今から13年前、新聞掲載の役者オーデションに母親が申し込んだのがきっかけで今の自分が成り立っているような気がする。当時の私は舞台役者というものがどういうものかはまったく興味なく、アニメの影響で声優を目指していた。今でも忘れもしないことが、「声優になるための学校に行きたい」と言った私に、「そこの専門学校に入るには英語が必要だから今はまだ無理」と言った母親。あっさり母親の嘘に騙され納得してしまい、忘れかけた小学6年生のときに、突如母親からオーディションの話を持ち出されたのである。
当然、今までオーディションを受けたこともなければ、それに対する練習もしていない自分が果たしてできるのであろうかと子供ながらに不安を覚えたが、目立ちたい性格もあり受けることに。オーディションは奇跡的に合格し、一年間役者として公演に出演した。それから人前で演じる難しさと楽しさを知っていくことになる。
その後、他のことにも没頭することになり大学2回生まで舞台をすることはなかった。(他のことについてはまた次回機会があれば書かせていただきたい)大学で活動していた小さな劇団があり、その公演を見に行ったことでまた役者をやりたい衝動に駆られ、気付けば劇団のBOXを訪れていた自分。そして、入団し座長を務めながら役者生活を3年間行った。3人しか役者が出ない2時間の舞台で、主役をした時には教科書の厚さぐらいの台本を必死に覚えたりした。本番というものはハプニングがつきもので、相方がセリフをとばし大事なセリフが抜けた場合は周囲の役者が話の展開を進めるためにセリフを変えて話題をもっていく。いわゆるアドリブであるが、あれほど怖いものはない。舞台装置が途中で壊れたり、小道具が本番中に無くなったり、舞台から転落したり・・・。しかし、そういう経験があったせいかあまり緊張感や不安感を表に出さないようになった。ここまでなぜ舞台が魅力的なのかと考えた時期があり、それは舞台であるがゆえに自分とまったく違う人を演じることができるからであるという結論に達した。舞台の上では、現実的であろうと非現実的であろうとまかり通るのである。見ている人に何かを伝えることができるのが舞台である。今は他の趣味が忙しくてなかなか舞台に復帰することはできないが、いつかまた脚本を書いて大舞台に立ちたいとひそかに思っている。 |