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「稲作日記 2007年・秋」 京都大学医学部附属病院 白波瀬 浩幸

 9月に入っても気温が30度を超える日が続く、暑い今年の秋。稲はそれなりに育って、収穫の時期を迎えました。この時期になると、農家の人は台風で稲が倒れたり、イノシシによる倒伏の被害を嫌って、毎日気が気ではありません。稲が倒れると収穫量が減るのはもちろんのこと、そのまま放置すると倒れた稲が発芽しかける ⇒ デンプンが消費される ⇒ コメの甘みが少なくなるの図式で、大いに困るのです。

 

稲刈り1週間前.手前の方の出来がイマイチ

 僕が住んでいる地域は山間部にあるため、稲穂が実りだす夏の日中と夜間の温度差が大きいので、わりとおいしいおコメが採れます。これは、日中は気温と照度が適度にありデンプンの合成量が多い。夜間は気温が下がり、稲の呼吸量が少なくなるので消耗されるデンプンが少ない。つまり、合成量が多く消費量が少ないので籾の中に蓄積されるデンプンが多くなるということです。また、水も大切です。近くの山 ⇒ 小川 ⇒ 台頭川 ⇒ 川合川 ⇒ 土師川 ⇒ 由良川 ⇒ 日本海へと続く水系の中で、台頭川から水を引いていますから、生活用水のまじりっけが少ない上流のきれいな水を使って栽培できるという訳です。

 

稲刈りの様子.刈り取った籾は軽トラックで運んで乾燥・籾摺りへ

 栽培環境は申し分ないのですが、ボクの栽培技術がイマイチ(手間をかけなさ過ぎともいいます)。それならば、栽培品種を「コシヒカリ」に、といきたいところですが、「コシヒカリ」は稲の背が高くなるうえに水の管理をきちんとしなければ足元が弱るため、倒れやすくなります。そこで有名ブランド米はあきらめて、「どんとこい」という品種にしています。登録品種データベースによると、『稈長が短,耐倒伏性が強く,穂いもち及び葉いもち圃場抵抗性がやや強い良食味の水稲,粳種である』となっているので、そんなに味が落ちる訳ではないと思います。

 

イノシシが倒した稲

 春から田んぼを耕して、水を入れて、代かき、田植え、中干しを経て、ようやく収穫の時期となるのですが、今年はイノシシに結構ヤラレマシタ。田んぼの周囲には、電気柵をめぐらせて防戦するのですが、敵もなかなかヤルもので、わずかな隙をついて侵入します。ちなみに、鹿は柔らかい水稲苗を好み、イノシシは実り始めたお米を、そして、サルはモチ米を好むらしいのです。

 

イノシシの足跡

  稲刈りは、地元の農家組合にお願いしています。稲刈りと乾燥、籾摺りをまとめてやってくれて、玄米にして袋詰めしてくれます。乾燥作業で刈り取り後に20数%である水分を13-15%まで減らします。田植え以降、時折他所さまの田んぼの出来具合と比較して、その出来の悪さに憂いていたのですが、最終的に得られた収穫は玄米が30Kg袋に20袋あまり。これは、カメムシ被害で悲惨だった昨年をわずかに越えたので、敢闘賞モノかもしれません。

 収穫を感謝して、田の神様を山へ送る行事として、各地で秋祭りが行われます。確かに稲の収穫最終日を無事終えると安堵感と同時に感謝の念も沸いてきます。『祭りだ!酒だ!』と大勢で盛り上がりたくなるキモチ、日本が農耕社会だった古代の人々と共有できそうです。

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