靈蘭之室 茶餘酒後

   ……休息している閑な時間

所發者廿六穴

『太素』巻11気府に「手太陽脉氣所發者廿六穴」とあるけれど,そもそも楊上善が「卅錯爲廿字也」と注しています。だから楊上善が挙げる穴も,「上天容四寸各一」のところで具体的な穴名を挙げずに簡略に「左右八穴」と言うけれど,合計して三十六穴になるように考えている。『素問』気府論では経文も「三十六穴」で,王冰の注も当然そのように数え挙げる。
でも,これはちょっとおかしい。「上天容四寸各一」を「左右八穴」,「肩解下三寸者各一」を「左右六穴」と解すれば,確かに合計は「卅六穴」になるが,もし「上天容四寸各一」を左右二穴,「肩解下三寸者各一」を左右二穴と解すれば,「廿六穴」のままでかまわない。
他の脈で,一句で数穴を挙げるときには,例えば足陽明で「下齊二寸俠之各六」といっている。ここの手太陽でも最後の「肘以下至于手小指本各六輸」は同文例である。「上天容四寸」と「肩解下三寸」については,明らかに「各一」というのであるから,左右に一穴づつである。
「上天容四寸」が今いうところのどの穴であるかは確定し難い。当時はまだ命名されてなかったのだろう。そこで『霊枢』本輸では足少陽というところの天容から上ると記述した。「肩解下三寸」もほぼ同様な意味合いだろう。肩関節の下三寸である。

次の手陽明では「鼻穴外廉頂上各一」を,『素問』気府論は「鼻空外廉頂上各二」に作っている。外廉と頂上である。それで計算はあう。手少陽では『太素』は三十三穴とするから,「項中足太陽之前各一」を楊上善は大椎一穴と大杼二穴とするが,『素問』気府論は三十二穴であり,王冰は風池二穴とする。「肩貞下三寸分間各一」については,一寸ごとの分間に各一と解すれば,左右六穴でそう問題はないだろう。もし「肩貞下三寸分間各一」を「肩貞の下三寸のところの分肉の間に各一」と解すれば,やっぱりこれも左右二穴で,総計は楊注にいう「一曰廿八」となる。
前の足少陽に至っては,そもそも『素問』と挙げる穴位も総数も異なるから論じにくい。「掖下三寸脅下下至胠八間各一」を,その範囲内の八つの間に在ると解すれば,左右で十六のはずであるが,掖下三寸に一つと,その下の八間にそれぞれ一つならば十八である。王冰はそのように解している。『太素』の現文で,「髀樞中傍各一」を左右で二つと考えれば,この計算法で四十六となり,経文の五十二には六つ足りない。ただ,『素問』気府論には『太素』には無い「直目上髮際内各五」,「耳前角下各一」,「鋭髮下各一」,「耳後陷中各一」が有る。これらを塩梅すれば,五十二にならないことも無い。

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