラルなことをおやりになる場合には、具体性と実効性といいますか、そういうものがないと組織というのはうまくいかないと。

 
○池田 はい、そうです。

 
○外山
下部機構、事務局の仕組み作り
総論はこうですよということでは全く先に進まない、と思うのですね。そうしますと、先生の会の中で今度は下部機構といいますか、アメリカには下部機構がございますよね、その下部機構が具体的に、足を使って目を使って耳を使って動くと。そういう組織は今後考えられているのでしょうか。それをまず最初に。

下部機構、事務局の仕組み作り
○池田 それがないと、今の理事会あるいは各学会が集まって作っている機構だけでは、例えばサイトビジットであるとか、具体的なアクションを起こすという意味で、あるいは評価委員会でも、理事の方あるいは会員の方から評価委員会のメンバーを募っているのですが、日本の学会がそうであるように、専門的にそういうものだけにコントリビュート(貢献)する方がなかなかいないということで、非常に負担がかかっているという状況でありますので、先生がおっしゃるように、そういう足腰を強くする仕組み作りは今後当然作っていかなくてはならない、と思っています。今実際にやり始めたのですが、そうするとやはり非常に負担がかかるということがございます。

 
○外山
学会に対するアプローチ
その辺の財政的な支援といいますか、会員レベルのあるいは第三者の、先生がおっしゃった通りのいろいろな別の職種の理解のある方のサポートは非常に必要だと思っています。アメリカでもものすごいお金がかかっている、ということは言われております。

 
それから第2点は、いわゆる学会がプロフェッションの集団なので、学会の意見とか各学会でまとめてもらう責任があるのだという、それはごもっともだと思うのですが、そうしますと学会がそれを行うだけの実際の能力とか精神力だとか、それから誠実さ、そういうものが本当にあるのかということになると、少なくとも私が属している学会においては、極めて懐疑的な部分があります。そうすると、懐疑的な問題を抱えている学会に、そういうものをある程度振ってしまわなければならないところに、非常に基盤が脆弱(ぜいじゃく)な感じがするのですが、その辺に対してもっと突っ込んだ、学会というものに対して、「こうすべきなんだよ」というような、アプローチを今後されるのでしょうか。

学会に対するアプローチ
○池田 おそらく私が最初に言いました通り、69学会が加盟していて、この加盟している学会以外にも専門医制度を持っている学会というのはかなりあります。そういう学会はこの機構での議論から外れて、極端なことを言うともう少しルーズに専門医制度を作るかもしれないということがあります。この69学会でも非常に温度差があります。きちんと専門医制度を運営するために、多くの医師なり事務局を張り付けてやっている学会もあります。割にゆったりとやっているところもあります。温度差があるので、やはりそれの標準化ということをやらない限りは、「専門医」という言葉が国民にとって理解されにくい形になるのだと思いますので、やはり機構としてはそういう方向に踏み出さざるを得ないし、それに対する責任を持たないと中心的な機構にならないのではないか、と思いますので、そういう仕組み作りというのを、これは行政の方も非常にそういう面ではサポートしてくださっているように私は思っていますので、それを含めて考えたいと思っております。

 
○外山 他にもいろいろあるのですけれども、ありがとうございました。

 
○土屋
事務局機能
今のことで少し確認したいのですが、外山先生は具体的あるいは実効性の問題を指摘されましたが、メインのコミッティーは先生のところで作っていらっしゃる理事会の方、その下に下部のコミッティーを作るとして、結局はバックアップの事務局機能、官僚機構というか、そういうものはどの程度の規模で今動いているのですか。

事務局機能
○池田 まだ事務長以下数人の規模でございます。ですからそういう面では、例えば日本の学会で言えば日本内科学会、外科学会等、事務局が30人とか40人規模であります。産婦人科学会、循環器学会等も、きちんとした事務局機能を持っていると思いますが、そういう事務的なサポートがないと、医師だけが理事会に出席して、会員も医師ですから、それぞれの仕事を持ちながらこの大事なものに立ち向かっていく、というのはなかなか難しいと思います。スタートとしては今、そういう方向に動き出したと言ってもよろしいのじゃないかと思います。

 
○土屋
・上部組織の強化
班長がたくさん話して申し訳ないのですが、たいがい委員会とか理事会をやると、そのときは良い意見が出てくるのですが、次の理事会までに何も実行されない。また同じ議論で、というのを繰り返していくと、何度も同じ状況が続くという感じがするものですから、ちょっと確認したのと、外山先生も私も胸部外科学会に属していて、かなり厳しい条件の専門医を育てる、と言うと大抵理事会から落とされたり、会長に立候補しても落とされる、ということで、中からの改革がかなり難しいという実感があるのですね。それで逆にこの上部組織というか、こういうものが強化たらいいという願いがありますので、期待は大きいと思っております。
他にご意見は。はい。

上部組織の強化
○江口
指導医、専門医の教育体制
帝京の江口です。今までのお話では専門医制度整備指針に記載されている「指導医」について何も言及されておられなかったと思います。専門医養成のための教育方法は非常に重要と思われますが、「指導医」の位置づけはどのようにお考えでしょうか。

指導医、専門医の教育体制
○池田 はい。

 
○江口 つまり、学会によっては名前だけの「指導医」というところも現実にはあります。今後この「指導医」と「専門医」との関係はどのように整理されるのでしょうか。

 
○池田 はい、ありがとうございます。現在、機構では指導医というものの定義・認定はあえてしていないのですが、おそらくプログラムオリエンテッドの専門医の認定制度ということになると、どこの施設でどういうプログラムが動いているか、それは誰が指導しながらやっているのかという、そういう仕組みになっていくだろうと思います。そういう点では江口先生のおっしゃったように、その施設では誰が教育を担当しているか、それはどういう方なのかということになると、おのずと指導する方の役割あるいは資格というものが決まってくるのではないかと思います。今の段階で、指導医というのはいろんな学会がいろんな定義をしているので、あえて「こういうことだ」とは言ってないのですね。そこが先にあるよりはむしろ、どういう教育プログラムを作るか、どういう施設でやるか、という方向性を持ちながら、先生がおっしゃったような指導医を位置づけたら良いのではないか、というのが私の考え方でございます。これはまだ機構の中で十分にディスカッションしていることではございませんけど、そういう方向が当然のことながら出てくるのではないかと思っています。

 
○土屋 外山先生、アメリカには指導医という分類はありますか。

 
○外山 ありませんね。専門医だけです。

 
○土屋 結局、専門医を取っているか取っていないか、トレーニング中かトレーナーか、のどっちかですよね。

 
○外山 そうです。2種類のうちどちらかしかないということです。

 
○土屋 ボードを取れば指導的立場の人ということですね。

 
○外山 そういうことです。

 
○土屋 ということは、裏を返せば日本の今までの専門医は信用されない、と。

 
○外山 そういうことだと思います。

 
○土屋 20年以上の歴史があれば、最初の認定を受けた人は20年たっている、ということですから、十分指導力があるはずなのが、もう一回指導医の資格を考えないといけないというのは、そのレベルでないものをたくさん認定しているという、江口先生そういう解釈でよろしいですか。

 
○江口 認定施設の側からいうと、「指導医」がいないと「専門医」の申請が提出できないとい理由で「指導医」という身分があるのではないでしょうか。 今後実質的に「専門医」(=「指導医」)と認識するには、専門医養成課程で「教えかたの技術」も身に付くプログラムが必要です。

 
○土屋 指導医を云々するとすれば暫定的に、今まで専門医がいないから必要だということがあるでしょうから、もしそれで勉強するなら、アメリカの100年前のことを勉強しないと、発足時の状態はどうかということは分からないですね。これはきちっと専門医制度が動けば2段階でよろしい、と。教育を受けるもの、あるいは教育をするものという括(くく)りですね。それの専認協の認識としてはどうですか。

 
○池田
総合的な領域の専門医
そうだと思いますね。専門医認定制機構は本当にたくさんやらなければならない。この日本の専門医制度というものが、まだ形として確立していない、各学会任せであるということもありますので、やらなければならない仕事があると思います。一つには今プライマリーボードといっている各内科、外科、小児科、泌尿器科、眼科、婦人科等がありますが、これは今専門医という名前で呼んでいます。内科学会だけが認定医という名前で、その上にサブスペシャリティーが乗っているのという格好になっているのですが、これはこれからは患者さんを診るには取らなければいけない資格として位置づける専門医というよりは、総合的に診られるその領域の医師であるという、そういう定義でその上に立って本当のサブスペシャリティーを選ぶという方向に持っていくような方向ではないかなという、これは私の個人的な意見ですが。

総合的な領域の専門医
○土屋 他には、はい、岡井先生。

 
○岡井
機構の運営のあり方
昭和大学の岡井ですが、これまでお話があったこととちょっと重なる部分もあるのですが、いわゆる専認協としてこれまで日本の専門医制度の制度化、あるいは体制固めに関して、だいぶいろいろな動きがあったのですが、実際には私たち学会、そこに所属している学会の目から見ると、あまり著しい前進があったとは言えない。そういう認識を持っている学会は多いと思うんですね。今お話があったように、機構が今回公益法人になったのですけど、社員が各学会なのですね。

機構の運営のあり方
○池田 そうです。

 
○岡井 お金、運営費は各学会が出している、と。そうするとこの立場では学会の意向を整理するなり集積して、それで何かの活動をやる。活動をやるとすれば、専門医制度を日本でどういうふうに定着させるか、というようなことを例えば厚労省と交渉するとか、そういう形になるんですね。ところが機構の意思は社員の意向で決まるわけですから、学会の言うことを聞かざるをえない。先ほどもお話があったように、専門医制度というものは、これは学会のためにあるものでもなければ、医師のためにあるものでもない。患者さんのため、国民のため。ところが、各学会の代表で出てくる人は学会の会員の利益を考える立場にいて、それぞれの学会が自分たちの学会のいいようにしようとする。そこに一つの矛盾があるので、この機構はそういう各学会の代表者が集まっているだけではなく、もう1つステータスをあげるような形の機構にもっていかないと、やっぱり今までどおり各学会のいろんな意見を聞いていて、結局何も進みませんよという形になりかねないと思うのです。今の組織をもう一歩上にあげる努力をする必要があるのじゃないか。そうすればもう少し前進する力になるかなというように考えます。

 
○池田
第三者機関としてのあり方
大切なご意見だと認識しております。最初に私が認定機構の歴史を申し上げたのですが、かなり長い歴史を持っていまして、学会が集まってきて専門医制度を考えましょう、という成り立ちはプロの集団の集まりとして良かったと思うのですが、はっきり専門医制度というものが日本の医療の中でどのような役割を果たすかという、患者さんから見てどうか、という視点に変わってきていますから、そういうことであれば、先生がおっしゃられたように学会だけが作っている業界、あるいは学会がお金を出している機構で、学会の意向を無視して方向性を決めるというのは、形としてなかなか難しい状況になってきていると思います。これは第三者的、中立的というからには、やはり経済的にもあるいは組織としても、それにふさわしい組織というもののあり方というものは当然模索していかなければいけないだろうと。現在、経済的基盤を少し確立するために少し努力をさせていただいているということでございます。

第三者機関としてのあり方
○土屋 先ほど阪井先生がご指摘になったのですが、今専認協が各学会の集まりである、と。アメリカの先生ご指摘の委員会を見ると、学会の代表も出ていますけれども、学部長の代表とか病院長の代表とか、あるいは医師会の代表とか、そういう同じ医者でも違う職域、それを全部網羅している、あるいは教育の専門家を網羅している。それだと先ほど提言された第三者的な機構という形になる。かなり綱引きができて、関係者がいても第三者的な活動ができる。今の専認協を見ていると、学会の代表ではあるけれども、他の分野からの意見が欠けているようなところがございます。先ほどの審議会では医師会が入っていますけれども。

 
○池田 そのご批判は当然あるので、第一歩として審議会というもので、日本医師会、日本医学会、あるいは有識者、メディアの方たちが入ったような審議会を設けて、中立性、第三者的な立場をある程度反映させたい、ということで作っているわけであります。

 
○外山
学会の体質のあり方
今の問題ですが、ラディカル(根本的)に考えてうまくいくといい、と僕は思うのですが、ラディカルというのは2つのことがあって、例えば、今の日本の学会自体のあり方は決してきちっといっているとは私は思いません。それはアメリカの学会と比べるとそうなんですね、どの学会においても多分そうだと思いますが、少なくとも私の所属している学会では。だから学会の体質を基本的に変えるようなインセンティブをどう与えていくか、ということが一つ。そちらをやるということで、今先生がおっしゃったこと、土屋先生もそうだと思うのですが、同じような形で変えていくことができると思うのですが。他の職種、例えば学部長ですとかプライベートフィジシャン(開業医)のメンバーとか、アメリカではレジデントも入っております。異業種も入っているのですね。そういう形で学会だけの意見で物事が決まっていかない、そこにブレーキがかかっていると思うのですけれども、アメリカでも25名のメンバーの中で20名は学会関係の人間で、多数決をすると学会関係者の意見が通ってしまうのだが、にもかかわらず、それでもそれなりの公平性と客観性というものが他のメンバーが入ることでやはり保たれている、と私には思えるんですね。ということはやはり学会の質に対して、ある程度切り込まないと、基本的な問題解決にはならないのではないかと思います。

学会の体質のあり方
○池田
各学会の改革
学会に対するご指摘はある点あたっていると私は思うのですが、ある領域の学会では、先生がおっしゃった形で学会のあり方を真剣に考えて変わろうとしている学会はかなり見られます。私の知っている学会、あるいは私は、日本血液学会に所属しておりますが、日本血液学会は70年の歴史を持つ学会ですが、50年の歴史を持った似たような学会があったのですが、昨年それを一つの学会にして、やはり患者さんあるいは海外から見て分かりやすいような学会のあり方を模索しようということで、会員の総意で変わってきたんですね。これは70年50年の歴史があるので、一気に変えることは難しいんですけれども、そういう動きはあちこちに今見られていますので、私は学会は少しずつ、今のこの日本の医療の現状を見たときに自分たちが何をしなければいけないか、ということを考えると当然、変わらざるをえない状況になってきているのではないかと思いますので、私は学会がそれぞれ、今までは学問の、言ってみれば「交流」で終始していたのが、やはり社会的な「医療」をもう少し中心に置いて学会も考えようとなると、医療ですから社会性を持たなければいけないし、対患者ということをもっと意識しなければいけない。ところがもともと日本の学会は学問的なことをディスカッション(議論)をするためにできた経緯がありますので、そこは社会情勢を踏まえて学会も変わりつつあるのではないかと思いますので、そこは見ていきたいと思います。そのスピードは、確かに学会によってさまざまだと思いますので、専門医に対する考え方もさまざまだと。それをどうやってまとめていい方向に持っていくか。ここの機構の持つ課題は非常に重要で、任務は重いと思いますが、その方向に向かってそれぞれの学会の方、あるいは患者さんたちの意見も吸い上げながら、一歩一歩進まなければいけないと思っております。

各学会の改革
○外山
外科系の学会
そういう努力をされているところには敬意を表したいと思うんですけれども、外科系の学会で、何かそういう改革をやっていこうという情報はお持ちですか。 外科系の学会
○池田 あります。外科系の学会は、手術をするという、そのスキルを大事にしますので、手術を全くしていない人は専門医として名乗るのはおかしいのではないかという議論がございます。あるいは手術の件数が日本で年間どれくらいあるのかということを考えながら専門医の数を考えよう、という外科系の学会が出てきているということを認識をしております。

 
○土屋
適正数の議論のタイムスケジュール
この辺は言い出すときりがないので、いったん終わりたいと思います。
最後にひとつだけ確認したいのですが、先ほど適正数のことについて、今後先生の機構としてはどのようなタイムスケジュールでどの辺までを目標にされていますか。
適正数の議論のタイムスケジュール
○池田 実は、この間理事会、あるいは総務委員会等で話をしましたのは、各学会にまず適正な数というものをどう考えるか、数が挙げられるのか、数が挙げられるならどういう根拠でその数を出されたのかということの問い合わせを早速してみたい。それで、各学会の先生方が適正な数についてどういう考え方をしているのかというもののまとめをしたい、ということを思っています。

 
○土屋
適正数把握の見通し
それで相互の調整などをやった場合、最終的に全体数が分かるには何年ぐらいかかりそうですか。 適正数把握の見通し
○池田 何年ぐらいですかね。それはなかなか難しいですけれど、例えばプライマリーボード(基本領域の専門医制度)と称する学会はですね、これをどう位置づけるのかというのは難しいと思います。
例えば耳鼻科の専門医あるいは整形外科の専門医、これはある意味では標榜科にかなりリンクした考えでいいんじゃないかという考え方がございます。それは例えば卒業して患者さんを診る医師としてはどこかに実際には属すわけです。そこの専門医を取ってほしい。その上で、例えば耳鼻科であれば耳の方の専門なのか、のどの専門なのか。耳鼻科の専門医と言えばおそらくhead and neck(頭頸部)全体としてカバーできる、そういう専門医ですよね。でも実際に患者さんが例えば喉頭(こうとう)がんになったら、耳を主にやって難聴やめまいを診る専門医にかかるかといったら、やはりそちらの先生に当然かかりたいと思いますよね。整形外科でもしかりだと思います。整形外科でも背骨の専門家、股(こ)関節の専門家ずいぶん分かれてきたと思います。でもやはり整形外科ジェネラルに診られる方というのはどうしても必要で、整形外科と名乗るからには全体が分からなければいけない。その上に立った専門医という。ですから専門医という言葉が、それぞれの先生方でイメージするものが違うというところが今やはり問題になっているのではないかと思います。ですから専門医というものを国民的な議論の中で、共通の言語として持てるような努力をしていかなければならない、と私は思っていますので、今の先生のどれくらいの数をいつまでに、というご質問は今のところは難しいだろうと思います。

 
○外山
早急に適正数を把握する必要性
土屋先生のタイムスパンとか、どのくらいスピードかは、ものすごく重要なことだと思うんですね。というのは、今心臓血管外科が、ここに出ていますが専門医1,900人と出ているんです、もうこの数自体が、日本の現状から5万例ぐらいしかないところで滅茶苦茶多いんですね。こんな数を、これからまだ増やすという意志があるんです。この間心臓外科関係の担当の上の方に「いつまで増やすんだ」と言ったんですね。でもまだ足りない、というような感覚のことを言うんですよ。このまま増やして例えば3,000人とかになったところで、ようやくまともな専門医制度が構築されたときに、それまでになった連中をどうするのかと、これまた大変な問題だと思うのです。ですから、「まともな専門医制度が何年から施行されるのだからいい加減な旧制度による専門医は一度白紙に戻す」などと言えるのか、それともそのまま認めて新しい専門医を入れていくというと、ある時期かなり長い20年か30年の間に、非常に大きな混乱が起きて、これこそ何のための新しい制度の導入かということになってしまうと思うのです。そういう意味で、やはりスピードアップは絶対重要な要件だと思いますが。

早急に適正数を把握する必要性
○池田
地域医療の格差への配慮
数を議論するということをスピードアップするのは大事だとは思うのですが、先生がおっしゃるのはその通りなんですけども。
もう一方で、別の見方をするとですね、地域医療ということを考えた場合に、どの地域にもある程度の専門医が必要です。例えば非常に集約化を図って難しい病気だったらそこで診てもらえばいいだろうという考え方があって、拠点拠点にそういう専門医を置くという考えもありますけども、専門医の質によっては、心臓外科とは違って他の専門医であれば、やはり各都道府県にかなりの数の専門医がいなければ、その地域のその領域の医療の格差が是正されない、ということにもなりますので、その問題も一緒に考えていけないのではないのかなと思っております。私は専門医制度を確立していくというのは、地域医療の格差も頭に置きながら、その解決も含めて、考えることが必要なのかなと思っております。

地域医療の格差への配慮
○土屋 どうもありがとうございます。私の専門も外科医でせっかちなものですから、3年目、4年目、10年目にはこういう姿なんだ、とぜひお示しいただけるようにご努力願えればと思います。大変難しい問題だということがよく理解できたと思います。どうも先生ありがとうございました。

それでは飯沼先生どうもお待たせをいたしました。次は日本医師会常任理事の飯沼先生からお話を承ります。よろしくお願いいたします

 
○飯沼
地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師について
日本医師会「かかりつけ医」の質向上の考えの経緯
厚生労働省の総合科医
日医学術推進会議における認定制度の議論
総合医認定のための教育プログラム
厚生労働省の「総合科」構想への考え
日医の「総合診療医」制度
認定コース
カリキュラムの内容
履修方法・学会の専門医との整合性
専門医との関係
制度創設の考え

こんにちは、日本医師会常任理事で学術、生涯教育、感染症、精度管理、薬事一般等を担当しております飯沼でございます。本日は発言の機会を土屋先生からいただきまして誠にありがとうございました。一時間くらいお話しするのならゆっくりできますけれども限られておりますので、しかも昨日ご命令がございましたので過去のスライドから若干抜いてきました。話が飛ぶといけませんので見ながらお話し申し上げますけども、足りない点はディスカッションのところで補いたいと思います。
われわれが医師会員にお話しするときは最初のスライドのところにですね「地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師」のところに、括弧して(認定に関する)という言葉を入れるのですが、その話は別にしまして、今日はこういうことについてお話を申し上げたいと思います。

地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師について
この背景でございますけれども、なぜこういうことを日医が考え出したかというと、この左の上にありますように唐澤(からさわ)第一次内閣ができたころに非常に医療事故がたくさんみられまして、専門医はいったい何をやっている、というおしかりを日本医師会も非常に受けたのです。われわれは、先ほどのお話にもありましたけれど、専門性が過度になりすぎて「木を見て森を見ない」というような話が出てくるぐらい専門性に特化いたしまして、全体を診るということをお医者さんたちは忘れてしまったのではないかという考え方がありまして、社会的要請としましては総合的に診る全体を診れる、そういう医者が必要ではないかという要請をわれわれはひしひしと感じたわけであります。それで最近では、聞くところによりますと、学生や研修医の初期の段階では総診と称して非常に人気があるそうですが、そういう背景もございます。が、われわれ自身といたしましては日本医師会に生涯教育をしなければならないという雰囲気が20数年前にありまして、そこから制度として20年の経過がありました。生涯教育制度のためのカリキュラムというのができておりまして、過去3回の改訂がございました。ここに改訂の一覧がありますが'95年、'99年、'01年という3回改訂してまいりました。そろそろ変えないとこの医学の進歩、医療の進歩には対応できないということで、これを変えようという機運がございまして、それぞれわれわれが持っております委員会の会議がございまして、生涯教育推進委員会にはカリキュラムのことを中心に日医生涯教育制度の有効性についてやるようにという諮問を受けました。それから学術推進会議は日医の三大会議の一つでございますが、そこへはかかりつけ医の質の担保についてという会長諮問を出されまして、それぞれ2年間の協議が行われて、学術推進会議の方には日医認定かかりつけ医についても検討してほしいということを、2年半くらい前に提案をさせていただいたところでございます。こういう経緯で始まりまして世の中が進んでまいりました。われわれは「かかりつけ医」という言葉は、患者さんがおっしゃる言葉であってわれわれからあえて言うことではないので、「かかりつけの医師」という呼び名がいいんではないかということで、われわれが持っておりますグランドデザインの2007年版に、このように定義をしたのでございます。『なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要なときには専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる「地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師」』。これがわれわれの言うかかりつけ医、かかりつけの医師と定義をしまして、このかかりつけ医の質の向上を、上に書いてありますように、日医の生涯教育制度のボトムアップによって資質の向上を図りたいということでございます。会長の唐澤先生がこの代議員会でこのように申し出られまして、かかりつけの医師の質の担保、医療水準保持の保証は行政が関与するものではなくプロフェッショナルの団体である日医がすべきである、担うべきである、ということで会長の唐澤先生はやさしい先生ですのでこう言い方はしませんけれど、会員に紹介するときはこういうふうに申し上げますが。こういうことでわれわれのスタートが行われたわけです。

日本医師会「かかりつけ医」の質向上の考えの経緯
そんなころに、それからほぼ半年なり1年ぐらいたった段階の平成19年の初夏に厚労省からいきなり総合科と総合医という話が出てきまして、われわれがその「かかりつけ医」という言葉を「かかりつけの医師」という言葉に変えて、文章上はこれもまずいんで「総合医」という名前はどうかなあという話をして会は進んでいたわけでありますけども、そのときに突然これが出てまいりまして、それでわれわれは、僕に言わせると後出しジャンケンと同じ流れで出てきたものですから、これは大変だということでこの混乱の第一因があったわけですけれども、会員の先生方は厚労省と日医が言っていることは全く同じことを言っている、ということになってきたわけであります。が、われわれといたしましては半年以上のスパンの差がありますので非常に困ったわけでありますけれども、発表されてしまった以上は、厚労省にいくら文句を言っても仕方がないのでありますが、最近はこの言葉がちょっと姿を消しているようでありますが。

厚生労働省の総合科医
われわれのところで認定を始めようと。どうせ勉強するなら、勉強をしっかりして、カリキュラムも変えて勉強して認定まで持ち込もうというのはどうだろうかということを、学術推進会議でご議論を願ったわけであります。そのときの2年後の答申がここに書いてありまして、反対と賛成の意見がございますが、反対の意見の主なものは、医師の間に認定医の資格を持っている者と、持っていない者の格差ができるということ、認定制度がフリーアクセスの制限、人頭割り、定額払いという総枠規制に結びつく可能性があるので困る、というのが反対意見でございます。賛成意見は患者さんの受診の際には適切な受療行動をとることができるとか、それからやがて問題になってくるでありましょう医師免許の更新のときに、われわれは自分で勉強をしているということを主張ができると。それから大学病院や総合病院で長年外科系の先生方が、もうメスはやめて地域で地域医療に専念にしたいという先生方にとっては、このぐらいのことを勉強していただければ開業をするときにも役に立つのではないか、というご意見もございまして、学術推進会議では最終的には日本医師会の判断を仰ぎたいとのことでありますが、ご意見は圧倒的に賛成の意見が強かったわけでございます。

日医学術推進会議における認定制度の議論
これもたくさん書いてありますので読みますが、「従来我が国では認定医、専門医の認定は各学会が行っており、学会やメディアを含めた社会からの反論が出てくるであろう。」と、日医がその認定なんかをするのはだめだよ、学会がやるんだよということで、学術推進会議において、日本医師会が中心となるが、日本医師会だけでなく日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会と共同して総合医認定のためのカリキュラムを作り、認定の実務を担う方が良いのではないかという意見がございます。上記の3学会が合同で総合医認定のための教育プログラムの作成に取り組んできたことも上記のような意見の根拠となっていると。これを受けて平成19年4月27日の学術推進会議作業部会で日医認定総合(診療)医構想については日本医師会が中心となり、関連3学会の協力で行うという話がまとまり進んできたところでございます。
会員からは、上の方は分かっているかもしれないけど会員全体には周知はしていない、とご批判をいただきましたので、ここら辺から私は書きまくりまして5つや6つの小論が出ていますが、要するに総合医認定制度を作ろう、という話を書いたわけでございます。

総合医認定のための教育プログラム
厚生労働省のおっしゃる総合科に対しては、この辺は先生方におしかりを受けるかもしれませんけど、会員に説明するときにはこのように申しております。厚生労働省の示す「総合科」は医師の中から一定の条件を満たす者に大臣許可を与え、医療へのアクセス制限を目的とする。主治医、これは明らかになったわけですけれども、後期高齢者医療制度の中の主治医や、限られた医師のみを登録する、これは国保中央会(国民健康保険中央会)が考えていることのようですけれど、その意味もこめられていると。すなわち、厚生労働大臣の許可を要する国家統制的なものであるというので、日医はこれには反対をしたい、という強い意志の表れであったわけでございます。

厚生労働省の「総合科」構想への考え
でも制度の創設は必要であろう、というわけでわれわれのところの学術推進会議の生涯教育推進委員会で議論を重ね、それから都道府県の医師会のアンケート調査等を加味しまして、ここに黄色で書いてありますように、「地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師」を認定するような案を持ったところでございます。日本医師会が関連3学会とこのカリキュラムの作成にご参加いただいた日本老年医学会、日本小児科医会、日本臨床内科医会、日本専門医制評価・認定機構等の協力を得て認定制度を創設し、国民の要請に応えたいと考えたわけでございます。
若干申し上げますと、その案は名は体を表すということでいろいろ名前が出ておりましたけれども、こういう名前にするかどうかはすべてが決まりましたら名前を決めようと考えていますがいろいろあります。日本医師会では従来から「かかりつけ医」という名称を使ってきたが、「かかりつけ医」は患者から見た医師の役割を示す表現であり現在は「かかりつけの医師」と表現している。これは先ほども申し上げた通りです。学術推進会議では、従って「総合医」、「総合診療医」のどちらかが良いのではないか。生涯教育推進委員会では厚労省の提唱する「総合科」と間違えるといけないので、「総合医」の間に「診療」をいれて「総合診療医」としたらどうかという、こういうお話が出て最終報告書がまとまっております。

日医の「総合診療医」制度
認定のコースにつきましてはこれからの議論もあるところですが、コース1は、将来の専門医的なことまで考慮に入れているのですけれども、現在の卒後臨床研修が終わりましたら3年以上かけてじっくりやっていただく、ということでございます。それからコース2から4までは経験年数に応じて少し単位等が変わっておりますが、これはお年寄りの先生方は既に地域医療は毎日やっておられますし、その経験が十分あるということで少し時間を減らしたらどうかという意見もありまして、それは相成らんという先生もございます。ここら辺のところは今後の課題でございます。

認定コース
それからカリキュラム、ここが大事でございますけれども、先ほど申し上げました日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会、日本老年医学会、日本臨床内科医会、日本小児科医会、日本専門医制評価・認定機構にご協力を得てできたわけでありますけれども、さらに47都道府県医師会、日本医学会加盟105学会、全国医学部長病院長会議の各80の方々にこのカリキュラムをお送り申し上げましてご意見をいただいて、それでブラッシュアップいたしまして今年の秋には完成をする予定でございますので、来年の4月ぐらいからは新しいカリキュラムで生涯教育を進めたいと。これは認定制が決まろうと決まるまいとこの生涯教育のカリキュラムは運用が始まります。カリキュラムの中にはこのように書いてあります。「頻度の高い疾病と傷害、それらの予防、保健と福祉など、健康にかかわる幅広い問題について、我が国の医療体制の中で適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的視点から提供できる総合診療医としての態度、知識、技能を身につける」ということで行動目標が7つございまして、医療専門職としての使命から継続的なケアまで7つの項目からなっておりまして、50時間なら50時間をこの中から選んでいただくと、まずそういうことから進めようということでございます。特に「臨床問題への対応」として57の症状・病態について、「日常診療上、頻度の高い症状や病態について、年代、性別の特性に配慮した鑑別診断と初期対応、適切なタイミングでのコンサルテーション(紹介)、必要に応じた継続管理ができる。」ようにするというのが目的でございます。例えば鼻血に関しましてはこのように記載がございまして、時間の都合でこれは申し上げませんけれども、病歴から、ご自分でできることと紹介すべきことが分けて書いてございます。

カリキュラムの内容
履修の方法もいろいろございますけれどもここで問題となりますのは、3行目に書いてあります、単位の互換ということにあります。各関連学会との単位の互換を考えるべきではないか、例えば専門医の先生方が学会に行って取ってこられる単位についても単位換算等すべきではないか、というご意見もございまして、これは今年の生涯教育推進委員会で検討を進めていただいているところでございます。
学会の専門医との整合性、関係でございますけれども、これが平成20年21年度の学術推進会議への会長諮問でございまして、医師の生涯教育と認定医制・専門医制ということで今討論討議が始まっているところでして、だんだん結論になってくると思われます。

履修方法・学会の専門医との整合性
最後のスライドに参ります。
これは先ほどから出ておりました、専門医との関係、どういう立場かということでございますが、この絵は下手ですが私まだ良い案が出ませんが、要するに左側は専門医とわれわれのいう幅広い診療能力を有する医師というのが縦糸と横糸の関係で布が織られていく、そういうふうに考えれば良いんじゃないかと。右側は理想的な医師というのは幅広い診療能力がございましてその上にご自分の専門領域に秀でているということがあれば、これは鬼に金棒であるというふうに考えておりまして、良い絵をこれから工夫をしたいと思っています。

専門医との関係
まとめでございます。本制度の創設は、国民の目から見える形での医療の質の担保であり、それにより、一層安心して受診できるという国民からの要請でもあります。医師の研修、医師の医療水準を支えていくシステムは行政が関与するものではなく、学術専門団体である日本医師会が関連学会等の協力を得て、国に先駆け、これまでの生涯教育制度を底上げして、認定制度を主導的に創設することこそが、国が考えていると思われる「フリーアクセスの制限、人頭割り、定額払い、総枠規制」に結びつかない唯一の方策であると考えていると。これは会員向けでございますので、都道府県医師会からのご意見をたくさんいただきたい、ということで書いて結んであります。時間になりましたのでこの辺にさせていただきます。

制度創設の考え
○土屋
総合診療医育成システムの必要性
先生、大変幅広い問題を短時間でおまとめいただいて、ありがとうございます。
別の日にと思ったのですが、飯沼先生が大変お忙しくて今日を逃すとだいぶ後になってしまうということで、ご無理を言いまして今日ご説明いただきました。

 
最初に少し班長として確認をさせていただきたいのですが、私は現役のころには毎月5か所の医師会の夜の勉強会に行って、肺がんのことは私は教えられる実力があるのですが、いろんな付随疾患など大変開業医の先生方が幅広い知識をお持ちで、しかもかなり専門的に高度な知識を持って総合的な診療をして優れた方がたくさんいらっしゃるという実感を持ったんですね。それで日ごろから尊敬申し上げているのですが、先生のスライドの6枚目の認定制度をめぐる学術推進会議の意見で賛成意見の3番目に、「大学病院や総合病院で長年、専門医として勤務してきた医師が開業する際の学習内容とする」と、おそらく今、先生方の新しくお仲間に入る方でこういう方が圧倒的に多いんじゃないかと思うんですけれども、長年飯沼先生のようにご経験豊富で幅広い知識も技能もあるという方に比べて、大学で専門だけやっていますと他の分野はほとんど素人同然だということで、この分野はおそらく緊急を要する問題じゃないかと思うのです。それで先ほどもう1つお示しいただいた14ページに認定コースでお考えいただいているコース1、2、3、4と。コース1は私ども研究班が今一番興味のある総合診療医を若い方にどういうプログラムで育てていくか、これが一番将来の問題として、システム的問題で大きな課題だと思うんですけれども、コース2,3,4は現実的に今そういうことを全国各地、特に僻地(へきち)に勇んで行くような方に教育するのに大変必要なことではないかと、そのような解釈でこれはよろしいでしょうか。

総合診療医育成システムの必要性
○飯沼 はい。

 
○土屋
研修・実習の方法
その上で、例えばこういう方が、コース1については後で葛西先生からいろいろご意見あると思いますが、こういう中途編入者的な方が、ここにもある他分野の実技をどういう場で研修をやることを先生方はお考えなのでしょうか。

研修・実習の方法
○飯沼 研修のところは、非常に大切なところでございまして、実際先生が科目のことをおっしゃいましたけど、場所的な問題もありまして、北海道の先生が3日も出てくると無医村が3日続くとかそういうこともあるので、講義形式のもの、eラーニングを使うものと、実習とか見学とかも、もちろん考えなくてはいけません。その辺はこれからさせていただきたいと思っております。

 
○土屋
大学病院との協力の可能性
山形では、長年専門家として大学病院などでやっていた方がいよいよ開業する、あるいは診療所へ行くときに特別なコースを大学病院で用意されてそれで送り出すことを既に嘉山先生が始めてらっしゃるとお聞きしましたが、そういうところと医師会が協力してということは考えられますでしょうか。

大学病院との協力の可能性
○飯沼 中身を勉強させていただいて、検討させていただきたいと思います。

 
○土屋
総合診療医数の想定、必要育成数
最後にもう一点、このような制度が先生方がお考えの総合診療医が満遍なく行き渡ったとして、総数としては何万人ぐらいを、先生方は想定なさっているのか、毎年どのくらい新規参入者が必要とお考えなのか、もし試算がありましたら。

総合診療医数の想定、必要育成数
○飯沼
制度の対象は全科
試算はしておりませんが、書いてございまして、22ページの「本認定制度の対象は全科にわたるものであり、内科に限ったものではない」と書いてございます。なるべく多くの先生に参加していただきたい。なりたいという先生には、なれるようにカリキュラムもそれなりの対応をしたいというふうに思っております。

制度の対象は全科
○土屋 ありがとうございます。それでは班員の先生方、川越先生。

 
○川越
教育機関との協力の必要性
川越と申します。どうもありがとうございました。日医、医師会の方がこういう教育に関して熱心にされてというのは、うれしいことだと思います、ありがとうございます。それで一つ、今回は後期研修医制度をどうするかという話の中で議論がなされていると思うのですが、今土屋先生が指摘されたことと関連するのですが、新規で働く先生方は今の段階では、もともと専門的なバックグラウンドを持って、途中でその専門医を持ちつつ地域に入っていかれる先生がほとんどだと思います。ただ今後は専門家としての総合診療、ここでかかりつけ医療とかそういうものを専門性として地域に出て行く医師を育てるべきではないかという議論も実はあるわけです。ですから従来の考え方だと前期の研修制度がしっかりやっていれば、地域に出れるんじゃないかという、そういう考え方を持つちょっと乱暴な意見がございますが、そうではなくてやはり先生が指摘されたように、かかりつけ診療とか総合診療というのは、非常に専門性の高い領域なので、おそらく後期研修制度の中でトレーニングの機会を作っていかなければいけない。そうなると、後期研修制度は専門医制度ですからトレーニングが特に大事になってくる。地域医療ということになりますと、教育する方と教育を受ける方が離れてしまう場合があるんですね。教育する先生は大学病院にいて、実際のトレーニングを受ける場所は地域ということで、普通は教育する先生のところで臨床的なトレーニングを受けるということなので、私としては日医の先生方が頑張っていただくのは、現場から離れないという意味ですごく大事なことだと思うのですけれども、やはり教育機関と協力するということ、カリキュラムを一緒に作ることだけでなく実際の教育を行うのも一緒に協力してやるべきじゃないかと、そういうものを考えているのですが、その点についていかがでしょうか。

教育機関との協力の必要性
○飯沼 先生のおっしゃる通りですけれども、方策としてはなかなか具体的には出てこないので、生涯教育推進委員会は教育の環境作りを諮問してあるところでございますので、これから名案が少しずつ出てくると思いますけれども、なかなか出てこないので、先生方も良い案があったらお教え願いたいと思います。

 
○土屋 阪井先生。

 
○阪井
妊婦や出産に対する診療の取扱い
成育医療センターの阪井と申します。ご説明ありがとうございました。一つお聞きたいのですけれども、「地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師」が担う診療の中には妊婦に対する診療や出産に対する診療も入っているのでしょうか。

妊婦や出産に対する診療の取扱い
○飯沼 このカリキュラムのところで、若干ありますけれども、そこは専門医に。例えば、52番(生涯教育カリキュラム、10ページ)をご覧いただくと、「性器出血や下腹部痛などから流早産の原因の可能性を見極め、専門医への紹介が必要か否かを判断できる。また妊産婦に生じうる一般的健康問題に対処できる。」と書いてあります。

 
○阪井 一般的健康問題というのは、出産は入っていないわけですか。

 
○飯沼 出産は入っていません。

 
○阪井 出産は扱わないと。分かりました、ありがとうございます。

 
○土屋 葛西先生。

 
○葛西
認定コース、カリキュラムの到達目標
福島医大の家庭医療学の葛西でございます。
この研究班ができる根拠になった「安心と希望の医療確保ビジョンの具体化に関する検討会」でも、専門医としての家庭医・総合医の養成が必要であるということで、後期研修を考えているところなので、やはり国民が求めるレベル、質が確実に教育で到達されるということが大事だと思います。私自身は名前がどうであっても、そのレベルに達するということが一番大事で、この認定コースあるいはカリキュラムを興味深く見せていただいたところです。コース1に関しては、私たち、私たちというのは私が副代表理事をしている日本家庭医療学会のことですが、それで認定し進めている3年間のいわゆる後期研修プログラムと同じものかなと思っております。この質をしっかりしたレベルにしようとしているところですけれども、このコース2,3などに関して会員の先生には臨床経験7年以上あるいは15年以上といっても、例えば皮膚科開業医をされていて15年とか、眼科開業医されていて7年という形で、確かに内科の開業医の先生たちが大部分を占めるかもしれませんが、スタート地点の総合的な診療に関する経験なり知識なりがバラバラだと思うのですが、それをどのように、その後の50単位とか20単位とかという教育でレベルアップをされようとするのか、この辺をお伺いしたいと思います。

認定コース、カリキュラムの到達目標
○飯沼
カリキュラムの議論
ここが大切なところなんですけれども、実際は細かいところはこれから議論しようというところで、大枠こういう案はどうだろうかということでお示ししただけでありまして、これはまだ機関決定もされているわけではございませんので、だいたいこんなようになるかなというところでありまして、先生がおっしゃったように、皮膚科の先生の基礎的なところ、内科などのところをどうするのか、ということでございましょうけれど、そこは非常に大切なところなのですが、詰めるべきところがまだ詰まっていないのが現状でございまして、合意というところは、まだ日本医師会は機関決定していないわけです。機関決定するための要因として今いろいろなファクターをご説明していることでございまして、コースに対しては全員50単位にしろという意見もございますし、50では足りないという先生もおられます。ある年齢にきたら論文1通、報告書1通くらいで良いのではないかという先生もおられます。いろいろおられますので、最後は激論を交わすことになると思いますけれども、先生のご意見も参考にさせていただきたいと思います。

カリキュラムの議論
○葛西
カリキュラムの作成
ぜひこれはすごく良いきっかけになると思いますので、この制度に手を挙げていただいて国民のための家庭医・総合医になりたいという会員が多数参加して、それを修了すればこのレベルになるというしっかりとした教育さえ作れば、かなり期待が持てるな、と思いました。そこで生涯教育のカリキュラムを見せていただきましたが、これは福井先生が座長でいろいろとりまとめて作られたのも分かっておりますし、家庭医療学会の方でもいくつか資料をお出ししたかと思うのですが、確かにいろんなことが入っていますけれども、急性の問題、これが53ですか、表では57となって出ておりましたが、これをどのようにして選ばれたのでしょうか。諸外国の標準的な家庭医のテキストとかを見ますと家庭医の扱う問題はだいたい150くらいでございますので、その中から57をどのようにして選ばれたということをお聞きしたい。それから、確かに何を学ぶかは項目としてリストアップされていますが、カリキュラムとして必要などこで誰が誰にどのようにいつ教えるのかというあたりは、示されていません。もちろんこれからまだまだ練っていく途上だということは十分理解しておりますけども、学ぶ項目だけを羅列するのではなくて、実際にどのように教育がされるかというところまで盛り込んだカリキュラムにしていただければいいな、と思います。そのことに関しては私も学会等も協力して一緒に作り上げていければいいかな、と思っておりますので、よろしくお願いいいたします。

カリキュラムの作成
○土屋 何かコメントございますか。

 
○飯沼 100いくつから、57になった理由は、私も福井先生と3学会で議論する会議には全部出ておりますけれども、なぜ減らしたかというのは分かりませんが、どこかへ必ず入り込むようにはされていると、そう僕は感じております。後は先生のおっしゃる通りなので、これをどうように現実の教育にするかということは、これは2年くらいかかると思いますけれどもやっていきたいと。試行錯誤をここでたくさんあると思いますのでどうぞよろしくお願いします。

 
○土屋 はい、では渡辺先生から。

 
○渡辺
漢方医学の視点
教育プログラムの担い手
慶應大学の渡辺と申します。これは葛西先生の質問とかぶるかもしれませんけれども、カリキュラムの中でぱっと見て女性医療の部分が欠けているかな、と思います。更年期障害とか月経前症候群というのはどこの科に行くか分からないような場合があります。婦人科だけでなく、精神科に行ってしまったりとか、場合によっては頭痛なんかで神経内科へ行ったりとか。こういういくつかの科にまたがる問題は総合医教育にきちんと入れてほしいなと思います。その他にもいくつか抜けているものがあると思うので、そこのところの再検討をおねがいします。もう一つは、私は漢方医学が専門なのですが、common disease(一般的な疾患)に関しては、漢方はかなりカバーできますので、そういった視点をぜひ入れていければ幸いです。まだ案ということですので、ぜひ議論に加えていただいたらと思います。

漢方医学の視点
それからもう一つ、教育カリキュラムなのですが、飯沼先生と葛西先生と絡むのですが、これだけの幅広いものをカバーするとすると、将来的にこういった総合医なり家庭医というものがすべて教育を担うのか、それともサブスペシャリティーやプライマリーのスペシャリストである内科とか外科とか、そういったところが結局担うのか、ということはどのようにお考えでしょうか。ぜひ飯沼先生、葛西先生にお伺いしたいと思うのですけれども。

教育プログラムの担い手
○土屋 どちらから。

 
○渡辺 どちらでも。

 
○土屋 では葛西先生。

 
○葛西
家庭医教育と各科との連携の必要性
指導医のことですけども、これは家庭医療学のレベルが日本と比べて20年30年進んでいる国でも、各科の専門医の先生たちの協力を得ながら教育カリキュラムを作り教育を行っている状況です。もちろんいろんな各科の専門の知識、技術のところでも家庭医がそれを地域でどう適用させるのかというあたりでは、家庭医の指導医が教育に十分関わっていけますけれども、一部のものに対してはやはり病院の中のかなり進んだ診療の状況を経験してもらうための教育を各科の専門医がやっています。だからここでも家庭医と各科専門医との連携が必要になってくると考えます。

家庭医教育と各科との連携の必要性
○土屋 アメリカのfamily medicine(家庭医療)に近い形を想定すると。

 
○葛西 そうですね。アメリカに限らず世界の家庭医療先進国で行われている教育です。どこまでを各科の専門医が教えるのかという住み分けというか枠組みが完全に(あるいは画一的に)できあがっているわけではありませんけれど、それぞれの国あるいは地域の病院などの実情にあわせてやっているという感じです。

 
○土屋 飯沼先生何かコメントを。

 
○飯沼 はい、やはり専門の先生のご指導を受けながら、先輩の総合医が後輩を育てるという、そういうシステムにしていくしかしょうがないと思います。

 
○土屋 岡井先生。

 
○岡井
厚労省の総合科医の考え方と医師会の考え
お聞きしたいことは、日本医師会が考えているこの総合診療医というのは、厚労省が考えている総合科医というのと、根本的には違わないと思うのですが、医師会が何か反発しているのは、その使われ方といいますか、日本の患者さんの受診行動が少し外国と比べたら統制されていないと。いきなり専門医のところに診療を求めていくというようなことが、結局ある意味で医師を忙しくさせたりとか、これはあくまでも医療の効率化、医療を提供する側の人間をいかに効率的に使うかという立場から見た場合に、効率が悪いと。ただ、諸外国でそうであるようにファースト・ステップとしては最初に総合科医が診る、それからより高度な診療が必要な場合に専門医を紹介する、そういう道筋みたいなものを作りたいという意向が厚労省にある程度あると思うんですね。日本医師会はその使われ方そのことに反対しておられるのだと思うのですが。そこのところの考えは、どうしてそれに対して反対なのか、ということをしっかり私は聞きたいんですけれども。

厚労省の総合科医の考え方と医師会の考え
○飯沼
フリーアクセスの制限と、インセンティブ
やはりそれは、フリーアクセスの制限になります。
それからもう1つは、日本医師会はこういうものに保険点数とかのインセンティブを与えないというのが基本にありますので、その2つです。フリーアクセスがゲートキーパー的になってしまうと、(ならないとおっしゃると思いますけど)、(ゲートキーパー)的になってしまうと、それはフリーアクセスの即制限ですので、それは納得ができないと、こういうわけです。

フリーアクセスの制限と、インセンティブ
○岡井 それは患者さん側に、ある程度の選択の余地を残しているなら良いわけですか。

 
○飯沼 患者が選択できるということはフリーアクセスですね。

 
○岡井
総合科への選択
ええ、だから総合科というものがあって、そこに先に行くという選択を患者さんがすればいいだけのことであって、それができるならフリーアクセスの制限にはつながらないと思いますけれど。

総合科への選択
○飯沼 僕らはフリーアクセスが、ゲートキーパー的なものになってしまうと、阻害されるというふうにどうしても思える。

 
○岡井
標榜科としての扱い
それからもう一点。もしも標榜科にしたいとすると、どうなるのですか。「内科なになに医院」となって、その後に「総合診療専門医」と。

標榜科としての扱い
○飯沼 標榜科は考え中です。

 
○岡井 標榜科には反対である、という意味合いがあるのですか。

 
○飯沼 どういう標榜にするかどうかということも含めて、標榜についてはノーとは言っていません。これから考慮中です。

 
○土屋
総合診療医の「ゲートキーパー」としての役割と専門性
がんの専門病院としては、フリーアクセスの問題なのですが、うち(国立がんセンター中央病院)では今、初診を全部完全予約制にしてしまったのです。本省ともよく相談して、違法性がないかどうかというのを詰めたのですが。私どもの病院が完全なフリーにすると、ちょっと咳(せき)が出ても風邪だ、ということで外来があふれてしまってコントロールが効かない。実際そうなってですね、やはり診療所の先生からのご紹介が最低限必要であると。あるいは他院からの診療依頼とか。そうしませんとなかなか今、おそらく大学病院も患者さんが毎日5,000、6,000来ている、おそらく半分以上は多分大学病院でなくても良い患者さんではないかという気がしますので、そういう意味ではむしろこの総合診療医が「ゲートキーパー」という言葉は、大熊さん(大熊由紀子 国際医療福祉大学大学院教授)に怒られてしまいますけれども、その役割を果たしていただいて、むしろインセンティブが付いた方がわれわれ病院側から見ると、大変ありがたいのではないかと。そして診療所の患者さんの数は増えるのではないかという気がして見ているのですが、その辺はいかがでしょうか。

総合診療医の「ゲートキーパー」としての役割と専門性
○飯沼 日本医師会がどう考えているか、そのものについて議論したことがないので、個人的な話になりますが、先生方の特にがんセンターみたいな、特化した専門病院の先生方がそうお考えだということは会員には伝えますけれども、それが、ゲートキーパー的な仕事がどうでしょうか。「ゲートキーパーになった方が患者が増える」という議論にはなかなかついていけないわけですけれども。

 
○土屋 受診回数が減らないとすればがんセンターの受診が減れば、行くところは診療所しかないわけで、中央区の医師会その他は特に反対はなかったのですが。

 
○飯沼 そのゲートキーパーということですか。

 
○土屋 まずセンターにいきなりの受診は一切ないと。

 
○飯沼 それはいいと思うんですよ。がんセンターみたいながんに特化した病院に一般外来があるなんていうことは、それは病診の機能分担でちょっと話がずれるのではないですか。

 
○土屋
病院機能における専門性
この病院機能というのはがんセンターに限らず、大学病院では皆同じではないかな、という気がするのですが。専門性の高い医者の集団ですので、いわゆる最初の総合臨床的なものは先生方診療所の先生が担っていただいた方がより専門性が高まるという気がするんですが。

病院機能における専門性
○阪井
患者さんの考え方とフリーアクセス
先ほど岡井先生の問題提起が僕は本質だと思うんですけれども、フリーアクセスが非常に大事だとか、良いとか悪いとかいうのは完全に患者さんの言い分であって医者側が言うことではないのではないかという気がします。
どういうことかと申しますと患者さんは、例えば救急医療、私がやっている小児の救急医療をとりあげますと、どこへ行っても良いんだ、ということで電話をしたら今満床だから来てくれるなとか、手が離せないだとか、小児科の医者がいないとかといって、たらいまわしになって結局亡くなってしまうということがありうるわけで、そういう患者さんと話を私はしたことがあるわけですが、たとえ100km向こうであっても、今行くと絶対診てもらえる、というところがあれば、その方が絶対良いと、どこに行っても良いなんていうのはとんでもない、現実はそうではないんだとおっしゃっておられたのです。ですから患者さんの方がフリーアクセスをどう考えるのかということであって、医者の方がフリーアクセスが何よりも大事だというのは私はおかしいように思うんですけどいかがですか。

患者さんの考え方とフリーアクセス
○飯沼 患者さんがどう思うか、ということが一番大事なんですよ、先生。そのために医師会はそういうことを制限することをまずいといっているわけです。

 
○阪井 ですからそれを言うのは患者の側であって先生たちではない。

 
○飯沼 でもわれわれは患者の立場でものを言っているというわけです。

 
○阪井 しかし言うのは患者であるべきだと思いますが。

 
○飯沼 それは患者さんの声ですか。

 
○阪井 そうです。

 
○飯沼 僕が言っているのも声です。先生がおっしゃっているのは小児科とか、土屋先生のおっしゃるがんとかいう特殊な、ごく専門的なものとはわけが違うわけです。一般的な話だというところです。

 
○土屋 今医者同士で話しているので、ちょっと時間がせまっておりますけれど、「私が患者の声だ」という内容で話せる傍聴の方はいらっしゃるでしょうか。いらっしゃいませんか。
ではちょっとこの話はここまでにしておきます。
はい川越先生。

 
○川越
専門性としての地域医療
後期研修における産科、妊婦検診
先ほど飯沼先生おっしゃられたように、この地域医療というのは古くて新しい領域、特に専門性をどういうところに求めていくかということは非常に難しい問題だろうと思います。まさに取り組みにかかったといえるのではないかと思います。
いろいろなことを考えながらディスカッションを伺っていたのですが、われわれは後期研修制度の中で考えています。専門医を育てるということ、それに対して一番良い制度はどうあるべきか、ということをディスカションしているわけですけれども、地域医療というのは確かに専門性が高い医療で、特に医療だけでなくて介護保険の知識も持たなければいけませんし、非常にある意味で専門性が本当に高まってきた領域だろうと思うのですね。では今議論されている後期高齢者医療制度の中に、この地域医療という専門性をどういう具合で主張していく、やっていくかということは、やはり今後の大きな課題だと思いますので、あまりこうあるべきだという結論を出していかない方が良いのではないか、まだまだディスカッションしていただきたいなと思うのが一つです。

専門性としての地域医療
もう一つは、先ほど産科、妊婦さんの検診を後期研修でどう考えるのかということがありました。後期研修制度というのは、この間、別の安心と希望の医療確保ビジョンの具体化の会議でディスカッションされたのは、前期研修制度自体を見直さねばならない、という議論がございました。研修期間の問題と学部との連続の問題、それからもう一つあったのは、前期研修に持ってくるのが適切かどうかという、研修の場ですね、それが議論があったと思います。その中の一つは産科なんですね。産婦人科は1か月ということが義務づけられていますが、それで本当に良いのかというようなディスカッションがあったと思うんですね。
前置きが長くなりましたが、私は今前期の研修の方も見直しがなされていることがありますので、その辺のところとの情報交換をしっかり持たなければいけないということと、これは個人的な私の意見ですが、妊婦の診察はやはり内診ができなければいけませんので、流産かどうかとかいうこともですね、ですからこれはもし持ってくるとしたら後期に持ってくる内容であろうと思います。つまり専門性を持った総合診療医の中にやるべきであって、前期の中に持ってくる内容ではないなと個人的には考えております。

後期研修における産科、妊婦検診
○土屋 有賀先生と山田先生、もしありましたら一言ずつ。

 
○有賀
水準に応じた認定のあり方
昭和大救急医学の有賀と申します。大変興味深く拝聴させていただいて、ありがとうございます。11ページのところにあります、先生先ほど「本認定制度の対象は全科にわたるものであり、内科に限ったものではない。」とのことでした。私も実は、今大学病院にいますけれども、その前は地域の医師会の学術担当理事を長らくやっていまして、ここに「手をあげていただいた医師全員に参加していただきたい、できるだけ多くの医師」と書いてありますけれども、これからですね、お父さまの跡を継いで開業しようかなというような方たちと話をすると、おそらくこういう認定制度に大変興味を示すのではないかと強く思います。お父さまの水準でいくと一定の勉強をした後、地域で開業されて、ここにいうところの保健だとか福祉だとか地域医療そのものにどっぷりつかってやっているということで、あまりこの制度に無理やり乗らなくても、自分の診ている患者さんたちはそのまま良いあんばいに診れているのではと強く思うのです。ですからそういう意味では、何となく日本医師会の思考として、すべての会員について等しくとか、既にいろんな開業の先生、皮膚科や眼科の先生の話が出ましたけれども、既に一定の水準に達して、エスタブリッシュ(確立)された方たちについてはあまり問題にしなくても、日本医師会の会員の先生方は十二分に生活していくことができるのではないかなと思うのです。そういう意味で、この制度そのものは日本医師会にこれから入ってくる新しい方たち、もちろん年を取って入ってこられる方たちでもいいのですが、そういう人たちにどんどんやれる形で、あまりギリギリと今いる人たちを対象にどうこうというよりも、もう少し先のことを考えながら後期研修とか、そういう意味での専門性ということを考えてドラスティック(徹底的)にどんどんやる方が良いのではないかと思うのですけれども。そういう、今できている人は良い、という議論はあるのでしょうか。

水準に応じた認定のあり方
○飯沼 あります。コース4を含めて、もう経験がある方はいい、という意見はあります。一方、全部同じでやれ、という先生もおられる。もう一回絞り直せと、という意見もあります。いろいろなご意見があるのでゴーが出たら最終的に討議していくことになります。

 
○有賀 ありがとうございます。ぜひそういうことで、今後。

 
○土屋 最後になりましたが、山田先生。

 
○山田
研究班の視点
生涯教育制度の有効性の検証と認定制度の必要性

池田先生、飯沼先生、この会は後期臨床研修の制度設計的なものを構築することができるかということを検討しよう、ということで一応、大学を卒業した医師の開始時点としては、卒後初期の臨床研修2年を終えて、3年目の時点の医師を全部並べて、その人たちをどういう具合に、それぞれのキャリア形成とか、パスに分布ないし配置させれば、一番良い医療体制に向けて、いい方向に進むことができるか、ということを検討しているという視点が、基本的な視点なのですが、その観点から、現実問題として関わっているお二方の立場のお話を、理解できるような形で聴くことができて、本当に勉強になりました。どうもありがとうございました。

研究班の視点
一つ個別的な質問としては、現実的な成果を生み出すために、私が一番興味深く思ったことが、生涯教育推進委員会が平成18年19年で諮問を受けた、従来継続的に長年行ってきた、生涯教育制度の有効性について検証しようと。そういう実績、成果の検証、効果の検証というのが、次の新しいものを設計、計画していく上で重要な基盤になると思うので、それについて簡単に教えていただければと思います。

生涯教育制度の有効性の検証と認定制度の必要性
○飯沼 簡単に申し上げますと、この20年間続きました生涯教育制度が、いっとき非常に申告率が減ってこれは大変だ、という事態がございました。自主申告制でありまして、もう一つは自主申告と、1時間でも50時間でもどちらでも、申告したという評価をするようにいたしておりました。従いまして評価に客観性がない、というのが共通の見解の答えでございます。そして、生涯教育制度を実のあるものにするためには、会員100%に勉強していただいて、それを客観的に評価できるシステムにしなければだめだと、それがすべての始まりでございまして、それなら認定制度の方がいいんじゃないかと、その結果としてなったわけでございます。

 
○山田
後期研修制度への意見
ありがとうございます。もう一つ簡単にお聞きしたいのですが、なかなかこうしたことをお聞きする機会がないので。日本医師会の立場として今の検討している後期研修、専門研修、卒後3年目からの臨床研修に対して、何か全般的なご意見というか、非常に強いものがあればぜひそれをお聞かせ願いたいと思います。

後期研修制度への意見
○飯沼 いわゆる後期研修、「後期研修」という言葉はないと聞いておりますので「いわゆる」を付けますけど、日医で機関としてディスカッションしたことはございません。前期、いわゆる今の研修制度についてはいろいろ問題点があるということは存じ上げておりまして、それは公式の日医でも会議もしておりまして、厚労省の会議に私は出ておりますし、今度できました文科省と厚労省合同の会議も私が出ておりますので、それは正しくお伝えをしようと思っております。後期につきましては何もまだ検討もしていません。それほど難しい問題でありまして、学部教育からの延長でございますから、学部も決まらない、国家試験の方法も決まらない、前期をどうするかも決まらないで後期の議論はないだろうというのが大多数の意見のように思いますが、機関の意見ではございません。

 
○土屋
まとめと御礼
次回の予定

どうも先生、時間をオーバーして、ありがとうございました。医師会の方で先ほども指摘した14枚目(医師会配付資料7ページ)の認定コースの、コース1と、2から4と。先ほど申し上げたように2から4は喫緊の課題だと思うのですが、この会場でビジョンの具体化の検討会の最後をやったときに、医師の増員を1.5倍にというのを求めたときに、それをやってたのでは10年も20年もかかると。喫緊の課題に絞るべきだ、と厚生労働省の方から言われて、危うく高久先生も乗って、増員の話が落ちそうになったんですが、やはり私どもの班としては、今山田先生がおっしゃったように、コース1のところですね、ここをぜひ医師会とも協力してどういうシステムがいいのか、ということを中心に考えていきたいと。2から4も大変大事なことだと私も認識しておりますけども、また同じような論法で、こっちが大事だから1は後回しだ、と厚生労働省に言われないように、しっかりした報告書にしたいと思います。ぜひ医師会の先生方も今後ともいろいろご指導いただいて、私どもの良い報告書ができるようにご協力をいただきたいと思います。また、池田先生にはお忙しい中来ていただいてありがとうございました。お二方に改めましてお礼の拍手をしたいと思います。どうもありがとうございました。

(拍手)

まとめと御礼
  ちょっと時間をオーバーして申し訳なかったのですが、次回ですがまだ日程が上ってないのですが、皆さまの資料のところにあります18ページからの資料4で、日本学術会議の提言で要望「信頼に支えられた医療の実現」というのがあります。この前も申し上げました、その42ページ(提言の20ページ)になりますが、その最後に、米国の専門医認証組織の最後のパラグラフで「なお、米国のACGMEという認証組織は民間の団体である。一方我が国に求められる上位認証組織では、既に各学会等により運営されている多数の専門医制度を改めて束ねる役割を担い、地域における受け入れ数の設定等において、関係する行政機関等との連携・協力も重要となると想定される。また、必要に応じて懲戒権を行使し、自浄機能を発揮できるようにすることが期待されることなどから、上位認証組織については、法律に根拠を有する公的な組織にすることが適当ではないかと考える。」とあります。

私どもで今検討をしているところに直接関係あることですので、ぜひ学術会議の金澤会長にお願いをして、ご説明を皆さんで聴ければと思っておりますので、また日程が決まり次第ご連絡をさせていただきます。どうも今日はご協力ありがとうございました。また多数傍聴していただいて、感謝いたします。また今日は皆さんからご意見を聞けませんでしたが、ホームページが開設されましたのでぜひそちらの方へご意見を寄せていただければありがたいと思います。どうもご協力ありがとうございました。終わります。

次回の予定


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