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こだまの世界

---倫理学者のふしぎな日記---
今月で一周年

97年9月前半号

9月前半の主な話題


ご意見のある方は、 kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jpまたはメイルを 送るまで。


09/01/97(Monday/lundi/Montag)

・真夜中・

・ああ〜っ、もう9月っ…。と言いつつ、○(設定「標準」でこちらが角落ち)。

・先月はシジウィックと将棋の月でした。


・朝・

・パイプ椅子でぐうぐう寝る。


・昼・

・○(設定「強い」)。


・昼下がり・

・倫理学入門書読書会の訳を作成したり。これから昼ごはん。なんか最近 食べてばかりいるような気がする…。


・文学部前に自転車がやたら多いと思ったら、もう集中講義が始まってい るようだ。

・少年ジャンプの『すごいよマサルさん』(うすた京介)が終わってしまっ た。惜しまれる。人気がないので打ちきりというより、むしろ作者の性格に問 題があったためなのではないだろうか。この人はかなり壊れていた。


・昼下がり・

・●(設定「強い」)。


・夜・

・ううむ。たっぷり1時間半ほど、机に突っぷして寝ていた。もう少し勉強 したら帰る。


・3級がお見えになる。ぼくはそろそろ帰る。帰りに久しぶりにビデオを借 りようっと。


09/02/97(Tuesday/mardi/Dienstag)

・夕方・

・昼下がりに起きて登校。一日12時間寝る生活を早くなんとかしないと、 学校が始まったら地獄であろう。


さて、現在ぼくは、カントの『道徳形而上 学原論』(岩波文庫)を読んでいる。と書くと、

「ええっ、きき君はまだグルントレーグングを読んだことなかったんかっっ?」

と(5級あたりに火星人を見たかのような目つきで)驚かれそうだが、実はそ うなのである。まだ完読したことがない。

・この本を購入したのは94年の10月であるが(本の最初に購入日を記入して ある)、そのときに序言を読んだ辺りで挫折している(これも記入してある)。

・正直に言って、今読んでも大変難しいのだ。何を言っているのかほとん どわからん。大部分は日本語が日本語でないせいだと思う が、カントの話の流れも良くつかめん。読んでいて腹が立って来る。けっ。

・しかし、この本は名著であるようだし、読まないと(5級あたりに)馬鹿に されるだろうから、今回はなんとか読み通そうと思う。


それにしても、この手の古典は大学の授業でやら ないんだったら、学生で読書会を是非やるべきだと思う。

(とはいえ、もちろん倫理学研究室でもカントやベンタムの読書会がある わけだが、学部生用の入門的なものではない)

・学部生(や聴講生)にある程度の基礎知識を身に付けてもらうために、修 士や博士課程の学生が骨を折ってもよいのではないだろうか。

・そこで提案。

・毎年純哲、西哲古代・中世・近代、倫理の各研究室の大学院生が中心に なり、それぞれ最低一つづつ入門的読書会を開く。もちろん他の研究室の学生 が来れるように門戸は解放する。

・思うに、研究室間の交流のためにも良いのではないだろうか。そのうち 提案に行ってみるか。


どんどん書く。やっと文庫で400ページ強ある ミルトン・フリードマンの『政府からの自由』(中公文庫)を読み終わった。途 中退屈なところもあったが、最初の方と、最後の方は非常に面白かった。印象 に残った文章を少し引用しておく。


「時間ができると、それを埋めるべく仕事もふえる」という、パーキンソ ンの有名な第一法則が発見されたのは、二十年前のことである。この法則から は、のちに「支出は収入に見合うよう増大する」という系も導かれた。 (p.378)

(別のエッセイだが、直前にこのような文章もある。「そこで私は、政府支 出を抑制するには、税収制限による以外ないと考えるようになった。ちょうど 個人の、あるいは家族の支出を制限しようと思うなら、収入を制限するのがい ちばん効果的であるのと同じである。」(p.378))

「全米自動車労働組合(UAW)のレナード・ウッドコック委員長が、国民健康 保険制度について、「この法律が制定されれば、もうアメリカ人は医療費や入 院費を払う必要がなくなる」と言ったと報道されている。

では、ウッドコックは誰に医療費を払わせるつもりなのだろう。アラビア の王様か。ワシントンを通じて間接的に払うのも、自分で直接払うのも、われ われが医者や病院に払うという点で何の違いもない。違いがあるとすれば、ワ シントンを通じたほうが多少余分に払わされることだけである。」(p.394)


・「自由市場」「小さな政府」を支持するフリードマンは、当然のことなが ら政府の肥大・税金の増大に繋がる福祉政策に反対する。彼の言い分はぼくに は大変説得力があるように思われる。是非一読されたい。

・なお、上の二つ目の文章をしたのは、今日の毎日新聞を読んでいると医 療費に関して同じような文句を言っている人の記事が載っていたため。確か、 「政府はお金に困るとすぐに国民に請求しようとする」とかいう内容だったと 思う。もちろんフリードマンなら「それでは政府はアラビアの王様に請求すべ きなのか」と反論するところであろう。


・昨晩『マーズ・アタック』を観た ので感想を書いておく。あと『サブウェイ』と『フォー・ザ・ボーイズ』を借 りた。

・○(設定「強い」)。


・夜・

・3級と5級が来られてギターとベースを弾いてお暴れになる。

ちと気が早いがホームページ開設一周年記念のアンケートを作っ たので是非ご記入いただきたい。こだまは今後も前向きにがんばります、はい。


・真夜中・

・上記2人と夕ごはんを食べに。国民健康保険制度などについて暴言を吐く。

・戻って来てから3級と5級の「狂熱のライブ」のただ一 人の観客となる。


09/03/97(Wednesday/mercredi/Mittwoch)

・お昼・

アンケートに答えてくれた方々、あり がとうございます。今後一層鋭意努力し漸進的発展を目指し邁進して参る所存 であります。まだ書いていない人も後生だから書いて下さい。

・昨晩はパンク(将棋)ロッカー達のたまり場と化した旧研究室を途中で抜 け出て、友人宅で映画を観ていた。

・んで今日は昼前にここに戻って来たわけだけど、途中でルネ(京大生協) に寄って本を買って来た。

・さて、こだま青年が雑誌と雑誌の間にはさんで、もじもじとレジヘにじ り寄り、いかにも恥ずかしそうに「ついでにこれも」という感じで買った本の 名は……

・『カント』(世界の名著)。うっぎゃーっ。恥ずかしっ。かっ顔から火が 出るっ。

・カント

・トンカ

・カトン

・ントカ

・トカン

・ンカト

・はっ。何してんだ。つい順列組合せを…。いやね、5級や3級がね、昨日、 『グルントレーグング』なら岩波の訳よりも「世界の名著」の野田又夫の訳の 方が良いって言うからね、あの、その、その、つい買っちゃったわけです。あ あ。言っちゃった。ほんとに恥ずかし。

(全国一千万のカントファンのみなさま、客席からものを投げないようにお 願いします。あっ、そこ暴れないで下さい暴れないで下さいっ)


・お昼過ぎ・

・さっきから野田又夫のカント解説を読んでいるが、ほんとにこの人の 文章は読みやすい。すらすら読める。ひたすら尊敬してしまう。


・昼下がり・

・改装後の中央生協購買部に初めて行ったら、がらんとしていて、なんだ か殺伐とした感じだった。万引き防止のためか?


・夕方・

純粋こだま「なあなあ、カントのMaximeって、格律 か格率か、どっちで書く?」

実践こだま「最近は、格律、の方かなあ」

純粋こだま「そうやんなあ。律の方がルールって感じするもんなあ。規律 とか、法律とか」

実践こだま「あと、律令とか」

純粋こだま「けど、最初の、格、ってなんなんやろ」

実践こだま「あ、それぼくも気になって調べたことがあるんだけど、やっ ぱりこの格っていう漢字にもルールっていう意味があるみたいで」

純粋こだま「あ、ほんまに」

実践こだま「ほら、律令格式とかあったでしょ」

純粋こだま「あ、そう言えば。けどそうすると、格律やと両方ともルールっ ていう意味になるんか」

実践こだま「そうそう。けどカントの格律って、『客観的、普遍的な道徳 法則に対して、主観的、個別的な行為の規則をいう』んでしょ(小学館国語辞 典から引用)。だったら、格よりもむしろの方が原語の持 つ意味が通じやすいんじゃないかなあ」

純粋こだま「なるほど。各々の規則で各律、ね。ちょっとかっこ悪い気も するけど」

実践こだま「慣れればそうでもないと思うけど……」

(追記:「率」は引率や統率に見られるような、「率いる」の意で用いられ ているのであろうか。だとすると、「格律」と同様、「格率」という訳語でも 原語の意味を今一つ伝え切れていない気がするが)


・ようやく野田又夫訳の『グルントレーグング』を読み始めた。さっき序 言の部分を読み終わったが、岩波文庫の訳と比べて全然良くわかるっ(こだま は非常に驚いたので、この瞬間彼は正しい日本語の話し方をすっかり忘れてし まっていた)。いや、さすが野田又夫。すごいっ。よっ、日本一っ。


・真夜中・

・夕方からロック読書会。そのあと一時間半にも渡る泥試合をAI将棋でやっ てしまう。最悪。途中でいやになってやめた。しかし一応、●。ちきしょ。時 間返せ。


09/04/97(Thursday/jeudi/Donnerstag)

・真夜中・

『グルントレーグング』の第一章を読み終わる。 原語が気になったりしたせいか、あまり内容がきちんと追えていない。次の章 に進む前に読み返すべきか。

・訳語について一言。Neigungを「傾向」、Abneigungを「嫌悪」と訳すの は、定訳なのだろうが、かなりわかりにくい組合せである。

・ある英訳ではinclinationとaversionとなっているが、ここは思い切って 「欲求(求めようとすること)desire」と「嫌悪(避けようとすること) aversion」とすべきではないか。

(たとえば、「義務そのものから他人に親切をつくすこと、たとえそれを促 す傾向が存在せぬのみか、もちまえの抑えがたい 嫌悪が反対する場合にもやはり他人に親切をつくすことは、… (p.241)」など)

・あと、Abschnittを「意図」で押し通して、「義務にもとづく行為の道徳 的価値は、その行為によって実現さるべき意図のうちにあ るのでなく、その行為の決意ののっとる格率のうちにあり、…(p.241)」とす るのも無理があろう。ここは明らかに「目的end,Zweck」と解した方が 良い。

・以上。神をも恐れぬ批判。


・う、死刑廃止 運動をしているホームページからリンクが貼られている…。しかも自分で も良くまとめられない自分の立場が説明されてある。むむむ…。


・朝・

・う。昨晩寝るのが遅かったせいかずいぶん遅くまで寝てしまった。ぼく も腰が痛い。パイプ椅子で寝るからだ…


・昼下がり・

・今まで今日の夕方にある倫理学入門書読書会の準備。これからロック読 書会。うう。だれかぼくに時間を下さい。


実践こだま「ところで、世の中で一番恐いものっ て何?」

純粋こだま「世の中で一番恐いもの?ま、そりゃ論理実証主義者 やろな」

実践こだま「うわっ、そそそれは恐い…」

純粋こだま「やろ、やろ?」

実践こだま「ぼく、論理っていう言葉だけでも背筋が寒くなるな」

純粋こだま「おれなんか、論理って聞いただけで、ある顔が思い浮かんで もて、目まいがして放尿してまうわ」

実践こだま「汚いなあ」

純粋こだま「しかもそのうえ駄目押しのように『実証』やろ」

実践こだま「完璧すぎるって」

純粋こだま「あかんわ。わしかなわんわ」

実践こだま「かなわんな、論理実証主義者にだけは」

純粋こだま「あ〜恐い恐い。すっかり寒なってもた」

(今この文を読んでいるあなたの後ろにも論理実証主義者はたたずんでいる かも知れない…)


・夕方・

・ロック読書会(音楽ではない)終わり。珍しく少し時間が余った。とはい え、やることはたんとあるのだが…。


・夜・

・倫理学入門書読書会(「現代道徳哲学」の巻その3)終わり。来週は「現代 義務論」の巻(その1)。ではまた明日。


09/05/97(Friday/vendredi/Freitag)

・夕方・

・昼過ぎに起きる。昨晩の夕食時にまた皆の前で福祉問題について暴言を 吐き、めったうちにされ、非常に落ち込む。いや、議論の仕方について反省も してます。もう少し用意周到にそこここに落し穴を設けて……(ウソ)

・それで昨日は少し憂鬱になって寝た。すると今日の昼にシジウィックの 修正版が家に届き、校正の嵐に驚き、また激しく落ち込む。I'm down。


・夜・

・ベンタム読書会終わり。ところで、『時計仕掛けのオレンジ』は確か高 校生の時に観た。今一つ意味がわからなかったように記憶している。


・真夜中・

・逃避活動として、晩ごはんを食べながら『お〜い竜馬』第一巻、第二巻 を読む。ついでに『グルントレーグング』も読む。(まだ第一章を読んでいる。 二回目になるとずいぶん良く分かるようになってきた)


09/06/97(Saturday/samedi/Sonnabend)

・真夜中・

・『グルントレーグング』第一章を再読し終わる。あれですね、カントも 実は「通常の人間理性(すなわち、こだまに代表される哲学的でない無知蒙昧 な人の持つ理性)」にも一応理解できる内容を話してくれているわけですね。 このことを知ったことが今回カントを読んだ中で一番の収穫です。


それにしても、カントの次のような議論に皆は納 得するのだろうか。

(1)自然によって生物に与えられた諸機能は、当の生物の持つ目的を実現 するのに最適なはずである。

(2)ところで人間は理性という機能(道具)を持っている。

(3)今仮に人間の持つ目的が幸福(欲望や欲求の十分な満足)だとすると、 理性は明らかにこの目的を実現するための最適の手段ではない。幸福を実現す る手段としては、(欲求を十分にコントロールできない)理性よりも、むしろ本 能の方が優れている。

(4)であるから人間が理性を持つ以上、人間の究極的な目的は幸福ではあ りえず、何か別のもっと価値ある目的を持つはずであり、理性はその究極的な 目的を実現するための手段なのである。」

・ぼくはとりわけ(3)幸福を実現するためには、理性よりも本能の方が役に 立つ、という考え方に納得が行かないなあ。

・「理性なんかない方が人間幸せになれるよ」って言うのはホントだろう か。果たして、「高ぶる本能に身を任せ」た方が「明るい家族計画を立て」る よりも幸せになれるのだろうか。むむむ…。(それともそういうことを言って るわけではないのか?)

・ぼくが考えるに、理性は幸福の増進(欲求の満足)に役立つからこそ進化 の過程で人間に備わって来た(あるいは退化しなかった)のであり、それゆえ人 間の究極的な目的はやはり幸福であり、(4)のように幸福以外の何かより価値 のある目的ということにはならない、と思うのだが。

・いずれにしろカント恐るべし(発想が恐い)。


・夜明け前・

・○(設定「強い」)。う。もう寝ます。


・朝・

・うう。眠い。「将棋ばかりしていると、日中頭がボーッとして来て、何 事にもやる気がなくなり、他人とうまく付き合えなくなる」という、科学的根 拠に基づいたメイルが来たので(なんでもサルで実験したとか)、将棋は一日二 回以上やらないことにする。


お昼前

・実はさっき、下宿なるものを見て来た。大学生活5年 目にして、ぼくはついに一人暮らしを始めるかも知れないのだ。あ、そこっ、 今笑ったなっ。笑ったなっ。わわわ笑うなっ。

・場所は吉田神社をずっと下がって丸太町に出る寸前の、錦林小学校かな んかの近く。学校には自転車で5分くらいか。建物は三階立。結構大きい。大 屋さんは(ちょっと)知合いの人。

・部屋は3階の一室。4畳半の部屋を二つくっつけたそうで、ベッドの部分 を除いても7-8畳くらいはありそう(自分では何畳なのかわからない)。贅沢に もクーラーがある。前に住んでいた人の机と本棚が残っていて、使っても良い らしい。お仕入れはベッドの下にある小さなスペースのみ。

・トイレは共同。見てない。風呂はないがシャワーは共同のがある。らし い。洗濯機もお金を入れるやつ(「コインランドリー」と言うらしい)が置いて ある。らしい。洗面所も共同。らしい。電話は引いて良いのかどうかわからな い。聞くのを忘れた。

・こう書くと共同ずくめで何やら悲惨な雰囲気が漂うが、この研究室に定 期的に泊まっているぼくから見れば天国である。

・なにしろ、この研究室の生活条件と言えば、トイレ共同(汚い)、風呂・ シャワーなし、洗濯機なし、電話なし、洗面所あり(ただし時々赤い水が出る) で、コンピュータがなければ誰一人寄り付かないような部屋だからだ。

(ん?比較対象が間違っている?そもそも研究室は住む場所ではない?おっしゃ るとおりです)

・これで肝心の家賃は25000円(+電気代)だそうだ。入居するのにその他の お金は一切なし。ついでに門限もなし(当り前?)。さて、どんなものだろうか。

・場所は良い。部屋も広い。ちょっと共同づくしだが、かと言ってしばら くはバイトをせずに奨学金だけでやって行きたいのでワンルームマンションを 借りる余裕もなし、多少の不自由は我慢せねばなるまい(といっても、そんな に不自由でもないが)。

・京大近辺にお住いの方で、もっと良い条件のところ知ってるよ、という 方は御一報願いたい。(不動産屋に行って部屋を比較対照するのは面倒)


・昼下がり・

おわ、チェチェン共和国(ってどこだ?)で公開処刑 か。どのぐらいの人が見に行ったんだろうか。

・もちろん見たくない人は見なきゃ良いんだし、公開処刑にする方がそう でないよりも犯罪防止に役立ち、しかも社会の幸福を増進するんだったら、ぼ くは別に悪いことだとは思わない。

・それはちょうど、どうせ外出するんだったら、封筒を出しに郵便局に寄 るついでにコンビニで朝ごはんも買った方が効率が良いのと同じである。

・とはいえ、そうした方が効率が悪いのなら、たとえば国内外で不快を訴 える人が多数を占めるという事情があるのなら、話は別だけど。

・ところでエリツィン露大統領は、「チェチェン共和国での公開処刑を文 明国家では許されない中世の行為」だと批判したらしい。

・しかし「公開処刑は中世では許されたが、(近代の)文明国家では許され ない」というときの根拠は一体何なんだろ?文明国家では誰が許さないの?エリ ツィン大統領?文明国家でしかも独立国家でもあるチェチェン共和国では許さ れたんじゃないの?

・はっ、つい感情的に…。


・夕方・

・すこしイスで寝た後、シジウィックの翻訳を修正していた。翻訳につい てここに書きたいことは山ほどあるが、とりあえず文学部中庭の地面に穴を掘っ てそこに大声で言うに留めておく。

・これからロック読書会(ひつこいが、音楽ではない)。と思ったが諸般の 理由で中止。帰る。


09/07/97(Sunday/dimanche/Sonntag)

・朝・

・今日は軽音の練習のコマを取ろうと朝から起きて来た。そしたら、今日 はお昼からバンドの練習もあるつもりで来たのに、実は昨日のお昼に練習を取っ ていたことがわかった。がーん。

・おそらくバンドのメンバーは皆今日だと勘違いしていたはずで、誰も行 かなかったと思う。前ゴマと後ゴマに練習をしていた人、ごめんなさい。

・それで、今日バンドのメンバーが間違えて京都に来るのをなんとか阻止 しないと行けないのだが、なかなか連絡が付かない。最悪。もうホントに落ち 込む。


・昨夜は、『フォー・ザ・ボーイズ』 という映画を観た。


・宵・

・シジウィックの修正が一応終わったので、ついSF小説を読んでしまい、 感想を書くのに時間を書けてしまっ た。今日はもう帰る。また明日。


09/08/97(Monday/lundi/Montag)

・お昼過ぎ・

・下宿の大屋さんに今日までに返事を出すと約束したので、返事をする前 に一応学相にも行ってみた。壁一面の黒板にびっしりと下宿の募集があって、 くらくらした。そこでとりあえず左京区だけを調べてみた。安いところは4畳 半1万円からあったが、大体の下宿は家賃と雑費を合わすと2万円台になるとこ ろが多かったようだ。

・というわけで、結局、礼金・敷金なしで、更新料なし(更新料なしだと思 う--聞くの忘れた)の月2万5000円は妥当ではなかろうか、というところに落ち 着いた。もう少ししたらOKの電話を入れよう。


・夏休みの宿題の〆切が迫っているので、そろそろやらねば。そういえば ぼくは小中高一貫して夏休みの宿題はぎりぎりにやる主義だった(主義と言え るのかどうかはわからないが)。


・へるにや・

真正こだま「へ、へ、へるにやって…、東ヨーロッパかどこかの国の名前?」

純粋こだま「病名だっつーのっ。あのなぁ、へるにやっていうのはやなぁ、 それはそれは痛い腰の病気でやなぁ、これにかかったら立たれへんくらい苦し いんやで」

真正こだま「え、そ、それってもしかして…、移るの?」

純粋こだま「そりゃ移る移る。しかも君みたいな中年の男性に特に移る病 気やからなぁ」

真正こだま「え、えええええっ(えぐっ、えぐっ)」

純粋こだま「あ、ウソですウソです冗談です。どうか全国で苦しんでいる へるにや患者のみなさん、はやく元気になって下さい」

真正こだま「(えぐっ、えぐっ、えぐっ)」


・追弐痩隆君という人・

・そいえば最近、SF好きの追弐痩隆君(ついにやせたか)という人(仮名)と 知合いになった。彼は京大の理学部の大学院生で、ぼくなんかが聞いてもちっ ともわからない宇宙の理論的研究をしている人なんだけど、これがまた大のSF ファン。

・英語はあまり得意でないので大体邦訳で読んでるらしいけど、ハヤカワ 文庫は一冊残らず下宿にあるんだそうだ(今度見せてもらう予定)。

・それで、ここだけの話だけど、ちょっと頭がいかれているみたいで、自 分が本当に宇宙旅行してきたと思っているらしく、ぼくに自慢げに彼の冒険譚 を話してくれる。

(彼の話では、彼はぼく以外には誰にもその話はしたことがないらしい。彼 によると、地球のほとんどの人間はすでに寄生獣に宿られているので、信用す ることができないのだそうだ。そして、ぼくは彼が生まれて初めて出会った 「純粋人間」なんだそうだ)

・しかし、これが非常に奇想天外で面白く(もしかしたらほとんどハヤカワ 文庫のどの本かにあるネタなのかも知れないが)、また、倫理的な見地からし ても大変興味深いのである。

・そこで、時間があれば彼から聞いた話を『追弐痩隆君の宇宙大紀行』と いう題名の下で書いて行こうかと思う。

(ちなみに、彼にこのホームページが見つかる恐れはない。というのは、確 かに彼は大学でコンピュータを使っているが、彼はコンピュータでインターネッ トをするとモニタから寄生獣が飛び出して来て、人間に寄生すると思っている からだ)


・夕方・

・天気悪し。


・宵・

・暗くなるのがずいぶんと早くなったなあ。

・下宿の大屋さんに電話して、部屋を借りることが決定。これでついにぼ くも下宿生となった。「吾輩は下宿生である。電話はまだない」とか言って。


・夜・

・…はっ。『グルントレーグング』を読んでいたらたまらなく眠くなった のでついうとうとしてしまった。

・これから友人宅にビデオ(『クラッシュ』『DIVA』)を観に行く。早けれ ば明け方に戻るであろう。(夏休みの宿題などを早急にせねば)


09/09/97(Tuesday/mardi/Dienstag)

・お昼前・

・昨夜、『クラッシュ』を観た。


・昼下がり・

文学部の掲示板に、「育英会の奨学金のこ とで「コダマ」君に連絡があるので、可及的すみやかに出頭しなさい」と書い てあったので、「なんか出すもの忘れていたのかな」などと思いながら事務室 に行った。

・すると、奨学金の担当のおばさん(ところでこの人はとても親切で良い人 に見える)がぼくを自分の机の前に連れて行って、書類を広げた。

おばさん「ええと、毎年大学の方から育英会に奨学生の成績を送るんですけど…」

こだま「はい。(ん?こだま君はいつもよく頑張ってるのでご褒美に育英会からテ レホンカードを差し上げます、とかそんなのか?)」

おばさん「それでね、ちょっと学業が思わしくない学生さんには注意が来 るんですよ…」

こだま「あ、はい。(ええええっ。ちょ、ちょっと待った、そそっそそんな はずが…まさか育英会のお偉いさんにぼくのホームページが見つかって、こい つは将棋ばかりしておってけしからん、ってなことにでもなったのか!?)」

おばさん「それで、こだまさんには『警告』が来ているので、もう少し勉 強をがんばってもらわないと…」

こだま「あ、はい、わかりました。(う、うそーっ。毎日一生懸命勉強して ますってばっ。それともやはりぼくの勉強量なんてみんなより圧倒的に少ないっ てことか?京大生ってそんなにまじめだったのか??)」

・と、ショックと絶望で足がふらつき目の前がまっくらになりながら、ふ と書類に目を落すと、そこにある名前は「コダマ○○○(さとしではない別の 名前)」となっている。

こだま「あっ、これぼくじゃないですっ。ぼくは『こだまさとし』です」

おばさん「あら、掲示板にはどう書いてありました?」

こだま「あ、ちょっと見て来ます…(ややあって)ごめんなさいごめんなさ い。掲示板の名前もぼくとは違いました」

おばさん「(にっこりとして)あらあら。それじゃ今度から気を付けて下さ いね」

こだま「ごめんなさい、うっかりしちゃって。すいません」

・と平謝りして出て来た。

・全く馬鹿なことをしてしまったが、とりあえずほっとした。いわば自ら はまりに行った冤罪と言ったところか。


・下宿に行ってカギをもらってくる。今日はもうそのまま家に帰るかもし れない。


09/10/97(Wednesday/mercredi/Mittwoch)

・夕方・

・母親の車で荷物を下宿に持って来る。布団と服の他はほとんど本とCD。 これで一応生活できることになった。部屋は少し暗いが、屋上にのぼると大変 気持ちが良い。

・というわけで、生活用品をくれる人は家まで取りに行くのでぜひ御一報 を(ただし京都市内に限る)。


・夜・

・中央食堂で夕ごはんを食べ終えて文学部に戻る途中で、鼻の先の黒い茶 色の仔犬に出会った。(赤犬ってうまいんだよな)と思いつつ近寄ると、仔犬は 身の危険を鋭く嗅ぎ取ったのか、タタタタっと斜めに走って文学部の本館の暗 闇へと消えて行った。

・とりあえず文太と名付けてやった。

・戻って来ると3級が来られている。『漂流教室』を全巻持って来て下さる。 感謝。ついでに「漂流教室 MANIAC」という名のホームページも教えてくれる。


・ロック読書会断続的に続行中。ただ今、つ○たさんが休憩と称して『漂 流教室』を読んでいるので、ぼくは昨日観た『DIVA』の感想を書いている。不真面目読書 会。


・読書会終わり。やることはあるが、とりあえず下宿に帰ってみることに する。また夜中に戻って来るかも知れない。


09/11/97(Thursday/jeudi/Donnerstag)

・真夜中・

・下宿にいてもなかなか眠たくならなかったので、勉強をしようと研究室 に来た。するとなんだか大変眠たくなってきた。なぜだっ。


・あっ、しまった、『漂流教室』の罠にはまってしまったっ。うむむ。ま ずい。まずいが…2巻を…。(それにしても恐い。ほんとに恐い)


・夜明け前・

・今まで今日の倫理学入門書読書会の準備。ひとまず終わり。疲れた。ま だまだいろいろしないといけないんだけどなあ。しかし帰って寝るか。


・昼下がり・

・全国の教員採用試験の一次を合格した方、おめでとうございます。

・今朝は明け方に下宿に帰り、『漂流教室』を読みながら(震えつつ)寝た。 お昼前に起きてから『漂流教室』を最後まで読み、屋上で少し勉強をしたりし ていた。

・今日奨学金が入ったので今月分の家賃を支払う。今月末に来月分の家賃 を払わなくてはならないので、来月の今日までは苦しくなるだろう。う、なん だか生活じみて来た…。バイトしない分、しっかり勉強しなきゃ。

・これからロック読書会。(夏休みの宿題が心に重くのしかかり始めている…)


・夕方・

・もうすぐ倫理学入門書読書会。

・中央購買部で買ったもの。洗面器。バケツ。ゴミ箱。洗剤。歯磨き粉。 ハンガー。タンスにゴン。

・あと足りないのが、掃除機。自宅の掃除機が子供をたくさん産んで手に 余っているという方、ぼくに分けて下さい。(ホウキとの雑種も可)


・夜・

・倫理学入門書読書会(「現代義務論」の巻その1)が終わってから、皆でお 好み焼き屋へ殺到する。いろいろな話で盛り上がる。(会食の出席者:○助教授、 くら○さん、3級、お○だくん、つる○たさん、○ぼさん、や○もとさん、○ だま)


・世代間倫理の勉強を少々。世代間倫理とは、「われわれは未来世代(すな わち子孫)の利害を考慮に入れて行動すべきであろうか」というような問題を 扱う倫理であるらしい。

・たとえば、石油のような有限の資源の利用方針を決める際に、「われわ れは100年後の人々のことを考慮に入れるべきか」などという形で問題になっ たりするらしい。

・ま、これについてはまた。そろそろ帰って寝る。


09/12/97(Friday/vendredi/Freitag)

・昼下がり・

・寝過ぎた。今日こそは夏休みの宿題をせねば。


さて、

燕雀いずくんぞ鴻鵠の志を知らんや

という言葉は、ぼくの大変好きな言葉の一つである。とある国語辞典を引 くと、「(えんじゃくいずくんぞこうこくのこころざしをしらんや)小人物は大 人物の大志をさとることができないということのたとえ」とある。

・確かに、この言葉が含意するところには、ちょっと愚民思想というか、 エリート思想のきらいがないでもない。

・しかし、「就職もせずに大学院になんぞ残りおって。ここ、このごく潰 しがっ。おまえは社会の寄生虫じゃっ」などと近視眼的な利益ばかりを考える 人々の「一見もっともらしい」批判をやり過ごすのには適切な表現だと思って いる。

・ただし、そういった批判が当たってしまわないように、つまりほんとに 単なる社会の寄生虫になってしまわないように、しっかり勉強して、(少なく ともある程度は)社会に貢献する必要があるとは思うが。

(長野県かどこかに悩める大学院生がいるようなので)

・ところで、ぼくなんか某母親に「あんたは知識ばっかり身に付けて知恵は全 然身に付いてない」としょっちゅう言われています。

・その度に(こんにゃろ、首をしめてやろうか)とふるえつつ思うんですが、 某母親の言う「知恵」とは結局「金の儲け方、処世術」のことなので、まあ 「知恵」をそのように定義してしまえば、養われている身分としてはくやしい ながら何も言い返せません。

・そこで仕方なく、(へーん。知恵っていうのは「真実を悟り、物の本性を 理解する能力、または知識を正しく使用できる実践的な英知」の事を言うので あって、単なる「金儲けの仕方」を言うんじゃないんだよー)って思っていま す。

・まあ今は伏竜の時期、成虫になる前のさなぎの時期だと思って、その手の 批判をされてもおとなしく聞いておいて、せっせと自分を磨くのが最良の策で はないでしょうか。


・夕方・

・世代間倫理の勉強。これから夏休みの宿題に取り掛かる。はず。


・夜・

先ほど、「セントー」なるもの に行って来た。

・わが愛する読者の中には「セントー」を知らない人々もいると思うので、 まず「セントー」の概念から述べねばなるまい。

・まず、「セントー」はフロ科セントー属に分類され、日本全域で広く観 察される。そして、上で「行って来た」と述べたように、「セントー」はある 特定の場所である。

・また、フロ科にはセントー属の他に、フロ属、シャワー属などもある。 オンセン属がセントー属と明晰判別に区分されうるかは、長い間議論の的となっ ていて、現在も定説はない。ただし、わたしはオンセンとセントーは明確に区 別できると思っている。また、フロとシャワーはお互いに独立した概念である ことにも注意しなくてはならない。というのも、確かにフロにはシャワーが付い ていることがしばしば観察されるが、われわれはシャワーの付いていないフロ というものを容易に想像できるからである。

・さて、それでは「セントー」について詳しく見てみよう。

・「セントー」は漢字では「銭湯、洗湯」などと書かれるが、これは多く の複合観念および単純観念によって構成される、一つの複合観念である。

・この複合観念を構成する複合観念の主なものを上げると、「番台」「脱 衣場」「風呂場」などである。

・「番台」を構成する単純観念は、「番台のおばさん、あるいは番台のお じさん」「貸しタオル」「石鹸(売り物)」「シャンプー(売り物)」「リンス (売り物)」「入浴料」などである。また、この「番台」の観念には「下駄箱」 「男湯の入口」「女湯の入口」の単純観念が密接に結びついている。

・「脱衣場」を構成する単純観念は、「ロッカー」「比較的大きな鏡」 「体重計」「トイレ」「電動アンマ付イス」「洗面所」「テレビ」「有料ドラ イヤー」「扇風機」「柱時計」「雑誌」「自販機」などがある。偶然的な単純 観念としては、「雑誌を読みながらいつまでも長居をする中年」が挙げられる。

・「風呂場」を構成する単純観念は、「バスタブ」「シャワー(ただしこれ はシャワー属ではなく、セントー属シャワー種に分類される単純観念である)」 「お湯の出る蛇口」「水の出る蛇口」「イス」「風呂オケ」「サウナ」「比較 的小さな鏡」などである。以上の単純観念は、「サウナ」を除けば、複数個あ ることが多い。また、偶然的な単純観念として、「壁に描かれた富士山の絵」 が挙げられる。

・ここまでで「セントー」の概念が明瞭に把握されたと思う。紙面の都合 で「セントー」の歴史が述べられないが、これはまたの機会に譲ろう。


・それでは次に、視点を変えて、わたしがどのように「セントー」に行き、 無事に帰って来たかを簡潔に述べよう。

・まず、わたしは「風呂オケ」に「石鹸」「シャンプー」「リンス」「比 較的小さなタオル」「比較的大きなタオル(バスタオル)」「財布」を持って 「セントー」に向かった。このときのわたしは、「セントー」に入ってしまっ た後に「洗顔剤」を持って来るのを忘れて後悔するなどとは、まだ夢にも思っ ていない。

・「セントー」の入口を開けると、「下駄箱」があるので、そこに「クツ」 を入れる。ふと上を見上げると、高くなった「番台」から「番台のおばさん」 がわたしを見下ろしている。わたしは恐怖に駆られて、ポケットから財布を取 り出す。

・「番台のおばさん」の横に、入浴料の一覧表が書いてある。「大人320円、 中人--円、小人--円」。なるほど、これで人間には6種類いることがわかる。 列挙すると、ダイジン(男)、ダイジン(女)、チュウジン(男)、チュウジン(女)、 ショウジン(男)、ショウジン(女)である。わたしはどうやらダイジン(男)に分 類されるようなので、320円払って男湯の方へ入る。

・扉を開けて「脱衣場」に入ると、偶然にも「雑誌を読みながらいつまで も長居をする中年」を観察する機会に恵まれる。ここで人は身に付けた装備を 「ロッカー」にしまって、「風呂場」へと進むことになっている(追記)。

・ここで、装備を全て外すと無防備になって危ないのではないか、と疑問 に思う方もいるだろう。その通りである。「セントー」に行くのは非常に危険 であるので、かなりの覚悟か、あるいは人生に対する諦念がなくてはここに行 くのは容易でない。「セントー」に行く人が老人であることが多いという事実 も、ここ(人生に対する諦念)に求められよう。

・さて、わたしはというと、「セントー」に行くのは久しぶりなので恥ず かしいやら勝手がわからないやらで、「ロッカー」の鍵をかけずに「風呂場」 に行ってあわてて戻って来たり、「風呂場」にメガネを掛けたまま入ったりと、 いろいろ恥ずかしい思いをした。

・「風呂場」でわたしが何をしたかは、ここに書くのはいささか憚れるの で省略する事にしよう。

・「バスタブ」には「ミドリのフロ(泡が出ている)」「電気のフロ」「水 のフロ」「お湯のフロ」「たつまきエステのフロ(これも泡が出ている)」など があってなかなか楽しめる。

・時間が早かったので、数人の入浴客(全員「ダイジン」と思われる)しか いず、ゆっくりと「バスタブ」に入ることができた。「男湯」は静かであった が、隣の「女湯」はやかましかったことは特筆されよう。

・「風呂場」を出ると、「風呂場」と「脱衣場」が接するところに「洗面 所」があるのだが、どうやらそこで身体を拭いてから「脱衣場」の残りの部分 へ行くのが一般的な慣習のようである。しかし、わたしはすでに「風呂場」か ら出てしまった後に、その慣習を観察事実から帰納的に推察したため、自分自 身はぼたぼたと水を垂らしながらロッカーの前で身体を拭いてしまった。

・その後、わたしはそそくさと「風呂場」を出て、「番台」の脇を通り抜 け「下駄箱」の靴を取り出して履き、無事「セントー」を脱出した。


・以上が「セントー」の概念と、わたしの「セントー」体験記で ある。何か意見・反論がある方はメイルを送って欲しい。


09/13/97(Saturday/samedi/Sonnabend)

・真夜中・

・今まで真面目に勉強してたか、というと大間違いで、「セントー」の一 文をものした後、「よろずや」で行なわれている「おふみ」なるものにお邪魔 していた。むむむ。これでいいのかっ?


・科哲の夏休みの宿題に手を付けて、一学期にやったことをきれいさっぱ り忘れている事に気付き、途方にくれてベースを練習する。練習を終えてキー ボードのキーを打つとなんだか変な感じ。ベースは右手も左手もギターよりずっ と移動幅が大きいので大変。


・真夜中下がり・

・もう限界。帰って寝る。


・お昼・

・寝坊する。困った。仕方がないのでこれからお昼ごはんを食べた後、勉 強する。


・昼下がり・

・モニターの見過ぎか、左目が痛い。とっても痛い。目が痛いと気分が悪 くなる。むむむ。


・現在、科哲の宿題をやっている。完全に頭が白紙状態に戻っていたので、 要約をすべき部分をとりあえず全訳している。(全訳の方が楽だから)

・大まかな内容は、1920年代当時の常識的な主張、

「ユークリッド幾何学は非ユークリッド幾何学とは違うんや。ユークリッ ド幾何学こそが現実の空間(幾何学的空間と対比されて物理的空間と言われる) を正しく表現してるんや。ユークリッド幾何学ばんざーい(爆発炎上)」

に対して、ライヘンバッハ先生が、

「いやいや君たち、別にユークリッド幾何学が『真の』幾何学だというこ とはないし、非ユークリッド幾何学がユークリッド幾何学に劣るなどというこ とはないんじゃよ。みんな平等なんじゃ。幾何学は相対的なんじゃよ」

とねちねちと教え諭すというもの。明日明後日中にレポートができるはず。 そうあることを切に願う。


・夕方・

・科哲の宿題続行中。うおーっ、燃えるーっ。


・夜・

・とりあえず全訳終了。文字カウントすると約8000字にだったので、これ からこれをまとめて4分の1にしなければならない。しかしまず晩ごはん。


・晩ごはんを食べたらやたらと眠くなって来たので(おれは牛か?)、一度帰っ て寝ることにする。明日は朝早く起きて、いわゆる「センタク」実験を実行す るつもりである。


09/14/97(Sunday/dimanche/Sonntag)

・朝・

・早起き成功。ちょっと用事で学校に来る。これから下宿に戻って「セン タク」開始。

♪センタクセンタク(ウーホウーホ)ヤッホホヤッホホ(ウーホウーホ)♪

(repeat 5000 times)


・昼下がり・

・今日は「センタク」をしようと思っていたのだが、天気が悪いという口 実を設けて中止にしてしまった。台風19号が来ているらしいし。もう二、三日 待とう。

・ホセ・ヨンパルトというスペイン生まれで日本で教授をしている法学者 がいる。先ほど『刑法の七不思議』という本の「不思議その七--死刑制度」の 項を読んでいた。

・彼も死刑廃止論者であるが、団藤氏よりも説得力のある議論を展開して いるように思え、なかなか参考になる。特に、自分も死刑廃止論者でありなが ら、他の死刑廃止論者の言う「誤判の危険性」だけでは死刑制度が不正なもの であると言えない、と述べているところは、骨太な死刑廃止論者を感じさせる。 感じさせないか。


・ちょっと宣伝。明日ついに「こだまの世界」一周年なので、もしまだ アンケート に答えてない方がいたら、博愛の精神を発揮して回答して下さいっ。


・夜・

・夏休みの宿題をまだやっている。しかし、なんだか疲れてしまったので、 下宿に戻ってまた夜に来ることにしよう。


09/15/97(Monday/lundi/Montag)

・真夜中・

・下宿で仮眠を挟んで、世界の名著に入っているヒュームの『原始契約に ついて』を読んだ。割と読みやすい翻訳。

・しかしヒュームの文章構成って、周りくどいというか、老獪さがあると いうか、ひねくれているというか。まっすぐ敵に向かうミサイルというよりは、 一度大気圏外に飛び出してから地球をぐるりと一周して、皆がその存在を忘れ た頃に落ちて来るようなミサイルを思わせる。そう思うのはぼくだけか。

・今から晩ごはんを食べて、それから余力があれば夏休みの宿題の続き。


・あ、今日でちょうど一周年いろ いろあったけど、3級に勧められてホームページを作ったことは、こ の一年全体を通して考えると、非常に良かったと思う。3級に感謝。

・この文章を読んでくれている人々にも感謝。雑誌や本じゃないから、たと え誰一人読まなくてもホームページは書き続けることができるわけですが、し かし実際は、誰も読んでくれなければぼくは書く気を失ってしまっていたでしょ う。

・寛大にもぼくのアカウントを作ってくれた社会学の方にも感謝。まだお 世話になります。

・ぼくが研究室に(その前は某教授室に…)はびこることを許して来てくれ た、心の広い倫理学研究室の方々にも感謝。苦情はいつでも拝聴します。

・というわけで、ふつつか者ですが、これからもよろしく。


・深夜・

・「真夜中」と「深夜」と「夜更け」はみな同じ意味なのだろうか。「真 夜中」よりは「深夜」の方が遅い気がするが。

・『お〜い竜馬』三巻、四巻を読む。面白い。ネタがたくさんあって読者 を飽きさせない。成長もののストーリーは楽しい。「男らしさ」が追求されて いるマンガだと思う。


・眠くなったので下宿に戻る。夏休みの宿題については、今日の昼からの ぼくと明日のこの時間帯のぼくに苦労してもらうことにする。がんばってくれ。 (いいのかそれでっ)


・昼下がり・

・わああああっねっねっ寝すぎたっ。あ↑、あ↑、ななな何言ってんだ今 朝のおれはっ。なんて無責任なやつなんだゆゆゆゆ許せんっ。


・夕方・

・ロック読書会中。夏休みの宿題の要約ができずに苦しむ。


・ロック読書会終わり。宿題をなんとかしなければ。とりあえず銭湯に行っ て考えよう。


・夜・

・再び銭湯に行った。やけに老人が多いと思ったら、今日は老人は無料の 日だったようだ。

・途中で、まだ生まれてから一度も髪を切ったことがないんじゃないか、 というほど髪の長い女性が入って来て(少女とも言う)、ぼくのとなりに座って 髪を洗い出した。

・残念ながらぼくにはルイス・キャロルのような少女趣味はない(目も悪い し、いずれにせよ良く見えない)。女の子の方は、髪の長い男が珍しいのかじろ じろ見ていたようだが(これも実際は良くわからないが)。見られ損だった気が する。

・(追記)先日、「脱衣場」の「ロッカー」は単純観念と 書いたが、その後の観察の結果、「ロッカー」は複合観念であることがわかっ た。

・「ロッカー」の中には、「黄色い脱衣カゴ」を挿入するのが、慣習的に 正しい行為であるようである。(また、少なくともわたしが観察したかぎりで は、「脱衣カゴ」はすべて「黄色」だった)


・その後、今日お昼に起きてから、初めてのごはん。『お〜い竜馬』五巻 から八巻まで。う〜む。大きな夢を持たないとなあ。こじんまりとしてちゃだ めだ。(英雄伝を読むと、いつもしばらくの間はそう思ってるんだけど…)


Satoshi Kodama
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Last modified: Thu Sep 15 14:33:45 JST 2005