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厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)
医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究

第1回班会議 会議録


日時:平成20年9月22日(月)13:00−15:00
場所:厚生労働省 専用第18、19、20会議室 (17階)
出席:舛添厚生労働大臣、土屋、有賀、海野、江口、岡井、葛西、川越、阪井、外山、山田、渡辺

発言者 発言内容 進行・要旨
○土屋 それではただいまより第1回の班会議を開かせていただきます。この班会議はご存じのように安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会においてこういう班でいわゆる後期臨床研修のあり方について検討すべきではないかということで大臣より急きょこういう班を組んでいただくことになりましたので、冒頭に大臣よりご挨拶をお願いいたします。

開会
○舛添厚生労働大臣 皆さんお集まりいただきましてありがとうございます。安心と希望の医療確保ビジョン、これの具体化作業を行ってきたところでありますけれども、お医者さんの数、絶対数が不足しているんじゃないかと、それから地域や診療科間の偏在があるんじゃないかと、こういう問題点が浮かび上がってきました。お医者さんの数については増やすという閣議決定を、具体的に増やすということの判断をいたしまして、文部科学省と緊密な連絡を取りながら来年度の医学部定員数の要求増を行っているところであります。

一方、地域による偏在、診療科による偏在については、いろんな角度から問題解決を図っていこうとしておりますけれどもやはりこのお医者さんの教育のあり方、研修制度のあり方、こういうことが浮かび上がってまいりました。そこでこの検討会を引き継ぐ形で、まず一つは、文部科学大臣と私厚生労働大臣のもとに、共同、こういう大きな会議で共同ということは今までなかったと思いますが、共同で、「医師臨床研修制度のあり方等に関する検討会」というのを立ち上げました。

それと共に、今日皆さんにお集まりいただいて、土屋先生にお骨折りいただいておりますけども、「医療における安心・希望確保のための医師後期臨床研修制度のあり方に関する研究班」、これを内部で立ち上げるということで今日立ち上げることとなりました。私も現場のプロフェッサーたちの意見を聞いたり、若い学生さんの意見を聞いたりいろんなところで現場を見てきておりますけれども、やはりどういう形で一人の学生が入学して一人前の医師になるまで、どういう形での教育プログラムを組めるのがいいのか、卒前卒後の研修のあり方、ダブっててもったいないんじゃないかという声もありますし、それからもともと新しい研修制度を入れたのは全体をレベルアップをするそして総合的な能力を磨いていく、で、もちろんこういういい面がたくさんありますし、これで水準も上がってきたという報告も聞いております。しかしながら、一方では地域間の偏在ということに拍車を掛けているんじゃないか、例えば、極端な意見を言うと、もう2年を1年に減らすだけでも一気にお医者さんが増えるじゃないか、こういう意見をおっしゃる方々もおられます。こういう問題について、私はただ単に研修制度だけではなくて、まさに教育のあり方、先般も文科省との検討会でも申し上げましたけれども、例えば私も大学の先生をやっておりましたけれども、研究者としての資質と教育者としての資質は違います。そうすると、どうしても私なんかも研究に専念したい、そうすると自分で論文を書きたいということに専念すると、学生の教育ということは別ですから、そういう観点から考えたときに教える方の教師像というのはどうあるべきなのか、だから例えば論文の数だけでお医者さんというか医学部の先生を評価していいんですか、教育者という観点から評価すればまさにですね、論文の数は少ないけども、この先生に巡り会ったから、岡井先生がおられますけども、自分はどんなに困難があろうと、訴訟リスクがあろうと産科医になるというふうに、決める学生が増えてくれるのが一番だと思うんですね。ですからそういう意味で先生のあり方もやはり検討しなければいけない。じゃあ、先生をどう評価するのかとういうことについては、これは文部科学省のある意味でのいろんなルールがあるんでしょうから、そういうところまでメスを入れないといけないということでですね、両省での検討会を立ち上げましたけど、これは研究班ですから、むしろ文科省と一緒にやっているのは広く国民の意見をよく聴いて、私が今言ったことも含めて、ただ、これはあくまで研究班ですから、ご専門の立場から見て、どうだ、ということを、全く大臣にも遠慮せず、誰にも遠慮せず、専門性ということから、ぜひ一つの結論とは申し上げません、いろんな形でのご提案という形で出していただく、そのことによって、さらにより良い研修制度ができると思いますし、それが最終的には国民のため、何をやれば一番国民のためになるか、という観点を忘れることなく、ぜひ皆さん方に頑張っていただきたい、ということで一言ご挨拶申し上げました。どうかよろしくお願いいたします。

大臣ご挨拶
○土屋 どうもありがとうございました。お時間が限られておりますので、検討会にご出席いただかなかった、4人の新しい班員の先生方に、お名前とご所属と、ご専門だけご紹介をいただきたいと思います。江口先生から。

 
○江口 帝京大学の腫瘍(しゅよう)内科におります江口でございます。よろしくお願いします。

 
○阪井 国立成育医療センターの総合診療部におります阪井と申します。小児科と麻酔科を両方やっておりまして、子どもの総合診療部というのを立ち上げております。

 
○外山 亀田総合病院の心臓血管外科におります外山雅章と申します。よろしくお願いいたします。

 
○渡辺 慶應義塾大学医学部で漢方医学をやっております渡辺と申します。よろしくお願いします。

 
○土屋 それでは大臣、次のご予定があるということですのでここでご退席になるところです。どうもありがとうございました。

 
○舛添厚生労働大臣 はい、じゃあ先生方、どうかよろしくお願いします。ありがとうございました。土屋先生、よろしくお願いいたします。  
(大臣退室)    
○土屋
研究の背景と概要
事務説明
事務局
班長より
議事の公開
班会議の進め方
海外の研修制度
それでは議事に入りたいと思います。

最初に私から、今大臣がご紹介いただいたように、安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会で、この班を立ち上げたらどうかということになりましたが、その背景には、日本学術会議が今年の6月に、後期研修といいますか、専門医の教育について、第三者機関的なものをつくってコントロールすべきではないか、というご意見が出ております。資料にも含まれております。また日本医師会からも、そのような要望が以前から出ておるということで、このような背景のもとで、いったい我が国における後期研修というのはどのような形がよろしいのか、今まで専門医認定制機構というのがありましたけれども、全体のコントロールというのはなかなか難しい、ということがありますので、どのような仕組みを考えていったらよろしいかということが、私どもの班に課せられた命題だと解釈しております。従って本日は、検討会でのメンバーを中心に、足りない分野について4人の先生方に加わっていただいて、班を構成して、できれば年度末といわず年内に、ある程度のアウトラインが描ければ、ということで、できれば来年度、その具体化に向けたステップはどういうものになるかということを検討できればと思います。大臣も言われたように、あくまで研究班でありますので、いろんな可能性を諸外国の例も見て検討していくというのが本来の目的で、ここでいきなり政策が作られているということではありませんので、忌憚(きたん)のない意見をぜひ言っていただきたい。それについてはやはり、オープンなディスカッションがいいと思いましたので、今日もマスコミの方にも開陳をしてということで、皆さんお差し支えなければ、討議の内容そのものも、絵も含めて記録を取っていただく、もちろん議事については、できればUMINのホームページを立ち上げて、皆さんが広く見ていただいて、各界の方からご意見を賜って、より良いものを検討していきたいと思いますので、どうかご協力をいただきたいと思います。(班員に)取材に関してはよろしいですか。特に秘密にするような話はないと思いますし、また、皆さんが同時進行的に知っていただいてご意見を言っていただくことは大変ありがたいと思います。



研究の背景と概要
最初に、研究班ですので、事務的なことを申し上げます。今日資料が、夕べ、メールでもお送りしたと思いますが、大半は先ほど申し上げた、安全と希望の医療確保ビジョンの検討会と、その後行われました医療確保ビジョンの具体化に関する検討会の抜粋であります。従って、研究班で資金が限られておりますので、傍聴のマスコミの方中心には、最初の2枚しかお配りしてありませんが、コピー代も自分たちの研究費でまかなわないとならないのでご勘弁願いたいと思います。すべて厚生労働省のホームページから、この2つの検討会の議事録を開けていただくと、全部ダウンロードできるのが今日の資料でありますので、どうぞご勘弁いただければと思います。班員の皆さまには今申し上げたように、これは国費をいただいて厚生労働科学特別研究事業として、厚生科学研究費の補助金をいただいて進めてまいりますので、後ほど小冊子をお配りしたいと思いますが、この規定にのっとって、資金の運用をしていく必要があります。急なことだったものですから、会計については班長一括でということで、私の所属している国立がんセンターの会計課に事務委任をするということで、実際の窓口は国立がんセンターがん対策情報センターのがん対策企画課に事務を置いていただくことにしております。そこに長谷川室長という者がおりますので、もし分からない点があれば、ぜひ私どもの企画課の方にお問い合わせいただきたい。これは来年の3月に1円たりとも収支が狂うと、私が徹夜で目を通さないといけませんので、一括して私どものところで伝票から何から、扱わせていただくということで、必要な費用がかかるということがございましたら私どものがん対策企画課の方にお問い合わせいただいて、執行ができるということであれば、領収書を送っていただくあるいは事前に言っていただくということで、事務の方で手続きをとる、私自身も一切現金を取り扱わない状況ですので、その辺はちょっと面倒くさいかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。ぜひ小冊子を、厚生労働省関係の研究班をされた方はご存じだと思いますが、一度お目通しいただいて、大変面倒な要求ですけれども、これは皆さん国民の税金を使った事業でありますので、ぜひ厳格に執行をお願いしたいと思います。

事務説明
いわゆる庶務的な事務は、今申し上げた私どもがん対策企画課が担ってくれますけれども、研究面での、内容的な事務と言いますか、私院長の判子押しのかたわらやるのは大変荷が重いものですから、私どもがん対策情報センターにいて、病院の併任辞令が出ております、私の真正面にいる、渡邊清高先生に班長協力者としてお手伝いを願っております。実は、今日のこの会も、私は先週の金曜の夜までアメリカに出張していたものですから、メールのやりとりですべて渡邊くんが、本省との間を掛けずり回ってくれてこれを準備をしてくれました。この資料を昨日の明け方までメールで2人で議論して今朝まで彼が印刷をして皆さんのお手元にお届けいただいたということで、今後とも彼の双肩にかかっていると言っても過言ではありません。彼は、東京大学で永井院長のころ、病院の改革にも携わって、いろんな医療の裏表を知っておりますのでこういう私の右腕で立っていただくのに適任であろうということでお願いをしております。情報センター長の加藤センター長も快くこのお手伝いをご同意していただきました。もうひとかた、日本対がん協会で、がんの戦略研究事業であります緩和医療の部分、これは研究班の大本は黒川清先生がやっております厚生労働省の戦略研究の分のがんの分野について、日本対がん協会が事業を引き受けてやっている、その実際の立ち上げと運営を行っていただいた、松村有子先生にも班長の協力者として外から支えていただくということでお願いしてあります。研究の内容面について何かお問い合わせの節は私がつかまらないときは、渡邊ないし松村に聞いていただきましたら適宜、遅れることなく対応してまいりたいと思います。年末、年度末にかけて報告書をまとめる段ではさらに大変になると思いますので、もう一人くらい班長協力者をお願いして研究面での事務的なことをお願いしようと予定しております。また決まりましたら先生方にご連絡をさせていただきます。

事務局
そして、この班の趣旨は先ほど言ったようなことでありますので、皆さま方それぞれ医療、医学の分野で専門性は高いと思うのですけれども、ぜひ、利益代表的な発言は控えていただいて、やはり、我が国の国民のためにどういう医療体制が望ましいのか、そのためにはどのような医者を、どのくらいの数、どうやって育てたらいいのか、ということで、ご自分の分野が一番気になるとは思いますけども、そこを乗り越えて国民のためにどういう明日の医療体制が必要か、これは当面のことの解決はもちろん厚生労働省が行政としてやっていただくわけですけれども、次にどういう医者を育てたらいいのか、という観点でぜひご討議をいただきたいと思います。利益代表同士でやりますと極めて下世話な話になってしまって、理想的なものはなかなか討議できませんので、釈迦(しゃか)に説法とは思いますけれども、その都度ぜひ、心にとどめてご発言をいただいて、より良いものが皆さんで構築できればと思っております。そして、私事でありますが、私に直接言ってくる人はいないのですが、影で私はこの班長として適任ではないのではないかというようなうわさも、多々飛んでまいります。その理由は、皆さんご存じのように新聞その他報道であるように、麻酔医が不足して手術も7割しかやっていない病院の院長が、外でばっかり騒いでなんだ、というようなおしかりが出ているということをメールでたくさんいただいておりますが、私も真実そう思います。足元がぐらついていて何も外に出られないのでありますが、幸いに今年の6月に日本麻酔科学会の理事長に窮状を訴えてご援助をお願いしておりましたところ、麻酔科学会あげて私どもの病院を立て直してくれるということで、10月1日に新しい手術部長が赴任するということが決まりました。某大学の現役の准教授がその職をなげうって、がんセンターのために赴任してくださるということで、この実現には、今日も班員の一人であります山田東大教授と横浜市立大学の後藤教授が全面的にご支援いただいて実現のはこびになりました。お二方と新しく赴任される先生と三者で、来年の4月にはぜひ元通りにして、むしろ今まで以上に手術がしっかりできるようにということで、計画を綿密に立ててくださっているということで、ここまで見通しが付きましたので、私としてはこの班長を引き受けてもよかろうと、自分では判断したわけであります。大変皆さんにはご心配をおかけしましたけれども、あと半年かけて元通りの元気ながんセンターになるというめどがつきましたことをご報告いたします。ちなみに私どもでは、ご存じの方も多いとは思いますが、後期研修としてレジデントを1学年30名、3学年合計90名、そしてレジデント修了者に対してがん専門修練医として1学年20名、2年間ということで合計40名、全体で130名の方を後期研修としてお預かりしております。自慢話になって申し訳ないのですが、全国で臨床腫瘍学の教室を開設する大学が多くございますが、その大半は私どもの出身が教授に着任しております。また、外科系の教授にも多数送り出しているのはご存じの通りでありますので、私個人ということではなく、がんセンター中央病院の院長がこの後期研修の班会議の班長として、私は適任であると自負をしておりますので、私の能力の許す限り精いっぱいこのお話をとりまとめてまいりたいと思いますので、班員の皆さまにおかれては、よろしくご援助ご支援をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

班長より
従って、この班は、何とも言うようですが、国民がどのような医療体制を期待して、その医療体制の維持発展には、どのような医師をどのような数養成する必要があるか、ということを基本に議論を進めてまいりたいと思います。また、検討会でも一部声が出ましたが、専門家だけでやっていてよろしいのか、いま医者は信用おけないんだという声がありましたが、もちろんその検討過程で、一般の方、患者さん、それから広く国民からも意見を聴く機会を設けたいと思います。これはいつということでありませんので、そういう意味でホームページでこの議論を開陳して、いつでもそこにご意見が届くような形で進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。マスコミの方にも、先ほど申し上げたようにオープンにいたしますので。ただ、お願いは、伝え方というのは編集によっていかようにでもできますので、ぜひお互いに建設的で紳士的な進め方をしたいと思いますのでよろしくその辺りは加味していただきたいと思います。別に私どもは、チェックをさせてくれということは申しませんので、ぜひ国民の皆さんに、私どもの真意が伝わるような形で、報道していただけたらありがたいと思います。

以上、長らく申し上げましたが、具体的な進め方について、次に申し上げたいと思います。今までのところでよろしいですか。

議事の公開
理念的なことだけ申し上げましたが、具体的なことに入ります。この班会議の進め方ですが、厚生労働省の班ですので、年度替わりであります。ですから、もう半年しかありませんので、最初に申し上げたように、9月もほとんど消化していますから、10、11、12月と精力的に会合を持って素案をともかく正月休み中には書き上げたいと思っております。従って、今日は皆さんのご努力で急なお知らせにも関わらず全員お集まりいただいたのですが、各方面からの意見を聴いたりする会は、たとえ全員そろわなくても精力的にやって、それを文章化して、皆さんにお伝えをして次の討論に同じスタンスで臨めるようにという努力をこちらとしてはしていきたいと思います。従って本日は4人の班員、検討会にいらっしゃらなかったメンバーをお迎えしましたので、安心と希望の医療確保ビジョンの具体化検討会の内容について、もう一度確認するという意味で2時間お時間を取っていただきました。実質的には、1時間ちょっとになってしまうかと思いますが、忌憚のない意見を言っていただいて、認識を一つにしたいというのが本日の目的であります。その中では、第三者機関をつくった方がいいのではないかという意見が検討会で出ましたし、これには公費を投入しなければしっかりした制度ができない、ということもありましたので、その辺も含めてお話を承れればと思います。大きなアウトラインが皆さんの頭の中に共通化できればということが本日の目的です。次回から、私どもが独りよがりでつくってもしょうがありませんので、関係者、関係団体から意見を聴く、いわゆる役所の検討会というような形でですね、何人かお迎えして聴きたいと。特にこの分野は、以前から日本医師会や専門医認定制機構が大きな役割を果たしてきましたので、これらのところから代表の方に来ていただいて、今後どう進めたいと考えていらっしゃるのか、まずご意見を拝聴したい、特に日本医師会では、総合医・家庭医について、検討会でも私どもの議論に誤解があるような報道が見られますので、ぜひ検討会のような堅苦しい場ではなく、班会議の場で忌憚のない意見の交換をできればと思っております。専認協からももちろん、来ていただいてお話を賜りたい。そして、全部の学会というのは無理ですので、主要学会、内科学会と外科学会、それらのいくつか皆さんからアイデアをいただいてご紹介をいただきたい。

班会議の進め方
それと同時並行的に、やはり海外のシステム、これは私どもも聞き覚えはありますけども、正式にデータを集めたかと言われると時々心配になる面もありますので、できれば皆さま方もたくさん海外へ、知り合いの方が多いと思いますので、ご自分の関係者から研修の制度についてご存じの方をご紹介いただいて、そこから情報をいただく、あるいはこの秋のシーズン、10月11月はたくさん学会に外国の方をご招待する学会が多くございますので、そこを便乗してですね、私どもは外国から呼ぶような研究費はいただいておりませんので、学会長にお願いをして、短時間かお時間をいただいて私どもで意見を聴かせていただく、というようなことで海外の生の情報もぜひ取り入れた上で、皆さんで検討して日本にとっては、この日本の土壌にあった制度はどういうものであるかと、という手順でまとめていきたい。その途中、繰り返しになりますが、一般の方、あるいは他分野の方からも意見を聴取しながら軌道を修正していくと、ということで、最後にはそれを報告書の形でまとめられればと考えております。以上の形で進めていきたいと思いますが、まずこの進め方について、さらにこういうことも、あるいは、ここはちょっと違うんではないかということがありましたら、この時点で、全体の大まかな進め方について、ご意見あったらお願いしたいと思います。

よろしいでしょうか。それでは、早速本日の議事に入りますが、最初に、江口先生から、この研究班の研究計画書は以前に簡単なものをお渡ししたと思うのですけれども、先生が抱いてらっしゃる、この班に対する印象と、こう考えているということがありましたら、簡単にご紹介いただきたい。既存の検討会のメンバーでですね、それはわれわれが意図したものとは違うんだ、あるいはその通りだということで軌道修正をしていきたいと思います。江口先生からどうぞ。

海外の研修制度
○江口 今まで開かれていた検討会の中で、まとめられた資料の内容について整理して解説していただきたいと思いますのですけれども。
 
○土屋
「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会
分かりました。検討会のメンバーで、中間とりまとめというのが5ページ目、資料1−1、安心と希望の医療確保ビジョン具体化に関する検討会 中間とりまとめ(案)ということで8月27日付けで出してあります(註:9月22日公表分)。これが検討会のメンバーが合意というかですね、この範囲は皆さんが賛同されているという範囲です。もちろん葛西先生とか山田先生は参考人という形で来ていただいたのですけれども、この中間とりまとめについてはご同意をいただいているということであります。その中で、2番目に「医師の偏在と教育」というところがあります。ここが私どもに一番影響のあるところで、ここでは中間とりまとめなので、医師の増員のところが大きく書いてありますけれども、議論で出たのは、ただ増やすだけではだめだろうと。偏在の問題があるということで、偏在については地域の偏在と診療科の偏在があると、それを長期的にしっかり是正するあるいは理想的に形にもっていくには後期研修のコントロールができないと人数のコントロールができないというようなことが議論されたと思います。それを受けた形で、臨床研修については文科省と厚労省の合同の委員会、後期研修についてはここでまず素案を討議してはどうか、ということで出ていると思います。何か検討会に参加の先生で追加のご説明、よろしいですか。

「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会
○海野 実際には、その後に、9ページですね、「後期研修のあり方に関する研究班(仮称)」設置に関する要望というのがありました。具体的に言うと、こういうことについてのある程度の具体的な計画をこの班で立てると、という形でと。

 
○土屋
研究班設置に関する要望
おっしゃる通りで、資料の1−2にですね、私が第2回の具体化の検討会で出させていただいた、「後期研修のあり方に関する研究班(仮称)」設置に関する要望というのを、7月30日に出させていただきました。これを受ける形で大臣がこの班をつくってくださったというように、最初にご指摘をいただいたと。従って、ここでは先ほど申し上げた背景に、医師の専門領域の偏在、家庭医養成の必要性、第三者機関設立への要望が医師会と学術会議に出ている、ということを背景として、調査研究として卒後後期研修のあり方に関すること、諸外国の後期研修の内容、制度の調査、そして卒後研修(専門医制度委員会)の設立、ということを調査研究をしたい、ということで、これが土台になっていると思っていただいて結構だと思います。何か追加よろしいですか、はい、海野先生。

研究班設置に関する要望
○海野
診療科の偏在
専門領域の必要養成数

海野でございます。土屋先生のお話、その通りなんですが、議論の中でやはり診療科間の偏在の実態、その辺がまだ十分共通の認識になっていないんじゃないかという部分があるかと思うんですね、ですからこういう問題は少ない科減っている科は声を出し始めますけれども、むしろ増えている科は、やっとこれで状況が良くなってきたという感じで考えておられるでしょうから、そこではあまり声が出てこないかもしれない。もちろん増えている科が増えすぎだということはないかもしれないのですが、ただ、これから全体の医師の総数が増えていく中でどういうバランスになっていくのかということを、見極めながら進んでいかなければいけないと思いますし、実際に若い先生方が、専攻分野を決めるときにこの分野はこれからどういう方向になっていくのか、今現状どうなのかということも、当然情報として示されているべきだと思うんですね。ですからそういう意味で、具体化の検討会の中では、今日の資料58ページ、59ページ、144ページに、これは元はといえば医政局の方で各基本領域の学会に対して調査していただいたデータが第1回の検討会で資料として出ています。今日この中に含まれてないんですが、それに基づいて単純にデータをグラフ化しただけの資料なんですが、これをご覧いただいてもやはり臨床研修制度が良いか悪いかという問題ではなく、全体のトレンドとして外科系が明らかに減っていると、これはそれぞれの診療科、例えば外科系の耳鼻科学会でも泌尿器科学会でも脳外科学会でも、われわれ産婦人科学会でもみんな内部では議論している。だけどそれは自分たちの問題として議論しているわけですよね。ですけど現実にこうやって集めてみると、特に144ページの上のグラフですけど、こうやって集めてみますと、明らかに外科系全体の問題であると、ですからわれわれ自分たちだけの内部の問題としてとらえていていいんだろうかということになるかと思います。

診療科の偏在
ですからこういう中で、私自身はそれぞれの専門領域でどれだけの必要数があるかというのは本当に現場の先生方、実際にその専門領域がこれからどういう診療をしていくか、どういうやり方でやっていくか、あとはそれがどれだけ必要なのか、というのは、これは現場から積み上げる形じゃないと数として示すことは非常に難しいと思うんですね。ですから今までの議論の中で例えば8千人を1万人にしたらどうか、1万2千人にしたらどうかというのは大枠の議論ですね。それからそれ以外に何パーセントぐらい増えているとか減っているとか、割合の議論ですけれども、そういうだけの問題ではなくて、それでは何となくきれいな作文はできるんですが、本当に現場のニーズを、これからの未来のニーズも含めて吸い上げているかどうか、ということはちょっと疑問があると。ですから、ぜひ、各学会からのヒアリングも含めてそれぞれの専門領域の先生方に自らの立場で、自分たちとしてはこれはどれだけ必要としている分野なのかということを専門家の責任で述べていただく、ということがぜひ。これをやると例えば毎年3万人養成しなきゃいけない、となるかもしれないですが、それはそれとして。ただ、それをどう具体的に全体の中でどう折り合っていくのかという議論にしていくのがわれわれが現場から全体を組み立て直していくということでは必要なんじゃないかと思います。

専門領域の必要養成数
○土屋 ありがとうございます。おそらく今、海野先生が言われたことに加えて、コメディカルの役割が変化していくだろうと。そうしますと、当然、各学会が現状から数えた数と違いが出てくるということでその辺も踏まえて、これから議論を進めていかないとならないと思います。じゃあ阪井先生。

 
○阪井
議論の発信と国民の視点
一つコメントさせてください。今最後のところ、海野先生が最後におっしゃったことが一番大事だと思ったのですが、それは医療の需要をどう見積もるか、必要をどう見積もるかということで、各学会から出したとか専門家が意見を交わしてというのはある、つまり医療供給者側の意見にすぎないと思いますので、私は供給者側で意見を出し合っていても、結局本当のところを見積もるのは難しいかもしれないと思います。ですから、医療を受ける側の方、あるいは、医療には第三者がないのかもしれませんが、少なくとも私たち医療の専門家だけで話し合っていても、正確なところはなかなか出にくいかなと思います。ある意味、どこまでを医療というかとかですね、どこまでが必要というかと言うことはかなり難しいことでありますので、最終的には国民の選択の問題ということになりかねないという気がします。つまりどこまで安全を求めるか、そういうことだと思います。そういう視点も入れると、このメンバーだけで話し合っていていいのかな、という気がいたします。先ほど土屋先生おっしゃったように、いろんな方を入れて意見を聴いてやっていくのがよろしいと思います。

議論の発信と国民の視点
○海野
専門家としての責任
その議論も検討会の中であったのですが、この研究班を専門家の立場でということに最終的になっていったのはですね。やはりこれは結局、われわれは専門家で、それで専門領域に対して、医療提供に対して責任がある、もちろん国民の側の需要ということがあるわけですが、ただ、医療はそれぞれ特殊ですから、国民がその領域が必要になったときに初めて必要性が分かる、という部分があります。ですから、そういう意味では、これは専門家の責任がある、社会的な責任があって、そういう責任を今まで、それぞれの学会が果たしてきたのか、という問題があるだろうという議論で、じゃあやっぱり今まで、例えば、今でそれぞれの学会がですね、うちの学会は毎年500人入れます、それ以上は入れません、とかいったことありませんよね。何人でも入れてます。それで余っているなんて言った学会はありませんし、足りなくなるのはある。それは今のところ余った学会がないのかもしれませんが、だけど全体としてどうなんだろうということは、最終的に本当は何人必要なのか、われわれ産婦人科学会は毎年320人とか330人の専門医をつくっているんですけども、何人必要なのかをわれわれは知らない、というか言えない、という問題がある。それはどの学会でもそうだと思います。ですからそういうことをですね、全体の予算の議論や大枠の議論につながっていくとすれば、どこかで誰かが責任をとる形でですね、専門家として言うべきなんだろう、と思いますので。そういう議論です。

専門家としての責任
○土屋 はいどうぞ。

 
○阪井 もう一言付け加えさせていただくと、先生がおっしゃったように、私たち専門家というか学会はですね、なかなかそういうことを議論してこなかったと思いますが、それは多くの場合、医学と医療を混同するかあるいは医学の話をしていたから、無制限に医者がほしい、うちの学会員がほしい、ということになったのだと思います。ですから、そこをしっかり分けて議論ができるような人たちの意見を聴く、あるいは私たち自身がそうなっていくという発想の転換が必要じゃないかと思います。

 
○土屋 よろしいですか、じゃあ外山先生。

 
○外山
専門医のあり方
今日初めて参加させていただいてますけれども、今、海野先生がおっしゃったことは大変重要だと思います。私どものように大学の外で医療を行っている者にとりまして、大学の医療とわれわれがやっている医療はどう違うのか。違う点と同じ点があると思います。今後議論の中で土屋先生のリーダーシップの中で、専門医制度がどうだ、という話になってきますので、専門医制度についてどうこうという話は今差し控えさせていただきますが、「専門医」という考え方があくまでも臨床能力であるという原点で話を進めるべきだ、というのが、今までの中の一番、私自身は、重要な点であろうと。それと、大学における研究だとか、そういったことというのはやはり分離していかなくてはいけない。それから、やはり大学というのはあくまでも学校ですから、教育をしなければいけないと私は思っておりました。そういう意味で、臨床能力とそうでないものとをどう区別して、そして評価していくか、ということが最大の議論の焦点になるべきであろう、と私は思っております。

専門医のあり方
○土屋
後期研修医の試算
ありがとうございます。海野先生よろしいですか。

細かい議論は今日は避けますけれども、116ページに私が後期研修医の試算というのを三師調査(2006年の医師・歯科医師・薬剤師調査、註:看護師と書いてあるのは間違い)、そのときに基本診療科、専門研修と右の方に書いてありますが、例えば今現在内科に所属する方は全部で大体10万人になるんですね、今三師調査で内科にマルを付けてくる方は。それを維持するには毎年、8,000人弱の卒業生のうち、2,875人が内科を志望してくれないと維持ができない、というような試算をしたわけです。ところが118ページの、これは米国のレジデントの数、というのがあります。もちろんレジデントの1年目の数が36,000と、外国人も入れて大変多いのですけれども、もしアメリカ並みにやろうとすると、内科というのは上から6、7行目にありますけれどもアメリカで1年目のレジデントは8,500つまり日本で半分として4,300人毎年志望してくれないといけない、ということで、おそらく先ほど、どこもうちは500人来ても700人来てもいい、と言わないということはこの辺に事情があると思うのです。ですから、希望を聴いていけば足せば、アメリカは36,000なら、日本は18,000くらい卒業生がほしい、というような議論になってしまうと、とてもこれは現実からかけ離れている。ではその中で、我が国ではどうしていくかという議論にやはり戻らざるを得ないと思うんですね。ただ、バランスという点ではアメリカとかヨーロッパの科ごとの偏在というのは、参考にはなるかと思うのですけれども、このまま2で割って求めようしてもとても無理であろうと、その辺をこれから皆で知恵を出し合っていく必要があるのかなと思います。

それでは、外山先生、先にご発言いただきましたけれども、先生から他に何かご指摘があればさらにお願いしたいと思います。



後期研修医の試算
○外山
研修医教育と後期研修
指導医
ローテーション
臨床研修制度
全体的なことでよろしいですか。私は20年ばかり前、今の病院に米国から帰ってきました。最初にやったことはいかにいい臨床を国民に提供するか、ということに全力を注いで、それからやはりこれを受け継いでいかなければいけないという視点で、研修医教育をプログラミングいたしました。今で言う後期研修だと思いますけれども、そのころは初期研修も含めて全くそういう概念もなかったと思いますが、各施設でおやりになったところはあったかもしれません。
私どもはそれで、実際に胸部外科の後期研修というのを始めたわけです。その中で20年が経過したわけですけれども、私自身の実際の体験およびそれに対する、若手の医師が私のところに来た、そしてどういうプロセスで、世の中で自分の能力を発揮しているかということを見てみますと、3つのことが言えると思います。

研修医教育と後期研修
研修医教育というのはあくまでもものすごいエネルギーがいるのだということ、そしてそれには特別な予算と、特別な医師、指導医かと思うのですけれども、そういった理念を持った人が必要であるということは間違いのないことであろうと思います。ですから、片手間に医師教育をやる、というわけにはいかない。うちは大きな病院だから、医師教育をやっていかなければいけない、という単純な思考ではとても務まらない、ということを私は感じました。

指導医
医師教育、臨床医教育というのは、大学も含めて、大学が中心であるべきだとは思いますが、現在までの大学医学部にはそのキャパシティーも実績もありません。日本でそれなりの臨床能力を持った一般病院と大学病院が横に手をつないで、教育をする者と教育をされる者とを一定の水準で分けて、そして横のつながりを持ってやるべきことであろう、と思います。ですから例えば今、専門病院、がんセンターというのはその最たるものだと思いますけれども、がん教育もその中での一つの専門教育としてそこにローテーションをする、ローテーションの期間とか云々といったことは別として、そういったものをとりこんで、せっかく専門病院としてしっかりしたものがあるものを、そのローテーションの中、あるいは後期研修の中で組み立てていくという概念が、日本全体に必要なことであろうと私は思います。

ローテーション
3つ目は、後で出てくるかもしれませんけれども、医師不足云々ということがただ単に初期研修制度の導入とたまたま一致しているかもしれないし、もしそれが初期研修制度が原因としてそういうことが起きているのだとすれば、われわれ医療を担っているものの制度が間違っているのだ、と思います。医師全体・医療全体の制度が間違っているから初期研修制度2年間というものが、医師の偏在を生む、そして地域による医師不足を生じているのだと思います。やはり、初期研修というのは第一歩であって、非常に重要な第一歩を踏み出したと私は思いました。2004年にそういう制度ができたということですね。これからだな、と感じて私はいろんなところでそれは非公式の場で発言してまいりましたけれども、今後期研修制度というものを議論する場ができたということで、それを初期研修とどうつなげていくのかということを考えますと、定員化といいますか、A科に関しては全国で何人くらいの研修医が必要であり何人くらいの専門医が必要という概念を取り入れなければならない。というこの3点が私が感じたことであります。

臨床研修制度
○土屋 どうもありがとうございます。岡井先生。

 
○岡井
家庭医
専門医の必要数の議論をするときに、今回の研究班の研究・議論の対象の一つにもなっております家庭医の問題であると思うんですね。家庭医の制度をどうするのか、その人たちにいま専門医としてどれくらいやっている部分を担当してもらうかで、需要が違ってくるので、むしろこちらを先に議論してからいった方がいいぐらいだということを感じていますが。

家庭医・総合臨床医
○土屋 外山先生、先生アメリカでの経験が長いですけどね、家庭医あるいは総合臨床医というものの印象はいかがですか。

 
○外山
家庭医イコール専門医
私は最初から、日本に帰ってきて、心臓血管外科という極めて特殊な分野に携わってきました。しかし、つまり自分が家庭医であり、一般総合内科医というスタンスを常に考えてきました。家庭医は、向こうで言う、ファミリープラクティス、これは立派な専門分野であるんですね。専門医なんです。だからそのスタンスを日本がどこまで理解していくかということが非常に重要で、これは非常に大切な考え方だと思いますので、家庭医イコール専門医ということであると思っております。

家庭医イコール専門医
○土屋 はい、川越先生。

 
○川越
専門医の必要数
大変興味深く聴かせていただきました、川越です。
専門医の必要数を計算すると申しますか、どれだけの必要があるか、ということを医療供給側ではなくて、むしろ国民のニーズにあった計算の仕方をした方がいいということ、本当によく分かります。ただ問題は、非常に計算をしやすいものと、しにくいものがあると考えております 。

例えば、岡井先生、海野先生の専門のお産というと年間のお産の数が決まっていますから、一機関でいくつやる、そして一人の医者が大体何人くらい診ればいいかという計算は割とできていきますので、やたら増えても困るし、逆に減りすぎても困るという議論、つまり専門医の目標数というのを立てやすいと思うんです。

だけど、今議論になっています家庭医の数というもの、この家庭医の定義自体がまだしっかりとしておりません。そういう専門的な分野が必要だということには一致していると思います。イギリスみたいに全部登録してしまってやるということでしたら数が出てくるのだと思うのですけれども、その辺のところが今後考えていかなければということ。どなたか先ほど最初の方におっしゃられていたと思うのですけれども、本当にその通りだろうと思います。国民の視点で、専門医が何人必要なのかと、そういう視点をぜひ持っていただきたい、というかやっていかなければならないと思っております。

専門医の必要数
○土屋
専門分野のニーズ
家庭医のあり方
そうですね、今、川越先生ご指摘のように、数を数えるというときに、ただ、疾病構造といいますか、疾病の分布で割り切るだけではなくて、やはり文化というか、特に私ども専門の、がんだと、緩和医療、緩和ケアにですね、どこまで国民が求めるか、それによってその分野のニーズというのは大きく変わってくると思うんですね。これはもうまさに、文化によってこの需要というのは大きく変わってくるだろうと。ですから、必ずしもアメリカ型がいい、ここ型がいいと割り切れないというのがあると思いますね。

専門分野のニーズ
家庭医については葛西先生には検討会ではご紹介いただきましたけれども、その辺の解釈がまだまだ医療関係者の中でも一致していないだろうと思いますね。葛西先生のお話を初めて聴いたという方も当日には多かったわけですし、やはりその辺から掘り起こして、国民にご理解をいただくような分布というのはどういう考えていったらいいか、というように議論ができればと思います。そのためには、かなり資料が必要になるかと思います。

はい、葛西先生。

家庭医のあり方
○葛西
研修医養成の適正数の根拠
家庭医養成の進め方

家庭医のことを話していただいてありがとうございます。
家庭医に限らず他の専門分野も含めて、主要な国で、どのようにして研修医の数を決めているのでしょうか。私はこれは研究班ですので調べたいと思いますが、まだまだ知らない方がほとんどかと思いますので、知っておられる方がいらっしゃったらぜひ教えていただきたい。日本の場合には誰でも好きな分野に入っていける。でも、研修を終えた後でですね、やってみたけれども自分のやりたいことをその後続けるポストがないとか少ないとか、そういう状況になっていきます。そうではなくて入り口で絞って競争させて、適正な人数がそれぞれの分野で育つと、そういうのがいいと思います。ではその数をそれぞれの主要な国でどうやって決めているのか、そのファクター、決め方などをですね、調査研究をして参考にできるものをしたらいいのではないかと私は考えております。

研修医養成の適正数の根拠
それから、家庭医に関して言えば、例えばアメリカでは内科が22,000人ということですけれども、家庭医はその約半分、9,000人を養成している。それから、英国であれば卒業生の半分は家庭医の(日本でいえば後期研修に相当する)専門教育を受けています。それだけの数がいるわけですけれども、日本の場合には、指導医も少ないし、地域で研修医を受け入れる受け皿(インフラ)もまだであるという状態ですので、ある程度時間を決めて(ただ国民のためにはできるだけ早くということにはなりますけれども)、現実的に見たら数年から5年のスパンで、その目標数の6割7割ぐらいまで到達するような形でですね、養成を進めていくという形でしょう。そして数に関してはおそらく毎年毎年見直しながら微調節をすることが求められるのではないかと考えています。

家庭医養成の進め方
○土屋
家庭医養成の米国での現状
救急医の養成、横断的分野の検討必要性
ありがとうございます。
ちなみに先ほどの118ページの米国のレジデント数ということからいきますと、ここには家庭医学、ファミリーメディスンというのがレジデント数が全体で9,456、席が用意されている、1年目のレジデントが3,156、未経験の1年目が3,010ということで、3,000人強の方が、毎年新たにファミリーメディスンに進まれているということですので、日本は半分だとすると1,500人毎年育てないといけない。葛西先生が何十人単位で今頑張っておられるわけですけれども、やはりこの分野がかなり確立されないと、他の専門医の数というのも、今の数でいい


家庭医養成の米国での現状
それと、有賀先生の目が鋭いのですが、救急もそうですよね、アメリカに比べると恐ろしく少ない。同じ表を見ていただくと、すぐ家庭医学の上にありますけども、レジデントの総枠が4,379人、それで1年目のレジデントは1,408、未経験の1年目だけれども1,157ということですから、この辺をですね、いわゆる、診療科横断的というか、そういうところを今までは日本では大学を中心で極めて専門性の高い教育のことしか考えていなかった。もう少し横断的な、ブロードな分野ということを見ていなかった、ということを加味しながら数というものを検討する必要があろうかと思います。

それでは最後になりましたが渡辺先生。

救急医の養成、横断的分野の検討必要性
○渡辺
専門医と家庭医・総合医の連携
家庭医・総合医の指導医
漢方の重要性

はい、私は漢方という立場なので、どちらかというと葛西先生と川越先生のような、家庭医・総合医という立場で参加させていただいていると思っております。先ほどからの専門医の数ということに関してましては、おそらく専門医がどこまでやるかという範囲に関わると思います。例えば脳外科の先生が、外来もやらなくてはいけない。そうすると多くの頭痛の患者さんが来て、本来のオペをしなければいけないという業務以外の多様な業務に追われる、というのが日本の医療の現状ですので、専門医がカバーするもの、家庭医・総合医がカバーするものというものを、明確な線引きは難しいですけれども、ある程度の大まかな分け方が必要かなと思っております。基本的には患者さんがいきなり大学病院ではなくて安心して総合医・家庭医に行くというような仕組みができ、専門医との連携ができれば理想だと思います。

専門医と家庭医・総合医の連携
先ほど葛西先生のパワーポイント資料を拝見していまして、もっともと感じました。家庭医・総合医の指導医の数はどうかということになるのですけれども、私は内科専門医ではありますけれども、内科の開業されている先生方というのは臨床レベルは高いんですね。メーリングリストがありまして、いろんな症例の症例検討みたいなものをやるんですけれども、非常にハイレベルなディスカッションになっております。大学で限られた疾患だけを診ているというような先生方と違って、幅広くいろんな患者さんに接してしかも真摯(しんし)にそれに対応しています。ということで指導医の方はですね、そういった既存の組織が各科にあると思いますので、各診療科の中でも本当に患者さんと向き合っている開業医の先生方を中心に解決できるような気がいたします。

家庭医・総合医の指導医
最後に漢方のことだけ少し話をいたしますと、現在医者の8割が漢方を日常診療に扱っております。医学教育ではコアカリキュラムに入りまして、全国に80の医学部、医科大学があるのですけれども、すべてにおいて漢方の教育がなされております。しかしながら卒後教育制度というのは全くないものですから、8割の医者が用いているとは言っても、各科において非常に限定された処方しかなされていないという現状がございます。ただ、漢方は多成分であることから、特に高齢者で複数の疾患を抱えているような場合など、一剤二剤で対応が可能だというメリットがございます。また最近ではインフルエンザの治療で、タミフルと漢方薬との併用と単独群と、各西洋薬、漢方薬単独群で比較して、誰もが漢方とタミフルとの併用群が一番いいだろうという予想のもとにやった研究があるのですけれども、実際には漢方薬単独のものが一番使用薬剤日数が少なかったし薬剤費も少なかったという結果が出ております。漢方の世界は、研究費がつかないものですから、医療経済的なことが期待されていながら、なかなか研究が進まないという実情があるのですけれども、漢方というものをもっと総合医・家庭医の中でしっかりと確立できれば、選択の幅が広がることによって患者満足度が上がるとともに、医療費の削減が多分期待できるだろうということを考えております。以上です。

漢方の重要性
○土屋
総合医のあり方
はい、どうもありがとうございました。今の渡辺先生のお話に何かご意見ありますか。よろしいですか。

渡辺先生、開業医の先生にレベルが高い方がいるというのは私も賛成なのですが、ただ、レベルの高い方と、そうでない方の区別が、どこにもレッテルが貼(は)ってないですよね。私も部長時代まで、月に5か所医師会の勉強会に、夜ごと、大体都内だと8時から10時に行くのですけれど、その勉強会に出ていらっしゃる人は非常にレベルが高いんですね。特に肺がんで、見つけることに関しては、江口先生や私は肺がんの専門ですけども、こと見つけるのは彼らの方がはるかにレベルが上なんですね。ところが、300人医師会員のいるうちのわずか10数人なんですね。全員がそうかというとそうではない、ただ、他に心電図の勉強会に出ていらっしゃる方はそっちでレベルが高いと。だから、総合的な力がどうなのかというレッテルがですね、なかなか分からないという悩みがあったのですね。先生の分野で見ていてどうですか。




総合医のあり方
○渡辺
指導医としての基準の必要性
そうですね。例えば循環器が専門の先生であっても開業するとすべての科の方を診なければいけないので、やはり必要に迫られて勉強していらっしゃる先生が非常に多いと思います。そういう先生方をどうやって比較していくかということは、ある程度一定の基準を設けて、例えば葛西先生なりが基準を設けられて、それにマッチした方を指導医として認定するというようなことができればどうかな、と思います。

指導医としての基準の必要性
○土屋
家庭医養成のあり方
これは医師会の方も招いてお聴きした方がいいと思うのですが、先生がおっしゃるように、新たに加入する開業の方というのは大概大学で循環器だけ10年間やっていたと、そして博士号を取ってなったと、呼吸器、消化器はほとんど知らないというような方がなられると。先生が言われたように、個人的なご努力で必要に迫られてやって、完成した姿は大変ご立派だと私も思うのですが、その間試されている患者の身になったらですね、たまったもんじゃないというのが多分国民の声ではないかと私はいつも感じるんですね。ですからそこをやはり系統的に育てて、家庭医として世に出さないといけないんではないかと。そのご努力が葛西先生のご努力ではないかなという気がしているのですね。ですからその辺は、胸襟を開いて話せば医師会ともですね、決して対立する軸ではないという気がしているんですね。葛西先生いかがですか。

家庭医養成のあり方
○葛西
家庭医養成モデル「実践家庭医塾」
それに関しましても、私の方では福島県の今3つの郡市の医師会と協力して、名前は「実践家庭医塾」といって、まだパイロット的なものですので月一回のワークショップ的なものをやっています。参加される方は1年2年と続けて参加されて非常に熱心です。ただまだゆっくりやっていますので、ようやく一年たって家庭医療がよく分かってきたというような形で言われてきます。今医師会でも生涯教育とかありますけれども、もっと国民のための、国民の求めるレベルの家庭医になるということを目標にした、こういう「実践家庭医塾」をもっと全国で開催できるようにして、その受講者たちが早い段階で指導医になっていただけるような仕組みをつくったらいいんじゃないかと考えます。

家庭医養成モデル「実践家庭医塾」
○土屋 どうもありがとうございます。

それでは、新規に班員にお迎えする先生方からご意見を聴きましたので、今度は山田先生、どちらかというと麻酔科で病院で病院を横断的に見ていらっしゃると思うのですが、先生の立場からこの班での検討の推移をですね、どのようにお考えかご披露いただければと思います。

 
○山田
出発点の確認
3つの偏在という視点

初の出発点の確認ということになるのですが、今回の「安心と希望の医療確保ビジョン」の進め方は非常に適切な、整理された、実効性が期待できるような進め方になっているという具合に感じております。というのはまず医師の総数を一定の判断のもとに増やすということを大きな方針として決め、だけどそれだけでは解決しない偏在の問題を解消しなければいけないということも非常に明確な観点だと思います。

出発点の確認
偏在の問題に、これももうすでに皆の共通認識なのですけども、診療科偏在と、地域の偏在と、それから病院の設置形態における、大学それから市中病院を含めてですね、その設置形態間の偏在と、この3つの大きな基本的な偏在があって、これに対して実効性のあるような方策を構築することができるかということに、すべての問題は関わっていくという具合に思います。それで今議論しているのは、そのような前提に立って偏在をどういう具合に分析、理解、認識するかということがまず一つ大きな問題であると。これにはいろんな参照軸があって、どれをメインにしてどこをどういう具合に修正してみるのが一番正しいのだろうかということがあって、これもすでに今、いくつも具体的な議論はすでに始まっておりますけれども、すごく難しい問題であると、ただ、今回目的として設定していることを考えると、そこばかりに終始していても、十分な、適切な結論にはならないだろうと。それをある程度のところでやはり適切な判断結果という形にとりまとめて、それに対してどういう方策を考えれば、今言った非常に3つとも基本的でですね、それぞれが根源的な問題だと思いますので、それにメスを入れることができるかということである、という具合に私は考えていて、そういう立場でできる限り適切な意見、発言をしていこうという具合に考えています。

3つの偏在という視点
○土屋 ありがとうございます。それでは、川越先生あらためて。

 
○川越
各学会による専門医必要数の試算
いろんなことを考えてお伺いしていたんですけども、あの検討会が良い方向に進んでいるなということが正直な実感です。

それで私、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、これは前期と違いまして後期研修になりますので、まさに専門医をどういう具合に育てていくかということであるわけで、逆にもし知っていらっしゃる先生がいらしたら教えていただきたいんですけれども。自分のところの専門学会が、学会員の数が減ったとか増えたとか、そういうことは別にして、そもそも自分の専門の領域には何人の専門医が必要なのかというような計算を各学会はしているんでしょうか。それがないとやはり毎年ここの科は増えたとか減ったとか、外国と比べてここうだとかということが出てきて、先ほど申しましたように、僕は岡井先生、海野先生のところばかりだして恐縮なのですが、産科はお産の数がこれだけあったら、一人の医者がこれだけやったらこうなるというのは多分計算ができて、そのために専門医を何人確保すればいいかという、非常に計算しやすい科じゃないかと思います。それからもちろん、それをどういう具合に運用していくかという問題も入ってまいりますけれども。麻酔の先生も多分そういう計算ができるんじゃないかと思うんですね。私の専門領域であります、がんの方の在宅死ということですと、例えば今日本全国で年間がんで30万人死ぬんですけれども、その中の自宅で亡くなる方、つまり在宅死率は6%ですよね。それをだから全体的に20%にもっていこうということにしましたら、それに何人必要か、そういう在宅ホスピスを専門としている医者を育てていけばいいのかというような計算ができると思うんですね。ですから各専門学会が今、どういう具合に必要数をみているかということと、それをもしそういう専門学会があるとしたら、そういうものをすべてにとは申しませんけれども、できるところはぜひそういう必要数を計算していただきたいと願っております。その点もし知っていらっしゃる方がいらしたら教えてください。




各学会による専門医必要数の試算
○海野
小児科学会の試算
産婦人科学会はまだやれていないんですけれども、小児科学会が何年か前に、一応700という数字を出したのです。小児科学会のプロジェクトチームが一応数を出しています。もちろんそれが議論があるのかもしれませんが、それぐらいしか診療科ごとの数は出ていないと思います。産婦人科は、減らないようにするのに500人という試算をしているのですが、ただ、今まで500人入ったことはないんです。ですから、今とにかく増やさなければしょうがない、というのが今の産婦人科の状況です。

小児科学会の試算
○川越 その点ぜひ知りたいと思います。小児科の先生に直接聞くのがよろしいと思うのですけれども、700という数がどういうところから出てきたか、ぜひ教えていただきたいと。

 
○土屋 有賀先生どうぞ。

 
○有賀
我が国の「土壌」にあった専門医とは
大変有意義な議論が展開していますので、せっかくなのでちょっと横やりを入れるような意見です。
実はですね、開催要項の2行目に「我が国の土壌にあった」と書いてありますよね。この土壌と書いてあるところが極めてキーワードででしてですね、日本救急医学会が、救急専門医がどれくらいかという話でいけば例えば救命救急センターの数がこれくらいなのでどうだとか、それから臨床研修の必修化に伴って研修医を教えるためには少なくとも救急の専門医が体系的に教える必要があるとすれば何人ぐらい必要だ、だからとてもたくさん足りないね、とここら辺の議論はいいんですよね。ところが、私が卒業してしばらく研究した脳神経外科というところにいきますと、この「我が国の土壌にあった」という議論になってしまうんですね。つまり脳神経外科医は、米国やヨーロッパと違って、かなり外来でもしているし、その後の仕事もしているわけですね。ですから例えば専門性でいけば、神経放射線というのがあるじゃないですか、診断学にキーになるような。それも私たちはやっている。それから手術した後のフォローアップももちろんやっている。だから従ってリハビリテーションにも首をつっこんでいる、という話がありまして、実はですね、この「土壌にあった」という話が出てきた途端に、私たちの学会ではこれだけのことが必要なんだという話になって、とてもたくさん足りないね、という話が山ほど出るんですね。ですから、手術場だけで仕事をさえしててくれればいいんだよと言ったとしても、なかなか地域地域に応じて、田舎に行けば行くほどそうは問屋がおろさなくなって、で今の話がグルグル回るんです。だからおそらく、あるべき姿という話をかなり強引にですね、持ち込んで、それを説明できるようなプロセスにこの3か月のうちに持ち込んで、そして土屋先生のリーダーシップで、なんとかたたき台のたたき台のような形でポーンと作らないと、おそらく国の全体は進まないんじゃないかなという感じがします。ですから救急医学とか家庭医とかですね、かなりベーシックではあってもまだ未熟な部分についてはこうだとかああだとか言えましょうが、脳外科などのようにエスタブリッシュされたところに関しては、土壌の中でどうなっていくのかというところが難しい。おそらく、心臓血管外科も手術だけしている先生は目立ちますけれども、実は地域に行けば行くほど先生がおっしゃったように、外来で診て、その後も診て、そして内科の先生方とのつなぎをやり、それから場合によってはその仕事の先もですね、いろんなハンディキャップに関する証明書などを書き、そうしてずうっとやっていますので、外国の事情プラス日本の土壌ということになるので、これは面白いですけども難しいと、言うしか言いようがないんじゃないのかなと思います。ぜひ、頑張ってやらなきゃいかんと思います。

我が国の「土壌」にあった専門医とは
○土屋 ぜひお支えいただきたいと思います。今の脳外科の方でですね、嘉山(孝正)先生がいないからしゃべるわけではないのですけれども、嘉山先生が言われる脳外科の土壌は、脳外科医の土壌がベースなんですね。この会の議論はやはりそうではなくて、国民が一番利便性が高い土壌は何か、ということで進めないといけないと。そうしますと有賀先生が言われるように、思い切った試算というのができると思うんですね。ぜひそういうように頑張りたいと思います。

 
○有賀 ちょっと土屋先生、嘉山先生がいないので。脳神経外科医として地域に行きますと、少なくとも私自身がやったことは神経内科の先生方がやっていることをやっているんですね。実は私が行った地域の病院では神経内科の先生がいなくて、結局脊髄(せきずい)小脳変性症の方を僕らが診ているんですね。ですからそうなりますと、嘉山先生の脳神経外科学会の言っている脳神経外科医の景色というのは、彼らが勝手に思っただけではなくて、日本の国の景色がそうさせたということもありますので、その点はちょっと。

 
○土屋
日本の土壌の変化、チーム化の必要性
私も班員としてちょっと時間をいただくと、うちでもがんの化学療法というのは例えば肺がんですと昔から内科医が育ったんですね。写真で直径が測れるので治療効果が分かると。ところが、消化器ではなかなかそうならなかった。ましてや整形外科とか泌尿器科は、整形外科医とか泌尿器科医が化学療法をやって当たり前だと、というのが日本の世界だったわけですが、私どもの病院では10年くらい前からですね、内科の連中が嫌がるのを、お前は泌尿器科の担当だと、お前は婦人科だ、というのをやってもらったらですね。泌尿器科医たちがそれに任せると、いかに自分たちが手術に専念できるかと、分かったら今度押しつけてくるんですね。でそうすると、じゃあお前のところの外科医の定員を一人減らすぞ、と言っても文句言わなくなるわけです。もっと余計なことに気を遣わない、というと患者さんに申し訳ないのですが、手術に専念できると、だったらもっと手術できますよと。そして、自分たちの専門性が高まると。じゃあ一人ぐらい内科に譲ってでも、自分たちの専門性を高めたい。今言われた脳外科と救急と、神経内科はそういう関係じゃないかと思うんですね。握っている限りいつまでも自分たちがオールラウンドプレーヤーで偉いんだと、そうではなくて、専門家がチームを組んだ方がもっとレベルが上がるんですよ、というのをやはり、嘉山先生にもぜひご理解いただいてですね、日本の土壌を変えたいと思います。

日本の土壌の変化、チーム化の必要性
○有賀 適時発言したいと思います。僕もそういうつもりで救急の方にどっぷりつかりましたから。

 
○土屋 ありがとうございます。

 
○江口
連携を考慮した適正数の想定
専門医が専門外の診療をも行うのは、自分たちが意図的に診療範囲を超えて全部をとる、というような発想だけではないと思います。やらざるを得なかったことも大きいと思います。発想を変えたその利点というか、例えば欧米の非常に専門化・細分化された診療では、逆に自分の専門でないものは知らなくてよいことになります。例えば肺がんの化学療法をするのに胸のレントゲンは読まないという、そういう弊害も出てきています。そういう意味では、日本の土壌にあった医療は質の良い医療を実践していた部分もあります。つまり専門医といえどもベースに総合的な知識を獲得する教育が必要です。また、医師の適正な人数を考えるときに、従来のままの「こなすべき仕事量」をそのままにしておくのではなく、コメディカルとの連携を十分に考慮した新たなチーム医療の枠組みの中で、適正な人数を想定していく必要があると思います。

連携を考慮した適正数の想定
○土屋
バランス感覚の必要性
江口先生おっしゃる通りでね、いわゆるアメリカの方は逆に専門バカ的なところがあって、これはやはり反面教師としないといけないと思うんですね。確かに脳外科もそうですし、その他の日本の今までの医療形態が、経済的に豊かだった時代は、入り口から出口まで一人の主治医が診る、この良さはもちろんあったと思うんですね。ですから、その辺を残しながら専門分化も認めていくというような、かなりバランス感覚が求められているんじゃないかという気がします。ですから報道の方にも、今の非難的なところを一部だけ言って、脳外科を決して私どもは非難しているわけではないということをぜひうまく報道していただきたいと。そうしないと医者同士でけんかしてしまうと困りますので。従来の良い点を残しながら、やはり効率良くですね、国民の期待に応えていくということがこの班に課せられた使命だと思います。

どうぞ、お待たせしました。

バランス感覚の必要性
○海野
領域の専門家による議論の必要性
コメディカルにおける専門領域の理解

私は最初に、それぞれの先生の専門の先生に言わせるべきだ、と申し上げたのはですね、例えばそれぞれリハビリの先生と脳外科の先生と神経内科の先生でどういうのだということになると思うんですね。それでそのときに、そこをオーバーラップしながらやっていくというのであれば分担できるだろうし、それぞれ専門化してやっていくというやり方もそれぞれの領域の特性次第だと思うので、それも専門家同士の議論じゃないとなかなか進められないというか、われわれ他の分野の人間には判断できない部分だと思うんですね、ですからそういうところも含めて、全体を出していくことで、この人たちはわがまま言っているだけだということも、客観的に見て分かるかもしれませんし、また一方で、ああそうか、という部分もあるかもしれない。

領域の専門家による議論の必要性
また、コメディカルとの関係で申しますと、やっぱりそれぞれの分野で現場での働き方というのはそれぞれ特殊だと思うんですね。ですから私ども産婦人科の領域ですと、助産師さんという、その分野だけに特化した職種がございますけども、それはそれぞれの分野で専門領域に特化した看護師さんとか、あるいは整形でしたらいろんな方とか、作業療法士とかいろんな分野の方がおられますので、それもまた総合的にそれぞれの専門の立場で議論して考えていただいて、それでなおかつ一番良いのはどうなんだということを進めていかなければいけないのかなと。私は、これを作っても結局あまりに踏み込んで誰にも受け入れいれてもらえない案ができあがってもしょうがないかなと思っていまして、ですからこれから日本の土壌にあってですね、それでじゃあこれでやっていこうというコンセンサスが得られるような案ができたらいいなというふうに思っています。

コメディカルにおける専門領域の理解
○土屋
制度の継続的見直しの必要性
今伺っている感じでは確かに各科の調整というか、それが必要で、素案を年内にという。ただ、制度として大事なのはそれが一回決まった後でもですね、そういうのがコンティニュアスに話し合いがもたれて、毎年のように還元されていくような制度というのを作りあげなければいけないだろうと思うんですね。一回決めたからこれで10年間やれ、というような制度ですと多分ものすごい反発が出る。1年たってもそこでも見直しが効くんだと、この見直しがコンティニュアスに行われる仕組みというのがどういうものか、というそこがキモじゃないかと思うんですね。今までは、決めたらこれに従えと、お上の仰せ付けだったが、これではやはりうまくいかないなという気がいたして聴いておりました。

制度の継続的見直しの必要性
○外山
専門医教育における相互理解の必要性
日本の土壌についてのとらえ方

ただいまの議論は非常に重要なことで、私自身も長年今現在の病院で、アメリカから帰ってきたときには非常にカルチャーショックを受けた部分であります。それでいろんなご意見があったと思いますし、いわゆる専門バカであるとか、そういう両極端は決してやってはいけないことだと思います。

私はいくつかの例を申し上げて、一言意見を述べさせていただきたいのですけれども、ちょっと前の話ですけれどもある病院で(現在の私の病院ではないんですけれども)、腹部大動脈瘤(りゅう)の破裂の患者さんが運ばれてきた、これは外科的疾患であるというのは当たり前のはずであったんですけれども、内科が救急でおなかが痛いということで呼ばれて内科医が診に行った、そうしたら診断はついた、血液をとったら貧血と強いアシドーシスであったということで、そのうわさが外科の方にも入ってきまして、ああそれはもう即手術だろう、意識はある/ない、云々ということから、段取りをしておりましたところ、その内科医がですね、かなりキャリアもある人だったんですけれども、「先生こんなにすごいアシドーシスで手術なんかできるんですか」と、いう発言をされたんですね。それはある意味で私は米国と日本の心臓血管外科医療の差を感じた最初であったんですけれども、米国の循環器内科医というのは非常に心臓手術のことをよく知っております。私が少なくともいたところでは、数か所の大学病院におりましたけれども、知っております。ですから外科医もうかうかしていられないんですね、外科の結果によって内科医からクレームがつくこともあるわけです。つまり、そういうことで決して専門バカだというのがアメリカの現状かというと、必ずしもそうではない。ただいまの例は少し前の話なんですけれども、今はまさかそんなことはないと思います。ただそれに象徴されるようなことが逆に、日本の専門家に多かったということも私はこの目で見ております。そういうことからですね、やはり外科と内科の、切るか切らないかの分野のオーバーラップする知識とか臨床能力というのは両者にとって絶対に必要なことであるということで、そういうことも専門医教育の中にきっちり入れるということです。

専門医教育における相互理解の必要性
日本の土壌云々というお話がありましたけれども、この会議ではやはり日本の土壌の悪いところは変える、良いところはそのまま残す、というような観点で進めていただければ非常に良いのではないかと。脳外科の例はよく聞く話だと思います。われわれの病院では現在ですね、少しずつ改善してきました。外科医は切ることに専念させてくれと、だから外科医の技術が高まってくるんだ、だからそれは国民のためになるんだと。要するに下手な手術をやってしまえば、前の管理がどんなに良くてどんなに良い知識を持っていてもうまくいかない、ということは外科系の先生は皆さんご存じだと思うんですね。ですからいい手術をやらせてくれと、やるためには一定の経験と教育が必要なんだという観点から見ますと、術後の例えば肺炎を起こしたと、それが手術とたまたま一致していた場合もあれば、もともとMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を持っていて、それが手術という(心臓外科の場合には非常な)侵襲の大きい手術になりますので、そういうことから発生してきた、さあそうしたら循環器系は完全に落ち着いて退院しても良いのだけれども、肺炎で悩んでいるというようなときに、感染症の先生とか、呼吸器内科とか、とわれわれの病院ではそれが非常にうまく連携できておりまして、助かっておりますけれども、赴任したころには全くそれができていなかった。手術したんだからあなたのところで最後まで診なさいという内科の先生ばかりでした。これではいけないと思います。ですからその辺をいろんな分野の先生が今日集まられているわけですから、何か医療現場の医師たちが納得できるような、一応の結論は出していただきたいな、と思います。

日本の土壌についてのとらえ方
○土屋
研修体制整備の必要性
ありがとうございます。
ですから今、外山先生が言われたように、教育制度と診療の体制と、これがアヤのようになっていると思うんですね。ですから日本ですと、胸部外科医ですと胸部外科の教室に預けておけばいいと、いうような形ですけれどもやはり、胸部の疾患の診断、病理、その他そういうところをローテーションしてですね、それぞれを見て育っていく、でこれは一つの科で医者を確保することではなくてですね、どういう次代の医者を育てるかというのにはどういうコースを用意してあげたらいいのか、それでこの病院ではどういうところが用意できるのか、足らないところはどこの病院と組んでそのコースをようしてあげたらいいのか、そういう発想が必要だろうと思うんですね。今までは日本では学会中心ですと、何例こなしたらいい、とかですね、何科のどこの病院の胸部外科の所属だ、ということがあまりにも表に出すぎてたと思いますので、その辺まで含めてですね、細かい点全部はできないんですけれども、原則こういうことを基準にコースというものを考えるんだというですね、そういう指針は示さないといけないんだろう、という気がいたしました。

他にご意見ありますか。

研修体制整備の必要性
○有賀
初期臨床研修・卒前教育の議論の必要性
この研究班は後期臨床研修というか、専門医というか、家庭医も専門医だということでもちろんいいんですけれども、いわゆる卒後2年の初期臨床研修ですね。その2年のプロセスで、とっても理想的な医師がつくられていく、ということを前提にものを考えていくのでしょうか。
つまり後期のことを一生懸命やろうと思えば、やはりその前段もやらなければいけないし、そうなるとその前段の医学教育もありますよね。極端なことを言えば医学教育で初期臨床研修みたいなことをやれば、臨床研修なんていらないんじゃないか、というような、ある意味極論みたいなものもありますよね。ですからそういう意味で、この研究班そのものは、究極のイメージは何となく分かるんですけれども、前段の2年間、または医学教育について、やはりそれなりのメッセージを残すようなことをしておかないと、2階に上がった2階だけの話をしていて1階はどうなっているの、という話をしたときに、やはり理論武装的にはまずいんじゃないかというふうに思う次第です。

初期臨床研修・卒前教育の議論の必要性
○土屋
臨床研修制度のあり方等に関する検討会での議論
初期臨床研修

おっしゃる通りだと思うんですね。今一段目のところは議論が始まっていますので、私も第1回の会合を傍聴させていただきましたけれども、今後とも会合を全部聴こうと思うんですね。リアルタイムで変わっていくと思いますし、それがですね、今この議論の時点では従来からの2年間でどこまでいっているか、という認識で進めていきたいと思います。ただこの半年ぐらいでですね、再来年の4月からの制度が変わる可能性がありますので、まあ来年の4月からも一部変わるつもりでしょうけれども、これは2年が1年になるとかですね、そういううわさも飛んでいますので、それを横目で見ながら議論したいと思うんですね。

臨床研修制度のあり方等に関する検討会での議論
ただ、私の個人的な認識では、葛西先生が言われるような家庭医としてのですね充実はないと思うんですね。ですからプライマリ・ケアが云々という言葉が、あれをつくったときに出ましたけれども、満足できるプライマリ・ケアのコースではないというのは言えるだろうと思うんですね。ですからそうすると、極論を言えば私の個人的な見解ではですね、アメリカのメディカルスクールを出たレベルが今の臨床研修を終わったレベルと考えてわれわれは後期研修を考えないといけないかなと。かなり初期研修をやっている先生には厳しい見方かもしれませんけれども、あまり買いかぶってその先をやっちゃうと逆に失敗するんじゃないかと、かなり厳しい目でやっておいて、初期に譲れるところがあればむしろ譲った方が安全ではないかなという、個人的な印象でいます。

初期臨床研修
○有賀 今先生がおっしゃったので僕は安心したんですけれども、実は私は、今日のこの会とは直接関係ありませんけれども、臨床研修の第三者評価というのがあるじゃないですか、あそこのNPO法人(特定非営利活動法人)卒後臨床研修評価機構の評価委員会の委員長をさせられているんですよ。だからほとんどの第三者評価を受けた病院の中身については、直接的または間接的にほとんど知っているんですね。だから相当程度に頑張っているところと、そうじゃないところの格差が激しくて、結局のところあの臨床研修は先生がおっしゃるように、医学部の教育の中で十分やらなければいけないのではないかと、何となく最近強く思うようになったので、先生が今おっしゃったので、そういう意味ではそうですね、だからそこから出発じゃないか、そんな気がつくづくします。

 
○土屋
専門医研修の準備
ちょっとローカルな話になって申し訳ないんですが、うちは専門病院です。後期研修しか昔から採れないんですね、従来の登録医で2年間やった後の3年目から。従来は外科とか内科を2年間やっていらっしゃるので、3年目で採ってもまあまあ大丈夫だったんです。ところが、今の臨床研修制度ができてからは、応募要項にですね、「できれば2年終わった後、1年2年いわゆる後期研修を受けてからお受けください」と。うちは専門病院で、例えば外科の場合に良性疾患は一切ありませんと、従ってそのままうちのレジデントをそのまま3年間やると外科の専門医は取れませんよということを親切で書いてあります。そうしないとですね、とても専門医になれない、その後の胸部外科もなにも、資格が取れなくなってしまうものですから、そういうことになっている。その、つきあっている範囲での認識で、ああこれはアメリカならメディカルスクールの中での学生実習だな、というのが私の個人的な認識です。もちろん、努力されている病院はですね、アメリカのレジデントレベルのG1とかG2のレベルでやっているのは存じ上げているんですけれども、全国から私どものところに集まってきますので、どこに基準を置いてということですとやはり一番最低のところに基準を置いて教育を始めないといけないなという認識でおります。

川越先生。

専門医研修の準備
○川越
臨床研修制度のあり方等に関する検討会での議論
安心と希望の医療確保ビジョンの具体化検討会の中で、この問題についてこの問題についてかなり突っ込まれた話がなされたように覚えているんですね。それは結論的に言うと今の前期の研修医制度というのは見直さなければいけないと、これは皆さん意見一致したと思います。その中で今の2年というのが長すぎるんじゃないかということで、学部の研修と一緒にして議論しないといけないんじゃないかというところまで踏み込んだように思います。もし向こうがどういう話が進んでいるかということを適宜流していただいて、やっぱり全体の学部教育、前期臨床、それから後期という流れの中でこの会を位置づけといいますか、見ていかなければいかないと思います。情報が欲しいと思います。

臨床研修制度のあり方等に関する検討会での議論
○土屋 ちなみに第1回目の会合では大きな進展はありませんで、あれをつくられた方たちは大変良い制度だと、そうではない方はあれを見直しをすべきだというのが主な論点であったように私は解釈しております。

阪井先生。

 
○阪井
総合的な視点の必要性
卒後研修の方で一言申し上げます。

先ほど江口先生がおっしゃった専門性が高い人が専門バカになってはいけないと、肺がんの外科医がレントゲンを見ないというのは言語道断だと思うんですけど、そういうご意見とそれから今、外山先生がおっしゃった、いやアメリカでは内科医も手術のことは分かっているぞとおっしゃったと思うんですけれども、そういうことを踏まえて私自身も北米で卒後研修を一部受けたものとして強く思うのはですね、外山先生多分説明してくださると思うんですけれども、アメリカの私のいたところでは、例えば感染症の専門科、あるいは呼吸器内科の専門科、そういう方を必要に応じて呼び集めてですね、チームで、術後のICU(集中治療室)での管理を勉強させてもらってたんですけれども、そのときにうまくいっているのは、全体のことが分かっている人が、ICUであればICUの専属医、内科であれば総合内科医、というその人が必要に応じて旗を振って専門科を呼び集めて非常にレベルの高いディスカッションを仕切っているという形があったと思うんです。

それからもう一つは、それぞれの、例えば感染症内科の専門科医といってももともとは総合内科をしっかりやっておられた、その上に感染症の研修を受けられたということで、総合内科のことが分かっておられる。総合内科医が何を考えるか分かっておられる。あるいは外科医にしても心臓外科医であってももともと一般外科をみっちりやっておられるので、外科的素養がすごくあって心臓のことしか分からないということではない。それはすごく、私がその前にいた日本でも卒後教育の違いというのを感じました。ですから卒後教育の中で、まず内科なら内科、外科なら外科、小児科なら小児科という分野における総合的なところはみっちりやって、その上でさらに小児腎臓科、小児心臓内科とか、あるいは外科なら外科でみっちりやった上で心臓血管外科とか、小児外科といったものをやると、そういうのが必要だろうと考えております。



総合的な視点の必要性
○土屋 ありがとうございます。外山先生。

 
○外山
初期臨床研修のとらえ方
前の初期研修のことに関しての、初期研修は見直すべきであろうという何となくコンセンサスがあったという話があって、土屋先生が、いや、意見の分かれるところだとおっしゃって、僕は土屋先生の言われたことで実は安心しました。

今の初期研修制度が2年が良いか1年がいいか3年か、それに関してはもうちょっと実情を診なければいけないと思いますけれども、初期研修制度というものが悪者だという考え方を発言されている方がいらしたら、私はぜひご意見を伺いたいし、私も意見を申し上げたいと思うんですね。初期研修制度ができたときに、先ほどもお話しましたけれども、私が現在の病院にいるとき2004年ですから最近の話ですけれども、これは少なくとも日本の今までの医師教育の中ではヒット商品だと、少なくともここまでこぎ着けたんだという意識を非常に強く持ちました。そして今もそれは変わっておりません。確かにですね、初期研修の2年間は総合臨床医になるにはもちろん短いと思いますし、じゃあ専門医に対してはどうなのかというと、専門医に対しても私どもの分野で言えば、まあ土屋先生も胸部外科医で、考える基盤というのはおそらく同じだと思うんですけれども、やはり胸部外科医の前にやるべき知識と技量というのは求められるものとしては2年ではとても足りないと、いうように思いますね。ですから初期研修というものをもしも短くするのであれば、例えば1年とするのであれば、もうそこで切って後期研修というのは独立してものを考える、ということをやらなければ、初期研修からのつながりでものを考えているのだとしたら、やはり非常に難しい。なぜかと言いますと、1年あるいは2年でもいいと思いますけれども、私どものところでは2年間の初期研修というものの後に、最低1年の腹部外科研修を入れております。そしてその後に、ですから卒業して4年目に初めて私の科に入るという制度で、私はずっと一貫して卒後教育をやってまいりました。結局は各医療機関によって、違う制度が入れられてくると思います。そうしますと、研修医の能力というものに非常に大きなバラツキが出てくるであろうと思います。ですから、卒後例えば7年目で私のところへ来たい、と言ってきた場合に、その人のどういう研修を受けたのかという、ということによって私どもは対応を変えなければいけない、ということになりますね。ですから、その辺の統一性を考えるためには、やはり初期研修制度の議論というのはもっともっとされるべきだと思いますし、そんなに単純に制度ができてまだ数年で医師の偏在を起こした原因はこれだとか、そういうような議論だけで進められるべきことではない、というように思います。

初期臨床研修のとらえ方
○土屋
医師数、定員是正の必要性
初期研修についてはですね、今日の資料の79ページにですね、具体化の検討会の2回目に出した地域医療の崩壊が臨床研修制度が招いたんだというものを出しましたけれども、これは赤線が定員でですね、青いところが定員が埋まっているところで、実は白いところは定員が埋まっていないと、次のページを見ていただくと、実は定員の是正をしないものだから都会の大きな病院に皆集まってしまっていたので、都会の病院を削ったらいいのかということですけれども都会の病院ですら、救急で困っているということで要は医師の増員が必要だったということが、表に出ただけではないか、制度が悪いわけではないということが私の見解であります。

外山先生が言われたように、何か臨床研修制度が諸悪の根源のように言われている面がありますけども、私もそうではないと思うんですね。あれは以前までの研修に比べればずっと良くなったので、ただそれを4年間定員を放(ほ)ったらかしにしておいたというところが一番よろしくないということで、やはり的確に是正をして教育のプログラムを用意しているところにですね、適材に配置をするというような努力をすればもっと良い制度になっていた、と解釈します。だからその上で、後期研修で若い方をどう育てて、国民の期待に応えるかというのがこの会に課せられた課題ではないかな、という気がいたします。

医師数、定員是正の必要性
○岡井
卒前教育と初期臨床研修
初期臨床研修の問題は、この間この検討会で議論した結論の一つはですね、学生教育とのつながりが悪いと。今だと学生5年生実習やって6年生実習やって、一回国家試験で現場から離れて、それでまた一から始める。そこのところのつながりが悪いから非常に無駄なんじゃないか、効率が悪いんじゃないかということが一番メインな議論になったと思います。ですからそれを聴いて大臣がそれじゃあ厚労省と文科省と一緒にそのことを検討しましょうという会になったので、思想としてですね、初期臨床研修制度はこれはそれ自体が悪いとはあまり大臣も言っていないと思うんですよ。そういう問題とあと今の日本のようなやり方で、2年間の効果が上がっているのかと、それだけ力をつけているかという教育のやり方の問題ですね。そこも問題があるとは思います。

卒前教育と初期臨床研修
○土屋 ですから、そのときに大学での教育病院と市中病院との間で対立がありましてですね。市中病院側は大変評判がよろしいと、大学病院が評判悪いところが多いのではないかというような批判があったのは事実だと思います。

渡辺先生。

 
○渡辺
専門医・家庭医育成の理想のビジョン
非常に有意義なディスカッションで、感動しております。やっぱりどういう医療にするかということは本当に教育とリンクしているので、専門医、各専門学会で、どういう専門医を育てたいかという理想のビジョンを明らかにしていただいて、そのために例えば脳外科を回る前に一般外科を必ず回るとかですね、その後神経内科を回るというようなものが見えてくると思うんですけれども、専門医という言葉で定義されるのが、どういう人物なのかということをある程度明らかにする。それは理想にすぎないかもしれませんけれどもまだ理想でいいと思うんです。それでそれに対してどういう教育プログラムを組むかと。

家庭医に関しても理想とする家庭医というのはどういう家庭医なのか。それでそれに対してどこが責任を持って教育するのか。全部が葛西先生がやられるのは無理ですから、例えば先ほどの一生懸命やられている開業医の先生の他にも、大学の各専門科のリソースというのがあるわけですから、そういった今現存するヒューマンリソースを使ってどういう教育プログラムを組めば一番効率的に早く家庭医というものが確立するかというところを明らかにすべきかと思います。そういうことをやる一番最初のスタートとして理想の専門医像、家庭医像とは何かが浮かび上がってこないとなかなか議論は進まないのかなと思いました。

専門医・家庭医育成の理想のビジョン
○土屋
学会による専門医の基準
国民の求める専門医の基準とは

先ほどちょっと話題になった、専門医というのはどういう基準で各学会で考えられてどれだけの数かという話ですけれども、外山先生と私が胸部外科で心臓外科と一般胸部外科といいますか、肺がんの呼吸器の外科ですけれども、胸部外科学会が中心になって、呼吸器外科学会とかですね、心臓血管外科学会と共同で専門医を育てると、ただ、実際には呼吸器外科は呼吸器外科、心臓外科は心臓外科というような形で制度ができているんですね。そのときにやはり呼吸器外科側で問題になって10数年たって問題になったのは、やはり心臓血管外科的な素養があった方がいいのではないかということで、3か月はローテーションさせたらどうだ、というのが今やっと話題になってきているんですね。ですからそういう意味では各学会でも努力しているのは事実だと思います。これは評価すべきだと思いますが、ただ問題はですね、それまで専門医の基準ですね、例えば心臓とか肺の手術を術者として20例やればよろしい、というのが最初のころの基準なんですね、外山先生も鼻で笑ってしまうぐらいにアメリカでは信じられないくらいに数が少ないんですね、何百例という単位ではないかと、ゼロが一個間違いじゃないかというのが専門医になっている。ところが、各大学で毎年3人や4人医局員を入れると、全員に6年7年で専門医を取らせるには、それくらいの数しかお前できないよなという議論が行われて専門医制度が考えられていたのが、10年前20年前なんですね。ですから、大変残念な、身内を非難するようで忸怩(じくじ)たるところがあるのですが、残念ながら自分たちの教室員をなんとか専門医というレッテルを貼らせるにはどうしたらいいかというのが、最初のころの専門医の基準作りだったと思うんですね。やはりわれわれが考えないといけないのは、国民が安心してこのレッテルが貼られている医者にかかれるんだというには、どういう医者なんだという基準で専門医というのは何かというのを考えないといけない、と思うんですね。

ですから各学会からの事情聴取も大事なんですけれども、ではそれにあわせて数を数えていこうかというと、先ほど言った3万人も4万にも必要だ、という数になってしまいますのでそこは事情は聴くんだけども、本当にそうなのか、というような、いつも懐疑的な目で見るような必要も同じ職業人として大変残念なんですけれども、今現在の日本の実情というのは、そういうところがあるんじゃないかという気が、身内ながらいたします。ちなみに今呼吸器外科は、50例から75例にしようかどうかというところですね、まだ三桁(けた)にいっておりません。私どもは身内の話ですけれども年間500例から600例の肺がんの手術がありますが、それでも年間1人育てるのがやっとだと、認識しております。彼らは1年間チーフレジデントをやると、100例以上の手術をやって育っています。彼らには私も今肺がんになっても身を任せてもいいと、言うつもりでおります。それを育てないとやはり国民の期待に応えられないと。

学会による専門医の基準
ですから各学会に基準を聞いてもいいんですけれども、私の胸部外科の経験では、多分参考にならないんじゃないかなというのが個人的な印象です。こんなことをまた学会で言うとまた袋だたきにあいますけれども、しかし学会で袋だたきでも、国民に袋だたきにされないような結論をここでは考えなければいけないという気がします。ですから、先ほどから川越先生が言われているように、お産だったら何例経験したら自分の孫をですね、どこへ任せられるかということをですね、何も個人的に知っていなくてもこの看板を掲げていればいいと、いうことが多分専門医の基準ではないかなという気がいたします。

国民の求める専門医の基準とは
○葛西
国民の求める専門医と、標準的プログラム
この後期研修の委員会が非常に大事なのは、おそらく今非常にエポックメイキングなことをしているからだと思うのです。諸外国ではすでにやっていることですが、それを初めて日本でもやり始める。それは何かというと、各科の専門医になるのに専門のトレーニング(後期研修)をしてそれが修了した上で専門医になるということです。国民が求める各科の専門医の条件を決めて、そして全国で標準的な研修プログラムで後期研修を運営し、その後期研修を修了できた人が初めて専門医になっていくという時代を日本で創っていくという、まさに画期的なことです。今日は第1回ですが、これからぜひ後期研修途中の評価をどのようにして目的のレベルに上げるのか、そして修了した人間をどのように認定していくのか、そういったこともわれわれは十分ディスカッションしていくことが必要だと思います。

国民の求める専門医と、標準的プログラム
○土屋
まとめ
次回以降の進め方
葛西先生が、まとめ的に言っていただいたので、この部屋は3時から別の会が使いますので、そろそろまとめに行きたいと思うのですが、今葛西先生が言われたようなことと同時に、先ほど山田先生がおっしゃった、3つの偏在ですね、地域・診療科別が言われておりましたが、設置形態、特に診療所と病院、あるいは経営母体の違いとかですね、いろんな形があると思うのですが、それについての実態を分析して解釈するという作業を次回の班会議から早速やっていきたいと。

まとめ
これについては今日皆さんの間でですね、家庭医も専門医の一つである、という認識がありましたので、その辺を踏まえて医師会とか専認協からまず事情を聴きたいと思います。その後で、各学会からご意見を聴いたらどうかと。ちょっとけなしすぎましたけれども、決して各学会のご意見を聴かないということではありませんので謙虚に聴きたいと思っています。先ほど申し上げたように、かなり学会も努力しているのは事実ですし、ご自分の教室を背中に背負いながらもグローバルスタンダードに近づけようと努力が、各学会とも今、なされているのは確かですので、その辺を謙虚に耳を傾けたいを思います。

その上で、目的にあった必要数というのはどう計算していったらいいのか、ということを判断していただきたい。それとこの制度を考えるときにやはり制度が硬直しないために、流動的にいつもいけるにはどうしていったらいいのか、現状をいつも把握しながら、それにあわせて変われるような制度というものはどういう制度であるのかということを考えながら事情聴取をして進めていきたいと思います。

今日は本当にですね、先週末、突然開催通知をお知らせしてですね、大臣が1回目はぜひ挨拶をしたい、とおっしゃっていたものですから、急きょ月曜日という大変お忙しいところへお呼び立てするような形になりましたけれども、急なお呼び出しにもかかわらず、全員ご参加いただいて本当にありがとうございました。

私どもはですね、素人がこれからホームページを立ち上げようというので、ちょっとお時間がかかるかと思うのですけれども、今日の議論を全部録音していただいて、テープ起こしをしてもらうつもりですので、私も外科医ですから時々多少失言をしますけれども、それを恐れずにですね、一番の大本を間違えないような方法でいければと思います。細かな言葉尻をとらえて云々ということではなくて、本質が何かということで議論ができていけばと思いますので、ぜひ今日傍聴のマスコミの方々もですね、時間がないので今日は発言の機会はないですけれども、ぜひホームページが立ち上がった節にはどんどん意見をいただきたいと思うんですね。やはり批判のないところにいいものはできていきませんので、それを恐れずに私はやっていくつもりですので、ぜひいろんなご意見をお寄せいただければありがたいと思います。

先ほど海野先生でしたか、専門家としての責務、プロフェッショナルのレスポンシビリティーというのがありますので、それをまずこの会が果たしたい、その上にさらにそれを社会的に責任を果たすには一般の皆さんのご意見を聴取する、それによって謙虚に軌道修正していくということが、本当に必要だと思いますので、ぜひ傍聴の皆さんもですね、班員の一員というぐらいのつもりで、ご協力いただければ大変ありがたいと思います。

本当に今日は急なお呼び立てで申し訳ありませんでした。次回の日程調整はまたメールでやらせていただきます。メーリングリストを作らせていただいて、それを中心に連絡をしていただきたいと思います。もちろん書面でもお送りしますけれども、即時性を要するときにはメールでやらせていただくことをお許しください。日程調整をしまして、今申し上げた諸団体と私どもで交渉をして準備ができ次第、次回を開催いたします。皆さま方からも、ここと交渉ができるからどうだ、ということを随時ご提案いただきましたら、病院長業が第一でありますけれども、その次にこの班に精力を注ぐつもりですので、どうぞご協力をよろしくお願いします。

本日は本当にご協力ありがとうございました。以上で終わらせていただきます。

次回以降の進め方
  記録:渡邊(事務局、国立がんセンター)

 



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