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「少年野球」 京都府立医科大学附属病院 小森敏明

 私の息子(小学校5年生)が地域の少年野球チームに入っている。キャプテンでピッチャーをしている。知らない人はこれを聞いただけで「息子は野球が上手いのではないか」と思ってしまう。でも、それは大きな勘違い。キャプテンは学年で入部したのが一番早かったからで、ピッチャーはエースが腕をケガしたからである。

そもそも、私自身が小学校の時は、野球をほとんどやらなかった。小学生の時に親に買ってもらったグローブは、30年後でもまだ綺麗である。もちろんプロ野球にもあまり興味はなく、阪神が優勝したときも狂乱することはなかった。社会人になってから、職場で野球をする機会は幾度かあった。打撃は内野ゴロが精々で、守備では内野はゴロが捕れないから全くだめ、外野ではフライは飛んでくるなと願うばかりであった。息子が生まれてからも、キャッチボールはあまりしなかった。

なぜこんな環境で、息子は少年野球チームに入ったのだろう。息子が小学校2年生の時に町内対抗ソフトボール大会があり、人数調整のために息子がメンバーに加わった。補欠であったが、たまたま代打で出たときに、ヒットになった。チーム成績は3位で銅メダルをもらい、うれしそうに帰ってきた。息子は興奮して自分の活躍を話していた(チームの勝利には何の関係もなかったみたいであったが…)。これで息子は「自分は野球の才能がある。」と大きな勘違いをし、「野球をする。」と言い出した。「子供が地域の野球チームに入ると、親はいろいろと大変ですよ。」と周りから聞いていたので、息子には、小学校の野球クラブ活動だけにしてくれと思っていたのだが、駄目であった。

野球チームに入ってからは、予想どおり、親には、お茶当番・車当番・グランド整備・荷物の出し入れ・試合の塁審などの割り当てがあった。特に塁審は、自分自身が野球をほとんど知らないので、立ち位置からしてわからない。走者がどこにいて、どのアウトカウントの時には、ベースのどこに立つのかを一つずつ図に書いて覚えた。そこでゲージ(ストライクやボール、アウト、得点をカウントする手のひらに収まる道具)も初めて使った。昨年は保護者の代表にもなってしまった(もちろん自分の希望ではない)。監督やコーチとの連絡係や保護者間の調整役、チーム行事の企画などたくさんの仕事があった。休みはほとんど野球でつぶれ、からだはくたくたになった。

でも、ひとつ発見があった。それは、息子の真剣な顔を見ることができたことである。学校から帰ってきても宿題はいつも後回し。すぐに友達と遊びに行くか、家にいるときはテレビゲームをしているか漫画を読んでいる。少なくとも私が小学生の時はこんなのではなかったと思っている(周りからは、父親に似たのだと言われる)。家庭ではいつもへらへらと過ごしている。朝起こしてもなかなか起きてこない。こんな息子でも、野球チームの早朝練習の時はなぜかシャキッと起きて、自分で勝手に朝ご飯を食べ、練習に出かける。試合の時には他のチームメイトと声を掛け合って真剣な目つきになっている。監督やコーチの注意も真面目に聞いている様に見える。息子のこんな表情は家庭で見たことがない。

昨年は、試合で多くの点数を取られて負けが多かったが、今年は練習の成果を発揮してくれることを願っている。私も、もう一年、保護者としてがんばってみようと思う。

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