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「オーディオからホームシアターへ」 北里大塚バイオメディカルアッセイ研究所 繻エ正明

 1980年代後半から1990年代まで、アナログからデジタルへの進歩が急速に進んだ時代であった。つまりコンピュータの性能アップが根底にある。音楽鑑賞の環境も、この恩恵を受け、レコードからCDディスクへ変貌したことは言うまでもない。

私の中学生時代には、オーディオ界はこぞって『原音再生』を目指していた。アンプ、スピーカーは、それぞれ100万円以上の高額な投資を必要とし、再生メディアは、レコードではなくオープン・リール(サンパチと呼ばれたもの)を使うことで、原音に近い音を得られることができた。しかし、スピーカーから出る音は原音に近くなってもすっきりしない。そう、臨場感がないことに皆は気が付き始めた。そこで開発されたのは、『CD-4』2チャンネルステレオから4チャンネルステレオである。4つのスピーカーから独立した音楽ソースを再生することにより、臨場感を出す手法でコンサートホールにいる気分で音楽が楽しめた。

その頃学生であった私は、大金を持っているはずがなく、安価なシステムコンポに自作のスピーカーで音楽鑑賞をいそしんでいた。長岡鉄夫氏の本を買い、スーパー・ウーハを自作した経験もある。ショールーム等に良い音を聞きに出かけたりもした。今でも覚えているが、オンキョーのM6、ヤマハのNS-1000のスピーカーが好きであった。

デジタルの時代に入り、『原音再生』という言葉は死語になってしまった。CDメディアには、超低音、超高音(人の耳では聞こえない音域)はカットされてしまい、またシンセサイザー等の電気楽器が増え、原音という意味合いが固定できなくなってしまった。また、日本の住宅事情では、4つの大きなスピーカーを置く場所がなく、世間は、ミニコンポへと選択していった。

2000年になると、DVDが世に出てきたと同時に、5.1チャンネルホームシアターと言葉を聞くようになる。前方に3つのスピーカーと後方に2つのスピ−カ−、低音を出力するサブ・ウーハーを設置し、映画館で見ているような臨場感でDVDソフトを家庭で鑑賞できる優れものである。往年の夢であった4チャンネルステレオが実現できるのでは?。システムを構築するのは、容易であった。DVDプレーヤーは高性能でも安く手に入り、AVアンプも1チャンネルあたり100W以上出力があるものがローエンドクラスになっている。DVDプレーヤーとAVアンプを一本の光ケーブルで繋ぐだけで、AVアンプ側で5.1チャンネルにデコードしてくれる。スピーカーは学生時代に使っていたNS-10と足らない分は買い足した。おまけに、家内を口説いて薄型テレビを購入し、我が家のリビング壁中央にテレビをセット、その両脇と背面にスピーカーを左右・前後対称の位置に備えることができた。我が家のホームシアターが完成した。

仕事で遅くなる毎日。検査室の分析機器の音や雑踏から開放され、家でスコッチを飲みながらパコ・デ・ルシアのギター、ジョージ・ウィンストンのピアノを聞いていると、ささやかな幸せを感じてしまう。ところで『いい音』について持論がある。近隣を気にせず大きい音で鳴らすことができる環境が一番である。今後映画のDVDと同様に、音楽のDVD(DVDオーディオ)タイトルが増えることを期待する。

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