代理決定について

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第一回

 茶髪問題で、代理決定について少し議論したので、もう少し調べてみる。 加藤教授に勧められて、北沢恒人氏の紹介による「同意、代理、代理人同意」 G. Dworkin、『応用倫理学研究2』千葉大学教養部倫理学教室、1993年、を読 んで考えてみた。

 代理決定で問題となるのは、(1)決定権の委譲について本人の同意があるかないか、(2)代理決定をするものが、本人の欲するままに行動するか、それとも本人の最善の利益となるよう行動するか、である。そこで代理決定のパターンは次のように分類できる。

  1. 決定権の委譲についての本人の同意があり、かつ代理決定をするものが本人の最善の利益となるように行動する--信託人・受託者型(trust-trustee pattern)
  2. 決定権の委譲についての本人の同意があり、かつ代理決定をするものが本人の欲するままに行動する--本人・代理人型(principal-agent pattern)
  3. 決定権の委譲についての本人の同意がなく、かつ代理決定をするものが本人の最善の利益となるように行動する--被後見者・後見者型(ward-guardian pattern)
  4. 決定権の委譲についての本人の同意がなく、かつ代理決定をするものが本人の欲するままに行動する--これは今のところ思いつかない

具体例として

  1. 裁判に於ける依頼人と弁護士。E・バークの考える代議制民主主義。
  2. 遺書を書く本人とそれを遂行する弁護士。J・S・ミルの考える代議制民主主義。
  3. 精神障害者・ぼけ老人・幼児・アルコールや麻薬の中毒者。
  4. ちょっと考えつかない。

このうち、3.がパターナリズム(「優越的立場にあるものが、一人前でないもののために、あれこれ指示、命令をすること*注」)に当たると考えられる。

有効な同意とは何か、本人の最善の利益とは何か、については大いに考察の余地がある。が、これはまたにする。わからなくなってきたからである。(9/25/96)


例・イギリスの死刑廃止について

「イギリスでは、世論の動向はいぜん死刑存続に傾いていながら、「国会は国民の代弁者ではなく代表者である」といって点が強調され、国会が独自の動きを示し、死刑廃止法案を通過させたと聞いております。」
『刑罰の思想』平場安治編著、新有堂、1978年、p.67

これは明らかに1.のバーク的な発想である。(10/5/96)


Satoshi Kodama
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Last modified on 9/25/96
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