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空間移動+タイムスリップのススメ 久野病院 小坂 明

 最近、リメイクされたタイムトラベルという映画が上映されました。昔々、ある高校の教室での出来事です。たしか「学校は男女共学に限る」が持論の女性の国語教師でした。あなた達、最近読んだ小説の感想文を書きなさいとの命令。一瞬・・ハニワ顔になりました。

実のところ小説みたいな作り話は大嫌いでほとんど読んでいませんでした(まだ、「事実は小説より奇なり」という言葉も知らず)。どちらかといえば、「美しきことはよきこと哉」とか、善の研究(これは見栄で?頁でやめた)などが好きでした。子供の感想文に福沢諭吉偉人伝で「福沢諭吉は偉かった」だけというすごいのがあった!

子供の頃からマンガが大好きで、少年サンデー、少年マガジンの創刊号から愛読していました。また、月刊誌(少年、ぼくらなど)や貸本屋通いで、鉄人28号、赤銅鈴之助、矢車剣之助、忍者武芸帳や火の鳥 (これは後年)などを一生懸命読みました。映像化されたものも多くありますが、もちろん紙面で楽しみました。なぜか親に隠れて読んでいました。

さて、ある時、友人の会話にロフ、ソウソウ、リュウビゲントク、チョウヒ、孔明、関羽などの言葉が出てきました。それなに?。君は吉川英治先生の三國志を知らんのかと言われ、それなら、一度読んでみるかと六興新書ハンディ版(初版昭和31年/昭和42年58重版)三國志第1巻を購入しました。当時、検査の専門学校に夜間通っていました。京阪七条から特急で京橋まで約50分、ついで国鉄環状線で天満、そこから徒歩で学校。帰りは逆経路で、最後、京阪七条から市電で自宅まで。まずは、特急電車の中で読みはじめました。

三國志には詩がある。第一巻 桃園の巻 「黄巾賊 後漢の建寧元年のころ、今から約千七百八十年ほど前のことである。一人の旅人があった。」−この旅人が劉備玄徳(三国の蜀漢の創始者)である。全十巻、電車の中、蒲団の中、バスの中と一気に読み切りました。

本人の身体は移動しながら頭の中は約1800年前の中国、はたまた日本の約900年前、平安末期の世界へ(新平家物語)タイムスリップしています。私の場合は、この入り口が吉川英治だったわけです。小説ですからどんどん読み飛ばしていけば良いし、それが一番気楽なところです(義務感なし)。これには、安くて手軽な文庫本が最適です。

これまでタイムスリップしたものを思いつくままにあげると雪深いダム乗っ取り事件「ホワイトアウト」(真保裕一)、ロマンチックな「メトロにのって」・人情豊かなヤクザな世界「プリズンホテル」(浅田次郎)古代中国のロマン「楽毅」・「奇貨おくべし」(宮城谷昌光)青雲はるかな「竜馬がゆく」(司馬遼太郎)正義とは何か「沈まぬ太陽」(山崎豊子)古代ローマを夢見て「ローマ人の物語」(塩野七生)インドの不思議「深い河」(遠藤周作)人間味豊かな刑事「新宿鮫」(大沢在昌)などがあります。泣いたり笑ったり腹を立てたり電車の中に変なおじさんがいると思われているかもしれません。できるだけ表情は押さえていますが、落語の本だけはいけません。

 ふと現実を見ると、方丈記「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例なし。世中にある人と栖と、またかくのごとし。」にあるように、病院の方向性、リスクマネージメントの関わり、感染症対策の役割、検査室のあり方や我々技師の仕事など問題は山積みで、実にあやふやなものです。私の関連の深い輸血検査はリスクマネージメント、免疫血清検査(HCV・HBs・TPHA)では迅速検査と精密検査の不一致、抗体検査のキット間(施設間)の不一致(キットの特性及びカットオフ値の違い)、意味不明の判定保留などの問題があります。

しかし、直接の問題解決にはなりませんが、せめて通勤時間は気楽にタイムスリップをしましょう。人生に照らしあわせたり、日々の苦しみの答えを探したりする効用もあるといわれています。定年ゴジラ(重松清)もよかったなあ・・・(団塊の世代の人は是非)。     自分で運転する車通勤や徒歩通勤ではむりですが、運転手付の遠距離通勤は環境にもよく、上記のようなメリットもあり断然お得です。無理して電車を利用しよう(実はすこし電鉄株を持っています・・)。

これからは、青春18キップやその気分で新しい旅をもとめ、東西南北と電車を乗りまくる予定です。但し、この場合はトリップがメインで風景の変化とお酒と会話が重要です。どこかで遇ったら、よろしく。

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