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こだまの世界

---倫理学者のふしぎな日記---
アンケートありがとうございました

97年10月前半号

10月前半の主な話題


ご意見のある方は、 kodama@socio.kyoto-u.ac.jpまたはメイルを 送るまで。


10/01/97(Wednesday/mercredi/Mittwoch)

・早朝・

・だあっ。夜中から朝まで寝てたっ。(それが普通か)


9月後半のページにindexを付けたり、科哲 のレポートに先生の評 価と反省を記入したり。


・お昼・

一周年記念アンケートの集計 らしきものをした。回答してくれた方々に感謝。まよわず成仏してください。 (うそ)


・昼下がり・

・3コマ目の倫理学概論に出た。早朝から起きていたせいか、途中意識が飛 ぶ。不覚。


10/02/97(Thursday/jeudi/Donnerstag)

・真夜中・

・ロック読書会、銭湯、夕ごはん、明日の読書会の準備、等などで今まで 忙しかった。ああ、眠い。朝が早かったもんなあ。(しかし昨日の午前中はホー ムページいじりでつぶれた)

・というわけで、もう下宿に戻って睡眠する。それにしてもだんだん寒く なって来たなあ。


・お昼前・

・朝、下宿のそばで子猫が死んでるのを見て、いきなりずどんとブルーズ。

・昨晩親猫と一緒に閉店後の定食屋の前で残飯を漁っていたのに。自転車 を降りて近寄ったらテケテケっと逃げ出して行ったのに。

・それが今では、自動車に曳かれて目をかっと開き、口を今にも叫びだす かのように大きく開けたまま、路肩に横たわり冷たくなっている。

・諸行無常。


・お昼・

・あ、昨日兄から掃除機を送ってもらいました。感謝。


・夜・

・かなり雨。濡れる。

・倫理学入門書読書会(「徳倫理」の巻その1)のあと、かんざ○さんとお○ だくんと夕食。

・『ぐるんとれーぐんぐ』、ようやく第二章を読み終える。もう一度読ん でから最後の章に進む。カントもなかなかやる。


ところで、どうも「deontology(義務論)」と いう言葉を作ったのって、ベンタムみたいなんだよね。現代の意味とはずいぶ ん違う意味で使ってるんだけど。

(ベンタムはこの語を「ontology(存在論--実際に存在する事柄についての 学問)」と「deontology(義務論--存在すべきものの学問)」という対義語の一 方として用いた--あ、ごめん、これ間違いです。deontologyはontologyの一部 門です。詳しくは『クレストメイシア』を参照のこと)

・また、ベンタムはもちろん「Utilitarianism(功利主義)」という言葉の 造語者でもある。

・他にも、internationalとか、maximise/minimiseとか、codificationと か、いっぱい作ってる。

・やっぱベンタムってこれだけでも偉いよなあ。ノーベル倫理学賞ものですっ。

・眠いので下宿へ退避。また。


10/03/97(Friday/vendredi/Freitag)

・夕方・

・今日はちゃんと朝から起きて学校に来てるんだけど、まだインターネッ トの糸が新研究室に辿りついてない、というか、LANっていうのかな、あれが まだちゃんと機能してないせいで、いまだに(Macとベースギターと『漂流教室』 しかないような)旧研究室に来ないとホームページを更新できない。

・というわけでそれが更新の頻度が少ない原因です。あしからず。


・夜・

・ベンタム読書会終わり。

しかし、なんで「ノーベル倫理学賞」ってないん でしょうね。「ノーベル平和賞」なんていうわけのわかんないものはあるのに。 物理学や経済学や文学は学問の部門だけど、「平和」ってのはなんだ一体っ。 「平和学」なんてものがあるのかっ。ないっ。「ノーベル平和賞」なんてもの は廃止して今すぐ「ノーベル倫理学賞」を創れっ。

・そいえば、海外のSFの大きな賞としては「ガーンズバック賞」と「ネビュ ラ賞」があると追弐君に聞いたが、倫理学にも(国内、国外に)そいうのあるの だろうか。知ってたら教えてください。



・定食屋で、ベースの友達と偶然会って、坂本竜馬の話をする。彼もその 店で『お〜い竜馬』を読んで深く感動し、司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読破 し、現在も司馬にはまっているのだそうだ。武田鉄矢おそるべし。

・ところで、先週の土曜日にバンドの仲間と飲み食いしていたとき、ぼく が『ぴあ』の背表紙に載っている女性を知らなかったので、大変馬鹿にされた。 なんでも「鶴田まゆ」とかいう芸能人らしい。あっ、いま笑ったなっ。わわわ、 わらうなっ。

(NHKどころか、最近はテレビ受信機そのものもほとんど見かけないので…)

ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェー デンの化学者、ノーベルさん(1833-1896)の遺志で始められた賞で、人類にもっ とも貢献した人に贈られる賞なんだって。

・現在、物理学・化学・生理学医学・平和・文学・経済 学の六部門で構成されているらしい。ううむ。もとからこの六つだったのだろ うか。

・平和に貢献しない過激な文学は賞をもらえない、という情報をいただい た。これからは平和な日記を目指そうっと。いつかこの日記にもノーベル賞が…。


・SFファンの人から、アメリカのSFの賞には他にもローカス賞やジョン・w・ キャンベル賞というメジャーな賞があるとメイルが来た。そいえば、追弐君も そんなことを言ってた気がします。

ところで、「よい翻訳」ってなんでしょう?今読ん でる『宇宙戦争』(創元社)は非常に読みにくい訳で、これなんか問題外なんだ けど、そしたら「読みやすい」という他にどういう条件が満たされれば「よい 翻訳」になるんだろうか。

・ああ、これってかなり難しい問題だからまた今度書く。

・今思うところを漠然と述べる。ぼくの理想としては、「読みやすい」 「翻訳者の解釈が一貫している」が第一かな。問題は、これが「誤訳がない」 とか「原文の雰囲気が伝わって来る」とか「作者の考えが正確に示されている」 とかいう一見自明の理想とどうぶつかるかです。

・もう一回言い換えておきます。ぼくが今無反省に考えるところでは、 「翻訳者があたかも透明になって原著者の意図をそのまま 伝えるなどというのは不可能であり、必ず翻訳者の解釈が入らざるを得ない」 ので、(だいぶ飛躍があるが)「それならば翻訳者は覚悟を決めて、自分の一貫 した解釈で、時にはわかりやすくパラフレーズしてもいいから、あたかも著者 になったつもりで訳す」というのがよいと思います。

・もちろん、翻訳する本の種類(文学、入門書、専門書)によっても訳の方 針は違うと思う。けど、基本的には上の考え方が好き。ショーペンハウエルか 何かを読んでこんな考え方になったんだっけ?ま、とにかくもう少し考えてか らまた書こう。

(ぼくは調子よく翻訳してるときは、「まるで著者が乗り移ったかのように」 感じて、すらすら訳ができるんですが、そういうのってありません?え、ただ のうぬぼれ?そのとーり)


10/05/97(Sunday/dimanche/Sonntag)

・夕方・

・これからバンドの練習。いそがし。


・夜・

・バンドの練習終わり。銭湯。

・昨日はロック読書会(次回は火曜、第2巻第16章冒頭から)、高槻の塾の代 講などで一日が終わる。


「和辻賞」っていうのは日本倫理学会の賞なんで すね。知りませんでした。

・あれ、われらが関西倫理学会にはなんにも賞がないのかな?やはり関倫に は、「ノーベル倫理学賞」とか、「トルネード賞」とか「ビッグバン賞」とか 威勢のいい名前の賞を付けてもらいたいものだ。「偉そうにしやがって日○倫 理学会め、関倫の方が歴史があるんだぞこのやろう賞」とかね。

(注:関西倫理学会の幹事は去年からうちの研究室がやっています)


・先日、ショーペンハウエルがどうとか書いたけど、 えらく勘違いしてたので訂正。ところで、最近は「ショーペンハウアー」って 表記するのかな?「はうあっ」っていうのは気合いが入りすぎてて、あんまり 好きじゃないんだけど…。

・翻訳の途中で原著者の説に改訂、加工を企てる翻訳者についてもここで 一言しておくべきである。彼らのこのふるまいをいつも私は無礼であると思っ ている。汝、非礼なる翻訳者よ、すべからく翻訳に価する書物を自らあらわし、 他人の著書の原形をそこなうなかれ。(『読書について』、岩波文庫、1960年、 p.32)

・これって「翻訳者は原著者と共同執筆者になったぐらいのつもりで訳す」 というぼくの考え方とはかなり異なってます。

・ま、このショーペンハウエルの文は、「偉大な古典的著作を、虫ケラの ような現代三文文筆家どもが、新書や解説書によってかえって改悪せんとして いる」という文脈で書かれたもので、才能のない翻訳者が翻訳をするのはよろ しくない、というのはいつでも正しいわけですが。

・それはともかく、この『読書について』は、読書のあるべき姿や痛烈な ジャーナリズム批判などを含んだ、ピリッとした辛辣な悪口がタイプの人には こたえられない作品です。訳も読みやすいので(斎藤忍随訳)、おひまな人は是 非お読みください。

・ついでにもう少し引用して終わる。

・最近の発言でありさえすれば、常により正しく、後から書かれたものな らば、いかなるものでも前に書かれたものを改善しており、いかなる変更も必 ず進歩であると信ずることほど大きな誤りはない。思索的頭脳の持ち主、正し い判断の持ち主、真剣に事柄を問題にする人々、すべてこの種の人々は例外に すぎないのであって、うごめく虫類こそ、いわば世間をひろく支配する法則と なっている。このような連中となると、例外的な人々が熟慮の結果試みた発言 をいつも素早く敏捷に改善しようとして、かってに改悪する。だから一つの問 題を研究するつもりならば、それを論じた新刊書にいち早く手をつけるのは控 えるべきである。(p.30)

・文学も日常生活と同じである。どこに向かっても、ただちに、どうにも しようのない人間のくずに行きあたる。彼らはいたるところに群をなして住ん でいて、何にでも寄りたかり、すべてを汚す。夏のはえのような連中である。 だから悪書の数には限りがなく、雑草のように文学の世界に生い茂っている。 (p.132)

・「反復は研究の母なり。」重要な書物はいかなるものでも、続けて二度 読むべきである。それというのも、二度目になると、その事柄のつながりがよ り良く理解されるし、すでに結論を知っているので、重要な発端の部分も正し く理解されるからである。さらにまた、二度目には当然最初とは違った気分で 読み、違った印象をうけるからである。つまり一つの対象を違った照明の中で 見るような体験をするからである。(p.138)


10/06/97(Monday/lundi/Montag)

・真夜中・

・う、もう月曜か。ベンタムMLでの読書会の要約を今夜中に作る予定だっ たんだけど、いろいろ本を読んでいるとすっかり遅くなってしまった。しかた ない。下宿に戻って寝て、また朝から続きをするか。

・しかし、修論までに読むべき本はいっぱいあるなあ。がんばらんといか んちゃ。


・お昼・

・う、寝すぎた。

・それにしても外は抜けるような青空で、なんだか気分が高揚する。今日 こそは洗濯すべきだった…。(そいえば昨夜は下宿の屋上から星がよく見えた)


・昼下がり・

・どひゃー。読書会の要約がまだできないよー。もうとっくに出してるべ きなのに。う、一回目から遅れるとは情けない。でももうちょっと待ってね。


・夕方・

・姫路文学館が主催している、「和辻哲郎文化賞」 というのもあるんだそうだ。が、こっちは一般部門と学術部門があって、学術 部門は哲学、倫理学、思想などの分野(「思想」ってなんだ?)で優れた著作物 に対して与えられる賞らしい。ううむ、どこ向いても和辻、和辻だな。和辻も なかなかがんばっとるな。

・あ、情報(諜報?)感謝。


・ああ、だめ、眠すぎる。一度下宿で寝てから続き(viz.読書会の要約)を します。ごめん。


・夜・

・新たな情報によると、うちの加藤も和辻哲郎文化賞を取っているらしい。 そいえばどこかで読んだような気がする。うんうん、加藤も結構がんばっとる な。

(注:加藤--加藤尚武。京大文学部倫理学科の教授)


・夜中・

・だあっ。もう夜中っ!!まずい、まずいったらまずい。明日の予習もしな くちゃいけないのに。


10/07/97(Tuesday/mardi/Dienstag)

・真夜中・

・わあああっ。火曜日になっちゃった。あっ、そこっ。そこの時計、スピー ド違反です。今すぐ止まりなさい。ついでにバックしなさい。(「一日を30時 間にしよう運動」署名募集中)


・やっぱりベンタムって天才だなあ、と思う。少なくとも普通ではない。

・7才でウェストミンスター校(イギリスの名門パブリックスクールの一つ) に入学して、12才でオックスフォード大学入学、16才で学士号取得。21才で弁 護士資格取得。

・それ以降は84才で死ぬまで恐ろしいほどの量の原稿を書いている。どの ぐらいの大きさか知らないが、ロンドン・ユニヴァーシティ・カレッジにはフォ リオページ6万枚分の未行刊の草稿が残っている。

・しかもそれが「だれかの論文を読んでまとめた文章」ではなく、有名な パノプティコン(機能的な刑務所の計画)を含め、ほとんど全部が立法や政府に 関する彼自身の独創的なアイディアなのだ。ほとんど基地外の領域である。ベ ンタム一番おそるべし。

(ぼくが今から毎日彼の草稿を読んでも死ぬまでに読み切れないのではない か、と思う)


・ふう、やっと読書会の担当部分の要約(あまり要約にならなかったが)が 終わった。さて、これから下宿に戻って寝よう。科哲とロック読書会の予習は 朝起きてから。え、やりますよ。やりますってば。信じてくださいよ。もお。 くどいなあ。やりますっ。やりますったらやりますっ。


・朝・

・くもり。急いで科哲の予習。♪急〜げっ、ベ〜ィビッ、走〜れっ、ベ〜ィビッ♪


・お昼・

・「サイバー…」って、きっともう古くさい言葉な んだろうけど、なかなかわけのわからないながらもかっこいいイメージがある。 とくに「サイバーパンク」。これは強力。いかす。

・辞書で調べると、1948年にNorbert Wienerが使った「サイバネティック スcybernetics」という言葉が「サイバー…」の起源のようだ。「サイバネティッ クス」とは、「人工頭脳研究。人間の制御機能と、それに代わる機械的・電子 工学的組織の研究」とある(小学館ランダムハウス)。そいえば、工学部の航空 工学にいる知合いがコンピュータを使ってそんなことをやってる、と聞いたよ うな気がする。

・「サイバーパンクcyberpunk」は、「コンピュータ・ネットワークが管理 する未来社会を描くサイエンス・フィクション分野」とある(同上)。

・「サイバースペースcyber-space」は、「コンピュータ・ネットワークが 張り巡らされた未来空間」とある(同上)。今はインターネットがサイバースペー スと呼ばれるみたいだから、この定義は古いのかも知れない。

・上の二つの語の共通項は「コンピュータ・ネットワーク」と「未来」である。

・「サイバーフィリアcyberphilia」は「コンピュータ狂」、「サイバーフォ ビアcyberphobia」は「コンピュータ恐怖」という意味(同上)。この「サイバー」 の意味はほとんど「コンピュータ」と同義なのであろう。「サイバネティック ス」の語源はギリシア語の「舵取りkybernet(es)」だそうなので、ずいぶん元 の意味からは変容している。「サイバー」も大変である。

・「コンピュータエシックス」は今いちインパクトがないので、これから は「サイバーエシックスcyber-ethics」と呼ぶことにしたらどうだろうか。い かす。

・「サイバーベンタム」ってのもいかす。ベンタムMLの名前をこれに変え よっかな(うそ)。

・「サイバー下宿」。むむ。ちょっとなあ。

・「サイバー生協」。だめ。

・「サイバージャズ」。む。よくわからん。

・というわけで、しばらく「サイバー」をいろいろな語の頭に付けて遊ぶ ことにする。

(追記)

・知らなかったが、「サイボーグcyborg」は、cyb(ernetic)+org(anism)か らできた言葉で、「人造(改造)人間」を意味し、「サイボットcybot」は、 cy(bernetic)+rob(ot)からできた言葉で、「(意志決定のできる)サイボット」 を意味するそうだ(同上)。ううむ。「サイバー」おそるべし(そればっか)。

・ところで、『サイボーグ009』に出て来る連中は人工頭脳じゃないから、 「サイボーグ」は必ずしも人工頭脳を持つとは限らないのだろうか。それとも 石ノ森章太郎(だっけ?)だけが違った用法で使っているのだろうか。

(追記2)

・今手元にある The Cambridge Dictionary of Philosophy によれば、cyberneticsという言葉は1947年に造語され、そ の語源のギリシア語は、英語ではhelmsman(舵手)と訳されるのだそうだ。最初 の説明は、「生物学的、物理学的、化学的動力組織体energy systemの操作と 誘導のための、情報の操作伝達に関する研究」とある(誤訳の恐れが多分にあ り)。ううむ。よくわからん。「歴史的には、サイバネティックスは情報(伝達) と計算computationに関する数学的理論と結びついていた」らしい。ううむ。 ちょっとわかって来たが、続きはまた今度(たぶん)。

・ある人から来たメイルによれば、「一般に人間に改造を加えたものをサ イボーグ、純然たる機械でありながら、人間に似せたものをアンドロイド、そ れ以外のものをロボットと呼んでいる」らしいので、サイボーグ009もキャシャー ンも問題ないとのこと(情報感謝)。しかし、とすると義足や補聴器などはどう なるのだろうか。ま、これもまた(たぶん)。


・夜・

・新館のLANがようやく貫通した(こういう言葉使いはしないか)。関係者の みなさま、ご苦労さまでした。やっと新研究室ですべての作業ができるように なった。


・kant、mill、bentham、全コンピュータが新研究室に。関倫の仕事のあと、 皆でお寿司。ごちそうさま。


・夜中・

・その後、疲れつつもいつもの三人でロック読書会。


10/08/97(Wendesday/mercredi/Mittwoch)

・昼下がり・

・三コマ目の倫理学概論(フィヒテの自我哲学…)に出てから、法学部の図 書館でウィリアム・ブラックストーンの『イングランド法注釈』という本を借 り出して一部コピーする。


・夜・

・ロック読書会など。かなり疲れる。体力ないなあ。


・関倫の手伝い。宛名貼り。

A「あ、この住所面白いですねえ」

B「ん?」

A「ほら、1111号室。すごくないですか」

B「ほんまや。なんやろねえ」

C「それ、11階の11号室じゃないですか」

A「ああ、そうか。それっぽいですねえ」

B「あ、なぁるほど。1階の111号室っていうのはちょっとすごいからねえ」

A「ま、まま、まさか111階の1号室では…」

C「そ、そんな建物は日本に存在しませんっ」


10/09/97(Thursday/jeudi/Donnerstag)

・朝・

・今朝は早くから起きて下宿で初めての洗濯を(ついに)実行。屋上で洗濯 ものを干してから部屋に戻ると、いろいろと洗濯し忘れていることに気付く。 ちくしょ。


・お昼過ぎ・

・倫理学入門書読書会の準備。いそげいそげ。(ちなみに次回は「権利」の巻)


・夕方・

・新研究室は活気がある。いや、ありすぎる…。


・下宿に急いで戻ってから洗濯ものを入れ、歯医者の予約に行く。来週月 曜日午前11時半から。

・現在、法学部で第二回総長団交が行なわれているようである。


・夜・

・倫理学入門書読書会終わり。再び関倫の手伝い。

・遅くなったが、今日は高槻に帰る。そのつもりだが、今からご飯を食べ に行くので、どうなるかわからない。


・真夜中・

・皆でく○たさんにおごってもらう。感謝。帰れなくなる。

・夕ごはんを食べに外に出た時には、まだ団交が続いていた。こういう風 に長びいたときに学校側は体調が悪くなったといって「医者」を呼んで来るの が定石らしい(ジェームズ・ブラウン殺法)。大変大変。


10/10/97(Friday/vendredi/Freitag)

・夜・

・朝起きて高槻に帰り、急いでまたこちらに戻って来て、ロック読書会&ベ ンタム読書会。疲れた。ので、下宿に戻ってとりあえず寝て来る。


10/11/97(Saturday/samedi/Sonnabend)

・そろそろ夜明け・

・子ミルの怨念のこもった論文を読んで寝たせいか、大変怖い夢で目が覚 めた。ので、変な時間に学校に来る。勉強。


・朝・

・そいえば、昨日は母が帰りに生八つ橋を買ったので、ついでにぼくも一 つ買って研究室に持って来て皆ではむはむと食べた。下宿の近くに聖護院八つ 橋総本店があるのにここで買ったのは初めて。近いとかえって行かないもので ある。目と鼻の先にある平安神宮にも、引っ越して来て以来まだ一度も行って いない…


・ううむ。また眠くなって来た。モーニング食べて下宿に戻って寝るか…。 (何してんだか)


・宵・

・久しぶりに○たいさんを拝見する。ずいぶんとお痩せになった観があっ た。

・その後、実哲研の版下作りを進める。タブを使わずにスペースでレイア ウトをする害悪を痛感。


・夜・

・ベンタムの勉強。ML読書会は大変勉強になる。

・では下宿に戻るとしよう。また明日。


10/12/97(Sunday/dimanche/Sonntag)

・朝・

・むむ、眠い。

研究室の窓から見える雲の流れを眼で追いつつ、 来週のバークマーケットのコンサー トに行ったときのことをつれづれと考える。

・ライブが始まる前に姉の夫と会えるはずなのだが、そのときに「演奏が んばってね」という内容が英語で言えないのではないかと今から心配になる。

・よく知られているように「がんばって」は翻訳にとても困る言葉で、じっ くり考えるとこの日本語にはほとんど内容がないのではないか、とつい思って しまう。こういう発想はおかしいのであろうが。

・そもそも「頑張る」は「眼張る」とも書き、もともとは「見張りをする」 とか「眼をつけておく、覚えておく」という意味であるらしい(違う語源説も あるようだが)。

・辞書にある意味の中では「困難に屈せず、努力し続ける」が日常的に使 う普通の意味にあたるのだろうが、「がんばってね」「がんばってください」 というのはもっと軽い気がする。「演奏がんばってね」は別に「演奏してると やじが飛んだりさじが飛んだりいろいろと大変だろうけど、困難に屈せず、努 力し続けてね」という意味ではない。

・そこで「演奏がんばってね」を言い換えてみようとすると、これがなか なかできない。この「がんばって」には実は何の意味もないのではないかと思 うゆえんである。

・言い換えとして「演奏を楽しんでね」というのが適当だろうか。それと も「演奏に気合いを入れてね」というのが適当だろうか。あるいは「緊張せず に自分の力を十分に発揮してね」だろうか。

・日本語を分析する力が足りないので「演奏を楽しんでね」と言い換える ことぐらいしかできないが、Have fun playing./Enjoy playing.ぐらいが妥当 なのであろうか。今一つ冴えない気がするが。


・夜・

・バンドのギターの奴(今年就職した)にGパンなどをもらう(たかる)。感謝。

・それからソウルバンドの練習。こんどライブをするらしいからきちんと 練習せねば。

・洗濯ものを干したままなので下宿に戻る。風が強かったので、シーツな どは飛ばされてるかも知れない。大変だ。


・真夜中・

・シーツは飛んでなかったが、枕カバーが飛んでいた…。幸い、屋上から は飛び出なかったので無事に枕と再会する。洗濯は奥が深い(今回はボールペ ンも洗濯してしまった)。


10/13/97(Monday/lundi/Montag)

・お昼・

・昨晩は3級の指導の下で実哲研の版下作り。ベンタムと子ミルのお話など。

・その後一人で晩ごはんを食べて、下宿に戻って SF などを読み、夜明け前に寝る。

・朝起きて歯医者に行く。大家さんが「ここは痛 くない」と勧められたので、熊野神社前のN歯科というところに診察の予約を 既に済ましていた。

・初めて歯医者でレントゲンを撮られる。歯垢も取られる。レントゲンを 見て初老の歯科医曰く、

「ああ、腐ってますねえ

・えええ、くくく、くさ、くさ、くさってるってなんなんですかあっ。歯っ てお肉やなんかのように腐るんですかあ?それがわかってたらちゃんとラップ して冷蔵庫に入れといたのにっ。

・どうやら、相当深く腐っているので、歯に穴を掘って 神経を抜き取る必要があるらしい。最悪。震える。しかも3460円も請求される。 次は今週の水曜日の4時40分から。憂鬱。

(歯医者は一般的に嫌いなのでこういう書き方になってしまったが、N歯科 は親切で良いところである。それに少なくとも今回はほとんど痛くなかった)


・夕方・

・哲閲でプラトン全集(倫理、L、543)の『ラケス』とベンタムの Chrestomathia を借り、 Philosophy (哲学、A、50)という雑誌(vol.33、1958年)に載っていた G. E. M. Anscombe, 'Modern Moral Philosophy' を借り出して生協でコピーする(古いのでカビが生えている)。ついでに新しい 歯ブラシも買う…。

・昨日書いた 「演奏がんばってね」 について、以下のようないくつかの提案をしてくれた方がいる。感謝。

  1. Hoping you have a good/nice concert.
  2. Wishing you a good/great/nice concert.
  3. I am excited about your concert.
  4. Have fun!

・このように「がんばってね」は、(意味がほとんど不明なくらい)非常に 広い範囲の意味で応援していることを指し示す言葉であると言えよう。困った。 2.にしておこうか。


10/14/97(Tuesday/mardi/Dienstag)

・真夜中・

・あ、月がピンク色。

・夕方少し眠るつもりが、真夜中まで寝てしまった。む。今から科哲など の予習。

・和英辞典を見ると「がんばれ」というのにHold outという訳がついていたりするが、これは「負けるな」という感じではない だろうか。そいえばCarole King様もそんな歌を歌ってたな…。

・♪Hold on, Yoko, Yoko hold on, it's gonna alright♪ってのもあるが、 これも「(苦境に)負けるな」って感じだと思う。ということは苦境に陥ってい る人に対して使うべきで、何も苦しんでない人に使うのはおかしいことになる かと思う。あ、ちなみに上の歌はヨハン・レンノン(John Lennon)君の歌です。

・SFファンの方、ありがとうございます。読みます、読みます。実はまだ 小松左京は一冊も読んでいないのです。これから読みます。(ぼくは一度もSF ブームというのを体験したことがないので。あ、中学の時の友達が菊池秀之読 んでたんでぼくも結構読んだか。星新一は小学生の頃からずっと好きだったけ ど、もちろん彼のはそれほどシリアスなSFではない)


・夜明け前・

・ん〜、あんまり勉強しなかったけど、もう帰って一度寝るか。アンスコ ムちゃんの論文やプラトン君の『ラケス』も読みたかったんだけどなあ。けど、 科哲の予習も終わってないし…。


・朝・

・急いで科哲の予習。非ユークリッド幾何学を空間(3次元)において視覚化 しようという話。われわれは平面(2次元)の歪んでいる様子を視覚化すること はできるが(たとえば球面)、空間の歪んでいる様子を視覚化することはできる のだろうか。う〜ん、SF。


・お昼・

・ニューヨーク在住の人によると、今回の状況では「 がんばれ」というのは次のように言うのだそうだ。

  1. Kick ass!
  2. Dig it!
  3. Don't disappoint us, OK?
  4. Have fun!

・ニューヨークのパンクバンドに対しては、上の三つが良いそうである。 いやはや。「ききき、きっくあすっ」「でぃでぃ、でぃぐいっとっ」「どど、 どんと、でぃすあぽいんたす、おーけえ?」


10/15/97(Wednesday/mercredi/Mittwoch)

・朝・

・う〜ん、よく寝た。

・昨日は4コマ目が終わってから、皆で関倫の準備作業を手伝い、そのあと、 学生たちは教授、助教授にしずしずと付き従って飲み食いに行った。ごちそう さま。

・夕食のあと、研究室に戻って来て、頼まれていた ヘーゲル研究会の ホームページ の仕事をやった。

・んで、下宿に戻ってプラトンの『ラケス』を読んで寝た。


・SFマガジン、読みたいんですけどねえ。けど雑誌買い続けるのって結構 めんどくさいし、喫茶店にも置いてないし…。


・お昼・

・『ラケス』をまとめるついでに、 こんなもの を書いてみた。ほんとにソクラテスってやな奴。


・お昼下がり・

・あ、そろそろ歯を磨いて歯医者行かなきゃ。あ〜、神経抜かれるのやだ なあ。ますます無神経って言われちゃうよ。


・宵・

歯医者。一時間近く待たされる。いざ椅子に座 ると、何かちゃかちゃかとして、歯を削らずにものの5分で終わる。

・今日は一体何をしたのかと思っていると、歯医者曰く、

「今日は神経を殺す薬を塗りました」

・えええっ、ししし、神経をここっ殺す薬?そんなものあるんですかっ。ぼ くの神経ここっ殺されちゃうんですかっ。それって他の細胞はこここ殺さない んですかっ?

・…とにかく次は月曜日の5時から。今度こそ麻酔をして歯を削るらしい。


Satoshi Kodama
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Last modified: Sun Oct 15 21:11:18 JST 2006