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こだまの世界

2000年1月中旬号

カントが生きているあいだ、 妹たちはずっとケーニヒスベルクに住んでいた。 ケーニヒスベルクは当時、わずか人口五万人の小さな街にすぎない。 それなのに、カントは結局、二五年以上ものあいだ、 妹たちの誰とも会わなかった。
たまりかねた一人がカントのもとを訪れると、 カントは相手が誰なのかすら、分からなかったという。 妹が名乗ると、今度は居合わせた人たちに、 妹の教養のなさを詫びたという。 カントがようやく手にした教授の地位を鼻にかけていたわけではない。 よく知られているように、カントは「馬鹿」に我慢ができなかったのである。 たとえ身内であっても、「馬鹿」は許せなかった。 ただそれだけなのだ。

---ポール・ストラザーン、『90分でわかるカント』、 浅見昇吾訳、青山出版社、1997年、18-9頁


1月中旬の主な話題


何か一言


11/Jan/2000 (Tuesday/mardi/Dienstag)

今日のニュース


今日のおわび

おわび: 本日は特筆すべきことがありません。 謹しんでおわびいたします。

おわび2: 何も書かないのももうしわけないので、 先日FMで聴いたおもしろいくどき文句をご紹介します。 適当にアレンジしてご利用ください。
「結婚するんだったらドラムのうまい人と料理のうまい人のどっちがいい? ちなみにぼくは両方ともうまいんだけどね」


何か一言


12/Jan/2000 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

今日のニュース


短編実存小説「試問にて」

場面は試問の最中。

修論提出者(論文を手に持って) 「……この論文分かるか」

試験官1(あきれ顔で) 「君の書いてることはさあっぱり分からんなあ」

修論提出者「こ、このニセモノめっ」
(と叫んで試験官1の首を刃物で切りつける)

試験官1、頚動脈から噴水のように血を流しながら椅子からくずれ落ちる。

試験官2、3「ひい」

修論提出者(試験官2、3に向き直って) 「……この論文分かるか」

試験官2、放尿する。試験官3、脱糞する。


(註) この小説は今日、 さるお方から伝え聞いたものにヒントをえて書かれたものです。 なお、この作品はフィクションであり、実在の個人、 団体、最近実際に起きた事件等にはいっさい関係ありません。


何か一言


13/Jan/2000 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

今日のニュース


何か一言


14/Jan/2000 (Friday/vendredi/Freitag)

今日のニュース


何か一言


15/Jan/2000 (Saturday/samedi/Sonnabend)

今日のニュース


オーストラリアについての知識が少し増えました!

昨夜、本屋さんで立読みして得た、オーストラリアに関する知識を以下に列挙します。


スケッチ2: アキレスと亀

「先生、ゼノンのパラドックスについてお訊きしたいことがあるんですが、 どうしてアキレスは亀を追い抜かせないのですか?」

「うむ。それはだね君、アキレスの足が遅かったからだよ」

「え、けどだって、 この話に出てくるアキレスは『もっとも足の速い人間』 を表わしているわけでしょう?」

「うむ。しかしだね君、アキレスだって調子が悪いときがあるだろう。 その、あれだ、アキレス腱が切れてしまっただとか。くくっ。くくくくく」

「先生、ひとりでウケてないで、本当のことを教えてくださいよ」

「うむ。実はだね、あれだ、 アキレスは亀ぐらいいつでも追い抜かせると思ったので木の下で寝そべって 昼寝をしてしまったのだ」

「それじゃ兎と亀の話じゃないですか」

「その通り。だから亀は木の下で眠るアキレスに向かってこう言ったんだそうだ。 『アキレス、お前もか』。くっ、くくくくく」

「それの何がおかしいのかまったくわかりませんよ。 ねえ、先生、本気で答えてくださいよ。 これ今度の院試で出るかもしれないんですから」

「うむ。それじゃあ本気で答えよう。 まずだね、君、アキレスが亀を追い抜くためには、 最初に亀に追いつかないといけないわけだろう」

「そりゃそうです」

「しかし、アキレスが亀がさっきまでいた場所に着いたときには、 すでに亀は少し先に進んでいるだろう」

「まあ、ほんのちょっとでしょうけど」

「ほんのちょっとかも知れないが、先に進んでいるだろう?」

「そうですね」

「すると、やっぱりアキレスは亀を追い抜くために、 まず亀に追い付かないといけないわけだ」

「なるほど。だんだんわかってきました。 それで再度アキレスが亀がさっきまでいた場所に着いたときには、 すでに亀は先に進んでしまっているわけですね」

「うむ、その通り。だからゼノンによれば結局アキレスは亀には追い付けないのだよ」

「じゃあ、ゼノンの言うことが正しければ、 日本は西洋に絶対に追い付けないことになり、 需要が供給を上まわるなんてこともないわけですね」

「うむ、その通りだ」

「すると、なぜマガジンの販売部数はジャンプのそれを上まわったんでしょうか?」

「うむ、それはだな、君、あれだ、よくは知らないが、 ジャンプの販売部数が下がったからではないのかね」

「あ、なるほど」


今日のおわび

おわび: 本日の「スケッチ2: アキレスと亀」 にはオチがありませんでしたドカーン。 おわびに爆発しますズドーン。 今日はこれでヒュルルルル終わりですチュドーン。


何か一言


16/Jan/2000 (Sunday/dimanche/Sonntag)

今日のニュース


今日の一冊: 小野田博一『論理的に話す方法』(日本実業出版社、1996年)

いわゆるクリティカル・シンキング(批判的に考える力を養う)もの。 この手の本はアカデミックなものよりもビジネスマン向けの方が よくできているんじゃないかと思う。 しばしばビジネスマン向けの方が、 読ませようという努力がより多くなされているから。

論理に対する読者の資質をチェックする「あなたの「論理的な発言の資質」は?」 というところ(21-2頁)がおもしろかったので引用する。 各自チェックしてもらいたい。

16の設問を用意してみました。 あなたの「論理的な発言の資質」がある程度わかると思います。 正直に答えてみてください。

  1. 議論に負けて意見を変えるのは、 自分の人格が否定されることであるかのように思える。(y/n)
  2. 議論の最中に、相手を侮辱する表現を使うことがある。(y/n)
  3. (省略)
  4. 論争の最中に冷静さを保っていられる。(y/n)
  5. 議論の際に相手が何をいったかを、第三者に要約して示すことができる。(y/n)
  6. (省略)
  7. (省略)
  8. ディベートは: (1)口論である (2)説得力を競う討論ゲームである
  9. 議論の際に根拠を捏造することがある。(y/n)
  10. 論戦を交わした相手と、その直後に(コーヒーでも飲みながら) 雑談ができますか? (y/n)
  11. 「定義」という語を議論の際によく使う。(y/n)
  12. 討論には、高圧的に出れば勝てる。(y/n)
  13. 「今の**さんの発言を聞いていて、不愉快に感じました」 ということがある。(y/n)
  14. 「言わなくても察してほしい」と誰かに対して思うことがある。(y/n)
  15. 「理屈はそうかもしれないが、世の中、それでは通らない」 ということがある。(y/n)
  16. 以上の各問の選択肢のいくつかには「どちらともいえない」 を置いてほしかった。(y/n)

個展のお知らせ

姉が個展をやるそうです。 ニューヨーク近辺にいる方はお立ち寄りください。


何か一言


17/Jan/2000 (Monday/lundi/Montag)

今日のニュース


kantの不調の原因がわかりました!

kant(倫理学研究室にあるIBMのDOS/V機)の調子が悪かったのは、 Aptiva Wareのラピッドレジューム機能および/またはスタンバイ機能のせいだ と思われます。 ただちにこれらの設定をOFFにしておきました。 これで一件落着だといいのですが…。

その後、kantをもう少しいじってみました。 スタートアップの不要そうなものを消し、 SCSIコントローラのリソース設定を自動にしたら、 マイクで録音したときにハングアップする問題が解消したようです。 なぜうまく行ったのかよくわかりませんが、とにかくよかったよかった。


スケッチ3: 実社会の論理

場所: どこにでもある居酒屋
登場人物: 酔っ払った男女二人

「…かわいい女性っていいよなあ」

「ちょっと何よ何よ何よ。 それって何、わたしみたいにかわいくない女性はよくないっていう意味?」

「おいおい、だれも君がかわいくないとか、 かわいくない女性がよくないなんて言ってないじゃないか」

「い〜え、言いました。言ったわよ。 今、かわいい女性はいいって言ったじゃないの」

「いや、ほら、君勉強しなかった? 『かわいい女性はいい』っていうのは、別に、 『かわいくない女性はよくない』っていう意味じゃないんだよ、 ほら、論理的にさ」

「な、な、何がロロロ論理的よ。きい。 ちょ、ちょっと自分が大学に行ったからって偉そうにして。 何よ何よ何よ。バカにするんじゃないわよ。 論理も何も、あんた、今、かわいい女性はいいって言ったでしょっ。 『かわいい女性はいい』って言えば、『かわいくない女性はよくない』 ってことじゃないのっ」

[「論理的な発言の資質」4. 論争の最中に冷静さを保っていられる。(y/n)]

「ち、ちがうんだってば。落ちつけよ。 おれは『かわいくない女性はよくない』なんて言ってないし、 ましてや君がかわいくないなんて一言も言ってないじゃないか」

「あ。あ。しっしっし、しらばっくれてるこの人。 くっ、くくくやしい。 何よ何よ、ひとのことをバカにしておきながらその態度は。 ちょ、ちょっと大学出たからって。ちょっと大学出たからって。 大学なんかに行ってもそんな性格じゃ実社会では生きていけないわよ。 お、覚えてらっしゃい。ええ、ええ、今に見てらっしゃい。 女をバカにしたらどうなるか、思い知らせてやるから」

「わあ。悪かった。すまん。すいません。 おれが悪かった。許してください」

「な、何よ。急に態度を変えて。 あたしはそんな謝り方じゃ許さないわよ。 あやまるんならちゃんと謝りなさいよ」

「ごめんなさい。さっきの発言は取り消しますから許してください」

「ふん。だったらいいのよ。 あなたがあたしをだまそうとして論理なんて言葉を持ち出すから悪いのよ。 あたしはそんな言葉じゃだまされませんからね」

[「論理的な発言の資質」10. 論戦を交わした相手と、 その直後に(コーヒーでも飲みながら)雑談ができますか? (y/n)]


(註) このスケッチはフィクションであり、実在の個人、 団体等にはいっさい関係ありません。 なお、 このスケッチ中のいかなる命題またはその組み合わせによっても、 「一般に男性に比べて女性は論理に弱い」、 「とくにかわいくない女性はそうである」、 「このスケッチの作者は性差別主義者である」 等の命題を論理的に導き出すことはできません。 ご注意ください。


何か一言


18/Jan/2000 (Tuesday/mardi/Dienstag)

今日のおわび

おわび: 多忙のため本日はお休みさせていただきます。 謹しんでおわびもうしあげます。 なお、今週号のモーニングには『えの素』が掲載される予定ですので、 楽しみにしてお待ちください。


何か一言


19/Jan/2000 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

今日のニュース


ブ○ティッシュカウンシル体験記

前号までのあらすじ: 先日、主人公が京都のブ○ティッシュカウンシルで面接を受けたところ、 大阪のブ○ティッシュカウンシルで授業を受けるように命じられてしまう…。

(テロップ) 梅田の某ビルの15階にあるブ○ティッシュカウンシル。
そこは日本人と英国人との出会いの場…。
http://www.bcenglish.japan.co.jp

受付で入学金とテキスト代を払い、教室へ。 生徒は男4人、女6人の10人。 そのうちの半分くらいは この授業をすでに一、二度受けているようだ。 年配の人が多く、 おれと同い年ぐらいなのは女性二人だけ。 先生は背の高い男性で、 ニュージーランド人らしい。 名前は聞き取れなかった。

今回の授業は、 スピーキング、ライティング、リスニングの練習。 参考(と記録)のために授業の内容を簡単に記しておこう。

まず、 IELTSのスピーキング(要するに一対一の面接みたいなもの)のビデオを見たあと、 生徒たちでペアを組んで練習。

スピーキングのポイント: 試験官は、 最初はイエス、ノーで答えられる問いや、 事実に関する問いをしてくるが、 だんだん意見や議論を求める問いをしてくるのでそのつもりで。

次にライティングの練習。 「1980-85年のフランス、英国、米国、日本の失業率のグラフを見て レポートを書け」という課題。 しかし、設問のところには「英国と米国と日本についてレポートを書け」 としか書いていなかったので、 フランスについて書くと減点されるのであった。 うっ、見事にひっかかってしまった:-)

休憩をはさんで、 リスニングの練習。 ここまでですでに疲弊していたのであまり集中できず。

最後に、今回の宿題になるライティングの課題について少しだけ検討。 課題は、 「愛を定義せよ。 どのような要因によって愛情のある関係がもたらされうるか」というもの。 いやはや、英語でやるからいいものの、 これを日本語でやると完全に人格改造セミナーだ。

ライティングのポイント: イントロは、

  1. トピックに関する一般的命題、
  2. 1.よりも具体的な命題 [この部分は省略可]、
  3. これから論じるテーゼ(主張)について宣言
というふうにするのが望ましいらしい。 たとえば、 「一口に愛といっても家族の愛、恋人の愛、友人の愛などがあるので、 愛を定義するのは困難である。 しかし、それらのさまざまな愛にも、 …というある共通の要素が見られることもたしかである。 以下では、特に恋人の愛について定義し、 どのような要因が恋人同士の愛情のある関係を もたらしうるかについて考察する」など。

今回の宿題は、このライティングをやることと、 短かい新聞記事を読むことと、 テキストのイントロを読むことと、 今日のリスニングの書き起こし(tapescript)を読むことの四つ。

感想: なかなか勉強になりました。 毎週大阪まで行って3時間も勉強するのは大変ですが、 がんばって続けたいと思います。

反省点: せっかく高いお金を払って参加しているのだから、 これからはもう少し積極的な発言をしようと思います。


めっちゃ

[副詞] 程度がはなはだしい様子。とても。すごく。 めちゃ。めちゃくちゃ。めちゃめちゃ。むちゃむちゃ。超〜(俗語)。
(例文)「君の部屋、めっちゃ汚ないなあ」

[語源] 「めちゃ」からの派生であると思われる。 「めちゃ(目茶)」は「くちゃ(苦茶)」と「むちゃ(無茶)」と共に、 中国の三大高級茶の名前である。

[備考] 同様な意味を表わす語に「めっさ」「むっさ」などがあるが、 これらはそれぞれ「めっちゃ」「むっちゃ」が退化した形態であるから、 中流階級以上の人間は用いるべきではない。 たとえば、 「めっちゃかわいい」と「むっさかわいい」という表現を比べてみると、 「むっさ」を声に出したときの響きが 「めっちゃ」に劣ることが容易に理解されよう。


今日のおわび

おわび: 本日の「めっちゃ」の項目の語源に関する部分において、 表記に誤りがありました。以下のように訂正します。 謹しんでおわびもうしあげます。

誤: 「めちゃ(目茶)」は「くちゃ(苦茶)」と「むちゃ(無茶)」と共に、 中国の三大高級茶の名前である。
正: 「めちゃ」は「むちゃ」が変形したものだと考えられる。

おわび2: 本日の「めっちゃ」の項目の[備考]欄において、 編集者の私的かつ独断的かつ差別的と判断されかねない意見が述べられていました。 この記述を読んで感情を害された方におわびをもうしあげます。 なお、この記事を書いた編集者はすでにその一族郎党ともどもさらし首にされ、 編集長は責任をとってさきほど切腹しました。 今後このようなことが二度とないように努力したいと思います。 (新編集長記す)


何か一言


20/Jan/2000 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

今日のニュース


スケッチ4: 愛についての対話

場所: 某氏の精神の中にある編集室
登場人物: 編集長、編集者

「ちょっとちょっと、ムーアくん、こっち来たまえ」

「はいはい」

「君ねえ。こないだの記事、あれなに?」

「え、こないだの記事といいますと?」

「あれだよ、あの『愛を定義せよ。 どのような要因によって愛情のある関係がもたらされうるか』 というテーマについての君のレポート」

「ああ、あれですか。あれがどうかしたんですか」

「どうかしたんですかじゃないよ。 君の記事を読んだら、愛についてほとんど書かずに、 定義の意味についてばっかり書いてるじゃないの」

「それはですね、あの、定義といっても三つ意味があって、 一つには『私がある語を用いるときは、 諸君は私がこれこれのことについて語っていると理解しなければならない』 という任意な言葉の定義と…」

「いや、それはもう読ませてもらったよ。 だけど、そんなこと書けって言ってるわけじゃないでしょ。 『愛を定義せよ』って書いてるんだから、設問に沿って答えないと」

「ええ、だから愛について書いてあるじゃないですか、最後のところに。ほらここ」

「これでしょ、『もし私が『愛とは何か』 と問われたならば私の答えは、愛は愛であり、それでお終いである。 あるいはもし私が『愛はいかに定義されうるか』と問われたならば、 私の答えは、それは定義されえない、 そしてそれについて私が言わねばならないこと はこれだけである、ということである』。 …き、君ねえ、 こんなのでブ○ティッシュカウンシルの先生がいい点数くれると思ってるの?」

「いや、だって、ほら、やっぱり愛も単純観念だから…」

「やかまし。一からやりなおしっ」


何か一言

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KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Apr 21 22:01:49 2000