ICFとケアプラン(支援計画)

日本でICFの活用が進んでいる介護の分野では、ICFはケアプランの作成にも活用されているようです。職業分野では対応するものとして、職業リハビリテーション計画や個別就労支援計画などがありますが、ICFはあくまでも分類なので、プラスアルファが必要だと思います。

促進因子の欠如をどう評価するか?

支援計画の立案で最も重要なのが、その事例において、「本当はあるべき促進因子」の何が欠けているかを認識することです。なぜなら、支援とはその欠けている促進因子を構築することだからです。これは、ICFでは「促進因子の欠如」と表現されています。

「阻害因子」なら現実にそこにあるから分かりやすいものの、「促進因子の欠如」という、現実にはないものを評価することは難しいものです。

例えば、日本では数年前まで、高齢者の寝たきりは仕方のないものとして考えられてきましたが、以前から、例えばデンマーク等では寝たきり高齢者がいないことが知られており、この差がどこにあるのか、なかなか分かりませんでした。現在では、わが国でも介護予防等、寝たきり防止が重視されるようになってきていますが、当時は、社会全体の認識として、わが国には何が欠けているのがが分からなかったのです。

ICFの環境因子を使って事例を把握するだけでは、「促進因子の欠如」は分かりません。可能な促進因子には何があるかについてを、世界中の最新情報を知っておく必要があるのです。

職業分野での試み

職業分野では、米国ドイツなどが連邦政府レベルで、支援情報をインターネットで提供するようになっています。そこで、わが国では、ICFと最新情報のデータベースを組み合わせることによって、「促進因子の欠如」を評価できるようにしてみました。

例えば、わが国に限らず多くの国でまだ、寝たきりが当然で、尊厳死すら話題になる、人工呼吸器を利用している筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の就労問題をICFで考えることができます。この病気の患者としては、非常に有名なスティーブン・ホーキング教授がいます。これまで、ホーキング教授の例は例外中の例外であって、普通の難病支援のモデルとしては考慮されませんでした。

しかし、ICFでホーキング博士の例について考えると、別にこれは特殊な例ではありません。全身の筋萎縮で、人工呼吸器が必要な状態であり、気管切開、さらに見えない部分での心臓機能障害などの重篤な機能障害にも関わらず、ホーキング博士は執筆、講演、海外出張も可能となっています。これは、電動車いす、可動の人工呼吸器、コンピューター入力支援機器、音声変換器、支援者といった目に見える支援だけでなく、大学の最新支援機器の研究者などの関与によって可能となっているのです。これらの支援方法は一般でも利用しようと思えば利用できるもので特別なものではありません。障害以外の個人因子についていえば、ホーキング博士が物理学者としての資質を備えていることは言うまでもありません。

ホーキング博士は世界一流の仕事をしているから特別と考えられるかもしれませんが、ポイントは、最新の支援方法の情報さえあれば、このような支援方法の提案は、誰に対しても、どのような仕事に対しても可能だということです。このような個別化された支援は、重度障害のある人の支援に対して可能性があると考えられ、これを経済的な面も含めて支えることも含め、今後の研究課題と重要と思います。

ユニバーサル・ワーク・データベースでの支援計画の策定

ICFと最新情報のデータベースを組み合わせたツール(ユニバーサル・ワーク・データベース)はインターネットで誰でも利用できます。>>ユニバーサル・ワーク・データベース

以下に、ユニバーサル・ワーク・データベースを使って作成した「個別就労支援総合計画書」の実例を示します。ICFと最新情報のデータベースを組み合わることによって、環境チェックリストによるチェックや、最新の支援情報を活用した支援計画の説明資料をあわせて作成することができます。










「ユニバーサル・ワーク・データベース」の開発の詳細については、報告書をご覧下さい。


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Yuichiro Haruna
yharuna-tky@umin.ac.jp