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厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)
医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究

第2回班会議 議事要旨


日時:平成20年10月9日(木)10:00-12:00
場所:国際会議場(国際研究交流会館3階 国立がんセンター築地キャンパス内)
出席:土屋(進行)、有賀、江口、岡井、葛西、川越、阪井、外山、山田、渡辺
    池田康夫先生(日本専門医制評価・認定機構理事長)
    飯沼雅朗先生(日本医師会常任理事)

1.開催挨拶、研究班ホームページの紹介
 土屋班長より、本研究班のホームページが開設されたと報告された。
2.日本専門医制評価・認定機構の医師後期臨床研修制度のあり方についての考え
 同機構理事長 池田康夫先生よりご講演をいただいた。
(1)専門医制評価・認定機構について
機構の沿革が紹介された。現在69学会が加盟する社団法人である。
  機構の使命は医師の認証の基準を高く保つことであり、各学会などの組織と協力し実現していくことにより医療の質を担保することである。
  (2)専門医、専門医制度のあり方
  認定と更新の原則を示し、安心と高い水準の医療を提供する。何らかのインセンティブを与える方向性について議論している。
  患者、国民にとって分かりやすい専門医制度を作るべく努めているが、学会により基準にばらつきがある。
  中立的、第三者的な立場をより明確にし、専門医制度を評価・認定する形を目指している。
  整備指針を元に、各学会へのヒアリング調査と評価を進めている。
  (3)専門医に求められる資質
  医学知識、高い技術、十分な対話能力があること、さらに医療倫理と安全管理に対する考えが専門医として要求される。
  医学の領域に応じて、患者にとって分かりやすい専門医を作るべき。基本的な領域と専門領域の学会に整理していくことが必要。
  (4)専門医の適正数
  専門医の適正数と、その根拠について各学会に対して調査を行うことを検討している。
     
 引き続いて、質疑応答が行われた。
  (5)専門医制評価・認定機構の方向性
  米国のように研修プログラムに応じて専門医を育成する制度を構築することについて、各学会と共に方向性を出すことが重要と考えており、意向を各学会に問いかけることを検討している。
  会員歴よりむしろトレーニングの過程、技術等の認定を重視している。
  専門医審議会を設置し、今後の方向性について議論をしている(内容は未公表)。
  患者の立場など外部の人材を参画させることは、透明性を確保するために重要な指摘であるが、各学会の定款を変える、別の仕組みを作るなどの検討が必要である。
  事務局機能、下部機構の仕組み作りは負担が大きいが必要であり、取り組んでいる。一方理事会など上部組織の強化も必要、との指摘もなされた。
  現状は専門医制度の運営にばらつきがあり、行政のサポートを得ながら標準化の仕組み作りを進めていく。
  会員である各学会の利益でなく、患者や国民のために役割を果たすべく、学会の代表者だけでなく、第三者機関として組織のあり方を検討すべきという指摘がなされた。機構としても重要な意見と認識しており、これまでの歴史を踏まえつつ、模索し努力をしている。
  (6)専門医の適正数
  適正な数を決めることは難しい問題であるが、我が国の医療の診療科の偏在や地域医療の問題などを解決する方策になりうる。
  (7)指導医、専門医の教育体制
  指導医の資質にばらつきがあり、専門医の教育体制をもっと打ち出すべきという意見があり、機構としては教育プログラム、実施施設を検討し、その中で指導医を位置づけることを考えている。
  (8)専門医の位置づけ
  当該の領域を総合的に診られる医師であるという視点で専門医を位置づけることを考えている。

3.「地域医療、保健、福祉を担う幅広い能力を有する医師」について
 日本医師会常任理事 飯沼雅朗先生よりご講演をいただいた。
(1)日本医師会「かかりつけ医」の質向上の考えの経緯
医療事故の増加などを踏まえ、総合的に診療できる医師の必要性を認識している。
  日医の学術推進会議において、かかりつけ医の質の担保について検討し、日医の生涯教育制度のカリキュラム見直しなどによって資質の向上を図っている。
  (2)日本医師会による総合診療医認定制度
  学術推進会議で議論し、認定制度により医師間の格差や、フリーアクセスの制限などの総枠規制に結びつくなどの反対意見もあったが、患者の受療行動や医師の勉強を促すなどの賛成意見が強かった。
  関連3学会と合同で、総合医認定のための教育プログラムの作成に取り組み、会員に対して周知を進めている。
  日医としては生涯教育推進委員会、都道府県医師会などでの議論を加味し、各学会や専門医制評価・認定機構などの協力を得て、総合診療医制度の創設を提案した。
  制度の創設は、国民の目に見える形での、医療の質の担保である。行政が関与するものではなく、これまでの生涯教育制度を底上げして、日医が主導的に創設することが、フリーアクセスの制限、人頭割り、定額払い、総枠規制に結びつかない唯一の方策であると考えている。
  (3)厚生労働省の「総合科」構想
  厚生労働省の示す「総合科」構想では医師の中から一定の条件を満たす者に、大臣許可を与える、医療へのアクセス制限を目的とする制度と考えており、国家による統制的なものであって日医としては反対している。
  (4)総合診療医認定制度の内容
  認定コースとしては経験に応じた4つのコースを提案、学会をはじめ各方面の協力を得てカリキュラムを改訂し、運用を開始する予定である。行動目標を定め、57の症状・病態への対応や管理などを行うのが目的。
  各学会の履修単位の互換、専門医認定医制度との関連についても議論を行っている。
  専門医と幅広い診療能力を有する医師が協調することが重要。
     
 引き続いて、質疑応答が行われた。
  (5)研修・実習の方法、教育機関との協力体制
  講義、eラーニング、実習などの方法をどのように行うか検討する必要がある。大学病院との協力については内容を見たうえで検討したい。
  カリキュラムの作成だけでなく、実際の教育においても教育機関と協力して行うべきではないかという指摘がなされた。日医では生涯教育推進委員会にて検討している。
  (6)総合診療医の必要育成数
  対象は特定の科に限ったものでなく、全科であり総数や育成数の試算は行っていない。希望する医師にはなれるようにカリキュラムにおいて対応したい。
  (7)カリキュラムの内容と到達目標
  カリキュラムには出産に対する診療は含まれておらず、妊産婦に生じうる一般的な健康問題への対応、専門医への紹介の必要性の判断などを含んでいる。
  履修前の総合的な診療に関する経験や知識にばらつきがあるため、コース2および3(それぞれ臨床経験7年、15年以上の医師を対象とする)など臨床経験を経た医師に対する教育カリキュラムの詳細については、認定の基準をどうあるべきかも含めてさらに議論が必要である。
  カリキュラムの項目、具体的な教育研修の体制なども今後学会などとともに議論が必要。
  産婦人科の研修については専門性を持った総合診療医の研修においてするべきという意見が出された。
  複数の診療科にまたがる問題についてもカリキュラムで扱う必要がある、漢方医学の視点も検討してはという提案がなされた。
  教育制度の有効性の検証、制度の必要性について客観的に評価できるシステムにするべく、認定制を目指している。
  (8)教育プログラムの担い手、指導体制
  家庭医の指導医と各診療科の専門医が連携して取り組むべきであるという指摘がなされた。
  (9)厚生労働省の「総合科」構想
  日医としてはフリーアクセスを制限すべきでない、また総合医によって保険点数などのインセンティブを与えない、ということが基本であると考えているので、厚労省の総合科構想に反対している。標榜科については今後考慮する。
  (10)病院機能における専門性とアクセス
  班員から、総合診療医が役割を果たすことにインセンティブが付いたほうが、専門病院、専門性の高い医師としての役割を果たすことができ、一方で診療所の患者も増えるのではないかという意見があった。
  患者にとって選択できる状況、医療機関にアクセスできる状況が重要である。
  (11)専門性としての地域医療
  地域医療は専門性が高い分野で、医療だけでなく介護保険などの知識も必要であり、専門医を育成する制度を考えるにあたり議論の必要がある。

4.まとめ
以上


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