薬剤師が薬物治療に立ち向かうための基礎力充実を目的とした勉強会です
『薬物治療塾』では、薬剤師が薬物治療に立ち向かう際に必要な基礎力を養うため、次の3つの領域を掲げています。
「A.臨床薬物動態(PK/PD)」 「B.臨床統計」 「C.薬物治療(EBM)」
そして、それぞれの領域に入門コースと中級コースを設定し、実務に活用するための学びを提供しています。
また、第4期(前期)より「D.自らが取り組む新医薬品の客観的評価(旧:総合演習)」を立ち上げ、A~Cコースで学んだ薬物動態、統計、文献評価について日常の仕事で使えるようにするための訓練の場を設けています。
講師:緒方宏泰(明治薬科大学 名誉教授)
血中の非結合形薬物濃度が効果・作用を発現させている因子ととらえることができます。そのため、臓器機能障害によって血中の非結合形薬物濃度の変化がどの程度であるかの把握は、用法・用量の調節には重要な情報となります。
血中総薬物濃度値が情報として与えられている場合に血中の非結合形薬物濃度の変化を推定する方法を学びます。
血中非結合形薬物濃度の変化が推定できた場合の次のステップは、変化を生じさせて因子の推定です。
それには、クリアランスと分布容積の決定因子を知ることが必要となります。
薬物の薬物動態状の特徴を把握して、個々の患者の薬物治療に対応するための基礎を学んでいただきます。
コンパートメントモデルに基づいた速度論計算は対象としません。
講義形式:配布プリントを中心に行います
参考書:緒方宏泰 編著、臨床薬物動態学 薬物治療の適正化のために・第3版(丸善)
講師:緒方宏泰(明治薬科大学 名誉教授)
「比較」をなぜ行うのか、どのような条件で「比較」は行うのか。以上の条件が妥当に設定して比較のためのデータを収集しても、データには変動があり、変動を前提に比較を行うには、「統計」という手法を利用します。検定・推定(パラメトリック、ノンパラメトリック)を中心に、式などは極力避け何を行おうとしているのか、統計の考え方をイメーシで把握できるように努め、統計データの読み方、利用の仕方のホイントが把握できることを目的とします。
講義形式:配布プリントを中心に行います
参考書:市原清志 著、バイオサイエンスの統計学(南江堂)
実際の臨床試験論文を取り上げながら、講義と演習を通じて、記載された方法・結果・図表データ等から把握すべき情報を正確に読み取るスキルを身につけます。 読み取った情報を批判的に吟味し、治療法の有効性や安全性、予後などを自ら評価できるようになることを目指します。
【第1回】文献評価総論 担当:花井雄貴(東邦大学医療センター大森病院) EBMの基本的な考え方、薬剤師によるEBM実践方法、各試験デザイン(メタ解析・無作為化比較試験・コホート研究・ケースコントロール研究)の特徴、PECOを用いた情報を的確に収集するための疑問の定式化方法、評価済みの情報源の種類と特徴、文献検索のコツやFilters・Advanced search・MeSH termなどの機能を用いた効率的なPubMed検索方法、実際に文献を入手する方法、および文献情報の基本構造やそのまとめ方を概説する。 【第2回】Randomized Controlled Trial (RCT) I 担当:花井雄貴(東邦大学医療センター大森病院) 第1回の講義内容をベースに、循環器症例を取り上げます。具体的には、第一回で学習したことを実践できるような内容を展開する予定です(ショートグループディスカッション形式を予定しています)。 【第3回】Cohort study 担当:山口諒(東京大学医学部附属病院) Cohort studyの利点・欠点、読むためのステップを理解し、なるべくポイント押さえて簡易的に文献を読む・まとめる手法を身につける。さらに、Cohort studyならではのデータの取り扱い方、よく問題となるバイアス・交絡因子とその対処法、読む上でキーワードとなる単語の理解、注意すべきポイントを整理し、課題論文のポイントをまとめる。最後に、JAMAユーザーズガイドに基づく課題論文の批判的チェック、および、課題論文について読者自ら限界点の評価と結論のまとめを行う。 【第4回】Randomized Controlled Trial (RCT) Ⅱ 担当:望月伸夫(国立がん研究センター東病院 薬剤部) 第2回目を受けて、主として抗腫瘍薬のRCT論文を題材に論文を読むということから臨床的解釈をするためのステップの流れを追う。さらに、評価を行う上で理解が必要な生存時間解析(カプランマイヤー手法、ログランク検定、コックス回帰分析)および主要なエンドポイントであるOS、PFSについて整理し特徴を把握する。最終的にJAMAユーザーズガイドに基づき論文内容について課題論文を批判的にチェックし、課題論文および臨床的疑問について読者自らの評価と結論のまとめを行う。 【第5回】Meta-analysis 担当:花井雄貴(東邦大学医療センター大森病院) Meta-analysisの利点・欠点、読むためのステップを理解し、なるべくポイント押さえて簡易的に文献を読む・まとめる手法を身につける。Meta-analysisに関する基本知識、データ統合の意義や統合方法、各種データベースなどの情報源、Meta-analysisに特徴的な結果の見方(フォレストプロット、データの異質性など)や出版バイアスへの対処(ファンネルプロットなど)、読む上でキーワードとなる単語の理解、注意すべきポイントを整理し、課題論文のポイントをまとめる。最後に、JAMAユーザーズガイドに基づく課題論文の批判的チェック、および、課題論文について読者自ら限界点の評価と結論のまとめを行う。
講義形式:配布プリント(講義スライド、文献)を中心に行います
本コースは既にA〜Cコースのいずれかを受講された方々による自主運営のコースです。
I. 本コースの概要
II. 第12期前期に検討する医薬品
III.見学参加の受け付け
I. 本コースの概要
【目的】
A~Cコースで学んだ臨床薬物動態、統計、文献評価の知識をもとに、実臨床で使われている医薬品の有効性・安全性に関する全体像の把握に取り組みます。
それらの取り組みを通して、医薬品の有効性・安全性、更にそれらの医薬品情報に対する客観的な評価能力を身につけ、医療者に適切に情報提供が行えることを目指します。
具体的には、比較的新しい医薬品を取り上げ、承認時の情報(企業のインタビューフォーム、公表されている臨床試験の論文、PMDAの審査報告書・医薬品リスク管理計画書、企業の出している医薬品パンフレット)を検討対象に薬物動態(PK)の特徴づけ、論文の批判的吟味、審査内容の吟味、市販後のリスク管理における問題点、企業からの医薬品情報内容の妥当性などを、それぞれの評価シートをもとに評価していきます。
そしてこれらの客観的評価をもとに、臨床現場で新医薬品の使用における有効性、安全性情報を活用していける力を養うことを目指します。
【運営方法・形式】
参加者全員による討論形式で進めます。
事前に指定された医薬品について班毎に検討内容を事前に分担し、当日は発表担当班の検討内容をもとに議論を進めます。
検討する医薬品の選定や進め方などは受講生からなる運営委員を中心に決めていきます。
3つの医薬品を取り上げ、そのうち2つの医薬品については同一医薬品について2回(2か月)にわたり取り組みます。
1回目はPKに基づいた医薬品の特徴付けと文献評価を行います。文献評価では、結果の解釈や研究の弱点、研究の限界点などの検討に十分な時間を取るようにします。
2回目は1回目に行ったPKに基づいた医薬品の特徴づけから、病態変化時の薬物動態の変化の把握と用量調節の妥当性の検討、PMDAの審査報告書・医薬品リスク管理計画書の内容の把握と吟味を行います。
また、第五回目の勉強会では、企業が出している医薬品パンフレットの記載内容や表現などについての評価を加えて行います。
残りの1つの医薬品については、第一回目の勉強会で、PKに基づいた医薬品の特徴付けと文献評価を運営委員の解説を加えながら行います。
それぞれの評価は、評価シートをもとに行っていきます。
II. 第12期前期に検討する医薬品
2020.11 第1回 ポサコナゾール(ノクサフィル®錠/点滴静注) 深在性真菌症治療薬
2020.12 第2回 イバブラジン塩酸塩(コララン®錠) 慢性心不全治療薬
2021. 1 第3回 イバブラジン塩酸塩(コララン®錠) 慢性心不全治療薬
2021. 2 第4回 ダロルタミド(ニュベクオ®錠) 前立腺癌治療剤
2021. 3 第5回 ダロルタミド(ニュベクオ®錠) 前立腺癌治療剤
検討理由:
ポサコナゾール(ノクサフィル錠・点滴静注)
・ 審査の評価対象となった臨床論文から、本薬に適する患者層について検討する。
・ PKの特徴から注意するべき点はないか検討する。
・ 既存薬に比べて安全性は改善されているか確認する。
イバブラジン塩酸塩(コララン錠)
・ 新規作用機序の薬剤として承認されたが、臨床試験でどのような治療効果が示されたのか確認する。
・ 院内採用された際にどのような患者に適切か、安全性はどのような点に注意すべきか把握したい。
・ 海外で既に承認されており、ガイドラインでも推奨されているが、海外の臨床試験結果から日本人へ適用するための評価(用量など)は適切であったか確認する。
ダロルタミド(ニュベクオ錠)
・ 本薬の使用が適する患者層を把握し、既存薬(エンザルタミド、アパルタミド)との使い分けを確認したい。
・ 経口抗がん剤であり、外来でも使用する頻度が高いと考えられるため。
・ 遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺癌における本薬の有効性評価の指標は適切か、審査でどのように有効性を評価しているか、確認する。
・ 既存薬より安全性に優れているか、安全性評価はどのように行われているか、確認する。
Ⅲ. 見学参加の受付
Dコースでは見学参加も受け付けております。参加を希望しているが、いきなりのコース参加に不安がある方、実際に勉強会を体験してみたい方は、是非、一度見学にお越しください。見学を希望される方は、勉強会の1ヶ月前までに下記アドレスまでご連絡ください。資料をお送りします。参加費は無料です。
jukupt.d(a)gmail.com (”(a)”を”@”に変えて送信して下さい)