試験では、模擬患者に対する面接を行うことになる。ここでは、面接の一例を示す。ハキハキと、かつ心をこめて対話すること。

1.挨拶

「○○さんどうぞ〜 今日診察させていただく、学生の○○です。よろしくお願いします。おかけください」

患者に続いて、自分も着席する。

2.中立型質問

「今日はどうされましたか?」

「胸が痛くなったので、きました。」

患者に負担がかからないように、「どうしましたか?」「どうなりましたか?」とたずねる。

3.開放型質問

「その胸の痛みはいつ頃から起こって、どうなってきましたか?」

「最近仕事中、時々胸に重苦しさを感じることが多くなって、自然によくなってたんですけど、昨日の夜、寝ているとき急に胸が痛くなり、心配になって、今日見てもらいに来ました」

患者の言葉で自由に答えられる質問をする。話しはじめた患者の言葉を遮らないようにして、なるべく傾聴する。

4.集中型質問

「痛みについてもう少し、詳しく教えてもらえますか?」

「突き刺すような痛みです」

共感するように頷きながら、

「ああ、それは大変でしたね。それで、どれくらい痛みは続いたんですか?」

「痛みは数分で治まったんですけど、とてもキリキリ痛かったです」

問診に必要と考えられる特定の話題に焦点を絞ってゆく。

5.選択型質問

「なるほど、痛むのは胸の全体ですか、それとも左右のどちらかですか?」

「胸全体が締め付けられるような気がします」

より焦点を絞るため、選択肢を示して質問する。患者の訴えを誘導しないように配慮する。

6.閉鎖型質問

「痛みが出るのは休んでいるときですか?」

「いえ、仕事中が特に多いと思います」

「頭は痛いですか?」「熱はありますか?」など、「はい/いいえ」で答えるような質問を行う。こうした質問は、医師の関心事であり、必ずしも患者が伝えたい内容ではない。よって、最終局面に、最小限に、適切に使用しなければならない。

7.医師・患者関係の確立

「仕事でストレスがあるのでしょうか?」

「4月に単身赴任が決まり、一人暮らししてますけど、ストレスになってんですかねぇ」

「なるほど、お一人暮らしは大変ですよね。食事や睡眠は十分に取られていますか?」

「食事は外食が多くて、夜は睡眠不足ぎみです」

「そうですか。仕方がない部分もあるとは思いますが、お体には負担になっているかもしれませんね。最近、病院に行かれたり、お薬を飲まれたりしていますか?」

「いえ、とくに病院には行ってませんでした。薬も飲んでいません。仕事が忙しくってですね」

苦しい患者の立場になって、理解していることを伝えることで、良好な関係を築く努力をする。「つらそうですね」「あなたが大変だということは良くわかりますよ」「そんな状況で、よくがんばってらっしゃいますね」など、感情面への対応はきわめて重要である。

8.要約

共感するように頷きながら、

「それは大変ですね。胸全体が締め付けられるような痛みが数分続くことが、しばしばあるということですが、その胸の痛み以外に、何か症状がありますか?」

「会社の検診で、高血圧と診断されまして、要注意と言われました。それ以外には、なんとも・・・」

患者の話した内容をまとめて、医師の言葉で言い返してみる。患者は、自分の訴えが医師にきちんと伝わっているかを確認することができる。また、言い漏らした部分を伝えることができる。

9.交渉

「わかりました。では、一度、きちんと検査してみましょうか?」

「はい、お願いします」

最後に診療方針について患者に伝え、同意を求める。

10.評価点(補足)

必ずしも模擬患者さんはこのように振舞ってくれるとは限りません。臨機応変な対応能力が当然問われるわけです。ここでは、参考までに、試験における評価点についてすべて列挙しておきます。

 挨拶してから名前を確認し、自己紹介する。
 患者がリラックスできるようにする。
 対人空間を適切にとる。
 視線を向ける。
 最初は患者が話をしやすいような質問法を用いる。
 話を促進させる。
 後半では症状などを明らかにする。
 良好な医師患者関係を築く。
 「いつから症状がみられますか?」と聞く。
 「どこに症状がみられますか?」(痛みの場所など)と聞く。
 「どのような症状なのですか?」(痛みの種類など)と聞く。
 「どの程度の症状なのですか?」(痛みの強さなど)と聞く。
 「どのような時に症状があるのですか?」と聞く。
 「何が原因だと思われますか?」と聞く。
 「他の症状はありませんか?」と聞く。
 主訴以外の随伴症状を十分につかむ
 「何か気になることはありませんか?」と心配事を聞く。
 「このことで病院にかかったことがありますか?」と聞く。
 患者の生活背景を十分につかむ。
 患者の環境変化があったかを十分につかむ。
 患者の性格を十分につかむ。
 その他のシステムレビュー(タバコ、酒、常用している薬、睡眠など)が出来ている。


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