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こだまの世界

倫理学者のふしぎな日記

9月号

今月の主な話題


ご意見のある方は、kodama@socio.kyoto-u.ac.jpまたはメイルを送るまで。


9/15/96

 「某氏が猿のようにホームページを作っている」と江口さんの書きなぐりに書きなぐってあったので、震える手でその文字をクリックしてみると、ぼくのページではなかったのでとりあえず安心する。しかし来週の火曜日にみんなに渡さねばならないレジメは、まだ全くと言っていいほどできていない。先輩方に死なされる可能性が高くなってきた。あかん、助けておかあちゃん。


9/17/96

 朝。今日は来週発表の(卒論用)演習のレジメの提出日。夏休み前半に立てた予定では、ほぼ完成に近い卒論をひっさげて発表するはずだったのに、全然できていない。なんてこった。しかし出さないと先輩方に死なされるので、未完成でもとにかく出すことにする。来週までに形になるんだろうか。とても心配である。

 夜。調子に乗って研究室に残っていたため、もう高槻には帰れなくなってしまった。頼りの友達も、どうやら実家に帰っているようだ。学校に泊まろう。とてもこわいが。

 なお、「猿のように」にリンクをくっつけたのは僕ではないので、さかうらみはやめてくださいね、江口さん。


9/18/96

 極早朝。現在僕のいる所は、普通の4回生はいないところだと言えなくもない。しかし、寝床もないので、ここに朝までいようと思う。ソファで寝ようと思ったが、やはり罪悪感があって寝れない。罪悪感の苦痛が眠りの快楽によって打ち負かされたとき、僕は眠りにつくだろう。

 演習のレジメをホームページに載せるのに2時間以上かかってしまった。まことに馬鹿らしい話ではある。

 あっ。やっぱりねてしまった。早朝。体の調子は、悪い。しかし家に帰らなかったので、いきなり勉強ができるのは、偉大だ。白水さんのホームページが開けないのは、どうしたことだろう。が、わざとなさったことかも知れないので、とりあえずほうっておく。

 朝。しかしここにいると、「・・のように」ホームページを書いてしまう。昨日の演習のSimone Veilの発表で興味深かったのは、Veilが「二人の人がいるのに一つしかパンがなかった場合、たとえ自分が食べようと思うのは自然だとしても、そこに罪悪感があるのはなぜか」というようなことを考えていた、と発表者の方(名前出してもいいのかな)が言っていたこと。僕は自分の快楽を第一目標として追求する人間であると自認しているので、やはりパンをもう一人にあげて自分が死んだとしても、たぶんしないだろうが、それは究極的には自分の快楽のためにやっているのだと考える。結局比較考量されるのは、自分が食べる場合は、食べることの快楽と、もう一人に対する罪悪感の苦痛であり、相手にあげる場合は、自分が食べないことの苦痛と、相手が満足することを見る快楽なのであろう。あと、自分が食べた場合、後で思い出して後悔するに違いない、という記憶の苦痛もある。こう考えると考慮に入れるべき快楽と苦痛は結構あるな。他にどんなものがあるかな?

 夜。まだいる。もう高槻に帰るが。ヘーゲルの授業の間は刑法の本を買いに行く。先にルネに行ってから吉岡古書へ行くという誤謬を犯してしまう。ルネではCDが20%offだったので、おろしたばかりの金を使い果たす。Doorsの2枚組みのベスト。Stevie Wonderの"Talking Book"。Iggy Pop & the Stoogesの"The Stooges"。家に帰って聴こうっと。さよならっ。


9/20/96

 昼前。誰もいない。経済の図書館でついにベンサム『序説』の全訳を見つける。『世界大思想全集24』に入っている『功利論』がそれだ。ただし1928年のものである。

 まだ『序説』を読み終えていないし、演習には間に合いそうもないのだが、とりあえず頑張ろう。先輩や先生方に白い目で見られるのは避けたい。

 今日はめでたい給料日。しかし高3英語の授業がつぶれてしまったので、給料が月二万円分減り、これから暮らしていけるか不安である。自宅生だから、死ぬことはないと思うが。

 今日はこのホームページにこんど応用倫理学特殊講義(演習)で発表予定の「茶髪論争」を載せる予定。こんなことをしているから、ますます演習の用意がはかどらない。

 夕方。今日は全然はかどらない。メイルを送れるように江口さんのホームページを参考にして(ぱくって)作ってみたが、もらったメイルがどこへたどり着くのか分からない。ま、つりをする気分で、のんびり待とう。つった魚がどこへ行くのか知らないが。議論好きなので、批評家諸氏のご意見を待つ。ねむい。

 夜。誰もいない。夜の文学部はとっても怖い。初めて夜に来たときは、廊下の電気がつくことも知らなかったので(京大だから、廊下には電気なんてないのかと思っていた)、廊下の端にあかーいランプが一つだけついていて、非常に恐かった記憶がある。


9/21/96

 朝。ジャックは雲の上でぐっすり寝てしまう。昨夜はあれから江口さんが登場。Macのハードディスクの整理整頓をされていた。僕は3時ごろには寝てしまった。江口さんは6時すぎに帰られたようだ。起きたらなんと10時であった。熟睡である。

 昨日お金を下ろすのを忘れたので、現在の所持金は282円。ご飯を食べに行く前に忘れずにお金を下ろさねば。

 江口さんの茶髪についての書きなぐりを見る。しかしぼくの言いたいことは、義務教育である公立中学の校則には、刑法のような実質的な拘束力はないはずであり、校則を破った生徒に対して教師が取るべき手段は、生徒とその親の説得であるべきなのではないか、ということだ。あの教師のしたことは、ちょうど警察が捜査令状を持たずに勝手にぼくの家に押し入る、というようなことをするのとおんなじだ。え、暴論っ?もちろん、校則を破ること自体に積極的に賛成するわけではない。また、明らかに他者危害であるような行為は、生徒の親の同意がなくてもその行為について教師は生徒を拘束し得るし、そうあるべきであろう。あ、あ、ななんか学校が刑務所のように思えてきたっ。ちちち、ちくしょ。学校憎けりゃ教師まで憎いっ(逆か)。とととにかく、ぼくの問題にしているのは手続きの問題であるのであります。今回のあの教師は入学式直前とは言え、手続き違反だったのではないか、というのがぼくの主張であるのであります。茶髪はわるかなかっ。

 昼。鈴木さんがいらっしゃる。ベンサムの『序説』は、今日中にあと十七章を読んで、日・月で発表用の原稿を仕上げねばならない。まだ範囲が絞れてない感がする。ベンサムの刑罰の話をするのであれば、『序説』全体の説明をする必要があるからだ。やはり「法と倫理」という問題に焦点を当てて、なるべく余計なことは書かないほうがいいか・・・。(それでも説明しないといけないことは多い。)もうすぐバンドの練習だ。


9/24/96

 昼。きょう発表のレジメ作成が遅れたため、2コマ目をパス。3コマ目も、パス。順番が当たってる可能性があるんだけど。とにかく、レジメを作ったので、最善を尽くして発表をしたい。レジメは、またここに乗せることにする。幸運を(自分で)祈る。

 夜。終わった。発表が。虚脱感。あ。つ。か。れ。た。現在6:26pm。ここに居られるのは加藤先生。水谷先生。白水さん。中谷さん。鈴木さん。斎藤さん。つ。か。れ。た。みんな酒が入っているようだ。ぼくは酒を飲まない。

 どんな発表だったかというと、加藤教授がなかなか来られないので、加藤教授なしで始める。江口さんや奥野さんや鈴木さんから質問が相次ぐ。児玉は必死に応戦するが、いかんせん知識が足りなく、結局水谷助教授や江口さんに助けてもらう。そのうち足がすくみ・顔から汗が吹き出し・舌を出してあえぎつつ・遠のく意識を必死に呼び戻しながら、何とか終えた。加藤教授は終わる寸前にいらっしゃる。悲しい。時間がなかったので最後まで行かなかったが、最後に行くほど悲惨な内容になる構成だったので、ほっとする。わかりやすい、と行ってくれた方がいくにんかおられたので、ほっとする。ねむい。

 さらに夜。皆さんお帰りになって、静かになった。今は他に二人の方がいる。このままだと、帰れなくなるがどうしようかな。代理決定について考えるが、結論が出ない。さまざまな場合が想定されるので、詳しく分類する必要がある。

 真夜中。白水さんがいらっしゃって、きょうのレジメの、日本語がわかりにくいところを指摘され、御教授くださる。眠たくてしんどかったんだけど、誤訳も見つかり、大感謝。疲れた。映画が見たい。同回生奥田君のホームページができてる! 奥田君は、ヒュームの正義論で卒論を書くそうだ。来週演習の発表があるので、がんばって欲しいものである。ホホームページなんぞ作っている暇はないのである。まままましてや、絵なんぞホームページに載せてるとは、ゆゆゆゆるせん、てててて点滅するなぞ、ひひひひ卑怯だ、ワーンワーン。奥田君やり方教えてー。

 さらに真夜中。東一条沿いのセブン・イレブンに行ったら、顔は見た覚えがあるが・名前も・どこであったかも・自分とどういう関係を持つかも・覚えていない人に出会った。さらに驚くことに、あいさつをされてしまった。何か違う名前で呼ばれた気もしたが。とても気まずい。こんな経験は初めてである。どこであったんだっけ?聞けばよかった。「あのー、どこかでお会いした気がするんですけど、どちらさまでしたっけ。」こんなこと、よういわん。


9/25/96

 早朝。蚊に刺されて起きる。ささ、刺された。ち、ちきしょっ。今工事中の文学部の新館にできる・倫理学の研究室は8階になるらしいから、そこまでは蚊も上ってこれまい。早くできないかな。

 朝。加藤先生が7時すぎにこられる。ライオンズのIn the Interest of the Governedを読んでいたが、代理決定の分類についてに突然ひらめいたので、ホームページに書く。今から喫茶店に行って少年誌を読むことにする。ああ、優雅な学生生活。なお、茶髪問題についての発表は10/7/96に決まったので、読んでくださった方は是非それまでにご意見を承りたい。

 夕方。今日はほとんど何もしていない。脱力感。ちょっとした仕事を頼まれたので、5コマ目のヘーゲルの演習を聴きながらやることになりそうだ。

 さらに夕方。まだ仕事が終わらない。日記の部分を1ページ目から切り放す。

 夜の手前。OCRで本の読み込みの仕事をしていたら、終わる2・3ページ前でバグる。最悪。もうそろそろかえろっと。

 夜。腹減った。もう誰もいない。ほぼ5時間働いた。ああ、楽しい。さて、そろそろかえろっと。


9/27/96

 昼過ぎ。今年8月に扁桃炎にかかったとき、心電図を取ってもらったら、不整脈が出た。ので、今日京大の診療所で見てもらったら、「不完全右脚ブロック」という症状があるらしい。すぐ死ぬわけではないので放っておけとのこと。

 一昨日の夜、東一条で阪急河原町行きのバスを待っていると、変なおじさんが近寄ってきて、「大坂の者だけど、財布をなくして困っている。560円貸してもらえないか。」と早口でしゃべってきた。嘘かも知れないと思ったが、ホントだったらかわいそうな話だし、「情けは人のためならず」って言うし。と思って、1000円あげた。住所を聞いてきたが、怖いので言わなかった。あとでいろいろ邪推してみたが、ま、たとえ嘘だったとしても、560円に困っている人は気の毒だし、消費税や募金みたいに、ぼくが払ってもどこの誰が使うのかわからないような制度よりも、実際に困っている人に直接寄付した方がいいか、とか思ったりした。あなたならどうしますか?

 ビデオ鑑賞。イングリッド・バーグマン主演の『ガス灯』を見る。『ザ・インターネット』を思い出す。話の筋は見え見えだったが、最後の辺りの展開が良かった。バーグマンは『カサブランカ』の方がきれいだった気がする。フェリーニの映画も二本借りたが、これはまだ見ていない。

 昨日は新聞の切り抜きを一カ月分やった。テレビでやっていた『ガーディアン・エンジェル』とかいう映画を朝方まで見てしまい、おもっきり寝過ごした。

 夕方。今日は昼過ぎに起きるし、勉強は全然していないし、脳がとけそうだ。非常に混乱している。とりあえず、バンドの練習でストレスを発散しよう。

 夜。今ここには、加藤先生と蔵田さんと小林さんがいらっしゃられる。ぼくは今日は茶髪のレジメを完成させようと思う。もう一度新聞記事を読んで、江口さんをも論駁できるようなものを作ろう。それにしても、未成年の決定権についての問題はむつかしい。このことについて良い本を知っている方、メイルしてください。

 深夜。蔵田さんと喫茶店に行って、戻ってくると皆さん帰られて、白水さんがいらっしゃっている。関西倫理学会の仕事をしておられる。江口さんは来られないのだろうか。

 さらに深夜。丑三つ時まで白水さんと「茶髪論争」。いろいろな議論が出て参考になった。その後白水氏はお帰りになる。

 思うに、小・中・高の学年別輪切り教育が諸悪の根源である。中三なんか見ていると、知力・体力共に全然違う生徒がいる。なぜこんなにレベルの違う人間を「年が同じ(中には産まれた月の関係で、一年近く離れているやつもいるが)」という観点で輪切りにするのであろう?学年の枠などとっぱらってしまうべきだ。そうすれば自然に(ここで論理は飛躍する)茶髪がどうとかいう問題も消えるに違いない。そうに違いないのである。自民党もこういう意見を言えば一票入れるのだが


9/28/96

 早朝。今日もまた一日が始まった。おはようございます。二時間しかねていないが、元気に行こう。

 朝。研究室にあるOCRの比較をしていた。日本語に関しては、やはりWin Reader PlusよりもWin Reader Proの方が識字率が良い。「やはり」と書くのは、古いPlusの方がよいと信じている人が研究室には多いからである。英語に関しては、Omnipageの方がWin Reader Proよりも圧倒的に速い。識字率は同じくらいである。ただ、Omnipageは読み取ったページの傾きの調整機能がついていないのが欠点といえば欠点であり、逆にWin Reader Proには、パラグラフごとに改行マークをつけてくれる(つまりそれ以外の改行マークを省いてくれる)ブロック改行の機能があるのが利点である。何にせよ、日本語の識字率はもっと高くなって欲しい。特に、縦書きの本で英語が横倒しで現われるやつ(わかる?参考文献とかのあれ)、あれを読めるようになって欲しい。

 MicrosoftのAccessで「加藤研究室図書貸出ノート」を作ってみた。これからはこっちに書いてもらうようにする(江口さん、これで良いか見てくださーい)。断わっておくが、これは加藤先生の提案なのであり、ぼくの独断偏見専制横暴なのではない。それはともかく、未返却のものを今ずっと打ち込んでいたのだが、某氏と某氏の未返却の本の数が圧倒的に多い。が、本名を書くと、死なされる恐れがあるので、伏せておく。


9/30/96

 2コマ目の直前。自転車置き場の定期更新やら、阪急電車の定期更新やらで、財布が氷点下に近くなる。

 昨日フェリーニの8と1/2をビデオで観る。よーわからん。二時間苦しめられた。誰か教えて。

 2コマ目の応用倫理学は、中谷さんの発表で、賄賂の話。(ぼくが理解した限りでの)加藤先生のお話だと、賄賂がいけないのは、「賄賂はインサイダーの利益にはなるがアウトサイダーの不利益になるから」だそうである。ぼくは、新しく競争に参加する人(これもアウトサイダーだが)にとって不利益、というのが賄賂の一番の害悪だと思う。ちょうどいい比喩を思いついたが、高い木どうしが手を組んで、新しく成長しようとする木の発育を阻む、こんな感じですな。

 売春が倫理的に許されるかどうかについて議論する。ぼくは高校生の売春も法的に禁止するのは難しいと思うし、倫理的に禁止する理由もないのではないかと思う、と言ったら「お前は人非人だ」扱いされてしまった。 


Satoshi Kodama
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Last modified: Thu Sep 29 17:04:19 JST 2005