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「医療はサッカーだ!」 市立舞鶴市民病院 白波瀬 浩幸

「医療はサッカーだ!」
これは、25億円の累積赤字を抱えていた坂出市立病院を立て直した“再建の達人”である塩谷泰一先生(徳島県病院事業管理者)の講演で印象に残った言葉である。
野球は攻める人、守る人がはっきり分かれているが、サッカーではフォワードの選手(攻める選手)でも状況によってはディフェンスに回る場合がある。逆にディフェンダー(守る選手)でも、チャンスボールがきたらシュートを放つことがある。
医療の世界でも、資格で仕事をしているからといって「他の仕事はお構いなし」では、病院はうまく回らない。職種間の隙間は誰かがカバーし、隙間のない組織にしなければ病院は円滑に機能しないということである。

 今、臨床検査技師は臨床微生物、輸血、細胞診、血液検査等々で専門の認定制度があり、専門臨床検査技師として医療に貢献している。自分の興味のある分野や与えられた分野で専門性を深く探求することは、自己研鑚に繋がりとても重要なことである。しかし、この専門資格が攻める人と守る人の明確な守備範囲を作ってしまったのでは本末転倒となる。
一方、病院勤務の臨床検査技師はチーム医療へ参画して、「検査室に閉じこもった臨床検査技師」から「顔の見える臨床検査技師」へ変わりつつある。正確には、変わらなければいけない。
他職種とコミュニケーションして、自分の専門性を生かすためには、“臨床”を知る検査技師である必要がある。また、他職種と接する機会が増えると、臨床検査に関するいろんな問い合わせや相談の機会も増え、その時々に的を射た回答をすることも大事である。
臨床検査の質問に対して「専門外なので、わかりません」という返事をしていては、他職種から『臨床検査の専門家じゃないの?』と疑心暗鬼の目で見られかねず、チーム医療の場で専門家としての面目は丸つぶれである。
チーム医療に参画するためにも、Specialistでありながら、臨床検査全般にしっかりとした幅広い知識と技能をもったall-rounderでなければならない。
臨床検査技師の活躍の場も広がり、立場によって考え方も変わってくる。しかし、自分の得意なspecialityをもつall-rounderは、必ず活躍の場が増えるであろう。
医療制度改革によって医療費抑制が着々と進む先行き不透明な時代だからこそ、Specialist とall-rounderを兼ね備えた臨床検査技師を目指すことをお勧めしたい。
そして、フィールドを広く駆け巡るフットワークのよい選手として自分自身を鍛えることが未来に繋がると信じる。

(会報JAMT(VOICE)掲載分)

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