小坂さん、あれ読みました?
僕は、この前、読みましたよ。
そうそう宮本輝の「花の回廊?流転の海〈第5部〉」です。
僕は、文庫本になってからしか買わないんで、読んだのはついこの間ですが、ハードカバーは2007年に出ていたので、もしかすると小坂さん読まれたかなあと思って・・・。
あれは、何年前のことだったでしょう。理事会が終わって京阪電車を待っていたときでしたか、小坂さんと話していると、どういうわけか本の話になりました。私は、通勤の時に本を読むくらいで〜だから文庫本とか新書が必然的にメインとなる〜熱心な読書家ではありませんが、
「宮本輝なんかどうですか?」と言うと、「一回読んでみるわ」と言われていました。
宮本輝というとコーヒーのCMで有名(と言ってもそれも随分前の話)ですが、それ以前のもっと知名度が低かったころから私のお気に入りの作家でした。でも、小坂さんに勧めた当時、発売された文庫本はわたくし的には“はずれ”が多く、宮本輝もスランプかなぁ〜?と思っていて、そのことも小坂さんには伝えました。
でも、それからしばらくして会ったときに、小坂さんが「宮本輝、面白かったわ」と言ってくれました。よく聞くと私が「はずれ」と思っていたものだったんですが、「また宮本輝いろいろ読んでみるわ」と言われていました。
その後、小坂さんは京臨技の理事を辞され、本の話をする機会もなくなってしまいました。今から思えば、小坂さんはどんな作家の本を読まれていたんだろう?もっと本の話を作家の話をいろいろしておけばよかったと悔やまれます。
小坂さん、僕はここ数年、はまっているのがあります。
ある日、本屋で文庫本をあさっていると「楠木正成 北方謙三」というのが目に入ってきました。北方謙三ってあのハードボイルドの? なんで楠木正成なん? と不思議さのあまり買って読んでみると、これが実におもしろい! その後も、佐々木道誉を描いた「道誉なり」、赤松円心を描いた「悪党の裔」、北畠顕家を描いた「破軍の星」を読みました。ようするに太平記ものですが、さすがハードボイルドの巨匠(といっても北方謙三のハードボイルドは読んだことない)だけあって、どれもぐいぐい引き込まれて行きました。
もうひとつは、これも本屋で「古代史紀行 宮脇俊三」というのを見つけ、宮脇俊三? もしかしたら、あの元祖鉄道おたくの? そう言えば前になんか読んだことあったなぁと思って、またまた買って読んでみるとこれまたおもしろい! ただの鉄道おたくではない。年代順いわば歴史年表に基づいて日本を旅するのであるが、大変非合理的でそれがいい。また、氏のあふれ出る教養と鉄道オタッキーの知識がちょろっと出てくる楽しい紀行文です。
「平安鎌倉史紀行」「室町戦国史紀行」も当然読みました。鎌倉時代と戦国時代はともかく、古代から室町時代だと舞台は近畿、京都がしょっちゅう出てきて、
「えっ、そんなとこにそんなもんあったかなぁ?」とか「今度行ってみよう」とか特に京都人にはお薦めです。
一連の作品を読んでいてひとつ残念だったのは氏がすでにご他界されていたことでした。小坂さん、宮脇俊三は何か読まれましたか? もし、そちらで宮脇さんに会われたら是非ともよろしくお伝え下さい!
(小坂 明 氏: 2009年11月没、元京都府臨床検査技師会顧問) |