靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

古代の字義を探る

『霊枢』には,経脈は求心性に流れるとする篇と,循環を説く篇がある。もともと各家学説的な書物であるから,別に矛盾に悩むことはない。
では,『難経』はどうか。これはもう誰かが己の考えに従ってまとめたものだろうから,一つの話のすじみちに忠実なはずである。
だから,六十八難の出、流、注、行、入と井、滎、兪、経、合,そして井主心下滿、榮主身熱、兪主體重節痛、經主喘咳寒熱、合主逆氣而泄のつじつまを合わせようとするのはいい。
しかし,井、滎、兪、経、合の古代における字義をさぐって,求心性と循環の矛盾を避けうる解釈を探すというのは変だ。もともと『霊枢』本輸篇にすでに登場する井、滎、腧、経、合の字義を,『難経』の記述の都合によって規定するわけにはいかない。

井、滎、腧、経、合の古義ということになれば,むしろ『霊枢』九針十二原篇の五蔵の原穴は本輸篇の腧に相当し,『霊枢』諸篇に六府には合を取れという指示が散見することのほうが気になる。つまり,いずれもツボの意味であるともいえそうだし,蔵を対象とするツボと府を対象とするツボには,微妙に異なった性格を感じ取っていたともいえそうである。だから異なった文字で表現した。井と滎と経にも同じような事情があったのかも知れないし,経にはさらにニュートラルという意識もあったかもしれない

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